タイトル:【馬】 変身しても、いいですか? PART-2
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初投稿日時:2006/09/28-20:27:31修正日時:2006/09/28-20:27:31
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変身しても、いいですか?PART-2 (今回は3話)


 ここは、銀河太陽系第三番惑星。
 「地球」と呼ばれ、過去多くの怪獣や異星人からの侵略行為を受けてきた、本来ならば悲劇に満ちた筈の星。
 しかし、いまだかつて一度たりとも、この星が異星人に占領された事はない。

 なぜか。
 それは、我々一族が守り続けてきたからだ。

 ——え、「銀河系第三番惑星」じゃなかったのかって?

 誰だ、そんなとんでもない事を言う奴は。
 そもそもどこだよ、銀河系の第三番って。



第3話 【コンペイトウの秘密】


 私は今、金平糖を食べながらテレビを観ている。
 テレビでは、「ニュース」と呼ばれる情報番組が映し出されている。
 それによると、どうやら東京・下町の辺りに怪獣が出現したらしい。

 ふーん。
 それはまた、大変なことだな。

 私は、袋に入った金平糖を取り出し、ぶぁりぼりと齧る、齧る。
 金平糖…素晴らしい甘味!
 なんというか、この嫌味のない甘味がいいね。
 実に気に入った!

 怪獣は、どうやら実装石が巨大化したものらしい。
 いったい、何をやってそんなに巨大化したのやら。
 次々に和菓子屋を襲っているらしく、その過程で被害が広がっているという。
 おお、DESHARが出動している。

 まー、怪獣って言っても所詮は実装石、大したことはないだろう。

 私は、腹いっぱいになったので、手近にあった枕を引き寄せると、そこに頭を乗せてゴロリと横になった。

「テチ…テ…チ…」

 枕が弱々しい悲鳴を上げる。
 さっきまで、この家の飼い実装として生活していた子供だが、今では四肢と髪の毛、服を失い、単なる枕と化して
いる。

 え、親? 他の姉妹はどうしたかって?
 だから、腹が一杯だと説明しただろうが、さっき。

 ニュースが今夜の注目番組紹介に切り替わった。
 他に何かやってないかリモコンを適当に回し、再放送の「斬り抜ける」で藤田まことの客演を堪能した後、私は
ハラハラと泣く枕を腹に収め、たっぷりと糞を落としていく。
 いやあ、近藤正臣若いなあ。
 わさび茶漬けって、なんだかすごくおいしそうだな。

 すっきりしたので、先程ぶち割ったガラス窓から外に出る。


 しばらく後、家の中から家主と思われるニンゲンの悲鳴が聞こえてきた。
 物騒な世の中だからなあ、泥棒にでも入られたのだろうか。
 何があったのか知らないが、くじけないで、強く生きて欲しいと思う。


 私の名は、ウルト○マンデェス。
 地球の平和を守るためにやって来た、某78星雲光の国の使者だ。
 地球上では三分間しか活動出来ないが、私は懸命に、怪獣や宇宙人と戦っている。

 今までこの星を訪れた宇宙警備隊員は、皆ニンゲンの姿を借りていたが、私はニンゲンがどうしても受けて
しまう数々の制約を拒み、ニンゲンの次に賢く、かつ自由な生物・実装石と一体化したのだ。
 おかげで、日々楽しく平和な生活を送っている。
 こんなに餌に溢れている素敵な地球を、怪獣や宇宙人共に好き勝手にはさせない。
 それが、私の誓いであり、信念だ。

 それにしても、わさび茶漬けってどこで食えるのかな?


 空は晴天、気温は暖かく、風も気持ちいい。
 とても怪獣が暴れているようには思えないほど、のどかだ。
 私は、近所の公園に住む仲間達を尋ねた。

「デジャァァッッ!! や、奴が来たデスっ!!」
「みんな、逃げるデスーッ! 殺されるデスーっ!!」
「仔食い実装が来たテチーッ!!! 一人残らず食い殺されるテチー!!」
「テチャアァァッ!!」

 何事だ?
 公園の野良実装達が、皆慌てて逃げ去っていく。
 蜘蛛の仔のチリソースとは、まさにこの事を言うのだろう。
 今まで野良実装達に餌を与えていたアイゴハというニンゲン達は、きょとんとしてその様子を見守っていた。
 何があったのか、早速聞いてみよう。

