タイトル:【虐】 閉じた世界
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:8251 レス数:1
初投稿日時:2006/09/22-19:54:57修正日時:2006/09/22-19:54:57
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爽やかな朝。草原を薙いできた風が窓から突き抜ける。
俺は朝の挨拶をすると秋美さんの淹れてくれたコーヒーを飲む。
ここに来て1036杯目のコーヒーだ。
少し古めのトースターが俺好みに焦がしたパンを焼いてくれる。

「今日の朝食も美味しいです」

50代前半の女性が笑顔を浮かべて俺にいつも通りの言葉をかける。

「焼いただけのパンに大げさですよ坊ちゃん」

朝食を食べ終えると薬の時間だ。
パキシル、レキソタン、コンスタンの錠剤。アモキサン30㎎カプセル。
それぞれの向精神薬を一粒ずつ取り出すと、秋美さんが持ってきてくれた水で一気に飲み干す。
コンスタンは苦い。コーヒーと違って嫌らしい苦みがする。
今日のは特に苦く感じる。向鬱作用が出る前に鬱々とした気分になる。

こういう日は、外に出て遊ぶに限る。


           「閉じた世界」


俺は鉄パイプと沢山の道具が入ったリュックを持つと、外に出た。
秋美さんがそわそわしている。秋美さんは俺の趣味をあまり快く思っていないみたいだ。
でもいいんだ。誰かに理解してもらいたいとも思わない。
フェンスの扉を鍵で開け、囲いの中に入る。

山の上に立つ一軒家。そのそばにはフェンスで囲まれた広い囲い。
勿論誰もがただの牧場だと思うだろう。しかし、違う。
俺は足音を殺して追いかけっこをしている緑色の生き物へ近づく。

「お姉ちゃん、待ってテチー」
「早くワタチに追いつくテチ♪ 遅いと置いていくテチ」

俺は実装リンガルのスイッチを入れると二匹に話しかける。

「よぉ。鬼ごっこか? 俺も混ぜてくれよ」
「テ テテ テ…」
「テッチャァァァァー!!」

腰を抜かした妹仔実装石に鉄パイプで一撃を加えると、あっさりと頭が吹き飛んでしまう。
もっと苦しめて殺したかったのに、残念。
逃げていた姉仔実装石が戻ってきて、妹の死体を揺さぶる。

「逃げるテチ! アクマが来たテチ! 早く起きるテチ!」

無駄だ。もう死んでるよ。
俺は今度こそ殺さないように、足下を狙って鉄パイプを斜めに振り下ろす。

     ヒュン  ガッ

「テチ……?」

姉仔実装石が地面と鉄パイプが同化した下半身を不思議そうに見ている。

「あっはっは。気付けよ。両脚ミンチになってるじゃねーか」
「テ、テチャアアアアアァァァッ!!」

痛みが今頃伝わってきたのか、姉仔実装石の悲鳴がフェンスに囲まれた草原に響き渡る。
そう、ここは実装石の牧場であると同時に、俺一人だけが使う狩猟場なのだ。
悲鳴が狩りの始まりの合図。徐々に、周りから実装石の動揺の声が聞こえてくる。
そうだ。糞蟲は糞蟲らしく俺から逃げ回れ。悲鳴を上げ、怯え、命乞いをしろ。
俺は次の獲物を探して草原を走る。

…見つけた。親子で震えてやがる。

「デヒィ!?」「テチャー!」「テチ? 何テチ?」「ニンゲンさんレチ」「レフー」

1、2、3…蛆と親指も含めて5匹。いや、親実装の後ろにもう一匹仔実装が隠れている。

「ワ、ワタシを殺すデスゥ! その代わり、この子達は見逃して欲しいデス!」
「ママ、ワタシが身代わりになるテチー!!」

おうおう。涙ぐましい親子愛だねぇ。

「親を生かして、娘たちを皆殺しにするか、娘たちの前で、親をぶち殺すか。迷うなー」
「ワタシデスゥ! この子達には未来があるデス!
 ワタシを殺して、娘は見逃して欲しいデズゥ!!」
「ママー」「ワタチを好きにしていいから、みんなを見逃すテチ」
「ニンゲンさん、危ないもの持ってるレチ?」「お腹ぷにぷにしてほしいレフ」

