タイトル:【馬】 変身しても、いいですか?
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3348 レス数:0
初投稿日時:2006/09/26-19:23:05修正日時:2006/09/26-19:23:05
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変身しても、いいですか?



第一話:【パンコン作戦第一号】


 ここは、銀河系第三番惑星。
 「地球」と呼ばれ、過去多くの怪獣や異星人からの侵略行為を受けてきた、本来ならば悲劇に満ちた筈の星。
 しかし、いまだかつて一度たりとも、この星が異星人に占領された事はない。

 なぜか。
 それは、我々一族が守り続けてきたからだ。

 ——私は、光の国・某78星雲からやってきた、宇宙警備隊員。
 この星では、我々は「ウル○ラマン」と呼ばれている。
 かつて何人もの先輩・後輩がこの星を訪れたが、今度は私に番が回ってきた。


 地球・日本。
 そしてここは、東京と呼ばれている主要都市。

 実体を持たない私は、この星の生命体と一心同体とならなければならない。…らしい。
 我が国のベストセラー「正しい地球の降臨の仕方」第38版(初版は検閲により発禁回収)に、そう書いてある。

 しかし、私はここに来るまで、自分なりに色々と考えていた。

 過去、この星を訪れた戦士達は、なぜか皆人間の姿を借りていた。
 確かに、人間はこの星でもっとも繁栄している種族だし、その判断は正しい。
 しかし代償として多くの制約を受け、変身しなければならない時に自由に変身出来ないなど、様々な弊害がある。

 ならば、はじめから制約などない、別な生命体に宿ればいいのだ。

 私は、人間に次ぐ能力を持ち、なおかつ人間に匹敵する繁栄を誇っている生命体を選別した。
 そして今、私は、その繁殖地に降り立った訳だ。


 目の前には、実装石と呼ばれる生命体が居る。
 何があったのかは知らないが、この者は瀕死の重傷を負っており、あとわずかの命。
 赤と緑の目が、せつなそうに私の方を向く。
 私は、この実装石の意識の中に入り込んだ。


『私は、ウルト○マン。君と一心同体となり、地球のために戦いたい』

「デ?(何を言ってるデス? この顔面銀色の無表情サンは?)」

『私が君と一体化することで、君は再び蘇るだろう』

「デスデス?(えっ、おいしい物が一杯食べられるデス?!)」

『共に、地球のために戦おう』

「デスーン♪(おいしい物がいっぱい食べられるなら、よろこんでお前を奴隷にしてやるデース!)」


 快く承諾された私は、早速、この実装石と一体化した。
 身長40センチ程度の位置から見る世界は、とてつもなく広く感じる。
 まあいい、とりあえずは、怪獣や宇宙人の発生・侵入を察知する方法を摸索しなくては。
 デスデスと公園を歩き回り、設備の確認をする。
 ベンチ、時計、水のみ場、遊具、柵、雑木、ダンボール、そして実装石。
 とても有益な情報を得るために必要なものとは思えないが、実装石は人間に次ぐ高い知能を持つ生物の上、
独自の文化形態を持っているという。
 という事は、彼らがこんな場所を選択して住んでいるという事にも、何か深い意味がある筈。
 やむなく私は、手近の実装石をつかまえ、詳しい話を聞く事にした。

「待ちたまえ、そこの君」
「デスッ!? お、お前はさっき…!」
「聞きたい事があるのだが」
「あれだけ痛めつけられて、まだ死んでないなんて、なんつーバケモノデス!!」
「君達実装石が持つ、怪獣出現の情報網を知りたいのだが」
「デェェェス!!! デェェェス!! みんな聞くデスっ!! さっきヌッコロした仔食いの奴が蘇りやがったデェェェス!!」

 デェス?
 そうか、私の名前はデェスというのか。

 “ウルト○マンデェス”