「そこのニンゲン達、聞きたい事があるデス」

「あら、この実装石、人間の言葉しゃべるわ!」
「まぁ、すごいのねぇ! こんなに賢い仔がいたの?」

「何かあったのデスか? この高貴で強く素晴らしさに満ち溢れた素敵過ぎるワタシに、丁寧そしてわかりやすく、
 なおかつ簡潔に説明するデス」

「まあ〜♪ そんな難しい言葉まで喋れるなんて、素敵ねぇ♪」
「あなた、金平糖食べない? 沢山あるわよ?」

「それはそれでいただくとして、とっとと質問に答えて欲しいデス」

「おせんべいは食べられるかしら?」
「あなた、うちのエメラルドちゃんと遊んであげてくれないかしら? あっちの方で、子供達と遊びに行ってるんだけど。
 きっと仲良くなれるわ♪」

「せんべいも金平糖もステーキもわさび茶漬けもいくらでも食らってやるデスから、とっとと質問に答えやがれデス、
 チギャーッ!!」

「あらあら、どうしたの〜?」
「お顔が真っ赤ねぇ♪ ひょっとして、照れちゃったのかしら? いいのよ、遠慮しなくっても♪」

「………」


 ——ピイィィン!

 ギュウイィィィィィィンンンン!!!! <変身の音

 デシュワッ!!!

 私は、いつまで経っても話の通じないニンゲン達に痺れを切らし、変身した。

 指先には、アイゴハのニンゲン二人がつままれている。
 高度約40メートル前後の位置まで吊り上げられ、怯えきっているようだ。
 さあ、落ちたくなければキリキリ説明してもらおうか!

 デシュワッ! (訳:お前達、ボケてないで説明するデスぅ!)

「キャアァァッッ!! 落ちる、落ちるうぅぅ!!!」
「ギャアアァッ!!! た、助けてエメラルドちゃあぁぁん!!! ドロシーちゃあぁぁぁん!!! エリザベスちゃあぁぁぁん!!!」

 デシュワワッ!! (訳:命が惜しかったら、とっとと事態を説明すると言ってるデス! なんでわからないデス?!)

「ひ、ひいぃぃぃ!!! た、高い所は嫌、イヤなのよぉぉぉぉ!」
「だ、誰か、たすけてえぇぇぇっ!!!」

 よく見ると、ニンゲン達は吊るされたままパンコンしているようだ。

 股間からジョバジョバなんか出てる。

 うわ、汚ねっ!
 ポイッ!

 私は、ニンゲン達をポイと放り捨てると、やれやれと遠方を見つめる。
 これだから、ニンゲンは困ったものだ。
 せっかくニンゲンの言葉で話してやってるのに、まともに応えようとしない。

 ふと見ると、地球防衛軍「DESHAR」のデッシャーホークが、こちらに向かって来る。

『おいデェス! 怪獣が出たのはそこじゃねぇ!! ずっと向こうだ!』

 デシュワッ!

 おお、そうか。
 すっかり忘れていた、怪獣が居たんだったな。
 私は、デッシャーホークに導かれて、下町に出現した実装怪獣の元へ飛んだ。



 下町で、実装怪獣クソムシと名付けられたソレは、店舗ごと金平糖を食らっている。
 足元では、大切な家や店、そして商品をめちゃくちゃにされて嘆いている、大勢の人々が居た。
 その姿が、私の心に怒りの火を灯す。

 デシュワッ!

「デスデス?」

 クソムシは、人相の悪い顔でこちらをにらみ付ける。
 私は、テレパシーでクソムシに語りかけた。

『待て! なぜお前はこんな事をするデス!?』

「腹が減ってるからデスー。お前も、空腹ならきっと同じ事をするデスー」

『ニンゲン達が悲しんでいるデス! すぐに止めるデス!』

「そんな事知ったこっちゃないデスー。ニンゲンはどうせ家畜で下僕でワタシ達のために犠牲となる哀れな生き物
デスー」

『それは正しいデスが、金平糖の店や職人の工場を破壊されると、私もお前も困るデス』

「デスー?」

 私は、金平糖を作るために、職人がどれほどの手間と時間をかけるか、丁寧に説明してやった。

 語源はポルトガル語のコンフェイト(confeito)であり、舶来当時は作り方がわからず高級菓子として扱われていた
事。
 職人達が努力の末に作り方を見出し、胡麻やケシの実を核にして丁寧に溶かし砂糖を振り掛ける技法を完成
させた事。
 現在はザラメを核にして、丁寧に溶かした氷砂糖の蜜を一週間から二週間もの長時間、釜を回しながらふりかけて
形を整えていく事。
 その行程には、洗練された職人の腕とこだわりが必要とされる事。
 また災害時の非常食の一部としても使われるほど大切にされている物である事…