あーあーあーあー。全員好き勝手言ってくれちゃって。頭にくる。
手当たり次第けってーい。
まずは危機感の無い親指実装と、その手の中で蠢いてる蛆実装を鉄パイプで叩き潰す。

「デッジャアアアァ!?」
「テチィィィ……っ」
「テッチャー! ワタチの妹がー!」

鳴き声がうるせぇ親実装の右半身をミンチにしてやろう。

   ヒュン びちゃ

「デビャ!!」

おっと、ちょっと予定より多目に挽き潰しちまったかな。
いしきもーろー。偽石が無事だっただけ感謝してほしいくらいだ。

「デ…ズゥ……何でこんなことをするデス…?」
「俺が楽しいからに決まってるだろ」

そうだ。少なくとも、このフェンスの中の命は俺が好きにしていい。
生殺与奪の権利は、全て俺が握っているのだ。
そうだ、この中では俺が王だ。俺が神だ。俺が全てを決めて構わないんだ。

壊れたように叫び声を上げる仔実装の顎を鉄パイプの先で突き上げる。
脳漿と血を辺りにぶち撒け、仔実装は倒れた。気分爽快、脳内麻薬全開だ。

「テッチャァァー!! テェ……テ、テチィ♪」

もう一匹引きつった顔で媚びをする仔実装を三連打で赤緑の染みに変える。
ぐちゃぐちゃとした手応えはコイツらが生きた証だ。
生きてる。生きてた。殺した。俺が殺してやった。
俺は少しだけ満足した。

「んー。何かお前ら飽きた。まだ生きてる親とその後ろに隠れてる仔実装。
 お前ら二匹だけは見逃してやる。せいぜい次までに数を増やしてろよ」

呻き声を上げる親実装とパンコンして親の陰から俺を見ている仔実装を
その場に捨て置いて俺は次の獲物を探す。
楽しい。底抜けに楽しい。俺って本当に鬱病だっけ?
ひょっとしたら、本当は躁病なのかも知れない。躁病って何だっけ?
確か前にもネットで調べようと決めてた。
だが、PCの前に座ると何故か穴が開いたかのように忘れてしまう。
俺はおかしいのだろうか。いや、自分の正気を疑ってはいけない。
俺は頭の芯が痺れるほど頭を前後左右に振った。自分がおかしいと確信したら終わりだ。
頭を振ったままでいいや。このまま他の実装石を探そう。

ブレた視界でも逃げる物体くらいは捉えられる。
その中の一匹が俺の前に飛び出してくる。実装一匹、地獄へご案内。

「もう止めてくださいデスゥ!!」

俺の鉄パイプが寸前で止まる。実装石の耳には赤いリボンがついている。
そうだ、確かコイツ…名前はビビアンだったかな? ビビアンには全体の統制を任せてるんだった。
耳についてるリボンは俺がつけてやった。
リボンの結び方なんか知らないから、耳に鳩目で穴を開けて安全ピンでつけてやったんだった。
俺はこの実装石を気に入っている。顔が綺麗な左右対称の卵形をしている。
俺は、昔から卵が好きだ。

「何だ? 文句をつけるなら殺す」
「最近は殺しすぎデス! 子供も親も無関係に殺しすぎて、群れの数が減っているデス!」
「そのためにフェンスの中に花畑と水場を作ってやってるんだろう。殺す」
「それでも追いつかないデスゥ! バランスが崩れてしまうデス!!」
「それじゃあ後で秋美さんに頼んで餌の何%かにマラ実装の肉を混ぜてやる。殺す」
「最近は妊娠中の親でも殺してるデス! 無理な妊娠で親指実装や蛆実装が増えてるデス!」
「五月蠅い。だったら親指と蛆だけ殺せばいいんだろう。殺す」