 うむ、悪くない名前だ。
 響きも悪くない。

 私は、地球で初めて出来た友人が付けてくれた名前に、とても満足した。

「デスデス?」
「うわっ! 本当に生き返っているデス!!」
「ワタシ達の子供を勝手に食い漁った、不届きな奴デス!」
「もう一度地獄に送りさってやるデス!」

 私は驚愕した。
 そして、悲しんだ。

 なんという事だろう。私の大切な友人は、同族の子供を食らい行き続けている鬼畜だったようだ。

 これはいけない。
 怪獣の中には、本来その生態が持たない捕食活動を発展させ、その結果異常進化してしまった物も多く居る。
 という事は、この友人も、いずれは同じ道を歩むかもしれない。

 悲しい事だが、友人として今出来る事は。
 まだ友人が実装石であるうちに、その命の火を消してやることだ。
 私は心を鬼にして、友人の魂のために、変身した。


「デュワッ!!」

 眩しい光が全身を包む。
 私は、たちまち身長45メートルの銀色の巨人の姿に変わる。
 スポンサーがないから、いちいち変身アイテムを出さなくていい。
 面倒がなく、実にリーズナブルだ。

「デ、デスゥゥゥッッ!?」
「デスー、デスー」

 足元では、友人と、公園に住む実装石達が私を見上げている。
 私はこっくり頷くと、そっと足を持ち上げ、大切な友人を踏みつける。

「ヘアッッ!!」

 ぷちりっ

 友人と、その周りに居た実装石達は、悲鳴を上げることもなく、その魂を天へと昇らせる。
 さらば友よ。君の事は忘れない。


 ふと気付くと、人々が私の姿を見て騒いでいる。
 おっと、そういえばここでは初変身なのだ。
 役目が終わったから、すぐに戻らなくては。
 私は空高く飛び立とうと両腕を伸ばすが、ふと見ると、背後から大きな破壊音が聞こえてくる。
 振り返ると、どうも人間達の住む街の方から、巨大な黒い影が迫ってくるようだ。
 なんと、たまたまいいタイミングで怪獣が出現していたらしい。

 あれは——怪獣ピザデブン!!

 ピザばかり食べ続けて百年生きた引き篭もりが姿を変えた、東京地方特有の妖怪が原型らしいが、街中に出て
きている時点で引き篭もり失格である。 
 私は、とてもそんな不条理を見逃せなかった。
 時に拳を、時には罰を。
 そんな古い言葉を思い浮かべながら、私はピザデブンに立ち向かう。

「シュワッ!!」

「ブクブクーン」

 怪獣ピザデブンと対峙する。
 三万円ライダーベルトすら着けられなくなった、ウエスト150センチオーバーの腹が波打つ。
 私が早速攻撃を仕掛けようとしたその時、突然、ピザデブンの頭部で爆発が起こった。

 バコーン!

「ブクブクーン!」
「シュワっ?!」

 キイィ———ィン ×2

 戦闘機だ。
 二機の戦闘機が飛来して、ピザデブンを攻撃している。
 なるほど、これが噂に聞く「地球防衛軍」という奴だな。

 後にわかったのだが、彼等は「D・E・S・H・A・R(Destruct Enemies Specialist Host And Rangers)」という防衛チーム
で、通称「デッシャー」と呼ばれているらしい。
 以前の戦士達は、こういう連中の中に所属して活動していたそうだが、そのためにいらぬ制約を受けていたのだ。
 まあ、攻撃はいいが、せいぜい私の邪魔をしないでくれたまえ。
 私が再びピザデブンに向き直ると、超聴力が、戦闘機「デッシャーホーク1号」に乗る隊員達の会話を捕捉した。

『ウルト○マンだ! すげえ!!』
『私達を助けに来てくれたのね!』
『いけーっ、ウルト○マン!!』

 なんだか好き勝手な事を言っている。
 まあいい、それよりこの目障りなデブをとっとと屠殺するとしよう。
 早速、必殺光線「ビリジアニウム・シュプリーム」を叩き込んでやろうとする。

 が、突然。
 胸のカラータイマーが激しく点滅し始めた!