 これを、十数分かけてじっくり話してやった。
 話し終える頃、クソムシの目には大粒の涙が溜まっていた。

「し、知らなかったデスー。金平糖がそんな大変なものだったなんて、全然知らなかったデスー」

『お前は、そんな大切な食文化を自らの欲望のために踏みにじろうとしたデス。反省する必要があるデス』

「思いっきり反省したデスー。これからは山奥に篭り、地道にクジラやイルカでも獲って迷惑をかけないように暮らす
デスー」

 意外に素直なクソムシは、そう言うとくるりと踵を返して、山のある方向へズンズンと歩き去っていった。



 今だ! パンコニウム光線!!

 ——デジャビイィィィィィィム!!!!

「デジャアアアアッッッ!!!」

 ドガアァァァァン!!!!


 愚かにも、私に背を見せた実装怪獣は、木っ端微塵に爆発し、吹き飛んだ。
 周囲一体は火の海となったが、恐るべき怪獣がいなくなり、この街にもすぐに平和が訪れるだろう。
 私は、人々の阿鼻叫喚に耳を塞ぎながら、満足して空高く飛び立った。

 デシュワッ!!

 キィィィィ———ン……



 その日のニュースによると、下町で爆発したクソムシの死体回収処分のせいで、莫大な費用がかかる事が判明
し、また爆発時の破損家屋や建造物修復の責任と負担が、すべてDESHARにのしかかった事を知った。

 ううむ、ニンゲン社会というものは、なかなか複雑なものだな。

 私は、わさび茶漬けに舌鼓を打ちながら、ニュースに写る自分の勇姿に見惚れていた。
 うーむ、こうしてみると、やっぱり緑と赤の目はあまり合わないな。

 便利なもので、今はわさび茶漬けのインスタント食品があるらしい。
 私は戸棚の中でそれを発見し、あまりの幸運に歓喜した。
 テーブルの脇にあったご飯ジャーからたっぷり米の飯を盛り、そこにお湯をかける。
 ああ、たまらない! 少しぴりりと来るが、本当に美味い!
 これでもう三杯目だが、たまには贅沢をしないとな。

 ツーン
「デヒャー」

 わさびが、鼻にツーンと来た。


 「テチ…テ…チ…」

 枕が弱々しい悲鳴を上げる。
 さっきまで、この家の飼い実装として生活していた子供だが、今では四肢と髪の毛、服を失い、私専用の枕と
化して転がされている。

 え、親? 他の姉妹はどうしたかって?
 だから、たまには贅沢をしないと、と説明しただろうが、さっき。


 ニュースが、映画番組に切り替わった。
 えーと、「シベリア超特急」か。これは前に観たな。
 トホホな二段オチには、腰が砕けたものだ。
 他にはあまり面白い番組をやってないようなので、たっぷりと糞を落としてから退出することにする。

 私は、先程ぶち割ったガラス窓から外に出た。
 枕は当然、お持ち帰りだ。
「テ…テテ…ママァ……ゴシュジンサマァ…」
 この枕は、後で夜食にでもしよう。


 しばらく後、家の中から家主と思われるニンゲンの悲鳴が聞こえてきた。
 物騒な世の中だからなあ、泥棒にでも入られたのだろうか。
 何があったのか知らないが、くじけずに強く生きて欲しいと思う。
 わさび茶漬け、ご馳走様でした。


 私の名は、ウルト○マンデェス。
 地球の平和を守るためにやって来た、某78星雲光の国の使者だ。


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第4話 【ガレージの蒼い石】


 怪獣が暴れ、そして私がそれを退治する度に、実装石達の住む公園が一つまたひとつと消滅していく。
 その結果、街中には生活圏を失った野良実装が大量に溢れ返り、人々の生活を脅かしていた。
 しかし、駆除しようにも実装石達はあまりに広範囲に広がり、また数も多いため、劇的な効果は期待できない。
 そのため一部の自治区では、ついに「実蒼石」を導入。
 実装石の天敵であるところの実蒼石は、凄まじい勢いでこれを撃退していく。
 全員が装備している巨大な鋏で、バッタバッタと斬り倒す。
 ゲゲゲの鬼太郎、桃太郎。
 私は、そんな大人の御伽噺を、いつものようにリビングのテレビで眺めていた。