気がつくと俺はビビアンを素手で殴りつけていた。
左頬が陥没する。あはははは。面白い。卵が割れてしまった。
ガスガスガス。俺は適当にビビアンの顔を殴りつける。
完璧なシンメトリーだったビビアンの顔が前衛芸術のようにいびつになってしまった。
俺は、卵も好きだがピカソも好きだ。

「親指と蛆……親指と蛆…」

俺の口から呪詛のように言葉が漏れる。俺自身の耳に届かないのが不思議だ。
ひょっとしたら俺はもう狂って……いや、考えるな!
俺は首の骨が折れそうなくらい頭のシェイクを強めた。

実装石の集団から親指実装と蛆実装を探す。
成体、成体、仔、マラ、仔、仔、成体、仔、妊娠、成体、仔、仔、仔、マラ、妊娠した仔、成体、妊娠……
逃げまどう実装石の集団。
その中に明らかに足が遅い個体を見つけた。

「見ィつけたァ♪」
「レチィ!?」
「何でこう、親指と蛆ってのはセットなのかねぇ。不思議だねぇ。
 おまけに仲がいいことが多いんだよ。不思議だねぇ。気になるねぇ」
「レフー?」

俺はリュックからシャープペンの芯を取り出す。
逃げる親指の左足にシャープペンの芯を突き刺す。

    クチュ

「レッチャーー!!」
「あはははは。ネバっとした音がしたぜ。あははははははははははは」

こけた親指実装が抱えていた蛆実装が地面に投げ出される。

「痛いレフー お姉ちゃんどこレフー?」
「そこで寝てるよー蛆ちゃん。君にもお揃いのアクセサリーをあげよう」

蛆実装の尻尾の先端を狙ってシャープペンの芯……ああ、長い! 長いんだよ!!
もういい。シャー芯。シャー芯でいい。シャー芯を蛆の尻尾に地面ごと刺し、動けないようにする。

「痛いレフー! 何かがかみついたレフ」
「噛んでるんじゃねーよ。刺さってるんだよ蛆ちゃん?」
「う、蛆チャンに手を出すなレチ! ワタチが相手になるレチィ!」

ははは。おもしれー。親指が相手になるだって。俺の。俺の相手になるだって。
面白れー超面白れーあははははははは、あっはっははっはっっはははっははっはははは。
ゲラゲラと笑う俺を見て怯える親指と、痛みも忘れてハテナマークを出す蛆。

それから二匹が動かなくなるまでシャー芯を刺してやった。
親指は13本、蛆は4本刺された時点で死んだ。弱ぇ。またゲラゲラと笑い出す俺。
『蛆チャンはワタチが守るレチ』とか『お姉ちゃんにひどいことしないでレフー』とか、
俺の嗜虐心を満足させるには十分過ぎるくらいに踊ってくれた。さいこー。

腕時計を見ると、昼頃を指していた。どうやら2、3時間笑っていたらしい。
笑いすぎて頭と喉が痛かった。憂鬱になる。どうして俺はこうなんだろう。
自分より弱い実装石を虐殺しなければ悦ばない心。
俺は鬱々とした気分で、糞蟲の血がこびり付いた鉄パイプを引きずりながら家に戻った。


「まぁまぁ。血で汚れちゃってるじゃないですか坊ちゃん」
「すいません秋美さん。臭いますか? すぐにシャワーを浴びます」
「それじゃあ、すぐに着替えを準備しますね」

俺の趣味を秋美さんはどう思っているんだろう。
実装石の虐待も変わった趣味として受け入れてくれる若い人ならいざ知らず、
母親とほぼ同年代の秋美さんはきっと俺のことを狂人と思っているに違いない。
俺の心はどこまでも沈んでいく。シャワーを浴びながら、俺は泣いた。




痛いデスゥ……顔が、割れるように痛いデス…
水場で顔を洗うと、とても染みるデス…
水面に映ったワタシの顔は、とても醜いデス……
でも、恥ずかしがっている場合じゃないデス。この程度、夜には治ってるデス。
親を殺された子の精神のケアもワタシの仕事デスゥ。
早く、血の臭いを辿っていかないといけないデス。