 ピコンピコンピコンピコン♪

「シュワ?!」

『あっ、カラータイマーが!』
『まずい、ウルトラマンはもうエネルギーがないんだ!』

 なんだとえ。
 そんな話、聞いてないぞ。
 第一、観測員の分際で地球に長居したセブ○なんかは、無制限に戦ってたじゃないか(寒い所では死にかけた
そうだが)。
 ええい、くそっ! これではろくに戦えないじゃないか! もうあったま来た!

「ジュワッ!!」

 ジュビイィィィィィム!!!

 十字を組んで狙った敵に、ビリジアニウム・シュプリームがストライクする。

「デップワアアアン」

 ヂュドオォォォン!!!!

 結局何もしなかったピザデブンは、私の光線を受けて、大爆発を起こす。
 周囲のショッピングモールが壊滅的ダメージを受けたが、多分来週までには直っているだろう。
 なんでも地球製のビルや第三艦橋と呼ばれる物は、すぐに自己修復するようになっているらしいから、安心だ。

 私の周りを蝿のようにブンブン飛び回るデッシャーホーク1号と2号を睨みつけると、また、隊員の声が聞こえた。

『すごい光線だ。なんていう技だろう?』
『緑色だったから、“パンコニウム光線”というのはどうだ?』
『いいなそれ!』

 がく。
 ち、ちょっと待て。なんだその名前は!!

『まあ、緑と赤の目のウルト○マンって、実装石みたいだしな。結構合ってるかもしれん』

 え?
 なんだって、今なんて…

 ピコンピコンピコンピコン
 あ、いけね。
 そろそろ戻らないと。

 私は、彼らに色々言いたい事があったが、とりあえず今は我慢して戻る事にした。

「シュワッ!!」 キ——ン

『ウルト○マンが帰っていく』
『さようなら、ウルト○マンデェス!』
 

 私は、いつ君達に名乗ったっけ?




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第二話【侵略者を食え】

 前の公園がなぜかめちゃくちゃに壊滅してしまったため、私は隣町の公園にやって来ていた。
 さすがに腹が減ったので、たまたま近くにあったダンボールハウスにお邪魔すると、そこに住んでいた実装石親子
から、手厚いほどこしを受けた。

「デジャアァァッッ!! お前は誰デス?! 勝手に入るなデス!!」
「テチイィィィ!! ママァー!!!」
「こ、怖い大人テチー!!!」

「ありがとう、遠慮なくいただくよ。バリボリバリ」

「ワタシ達の大事な夕飯を食うなデスーっ!!」

「君達、近所迷惑だ。少し静かにしたまえ」

 バキッ、ベキッ!!

「デギャッ!!」
「ママー!! テェェェン」

 来客に興奮したのか、少しだけ騒がしくなった一家を説得すると、私は用意してもらった施しをすべていただき、
ありがたく部屋で休ませてもらう事にした。

「デジャーッ!! 出て行けデスーっ!! そこはワタシ達の家デスーッ!!」
「テチャアァァァン!! お腹空いたテチー!!」
「お外は寒いテチー!」



 翌日。
 なぜか私に遠慮して、ダンボールハウスの外で休んでいた一家に厚く礼を述べると、私は怪獣を求めて外に
飛び出した。

「ママー、ママー!!! 助けてテチー!!!」
「私の子供に何するデスーッ! あーっ、齧るなデスーッ!!」
「テ…テチ…ママ…」

 ゆっくり休み、朝食もしっかり摂った。昨日の戦闘の疲労は、もう残っていない。
 私は、公園をゆっくり散歩…もといパトロールする。
 すると、入り口近くに、見慣れぬ姿を確認した。

 赤い服にカチューシャ、金髪に青い目。
 そして、手に持っている白いカップ。

 あれは…まさか!