 私は、ウルト○マンデェス。
 実装石と一体化し、地球を守るために戦う戦士だ。

 今日は、ちゃんと家主が長期出張で留守だと判っている家を選び、潜入している。
 もちろん、ここの飼い実装はすべて手中に落とした。
 ここはなかなか居心地がいい。
 どうやら、このままあと三日間はゆっくり出来そうだ。
 私は、飼い実装はすぐには殺さず、餌のありかを教えさせるというあらたな術を身につけ、快適な生活を営んで
いた。


「お願いしますデス…どうか、どうかその仔だけでも、命を助けてあげて欲しいデス…」
「レチーレチー! レェェェン、マ、ママァ〜〜、怖いレチー!!」

 ここに飼われている親実装が、泣きながら私にすがる。
 私の手の中には、つまみ代わりの親指実装が居る。
 すでに両脚は食い千切られているが。

「なんだ、君も食べたいのデスか。ホラ」

 ぶちっ
「レヂャ…」

 私は親指の首を引き千切り、親実装に分けてやった。
 困った時はお互い様というからな。
 遠慮する事はないぞ。

「デ……マリちゃん、マリちゃん…?! で、デジャアアァッッッッ!!!」

 パリン!

 何か砕けるような音がして、親実装が倒れてしまった。
 あーあ、せっかくあげた頭が転がってしまった。
 よくわからないが、疲れているのかもしれない。
 子育ては大変だというからな、それも仕方ないだろう。

 私は彼女をそっとしておいて、テレビに向き直った。



 ニンゲンに害を成す野良実装が駆逐されるのは仕方ないことだが、放された実蒼石の中には、野良と飼いの区別
が付かないものも居るらしい。
 ごく稀にだが、飼い実装が伐採されてしまうケースもあるようで、実装石アイゴハの非難を受けているという。
 私は、まあ所詮他人事だと思い、がぶりと親指の胴体を齧った。


 ガシャ…ン

「デ?」

 何か、おかしな気配がする。
 家の外…いや、敷地内だ。

 ガシャン
「…クー」

 間違いない、何か居る!
 私は、様子を見るために部屋を出て、玄関を通り、車のないガレージへと向かった。


「ボクー!」

 電氣を点けたその時。
 突然、聞き覚えのない鳴き声と共に、何かが眼前を横切った。

 蒼い服に、実装石とは対のオッドアイ、そしてシルクハットに黄金の鋏。
 さっきテレビで見た実蒼石が、目の前に居る。
 ほほう、こいつがどうしてこんな所に?

「野良実装! 勝手に人様の家に上がりこんで勝手三昧! 許さないボクー!!」
「何言ってるデスか。お前だって同罪デス」
「この家の飼い実装の悲鳴を聞いたボクー! 緊急事態だからいいボクー」
「なんと勝手な言い分デス。それにさっきのは悲鳴じゃなくて、餌をもらえた喜びの…」
「問答無用ボクー!!」

 黄金の鋏が煌き、閃光の奇跡が宙に描かれる。
 だが、いくら実蒼石が優れたハンターでも、歴戦の勇者である私には叶わない。
 普通の実装石なら、本能で実蒼石を恐れるのだが、生憎私はすでにこの実装石の意識を完全に乗っ取っている。
 だから、ひるむ事なく冷静に対処が出来る。

 私は、すべて紙一重で交わし切ると、実蒼石の疲労を待った。
 次々に、ガレージ内の備品が切り裂かれていく。
 これは、家主が戻ってきたら大騒ぎ必至だな。

 体力に恵まれた実蒼石は、いつまで経っても疲れる事なく、私に攻撃を仕掛けてくる。
 困ったものだな、ここはなんとか誤解を解かなければ。
 私は、やむなく変身して、正体を明かすことにした。

 デュワッ!

 ——ピイィィン!

 デシュワッ!!!


 銀色の姿に変身した私を見て、驚く実蒼石。
 今回は特別、等身大変身だ。
 私は、身長はそのままで姿だけをウルト○マンデェスに変え、実蒼石に説明してやった。



 語源はポルトガル語のコンフェイト(confeito)であり、舶来当時は作り方がわからず高級菓子として扱われていた
事。
 職人達が努力の末に作り方を見出し、胡麻やケシの実を核にして丁寧に溶かし砂糖を振り掛ける技法を完成
させた事。
 現在はザラメを核にして、丁寧に溶かした氷砂糖の蜜を一週間から二週間もの長時間、釜を回しながらふりかけて
形を整えていく事。
 その行程には、洗練された職人の腕とこだわりが必要とされる事。
 また災害時の非常食の一部としても使われるほど大切にされている物である事…

 これを、十数分かけてじっくり話した。


「な、何を訳のわからない事を言ってるボクー! 早くそのコスプレを解くボクー」

 デシュワッ! (訳:コスプレとはなんデスか? それはおいしいのデスか?)