! 見つけたデス! 仔実装デス!
多分、一昨日親を殺された姉妹デスゥ……今日は、妹を殺されたデス…
下半身が再生途中の姉が妹の死体を揺すっている姿は、どうしても涙が溢れるデス……

「…大丈夫デスゥ?」
「おばちゃん……妹が、起きないテチ…ワタチの足も、動かないテチ……」

いけないデス…このままじゃ偽石が壊れてしまうデスゥ……

「もう嫌テチ……毎日、あのアクマから逃げまわって、
 殺されて、殺されて、きっとワタチも殺されるテチ…
 早くワタチもママや妹のところへ行きたいテチ…」
「そんなこと言うものじゃないデス。
 殺された家族の分までワタシたちは生きなくちゃいけないデスゥ。
 さ、おばちゃんがお歌を歌ってあげるデス。今は眠って、早く足が治るようにするデス」

ワタシは胸一杯に息を吸い込んだデス。喉まで潰されていなければ歌えるデス……

  デッデロゲー♪ (明けない夜があるものか)
  デッデロデロゲー♪ (開かない扉があるものか)
  デロデロゲー♪ (100回家を失っても)
  デデデロデロゲー デッデロゲー♪ (101件目の家を建て 幸せを向かえよう)

「おばちゃん。この歌は何テチ?」
「幸せの歌デス。ワタシたちがここへ運び込まれてから作った歌デス。
 歴史は浅いデス……けれど、ママやママのママ、その前から歌われている歌デスゥ。
 おばちゃんが眠るまで歌ってあげるデス。今は、足が治るまで大人しくしているデス」
「わかったテチ。おばちゃん、おやすみなさいテチ」


2回目の歌を歌い終わったあたりで、この子はワタシの腕の中で眠りについたデスゥ。
幸せの歌は、胎教の歌でもあるデス。ママの夢を見て、今は幸せの世界を想うデス……

ここには何もかもがあるデス。豊富な餌に、広い水場。子供たちが遊び回っても十分に足りる広大な草原デス。
定期的にダンボールや暖かい毛布ももらえるデス。でも、ここには希望が無いのデスゥ……
あの悪魔が……毎日ワタシたちを殺し回る限り…ここは、閉ざされた地獄なのデス…
顔を潰されたワタシ。足を潰されたこの子。今は、幸せの歌を歌うデス。
いつか必ず来る、あのアクマがやってこない朝を信じるのデス……




今日は昼から夜まで、俺はインターネットをして時間を潰す。
匿名の世界。誰もが他人で、誰も俺の姿を見ることが出来ない。
俺一人で盛り上がることも出来る、自由な世界。
あはははははは。最高だ。脳の中心が熱くなるような感覚。
俺はバーボン、『フォアローゼン』でパキシルとアモキサンを流し込む。
生温い酒を瓶から直接飲むと、強いアルコールが干しぶどうのように萎縮した脳に
ずぶずぶと穴をあけていく。俺は酔いと勢いに任せてネットの海を泳ぎ回る。

ふいに、ジリリリリと目覚まし時計が泣き喚く。
もう12時だ。眠る時間。バーボンでレボトミンとメイラックスを飲み込むと、
ベッドに倒れ込んだ。すぐに眠気が霧もやのように意識を包み込む。
昼間にネットで何かを調べようとしていたことをギリギリで思い出すと、
俺の意識は深い眠りの底へ沈んでいった。




爽やかな朝。草原を薙いできた風が窓から突き抜ける。
俺は朝の挨拶をすると秋美さんの淹れてくれたコーヒーを飲む。
ここに来て1037杯目のコーヒーだ。
少し古めのトースターが俺好みに焦がしたパンを焼いてくれる。

「今日の朝食も美味しいです」

50代前半の女性が笑顔を浮かべて俺にいつも通りの言葉をかける。

「焼いただけのパンに大げさですよ坊ちゃん」

朝食を食べ終えると薬の時間だ。
パキシル、レキソタン、コンスタンの錠剤。アモキサン30㎎カプセル。
本当にこの薬が効いているのか、この薬の飲み合わせが正しいのかはわからない。
最後に精神科へ行ったのはもう4年近く前だ。今は薬を直接送ってもらっている。
俺は鬱病の治療のためにカネモチの親父が所有している山に家を建ててもらい、
そこにお手伝いさんの秋美さんと住んでいる。
だが、本当に俺は鬱病なのだろうか?
本当は俺はただの気違いで、この家で実装石を殺しながら一生を終えるのではないだろうか?

