秋、真っ盛り。 実装石向けに作られた会員制の自然公園は、飼い実装とその飼い主で賑わっていた。 「デッスデッス!」 「テスー!」 「テッチ!」 仔実装二匹の親であるエンも、飼い主に連れられてやって来た飼い実装だ。 普段見慣れた都会の光景と違う、自然に満ちた秋の美しい光景。 馬鹿な安物飼い実装や無教養な糞蟲では理解出来ないが、エン達にはこの自然の美しさが理解できた。 しかしやはり、実装も生き物。少し日が沈みかけた頃、エンの仔達はお腹からグーグーと食事を催促する音が出ていた。 「ママー。お腹空いたテスー」 「ゴシュジンさまー。ゴハンくださいテチュ」 そんな仔達を見て少し笑った飼い主は、エン親子を連れてキノコ狩りのエリアまで移動する。 そこには立派なキノコが沢山。おいしそうなキノコを前に、仔達もついつい涎をたらしてしまう。 飼い主が見守る中、エン親子は楽しくキノコを採集し、用意していたあみかごはキノコで溢れかえっていた。 それを備え付けの七輪で焼く飼い主。漂う香ばしい匂いで心のウキウキを留められない仔達は陽気に歌う。 適度に焼き上がり、スダチをかけて完成。それを親子に振舞う。 「うまうまテッチュ〜ン♪」 「口の中が秋の大豊作テス〜♪」 「美味しいデスゥ♪ご主人さま、ありがとうデスゥン!」 喜ぶ親子を見て飼い主は、「あぁ、連れてきて良かったなあ」と感謝される事に喜ぶ。 また来年、もみじが舞う頃にはもう一度ここへ来よう。そう思う飼い主だった。 自然公園は既に開園時間を終了し、エン達だけでなく全ての来客は、この自然公園に居ない。 月が綺麗な真夜中。この自然公園の従業員である従業石こと実装石のロクと実蒼石のソウが公園の手入れを行っていた。 ロクは山実装ではない普通の実装石だが、山実装に負けない自然生活の知識を持った実装石。 ソウは厳しい調教が施された、実装石が本能で警戒しない実蒼石。ロクとは付き合いが長いので、まるで家族のように仲が良い。 そんな二匹は雑草の刈り取りを終え、キノコ狩りエリアにやってきた。 実装用スコップを持ったソウがキノコの生えてあった場所の土を掘り起こすと、奇妙な物体がそこにはあった。 首から下が木のようになった禿裸実装。そして股間には根元から抜き取られたようなマラの痕跡。 この奇妙なマラ実装の顔を見つめるロク。 「これなら、まだ一週間くらいは持つデスね」 そういってロクはマラ実装の口に専用の栄養剤を流し込む、口に含んでいた土ごと強引に飲まされたマラ実装は目がぎょろりと動く。 ここにきて、ようやく生気のある動きをした。ロクやソウを見つめると助けを求めた。 「デェ・・・ワダジガワルガッダデス、ダズゲデズァ」 赤緑の涙を流している。何かを仕出かしたのだろうが、謝罪の言葉は本心から出ているのがわかる。 しかし、ロクとソウは表情を変えずにこう言った。 「駄目デス。アナタは外の世界で沢山の同属を自分の好き勝手に喰い殺してきたデス。謝って許される物じゃないデス」 「まったくその通りだよ。だからキミはここでキノコの苗床として『食べられる側』になってもらわないとね」 「コノママジャ、死ンジャウデス!」 「死んだら良いデス。人間さんが言ってたデス。死んだらエンマ様っていう怖い神様が、悪い実装石を地獄に落としてくれるデス」 「そうなったら、きっと今より酷い目に会うんだろうね。だからせいぜい、今のうちに短い実生を味わった方が良いよ」 そう言って、ソウは掘り返した土を再び埋める。苗床のマラ実装は何か言いかけていたが、口の中が土だらけになると静かになった。 ロクとソウは、仕事を続ける。まだまだ手入れをしなければならない苗床は沢山あるから。 「デスタケ」と言うキノコが存在する。笠は小さいが立派にそそり立ち、味は焼いて食べると松茸と少し似た味で美味い。 しかし、このキノコは人間からの評判が今ひとつよろしくない。 それもそうだ、デスタケはマラ実装を苗床として育つ。厳密に言えば、植物化したマラ実装のマラだからだ。 味は実装石の肉と全く違う物になっていて、知らずに食べれば美味しいかも知れないが、流石に元マラを食べる事には抵抗がある。 だから、デスタケは味のわりに人気が低く主に人間以外が食べる為に栽培されている。 この自然公園では、都会で保健所に回収されたマラ実装を苗床とし、それをデスタケ栽培に使ってキノコ狩りを行っていた。 マラ実装など、どんな境遇であろうとも殆どは本能のままに犯し喰らう罪深い存在。どんな死に方をしようと、誰も悲しまない。 ロクとソウが苗床の手入れを終えて自室で眠りに付こうとする頃には、空が少し明るくなり始めていた。 太陽が真上に昇る頃には起きて仕事だ。休める時間は短いので、二匹とも早々に眠る。 仕事は辛いが喜んでくれる人間や実装の顔を見るのが大好きな二匹は、この仕事に誇りを持っていた。 そして日が昇り、今日も自然公園にはキノコ狩りを楽しむ飼い実装親子が訪れる。 「秋の味覚。松茸デスゥ♪」 それを聞いて、「それは松茸じゃないんだけどなぁ」と思ったが、せっかく喜んでいるんだ。あえて水を差すようなマネはよそう。 微笑みつつ、そう思ったロクとソウだった。 ---------------------------------------------------------------------------------------------- スーパーに松茸が並び始めたんで、鼻無し氏が描いた松茸絵を思い出してこんなスクを書いてみました。