「コスプレじゃないボク? 本当にその姿ボク? ——そうか、それならばそれで好都合ボクー!!!」

 デ? (訳:なんデスと?)


 ズ・ズ・ズ・ズ・ズ・ズ………

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴコ……!!!

 ドガアァァァンンンンンッ


 ボボボボ、ボックゥゥゥゥ———っ!!!


 デシュワッ?!

 なんという事だろう! 実蒼石が、みるみるうちに巨大化してしまったではないか!

 推定身長50メートル…普段の私よりデカい!
 まさかコイツは、変幻自在の実蒼石怪獣ジッソー(そのまんま)では?!
 放射能で汚染された物質を食い続けて怪獣化した実装シリーズが居ると聞くが、まさかこいつがそうだったなんて。

 しまった、こんな事ならば金平糖の話ではなく、ダイダラボッチの話でもしてやれば良かった。
 いや、それよりポレレオラピラピラポの不思議な話の方が良かったか?

 ボックー!

 ドガァァァン!!

 黄金の巨大鋏が、容赦なく家を破壊する。
 なんという事だ! 私のマイホームが!
 怒れ! 光の大巨人。
 赤い眼差し、緑の目。 
 人の家を突き破るジッソー鋏は許せない!
 魔力! 気力! 超力変身!
 私は、迷わず巨大化した。

 ギュワアァァァァン!!! <巨大化した音

 ドガアァァン!!

 デシュワッ!!

 ボクー!

 二大巨人の対決!
 夜の街のネオンは、我々の身体を闇夜に浮かび上がらせる。
 うおお、なんかカッコイイかも!
 黄金の鋏が、不気味な光を放ち、私の喉元を狙う。

 ボックー!!

 ブン! ブン!

 デシュワッ!

 凄腕の剣豪並の鋭さで振り回される鋏。
 ビルや電線が、みるみるうちに断ち切られていく。
 まずい、なんとしてもこいつを食い止めなければ!
 このままでは地球が危ないロリータ!
 私はなんとか付け入る隙を見つけようと努力したが、なかなかに厳しい。
 強い…こいつは伊達じゃない。

 デスンデスンデスンデスンデスン

 カラータイマーが点滅し始めた。
 しまった、時間をかけすぎたようだ。
 もう、うかうかしていられない。

 ボクー!

 ジッソーが鋏を振り被ったその時、向こうから、巨大な戦闘母艦が飛来した。
 DESHARの誇る空中要塞・デッシャーバルチャーだ。
 全長は私の身長より大きいが、なぜか私の両手で抱きかかえられるサイズだぞ。

『よし、ザビエル作戦開始!』
『了解!』

 デッシャバルチャーの底のハッチが開き、そこから、鎖に繋がれた巨大なアームが出現する。
 それはジッソーの頭上まで移動し、シルクハットをガシッとつかむ。

『急速上昇!』
 ぐおお
 
 ボ、ボックー?!

 ひょい

 ジッソーのシルクハットが奪い取られ、その下から、まるでカッパのような丸禿が現れた。
 なんと、ジッソーの頭頂部はカッパ禿だったのか!

 デププワッシャッシャッシャッ!!

 私は、思わず吹き出してしまった。

 ボ、ボクゥゥゥッ!!! ボクゥゥゥゥッ!!!

 ジッソーは、奪われたシルクハットを取り戻そうとして、必死にデッシャーバルチャーに飛びつこうとしているが、
機体は奴の真上に滞空していて、ぎりぎり手が届かない。
 ジッソーは怒りに駆られ、黄金の鋏を構える。
 あれで突いて、落とすつもりなのだ。
 まずい、デッシャーバルチャーが危ない。

 デシャッ!

 パンコニウム光線だ!

 ——デジャビイィィィィィィム!!!!

 緑色の閃光が、ジッソーの頭部に炸裂する。
 しかし——


 ボクゥ?!

 ピカッ…ツルン!

 ドガアァァァァン!!!!