朝から鬱々とした気分になる。こういう日は、外に出て遊ぶに限る。


俺は鉄パイプと沢山の道具が入ったリュックを持つと、外に出た。
秋美さんは……言うまでもなくそわそわしている。
俺とこの家に来て3年近くになり、
実装石どもの餌やりや細かい飼育を行っているのにいつまでも慣れないのだろうか。
それとも、3年近く住んでいるというのはただの勘違いで、俺は既に狂って……
いや、自分の正気を疑ってはいけない。
俺は自分の頭を何度か強く壁にぶつけると、そのままの足で実装石の牧場へ入った。


いつものように手近な実装石を鉄パイプで殴り殺すと、他の実装石の悲鳴が牧場に響き渡る。
さぁ、狩りの時間だ。お前らの命で俺の鬱々とした気分を吹き飛ばしてくれ。
太めの成体実装を見つけた。が、両目はオッドアイのまま。つまり妊娠ではなくただの肥満だ。

「オイオイ。もっと運動してキビキビ動き回れるようになろうぜぇ」
「デピイィィィ…!」

俺はリュックからホッチキスを取り出すと肉を掴み、ホッチキスを全身に噛ませる。
パチン。パチンパチンパチン。

「デッピャアァァ! デプゥ!! デプァ!!」

何だよコレ、笑わせてくれる。鳴き声まで太りすぎで変わっちまってるじゃねぇか。
デプゥなんて悲鳴、初めて聞いたぜ。はは。あはは。ぷっくくははははははははぁッ。
壊れた玩具のように笑いながら俺は、
ひずんだ悲鳴を上げて太い手足をじたばたと動かす豚実装の肉をホッチキスに噛ませていく。
パチン。パチン。パチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチン……

「デ……プ…ァ…」
「あーあー。たったこれだけで気絶しやがって」

体は太いのに神経は細いヤツだ。ぷ。あはははは、げははははははははは。
笑わせてもらった礼に両瞼をホッチキスで念入りに留めておいてやろう。
気付くと、足下に一匹の年若い成体実装石が来て糞で汚れたパンツを脱いでいる。

「殺すより、楽しんだほうがいいデッスゥーン。
 ワタシと一発ヤらせてやるからその武器をしまって気持ちよくなるデッスゥ」
「あのな。俺はな」
「デデ?」

股を開いて媚びてくる実装石の総排泄孔から腰辺りを鉄パイプで叩き潰す。

「……不能なんだよ。パキシルの副作用でな」
「デッギャアアアァァァ!!」

耕すように鉄パイプを何度も振り下ろす。鬱々とした気分が全身を気怠くしていった。

「ネットじゃラムネ同然とか言われてるけどよ……」

  ガッ ゴッ ぐちゃ

「性欲がなくなるとか、色々副作用もあるけどな……」

  ガッ ぶちゅ くちゃ

「それでも、パキシルを飲んだ後の全身から湧き出る気力は俺の生きる糧なんだよ……」

  ガッ ぐちゅ ぐちゃり

気が付くと股を開いた実装石がいた場所は体液の染みと地面が混ざった汚らしい土塊になっていた。
記憶が薄い。殺した実感も無い。俺はまた激しく頭をシェイクし始めた。

俺は狂ってない俺はくるってないおれはくるってないおれはおれはおれは……

「こっちを見るデスバカニンゲン!」

俺は正直にそっちを見た。考え事を邪魔された怒りも、多少あった。
マラ実装がこっちに向かって色素欠乏症のウナギのようなペニスを振り回している。

「悪逆非道を尽くすアクマを倒せば、ここのメスは全部ワタシのものデスゥ!」
「……お前…デカいチンポ持ってるな……」
「デス? そんな本当のことを言われても照れるデッスゥ♪」