「ナノチャワ?」

 赤い服のソレと、目が合う。
 奴は、極悪侵略宇宙人・ナノチャワ星人!
 人間と一緒に居るようだが、恐らく高度な催眠術で操っているに違いない。
 このままでは、地球が地球が大ピンチ。

「ナノチャワ〜チャワ?」
「ナノチャワ星人、いったいこの星へ何しに来た?!」
「チャワ?」

 ナノチャワ星人に連れられている人間は、不可思議そうな顔でこちらを見ている。
 ええい、のけ人間。君に用はないのだ。
 私は、片手を上げて変身しようとした。
 すると…

『フフフ…さすがはウルト○マン。よく私の正体を見抜いたチャワ』

「やっぱり貴様は!」

『フフフ、私は地球に紅茶を買いに来たナノチャワ星人なのチャワ。
 この地球のダージリンティーを大量に買いつけて我が星に持ち帰り、
 午後のお茶を楽しむのが目的チャワ。
 私の邪魔はさせないチャワ!』

「そんな恐ろしい真似をさせてたまるものか!」

 ジュワッ!!

 私は、迷わず変身した。


 ウル、ト○マン、デェスだ!


 ウルト○マンデェスだ!!


 ビルを壊すぞ地響き立てて。


「デシュワッ!」

 変身した私に反応して、ナノチャワ星人も巨大化する。
 公園もあの人間も、すでに二人の足の下だが、多少の犠牲はやむをえない。
 
「ナノチャワワ〜〜」
「デシュワッ!!」

 問答無用!
 私は、とっととパンコニウム光線を発射した。
 だって時間がないんだもん。

 しかし!

「ナノッナノッナノッナノッ」
「チャワッチャワッチャワッ」

「デシュワッ?!」

 ナノチャワ星人は分身した。
 何十体ものナノチャワ星人が私の周りを取り囲み、不気味に笑う。
 いったいどうすれば…

 キィィィ——ン

 やばい、あのうっとうしいDESHARの蝿が来た。

 デピョンデピョンデピョンデピョンデピョンデピョン

 と、同時に、カラータイマーが点滅を始める。
 うわ早っ!

 やむをえない、私は最後の手段に出た。

 ひょいっ

「ナノッナノッナノッナノッ……チャワワッ?!?!」

 ズ、ド、ドオォォォン!!!

 私は、ナノチャワ星人の分身が作り出した輪の中に、足を差し出した。
 案の定、ナノチャワ星人は足を引っ掛けてスッ転ぶ。
 ふふふ、オロカモノメ。

 倒れてあがく極悪宇宙人に、怒りのパンコニウム光線を叩き込む!

 デジャビイィィィィィム!!!
 
「な、ナノチャワワワ〜!!!」


 ズドボオォォォォン!!!


 轟音を立てて、ナノチャワ星人は爆発炎上した。
 その爆風は、公園のみならず、周囲の住宅街や町並みをすべてなぎ払い、多くの被害を出した。

 私の心は、引き裂かれんばかりの怒りに包まれる。


 ヒイィィィン、ヒイイィィン

 怪音が空中に鳴り響く。
 どうやら、透明化していたナノチャワ星人の円盤のようだ。
 おのれ、貴様等さえ地球にこなければ、こんな多くの犠牲が出る事はなかったのだ!

「デシュワッ!!」

 私は空高く飛び上がり、ナノチャワ星人の円盤をガッチリ掴むと、そのまま遠くの彼方へ飛び去った。



 その晩は、雨が降った。

 生憎今夜は手頃なダンボールハウスが見つからなかったが、公衆トイレと呼ばれる所で雨風を避けられた。
 幸い、夕食にも恵まれた。
 野生の実装石は、食事の確保に難儀すると言われている。
 そう考えると、私はまだ遙かに恵まれているといえるだろう。

 私は、自分の幸運に感謝し、ありがたく、今夜の食事に舌鼓を打つことにした。

「ナノチャワ〜ギャッ!!」
「チャワ〜! チャワ〜!」
「チャワワ…ギャフッ」

 クッチャクッチャ…ゴクン


 活きの良さと、微かな紅茶の風味が嬉しい。
 半透明の容器の中にぎっしり詰まったナノチャワ星人(二十億三千万匹)は、私の腹を三日間も持たせてくれた。


(続く……のか?!)

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