『ウワアアアアッッッ!!!』


 あれっ。
 パンコニウム光線は、ジッソーの禿部分に反射して、真上にいたデッシャーバルチャーに直撃した。

『だ、脱出、脱出だーっ!!』

 落下する機体から、ポイポイとニンゲンが飛び出てくる。
 ジッソーは、事態が良く飲み込めてないといった表情で、それを次々に鋏で捕らえてジョギリジョギリと切り刻んで
いく。
 残酷、ジョギリショック!!
 その隙を突いて、私は新たな必殺技・デェスブレードを使った。
 光線を剣のような形にして、斬り抜ける!

 ボクッ?!

 デシュワッ!!

 ——バシュッ! 


 ジッソーは、首と胴体を切り離され、あっさりと倒された。
 悲しき運命に翻弄されし怪獣よ、安らかに眠れ。

 私は帰ろうとしたが、ジッソーの死体が爆発しない事になんとなく不満を覚え、あらためてパンコニウム光線を放った。

 ——デジャビイィィィィィィム!!!!

 ドガアアァァンンン!!!!


 この時の爆発で、住宅街と市街は壊滅的打撃を受けてしまったらしい。

 ジッソーの被害は、予想以上のものだった。
 そもそも、ニンゲンが実蒼石など放たなければ、こんな事にならなかったのだ。
 今回の件は、アイゴハ連中の主張する実蒼石導入反対意見を後押しする形となってしまい、この数日後、町中に
放たれた実蒼石は、野良実装ごと処分されてしまったという。

 私は、犠牲になった多くの者達の冥福を祈りながらも、奇跡的な幸運により命を救われた、あの家の主の今後の
幸せを願った。
 まー幸運って言っても、ただ長期出張に出ていたから巻き込まれなかっただけなんだが。


 さて今夜は、どの民家で夜を過ごそうか?

 私は、隣町の住宅街に潜入し、物色を開始した。


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第5話 【ニートの叫び】


 なんでもこの地球には、働こうとしないニンゲンが大勢おり、その数も年々増えているという。

 親の脛をかじり、家には一銭も金を入れず、日々だらだらと無意味な生活を送る。
 そりゃまあ、怠けていながら平和な生活が出来ればそれに越したことはないが、随分と呑気なものだ。
 ワタシのような実装石でも、日々の糧を得るために命がけの努力をしているというのに。

 昨日の新聞記事を読んだワタシは、そんなニンゲン達に呆れてため息を漏らす。
 なんで、そんな怠惰な連中のことまで、わざわざ守ってやらなければならんのか。
 いっそのこと、そういう役立たずの連中を一掃した方が平和になるのでは?

 と、だんだん発想が過激になっていく事に気付き、慌てて頭をブンブン振る。
 そんな連中も、どうせいずれは報いを受けるのだ。
 ワタシが手を下すまでもない。


 ワタシはウルト○マンデェス。
 地球を守るために……えーと………とにかく、来たのだ。
 好きな物は金平糖とステーキ、そして仔実装の肉だ。
 先週、実装燈というものを食したが、骨ばっていてあまり美味くなかった。
 「ルトルト」泣いてて随分うっとおしかったが、ヌッコロす時だけはなかなか充実できた。
 

「は〜いマリーゴールドちゃん♪ ご飯よぉっ♪」

 ニンゲンの声に、はっとする。
 マリーゴールドというのは、ワタシに付けられた名前だ。
 そう、今のワタシは飼い実装と呼ばれる立場にあるのだ。

 先週、飼い主に捨てられた実装石を襲って身ぐるみ剥いで戦闘練習に付き合ってもらった。
 ところが不幸なことに、その実装石は偽石を自壊させて死んでしまったため、代わりに私がその服を身に付けて
いたのだが、そこをアイゴハのニンゲンに見留められ、拾われたのだ。
 私は、激しい訓練に付き合ってくれただけでなく、このような幸運を授けてくれた、名もなき実装石の魂に、深く
感謝した。
 そろそろ中年と呼ばれる世代に入ろうとしているこの未婚の女性…いわゆる「逝き遅れ」と呼ばれる人種は、
ワタシを自分のマンションに招き入れ、餌も風呂も寝床も娯楽も、頼みもしないのにどんどん提供してくる。
 なるほど、これが公園の野良達が言っていた「ドレイニンゲン」というものなのだな。
 逝き遅れというものは、奴隷でもある。
 よく覚えておくとしよう。