ペニスを踏みつけるとリュックからカッターナイフを取り出す。

「デジャァ!? な、何をするデス……」

脂汗を流すマラ実装。だが、俺の意識は既に過去に飛んでいた。
長大なペニスにカッターの刃を立てる。

「デギャアアアアァ!!」
「……昔な…兄貴と一緒に風呂に入った時……」

ギチギチとペニスにカッターの刃を切り入れていく。
切れ味がいまいち良くないのか、肉を切り潰すように刃が進む。

「デッジャァァァッ!! デヒィ! デピャアアァァァー!!」
「…チンポのデカさで負けてたんだ……それが結構コンプレックスでよ…」

中心までカッターの刃が進む頃には、マラ実装は泡を吹いていた。

「デヒィ……」
「……兄貴は国公立の医学部卒……俺は三流私大を二年で中退……」

ようやく切り取った時にはマラ実装は気絶していた。

「デ………ズ……」
「なぁ。何でだ。何で同じ血を持ってる兄弟なのにこんなに差があると思う?」

ペニスを切り取られる凄絶な痛みで既に気絶しているマラ実装から答えは得られなかった。
クソ、使えねぇ。痙攣してるマラ無し元マラ実装を蹴り転がす。

「もう止めてくださいデスゥ!!」

俺の目の前に成体実装石が飛び出てくる。実装石の耳には赤いリボンがついている。
そうだ、確かコイツ…名前はビビアンだったかな? ビビアンには全体の統制を任せてるんだった。
耳についてるリボンは俺がつけてやった。
リボンの結び方なんか知らないから、耳に鳩目で穴を開けて安全ピンでつけてやったんだった。
俺はこの実装石を気に入っている。顔が綺麗な左右対称の卵形をしている。
俺は、昔から卵が好きだ。

「何だ? 文句をつけるなら殺す」
「その実装石たちは最近成体になったばかりデス! これから初めて家族を作る、未来を担う実装石なのデス!!」
「そのためにフェンスの中に花畑と水場を作ってやってるんだろう。殺す」
「殺してしまっては元も子も無いのデス! 仔実装が生まれなくなったら困るのはあなたデスゥ!」
「それじゃあ後で秋美さんに頼んで餌の何%かにマラ実装の肉を混ぜてやる。殺す」
「そんな無茶な方法じゃ仔実装まで妊娠するデス! 無理な妊娠で親指実装や蛆実装が増えるデス!」
「五月蠅い。だったら親指と蛆だけ殺せばいいんだろう。殺す」

気がつくと俺はビビアンを素手で殴りつけていた。
右頬が陥没する。あはははは。面白い。卵が割れてしまった。
ボコボコボコ。俺は適当にビビアンの顔を殴りつける。
完璧なシンメトリーだったビビアンの顔が腐った南洋果実のようにデコボコになってしまった。
俺は、卵も好きだがマンゴーも好きだ。


ふと、俺は既視感を覚えた。昨日も同じ場面を見た気がする。
ひょっとしたら一昨日も? その前も? 何年も繰り返しているのか?
いや、そんなはずは無い。俺はただの鬱病で、記憶が飛ぶような狂人ではないはずだ。
痛みとショックで気絶したビビアンを鉄パイプで転がすと、俺は頭を円を描くように振り始めた。
よくあることだ。こういうのをデジャヴというんだ。デジャヴって何だっけ?
帰ったらネットで調べてみよう。しかしきっとPCの前に座る頃には忘れている。
これも繰り返している……?

