『抜袋ウエストゲートパーク』 〜 序章 〜 集いし者達 ◆.TVDMkkF7U 【真剣師&荒法師】 抜袋西口公園の一角でずらりと並んだ青い将棋板に向かい勝負を楽しむ人々。 青空の下での和やかな風景と思いきや、ある青年が大声をあげたことで場の空気が一瞬で凍った。 「なんや なんや 辛気臭ぉ ヘボ将棋指しよって 東京もんはえろぉ弱いでんな〜 話にならんわ」 虎縞のアロハシャツにスキンヘッドの雪駄履きで、せわしなく通天閣の描かれた扇子を振っている。 「お前らはよ 家に帰りよって ママのおっぱいでも飲んで寝ろや」 老人をこづきながら毒づく若者に、背後から近づく何者かの影・・・。 「あたたたたっ 何すんじゃいワレ」 若者の腕を後ろ手に絡めて捻りあげながら、耳元でそっと呟く。 「兄さん おイタがすぎやしやせんか?あっしの目が赤緑のうちはここを荒らさせるわけにはいかんデシ」 ざわめく群集 着流しを粋に着こなし額にトの字の傷跡を持つ眼光の鋭い実装石がそこにいた。 「トキンさんだ!」 「遊び人のトキンさんが来てくれたぞ」 「もう安心だ」 様子を伺っていたギャラリーからトキンさんと呼ばれている実装石はこの界隈で名の通った真剣師である。 金を賭けて将棋を打って生活費を稼いでる裏世界のプロなのだ。 「兄さん あっしが負けたら20万払ってやるデシ。あっしの事も煮るなり焼くなり好きにしていいデシ」 「ただし兄さんが負けたときは二度とここに現れるんじゃねぇデシ それと罰としてあの噴水で泳ぐデシ」 指差された方角には気持ち良さそうに水を吹き上げる噴水があった。 「吐いたツバよう飲まんでおけよ ワイは新世界じゃ荒法師の蛆神様と恐れられた男やで〜」 「20万はもうワイが貰うたようなもんや 糞虫の存在で人間様に勝とうとはw 後で思い切りシバイたるわ」 ギャラリーの熱い視線の中でいよいよ対決が始まるのだ。実装石のトキンvs.荒法師の蛆神様の真剣勝負が! 【傀儡師】 サイトに書き込まれる情報を選り分け、携帯で送られてくる映像もチェックしながら右手でメールを打ち、 漫画喫茶のPCの前でペンタブを持ち込み猛スピードで左手でイラストも描いている子がいる。 「これは面白いことが起きそうだわ」 そう呟くとペンを器用にクルクルと指の上で何度も回してみせた。 何故この子は紙袋に目と口の部分に穴を開けたものを個室の中で被っているのだろうか?・・・。 最凶線にこそ負けるが痴漢が多いとされる頭部搭乗線の車内で女子高生の集団が大きな声で話している。 マナーモードにしていないのか携帯の音楽が車内に響く。 「あ 漫画喫茶で情報集めてるムムからメール来たよ♪ ブクロの公園に糞パンがいるってさ」 化粧を直したり携帯でメールしたりと、まるで専用列車のような振る舞いだ。 「ほんと変態野郎はムカつくよねぇ」 「糞パン今日こそ凹ろうよ」 「マジでキモいから」 この娘達の友達の子が糞パンと呼ばれる中年親父に痴漢にあってしまい、その復讐を企ててるらしい。 「あいつ逃げ足だけは速いんだよね 毎日実装石を追いかけ回してるらしいから鍛えられてんだよ」 「あの最低男は可愛い子みつけると実装石のパンツを押し付けてくるんだよね」 「ねぇ聞いてる?ザイコさん あんたがいれば怖い者なしだけど ちゃんと働いてよね」 鬱陶しいくらい長い髪の毛から当初はウザイ子って呼ばれてた娘がいる。 人一倍大きい身体の子でいつも実装石の人形を持った暗い表情で虚空を見つめていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 普通はイジメの対象になりそうな感じの子だが、ある能力のおかげで恐れられている存在なのだ。 まもなく抜袋〜抜袋 お降りの際は足元に・・・・・車内アナウンスが流れる。 「さぁ 奴に天罰を下すわよ!私たちならヤレるわ We will win. ィェィ 」 女子高生達はドアが開くと元気に颯爽と駆け出していった。 これから狩りがはじまるのだ! 【糞堵師】 「越中先輩さぁ〜 仕事終わったら飲みに行きますかぁ?」 「あらぁ越中さんを誘っちゃ可哀想よ」 クスクスと笑いのこぼれる職場を背にそそくさと帰り支度をまとめている中年男性。 特に気にする様子もなくタイムカードを押すと帰路につく男性は手にPDAを持っている。 「また虐待派が暴れてるのかよ・・・。勘弁してほしいよなぁ・・・。」 ぶつぶつと呟きながら虹裏とよばれるサイトの実装石スレッドをチェックしている。 「ちっ リアルでも可愛い実装石を虐殺しまくるから、染み付きパンツが集め難くなるんだよ」 ポケットから取り出した糞付のパンツをスーハーしながらイライラした心を落ち着かせようとしているようだ。 男の趣味は実装石の使用済みパンツを収集することだ。実装石自身よりも身に付けていたパンツを愛している。 家ではこれまで収集したパンツで風呂に入ったり、口に含んだりして楽しんでいる根っからの変態さんなのだ。 もちろん彼女もいない独身男性だが、実装石の使用済みパンツがあれば幸福なので苦にしている様子もない。 この変態はパンツ収集が不発に終わったときやストレスが溜まると通勤途中でOLや女子高生などに、 実装石のパンツを押し当てるという犯罪行為を侵してしまう悪癖の持ち主だが未だ検挙されずにいた。 「さぁ今日は勝負下着の白い特製褌を締めてきたから、パンツ集めも大成功するぞ〜」 いつのまにかスキップで野良実装からパンツを強奪するために公園へ向かう越中。 スーツの下では興奮状態なのか侍の文字の刺繍入りの褌が激しく盛り上がっているのだった。 〜第2章へつづく〜