 という事で、これはワタシの奴隷。

 まあ、奴隷と言えども、ワタシが守らねばならない存在である事に変わりない。
 今はせいぜい、この英雄様を精一杯もちなしてくれたまえ。

 目の前に、実装フードの山が置かれる。
 またか…ワタシは舌打ちをする。

「ワタシはこのようなものは食わないデス。とっとと上等のTボーンステーキを持ってくるデス。鉄板は左右で厚みを
変えて最後まで熱々で食べられるように工夫するデス。ただし味付けは塩こしょうのみにするデス」
「ごめんねえマリーゴールドちゃん♪ お肉屋さんが休みだから、我慢してね♪ 夜になったらスーパーまで行って
買ってきてあげるから☆」
「役に立たない奴隷デス」
「うーん、マリーゴールドちゃん、可愛い♪♪♪」

 ワタシの言う事がどれほど伝わっているのかわからないが、奴隷はワタシを抱き上げ、頬擦りを繰り返す。

 化粧臭いんだよ、ババア!

 今もし変身出来るなら、パンコニウム光線を叩き付けてやるのだが。
 まあいい、貴重な労働力だ。
 ワタシは、出血大サービスで奴隷の好きにさせてやった。


 ふとテレビを点けてみると、またまたニュースがやっている。
 なんでこう、ワタシはニュースと縁があるのか。
 テレビを点けた時にニュース以外の番組がやってた事が、ほとんどないが。
 昨日は、点けたら「シュガシュガルーン」とかいうアニメがやってたな。

 ニュースによると、なんでも八王子の辺りに巨大な円盤が突如出現し、郊外に着陸したそうだ。
 しかし、円盤はその後何も行動を取らず、ただ不気味に沈黙するだけだ。
 円盤は地球外のものである事は、DESHARによって分析済みらしい。
 ふーん、八王子か。
 ここは練馬という所らしいから、かなり遠いな。
 今回はDESHARの奴等に任せて、ワタシは惰眠を貪るとしよう。
 わざわざ行ったところで、たった三分だもんねえ。

 というわけで、私は夕方からの再放送「ロボっ子ビートン」の時間になるまで、ソファーの上で眠る事にした。
 ネンネンって色っぽいよなぁ…などと考えながら、ワタシは深い眠りに落ちていった。

 ぐがーぐがー


『ウルト○マンデェスよ』

 何者かが、ワタシに声をかける。
 ワタシはまだ夢の中だ。
 とすると、これは何者かのテレパシーか。

「誰デス?」

『ワタシは5光年離れたムショク星団ニート星からやって来た、ニート星人だ』
「そのニートが、何の用デス?」

『頼みがある。私は就職試験のため、たった一人でこの星を侵略しなくてはならないのだが、君に邪魔されると困る
のだ』
「なるほど、大変デスな。ぐがー」

『寝ないでくれ! 私は安全が保証されないと円盤から出る事が出来ない。そこで、君に代わりにニンゲンを滅ぼして
もらいたいのだ』
「馬鹿も休み休み言えデス」

『なぜなら私は、700年もの間実家に引き篭もり無職だったのだ。先日両親が死に、財産も食い潰したので、
どうしても働かなければならなくなった。でも、仕事をした経験がないのだ』
「そんな事関係ないデス。ぐがー」

『だから、侵略しようにもやり方がわからないし、外に出るのが怖いのだ。頼むから、私が円盤から出られるように、
君に協力してもらいたいのだ』
「だからなんで、ワタシがそんな事をしてやらなければならないんデス?」

『君は、私の事とこの地球の事、どっちが大切なんだ?!』
「宇宙警備隊の給料の基になるこの地球の方が、見ず知らずのお前なんかより何千兆倍も大切デス」

『なんだと! 信じられない! ボクのパパもママも、みんなボクが一番大切だと言ってくれたのに! 君だけは違う
と言うのか!』
「そういわれても知らんデス。あ、侵略行為するなら、全力で立ち向かうからよろしくなデス」

『そんな事をされたら、ボクが怖い目に遭うじゃないか!』
「その上で、とことんまでにやっつけられるデスけどな」

『冗談じゃない! ボクは帰る! もう就職なんかどーでもいい! 地球なんか嫌いだっ!』
「そーか、それは残念デス。あばよデス」


 目が覚めると、ビートンが始まるのに、まだ二時間もある。
 奴のせいで、予定よりも早く起きてしまったではないか。
 一度目が覚めると、ワタシはなかなか寝直しが利かないのだ。
 どうしてくれる!

 ワタシは激しい怒りを覚え、変身した。


 デュワッ!

 ——ピイィィン!

 ギュウイィィィィィィンンンン!!!! 