フッと地面が消え、どこまでも落ちそうな気がする。
おかしくなる。俺はこのままだとおかしくなってしまう。
俺は声の限りに叫び声を上げた。だが、俺の耳に俺の声は聞こえない。
唇を強く噛む。だが、血の味がしない。
怖い。怖い。俺の中の何かが死んでいくのが恐ろしい。
俺は叫びながら滅茶苦茶に鉄パイプを振り回した。
地面と逃げまどう実装石をグチャグチャにしながら俺は走る。走る。走る。

「デヒイィィィ!?」
「デピャッ!」
「テチ? テッチャー! アクマが来たテチー!」
「デヒ デヒィ ワタシの腰から下はどこデスゥ?」
「レフ…っ」「蛆チャン…? 蛆チャァァァァン!!」
「た、助けデピッ」
「デェェェン! デェェェン!」
「ワダジのごどもが死んだデズゥ…」
「テチャプ」


「はぁ はぁ はぁ…」

気が付くと服が血だらけの泥まみれだった。
また秋美さんに世話をかける。
しかし、もう大丈夫だ。狂気の淵から戻ってこれた。
実装石の命を浪費して、俺は俺自身の狂気を鎮める。これは儀式なのだ。
死んでいった実装石の断末魔が頭の中で反響している。こればかりは仕方がない。
俺は鬱々とした気分で、糞蟲の血がこびり付いた鉄パイプを引きずりながら家に戻った。


帰り着くと、家の前に黒塗りの車が停まっている。
親父と秋美さんが何か話をしているようだった。
親父の顔を見るのは久しぶりだ。気が利いた言葉を考えたが、何も浮かんでこない。

「久しぶりだな」
「坊ちゃん……ごめんなさい…」

二人の表情を見て、俺は何もかもが終わったことに気付いた。終わり。終わった。お終い。ジ・エンド。

「こういう時は……黄色い救急車が迎えに来るんじゃなかったのかよ…」

俺はリュックと鉄パイプを投げ捨てると、発作的にその場から逃げ出そうとする。
しかし黒塗りの車から飛び出してきた二人組の男にあっという間に地面に押さえ付けられてしまった。
苦い。土の味。どこか、コンスタンの味にも似ていた。

「何だよ……」

俺は押さえ付けられたまま絶叫する。

「ごめんなさいって何ですか秋美さん!
 何を謝っているんです!? 俺を裏切ったんですか!!」
「ごめんなさい……ごめんなさい…坊ちゃん…」
「全て私が秋美さんに頼んだことだ。お前の生活を成り立たせると同時に、
 お前の日々の生活や言動を逐一報告してもらっていたんだ。
 私はずっとお前を陰から見ていたんだ。お前の精神も生活も荒廃しきってる。
 お前は限界だ。さあ、父さんと一緒に来い。新しい場所でやり直そう」
「嘘をつくなああぁぁぁぁぁ!! 精神病院に閉じこめる気だろうがぁぁぁ!!」

暴れる。暴れる。力の限り暴れる。
後ろ手に押さえ付けられた両腕が軋み、首から提げた実装リンガルが壊れた。
壊れたリンガルの中に、見覚えのある回路を見つけた。
盗撮系サイトで見た、その中でもポピュラーな部品。

「盗聴器……」

目の前の光景がぐにゃりと歪んだ。
俺は実装石たちを閉じこめて、生殺与奪の権利を握ったつもりでいた。
だが、違った。閉じこめられていたのは俺のほうだったのだ。
閉ざされた世界。俺だけに秘密にされた世界。もう暴れる気力もない。
行こう、と親父が言うと、俺は連行される犯罪者のように車に乗せられた。

お願いだ。教えてくれ。俺は、どこへ行くんだ…?




痛いデスゥ……今日も、顔が変形するまで殴られたデス…
今日は特に手酷くアクマが暴れたデス。
負傷者を集めて、再生力を高める薬やメンタルケアの薬を渡していくのも、ワタシの仕事の一つデスゥ。
子供を殺された親や親を亡くした子供が泣いているデス。
ここら辺一帯を取り囲むフェンスに触ると、実装石にはどうしようもない弾力のある鉄の感触がしたデス……
この閉じた世界は、アクマの暴虐がまかり通る世界は、いつワタシたちを解放してくれるのデスゥ…

「ビビアンちゃん」
「アキミさんデス…?」

気付くとアキミさんが後ろに立っていたデス。
アキミさんは食べ物や薬や、毛布やダンボールをくれる良いニンゲンさんデス。
もう食べ物が運ばれてくる時間だったデスゥ。でも、何だか量が多いデス?

