君がCNNの記者さんかい?ああ聞いているよ。 私が元実装王「」だよ。 まあ私もとっくの昔に引退してね。 今はここモナコで隠居生活だよ。 あなた達の番組は「まさに外道」として私を報道する事だろう。 いやいや、隠す事は無い。 世間の貧乏人がどう吠えようと私には関係ないからね。 それにゴホゴホ! 失礼、私もあとが無くてね。 ああ、齢90にしてようやくお迎えだよ。 苦しんでまで延命したくは無いからね。実装石じゃああるまいし。 ああ、そういえば10年ばかし前にWHOが根絶指定したんだったね。 流石に人類全体の負担になれば人類はシビアになるものだねえ。 ええっと「人類実装化ウィルス」だっけ? 怖いよねえ、人間が生きたまま実装石になっちゃうんだっけ? まあ、先進国はワクチンを接種するからいいだろうけど、貧困国じゃあねえ・・・・ ? ああ成る程、僕を疑ってるわけだ? 残念ながら僕ではないよ、そもそも私が引退したのは25年も前だ。 その時に権利関係は全て現金化したよ。 メリットが無い。 それに全世界的流行だったろう。 いくらなんでも人類の限界を超えている話だ? ええとどこまで話したっけ?というか始まってもいないねえ。 ははは。 そうだな、私が実装産業から世界的大富豪になった始まりは・・・・・・いつ頃だろう? 私が虐待派のネットワークの存在を知った時からか? 学生時代にクラスの女子が実装に転んでとち狂った時からか? セレブのガキ大将が実装の世話役としてクラスメートをいじめていた頃か? 不思議とそうは思わないな。 始まりはもっともっと昔からだったからかもしれない。 実装石が人類の生活圏に現れた時に既に私の道は定まっていたんだ。 ・ ・ ・ オーバーかな? でもまあ、私がこの道に入ったのは他の虐待セレブとそう違いは無いよ。 実装を溺愛するあまり、対人関係を滅茶苦茶にした愛護セレブ達に踏みにじられたと言うだけさ。 その後もそうした溺愛派と悪い意味で縁があり続けたと言う事だ。 その度に踏みにじられ、痛めつけられた。 私のような「復讐組」の虐待派は容赦が無い上に上昇志向が激しいのはそうした経緯があるからだ。 まあ、転機という意味ではやはり虐待派のネットワークとの出会いだろうね。 ? ああ、若い人にはただのマフィアとしてのイメージが強いだろうね。 だけどそもそもは対愛護派向けの護身としての集団だったんだよ。 虐待派が想像以上に多くて、ニートへの就職支援効果もあったから一気に勢力を拡大したんだ。 強大な政治的発言力を持つまでに至ったのに20年位かかったね。大体2010年頃か。 これが早いか遅いかは君らの判断に任せるよ。 まあそうした組織に早い段階から出会う事ができてね。 一心不乱にその仕事に打ち込んだ。 正直、組織の給料自体は高くなかったが、そのようなところでも私は労働者平均給与を超える給料を貰っていたよ。 大体1000万くらい貯まったころかなあ? 当時ネットワークでは実装産業の雄「ローゼンメイデン社」の買収活動に暗躍していた。 だから内情は嫌と言うほど解っていた。 当然全額ローゼン社株に張った。 下手すりゃインサイダー取引でぱくられていたかもな。 結局は膨大な資金力を持つローゼンメイデン社を支配する事はできなかったが、内部崩壊を誘発する事には成功した。 そう、「愛護系のローゼン社」「虐待系のメイデン社」の分社騒動だ。 株主総会で分社後の資本の取り扱いで揉めた時に、すぐさま「ローゼン社株」変更を申請した。 当時は如何にメイデン社株にするかで揉めていたからな。 わずか1000万分でも驚くほど株を手に入れ影響力を持っていた。 大体50万株くらいかな?10円から20円くらいにまで下がってたし。 結局はご存知の通りだ。 一時的には整理ポストに入ったが、その後は愛護専門用品を原価の100倍近い価格で馬鹿な愛護派に売りつけるというブランド商法並みのやり方で持ち直した。 ああ、当時ローゼン社の役員になっていた私のプランだよ。 おかげで株価は急上昇。 虐待派ネットワークの指令も忠実にこなしていたし、ネットワークの評価も急上昇。 私の口座もパンパンだ。 そして何より愛護派供が襤褸切れの様な実装用ドレスに大金を掛ける姿を見るのは最高だった。 しかし同時に不安もあった、愛護派も頭打ちになるのは読めていたからだ。 当時はインターネットの普及から実装石の実情も漏れるようになった上に、社会には嫌実装の機運が高まっていた。 そこで私は一計を案じた。 架空のスキャンダルをでっち上げて、株の放出ができる状況を作り、相場以上でローゼン社に売りつけた。 ネットワークに売りつけると言う案もあったがここでは現金収入を優先した。 最終的に株とそれまでの役員給与で税金差し引きで20億は手に入った。 この現金を元手に私は自身の事業を始めた。 当時まだ下火だった専業実装駆除業と実装駆除の研究である。 ここで私が行った工夫はセレブ相手の商売であった。 社会的地位から堂々と虐待できない政治家・官僚・メディア等に虐待できる場を提供したのだ。 表向きは「研究発表」の名の元にこちらにいらしていただき、楽しんでいただいた。 