 デシュワッ!!!

 ガラガラドシャーン!

「キャアァァァッッ!!」
「タ、タスケテー!!」


 変身した都合で、マンションとその住民が押しつぶされてしまった。
 おのれニート星人、自らは動かずにここまでの大被害を発生させるとは、恐ろしい奴だ。
 益々もって許せん!

 ワタシは、ニート星人の円盤目掛けて飛んだ。


 バカでかいニート星人の円盤は、すぐ見つかった。
 ちょうど、母星に戻るため離陸しようとしているところだ。
 そうは行くか!


 パンコニウム光線!

 ——デジャビイィィィィィィム!!!!

 ドガアァァァァン!!!!


 円盤は、凄まじい爆炎と共に砕け散り、半径3キロ程の範囲を焦土と化した。
 壊す者と護る者とは、よく言ったものだ。


 しかし。
 なんということだろう。
 肝心のニート星人は、それほどの爆発にも関わらず、まったくの無傷だった。
 専用の緊急防御カプセルの中に引き篭もっていたせいで、被害を逃れたのだ。
 半透明のカプセルの中で、ガタガタ震えているのが見える。

 ワタシは、CG合成で口元をニヤリと吊り上げると、そのカプセルを掴み取った。



 その後、ワタシはニート星人を捕らえ、説得した。

 外の世界を恐れてはいけない。
 勇気を出して、目を向けなくてはならない。
 少なくとも君は、働こうとまでは思ったのだから、まだ見込みがある。
 たとえ今はまだ働く勇気がなくても、この地球でじっくりと勉強して、心の強さを補っていけばいい。
 
 ワタシはニート星人に、地球に住むために必要な肉体を教え、一体化させた。
 つまりは、ワタシと同じような状態にしたわけだ。
 もちろん、強制ではない。
 ワタシは今の自分の生き様と生活の様子を語り伝え、彼はそれを羨み、自分の意思で決めたのだ。

 ニンゲンによって保護される対象・ペットショップの躾済み実装石。
 それが、今の彼の姿。
 これなら、彼の望みといくらか合致する筈だ。
 そして、人間と触れ合って、外の世界への偏見をなくしてから、あらためて地球を侵略するのがいいだろう。
 ワタシは、彼の平穏と成長を願い、地球での新たな生活のスタートを見送った。



「テヂャアァァァッッッ!!! テヂャアァァァッッッ!!!」

 前髪を一度に毟り取られ、後ろの髪も剃刀で剃り落とされていく。
 服はすでに切り裂かれて目の前で燃やされ、偽石も取り除かれている。
 実装石にとっては重過ぎるほどの鎖で首を縛られ、薄暗い部屋の水槽の中に落とされる。
 餌は自分の糞のみで、それ以外一切与えられない。
 飼い主の気まぐれで殴られ、蹴られ、傷付けられ、四肢を切断される。
 薬品によって高められたデタラメな回復力は、いたずらに彼の死を引き伸ばすのみ。
 
「テ、テェェェェ……テチャアァァァッッッ!!!」

「なにぃ? デェスのうそつき? かえって酷い目に遭ってしまったではないか、だとぉ? 何訳のわかんねー事
言ってんだこの糞蟲があっ!!」

 実装リンガルに表示された意味不明な文字に怒った飼い主は、脳天に半田ごてを突き立てた。

 ジュ〜〜〜っ…

「テジャアァァァァッッッッッ!!!!!」



 どうやらニート星人の一体化した実装石は、この街で最強と噂されるギャクタイハのニンゲンに買い取られていった
ようだ。
 なんともはや、運のない奴だ。
 せっかく、我が一族伝来の技「ご都合主義光線」を使って、二度と元に戻らなくて済む様に定着させてやったのに。

 もっとも、ギャクタイハに飽きられて公園に捨てられる頃には、彼はきっと今とは比較にならないほどの強さを得て
いることだろう。
 ワタシはそう信じながら、一つ良い事をした気分で、ウキウキと公園を散歩していた。


「あら、可愛い実装石ねぇ。あなた、一人なの?」

 また、アイゴハ愛護派のオーラをバリバリに放った女性が、ワタシに声を掛けてきた。


「ニンゲン、お前は逝き遅れデスか?」

 ワタシからも、質問を投げてみる。
 どうやら、まだ当分住処と食料には困らないようだ。


(気分次第で続く)

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 趣味のドマイナーネタをそこら中にぶらさげまくってますが、無視してやってくださいw

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