「ビビアンちゃん。坊ちゃんが遠い場所に行ってしまったから、明日からはもう来ないのよ」
「デデ? ボッチャンというのは、あのアクマのことデス?」
「そうよ……あなたたちが悪魔と呼んでいる人は、いなくなったの」
「デ……デデ…」

嘘じゃないデス! アキミさんが嘘をついたことは一度も無いデスゥ!!

「こ、このフェンスは……」
「ええ。無くなるわ。あなた達はもうすぐ自由になれるの」
「みんな、聞いたデス!? ワタシたちは、自由デス!
 毎日殺されるだけだった日々は、終わったんデスゥ!!」

みんなから歓声が聞こえてくるデス! ワタシたちは、自由なのデスゥ!
今、初めてワタシたちは生きる希望を持てたのデス。
ああ、明日から何をするデス。自分たちで食料を探す手段を身につけなきゃいけないデスー。
川を探して、冬を越える手段を得て、ワタシたちは自立するのデス!

「みんな、まだしばらく食べ物は運んできてあげるわね。
 だからゆっくりこれからのことを考えて。今日は、お祝いにご馳走よ」
「コンペイトウテチー!」
「ハムやジュースもあるテス!」
「今日はさいこうの日レチー」「レフー」

頭の真ん中が熱くなってきたデス。
嬉しさと、この嬉しさを知る前に死んでいった仲間たちのことを想うと涙が浮かんでくるデスゥ。
でも、お祝いの日に涙は似合わないデス。ワタシはみんなに大声で呼びかけたデス。

「みんな、今日はパーティーデス! 飲んで、食べて、そして幸せの歌を歌うデス!!」

みんな豪華な食事に夢中になっているデス。
アキミさんがたいてくれた焚き火をみんなで取り囲んで楽しいパーティーなのデス。
そして、一息つくとみんなで声を合わせて幸せの歌を歌い始めたのデスゥ。

  デッデロゲー♪ (明けない夜があるものか)
  デッデロデロゲー♪ (開かない扉があるものか)
  デロデロゲー♪ (100回家を失っても)
  デデデロデロゲー デッデロゲー♪ (101件目の家を建て 幸せを向かえよう)

みんな幸せいっぱいデス。この歌も、これからは本当に幸せの象徴になるのデスゥ!




家に戻ると私は広間の電気を点けた。
坊ちゃんが居ない家。もうすぐ、私もここを去ることになる。
実装リンガルのスイッチを切る。もうこれを使うこともないのかも知れない。

「………っ!」

私は声を殺して泣いた。今日、初めてあの可哀想な実装石たちに嘘をついてしまった。
フェンスが壊される予定はない。ビビアンちゃんたちが自由になることもない。

旦那様の最後の命令で、坊ちゃんの虐殺の日々の証拠である実装石たちは処分されることになった。
あのコンペイトウは全部遅効性の実装コロリだ。
食べ物にもジュースにも、同じ薬が混ぜてある。
効き目が出るまで口に入れてから4時間。あの子たちが明日の朝日を見ることは、ない……

「ううぅ……うっ うっ」

私は酷い女だ。
息子同然だった坊ちゃんを裏切り続け、味方だと信頼を寄せてくれた実装石たちを騙して明日を奪った。
ああ、食いしんぼうな子が食べ過ぎて早めにコロリの効果が出たりしないだろうか。
効き目が出る時間に個体差が出て、みんな絶望の中で死んだりはしないだろうか。
あと3時間強。せめて、最後まで幸せな夢を見ていてもらいたいと思う私は、身勝手だろうか。

星の光が辺りを照らす夜。
実装石たちの「幸せの歌」が、閉ざされた世界にいつまでも響いていた。

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1 Re: Name:匿名石 2014/11/21-16:03:52 No:00001564[申告]
どっちもどっちw
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