これが最高の接待となった。 金を使わず接待ができる為、警察も手が出せず、私の会社は着実に大きくなっていった。 そうして大きくなった会社をまたも相場以上の額で今度はメイデン社に売却し、膨大な個人資産と巨大企業化したメイデン社の役員の地位を得た。 メイデン社は当時には虐待派ネットワークの基幹となっており、ネットワークの裏の地位も得たのだ。 後はローゼン社の再吸収プランや実装関連産業の膨大な利権をマネジメントし、国際企業に成長させていった。 気が付けば私は社長になっていたという感じだね。 そこで付いたあだ名が実装王さ。 そしてまたも売却し、ここでのんびりと暮らしていると言うわけだ。 いやしかし、貧乏と馬鹿は嫌だねえと本当に痛感したよ。 馬鹿な愛護派はあんな生物気取りを相手に高額な商品を無駄に買ってくれるし、自制の聞かない虐待派は駆除用品という名の虐待グッズを注文してくれるし、 大多数の貧民は生活を守る為に駆除用品を大量に買ってくれたわけだ。 結局先を読めない馬鹿は貧乏になり勝ち組の私達に献上してくれるわけだ。 私に言わせれば虐待派も愛護派も一般市民も結局は資本家と公権力者の餌に過ぎなかったわけだ。 どれほど偽善的な言葉を述べても、“私達”はここにいるし“彼ら”はあそこでのたくっている。 結局のところ私は虐待派だが実装石のみならず負け組み専門の虐待派だというわけだ。 ん?私のような者は地獄に落ちるって? 当たり前じゃないか。 実装石が絶滅しいなくなった現世より実装石で満ちているであろう地獄のほうがよっぽどましだ。 私ももう長くは無いが、息を引き取るのが楽しみだよ。 正確には人生の終焉に見る自分自身の一生だね。 まさに笑って死ねる人生だ。 死後の世界があっても怖くはない。 愛護派への復讐、愚かな貧民を翻弄し、虐待派を支配し、富と権力を得た。 こんなに完璧でいいのかとすら思う。 君の報道で多くの人間が私を妬み罵倒するだろう。 それこそが私の最大級の賛美歌だよ。 ? もう取材は終わりかい? 放送と苦情を楽しみにしているよ。 ・ ・ ・ 記者が退室し私の部屋が静かになる。 痛み止めの薬を飲み、パイプに火を点す。 ロッキンチェアに身を沈めて、ゆったりと椅子を揺らす。 なかなか面白い取材だった。 そして私は思索に戻る。 私の虐待派としてのサクセスストーリーを夢見心地で思い返しながら。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−--------------------------------------------- 2週間後 元実装王たる「」は死んだ。 多くの者が金亡者と罵倒し、「奴の葬式には誰も行かない」といったが、予想外に多くの元虐待派(実装石絶滅をもって皆引退)が弔問に訪れた。 訪れた弔問客は皆セレブであり、庶民の声はどこ吹く風であった。 また彼の巨額の遺産は芸術振興、世界遺産の保全をメインに様々な分野に寄付された。 しかしかつて動物愛護の名の下に実装石を保護した動物愛護プランには一銭も寄付されなかったという。 最後まで勝者であった「」は最後まで「」であった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−--------------------------------------------- 地獄の三丁目 「おらーーーーーーーー」 鬼の金棒を振って実装石を追い回す「」 その姿を地獄の鬼達が見つめている。 「人間てのは全く救えないな」 「ああ、魂が無に還るまで実装石と関わり続けると言う地獄をレジャーランドかなんかだと思っていやがる」 「あんな汚らしい生き物によく触れるな」 「俺等も鬼、鬼と言われるけど人間のほうがよっぽど邪悪だよ」 「全く人間って奴には係わり合いになりたくないぜ」 「結局あいつってどのくらい苦しむの?」 「くるしまねえよ、天国に拒否されたってだけで本来地獄行きに成る程じゃあないんだ」 「まあ、実装虐待は別に悪事としてカウントされないからな」 「この世界に在り得ざる存在相手だからな」 「てか実装石って何なの?」 「さあ?」 地獄の鬼達に生暖かい目で見られながら、地獄で実装を追い回す「」 鬼達にすら係わり合いを絶たれるこの男は輪廻の輪に戻るまで地獄の実装石を虐待し続けたと言う。 「デジャアアアアア最後の最後にこんな役デスゥ?助けてほしいデスゥゥ!」 「鬼さん早く助けるデスゥ!」 「ひいいいいいい!蛆ちゃんが!」 そこかしこで上がる悲鳴、 刺され、焼かれ、ちぎられ、食われ、それで尚死ぬことが許されない実装石達。 流石地獄、リンガルが無くても意思の疎通ができる。 「地獄ならば人の迷惑も考慮せずにすむ!ははは!地獄とは地獄だぜ!」 今日もご機嫌な「」 「そりゃ地獄だよそもそも」 「まあ、俺らの仕事やってくれる分いいんだけどね・・・・・」 ここの鬼達は今日も暇暇鬼です。 「あ、そこ隠しアイテムあるよ」 何をやっているんだろうかこの鬼達は・・・・・・・ (機会があれば続く?)
