タイトル:【虐・馬】 替えても、いいですか?3回目(LAST)
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3328 レス数:1
初投稿日時:2007/01/31-09:45:37修正日時:2007/01/31-09:45:37
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替えても、いいですか? 3回目(LAST)



□□□ としあき:愛護派。ルミを筆頭に五匹の実装石を大事に育てている。
■■■ ひろあき:虐待派。としあきと自分の飼い実装をこっそり交換して、惨劇を楽しむ。


 愛護派のとしあきに、愛情たっぷりで育てられた実装石・ルミとその娘達。
 対して、虐待派のひろあきに厳しく躾けられた実装石・偽ルミとその娘達。
 ひろあきは、自分が飼っている偽一家を、としあきの所のと少しずつこっそり交換していく。
 それに気付かないとしあきと、本物のルミ。
 すでに、母親以外はすべてすり返られている。
 偽一家は、共食いを日常的に行うように躾けられている。
 偽一家の一員にされてしまった本物達は、共食いを強制されて生かされていた!


●交換状況:
□■■ 本物ルミ一家→母親ルミ以外すべて交換済み/リミ(偽)・ロミ(本物)死亡
■□□ 偽ルミ一家→母親偽ルミ以外交換済み/ロミ(偽)を除いてすべて健在






□□□

『さあラミ、身体を洗ってあげようね』

「テチ、自分で出来るからいいテチ」

『え? じ、じゃあ髪を…』

「自分でやるテチ。届かないところはママに頼むテチ」

『…じゃあレミ、君の身体を…』

「ご主人様エッチテチ。それくらい自分でできるから構わないで欲しいテチ」

「まあ、ラミもレミも、急に大人になったデス。ママは嬉しいデス」

『…』

 いつもと同じ、お風呂タイム。
 清潔な環境で、適温のお湯、適量の石鹸、適量のシャンプーとベビーローションを用意。
 子供達のために、お風呂用のおもちゃだって準備してある。
 それなのに、今日のラミとレミは、違う。
 いつもなら、俺とルミに甘えて洗ってもらうのに、今日はまったくそういう気配がない。
 自立を覚えた?にしては、なんか変だ。
 あまりに唐突過ぎる。
 ルミは、一人でやろうとする姉妹を褒め称えているが、俺は、どうにも納得できなかった。
 15年間実装石を育てて来た俺だ。
 仔実装達が、こんな急に心境変化する筈などない事を、誰よりも理解している自信がある。
 その俺の感覚が、違和感を唱えている。

 なんだろう、何かが変だ。

 でも、それがわからない。

 見た目は、二人ともまったく変わっていないのに。
 公園から戻ってから、この違和感が付きまとっている。
 母親のルミも、いつもと調子が違う二人に困惑しているようだ。
 いつも通りに世話を焼こうとするが、その度に子供二人は「いらないテチ」と断る。


 子供達が寝静まってから、こっそりとルミに尋ねてみる。

「きっと子供達は、親離れを覚え始めているデス。母親としてとても寂しいデスけど、仕方ないデス」

 本当にそうだろうか?
 俺は、何かとても煮え切らないものを感じる。

 何かある、これはきっと、何かある。
 リミの時もそうだった。
 この家族に、今、何かが起こっているんだ。

 俺は、確信めいたものを感じ始めていた。


■■■

 偽ラミの体内にある超小型マイクは、実装リンガルアプリとの連動だけでなく、本来の用途である
盗聴機能もばっちり備えている。
 実装石の体内電気を利用して動き、デジタル通信なので離れていてもかなり良く聞こえるスグレモノ
で、俺のようなちょっと変わった虐待派には需要が多いウラ物だ。
 もちろん、本当はもっと別な目的の盗聴に用いられるものらしいが、生憎オレは人間の私生活に聞き
耳を立てるような悪い趣味は持ち合わせていない。
 オレはあくまで、飼い実装を巡る飼い主達の混乱と、飼い実装の家族間のドタバタが聞きたいだけだ。
 ——なーんてフォロー入れても、結局これだって立派な悪趣味なんだけどな。

 オレは、カップヌードルチーズカレー味を持ってきて、その中にさらにモッツァレラチーズ(という名で
販売されているナチュラルチーズ)をドカドカ放り込んで、そこにお湯を注いだ。

 そろそろ偽ラミ達が、行動に移っている頃だ。
 腹も減ってくるだろうから、あいつらも捕食行動を取らざるを得ない。
 偽リミは、としあきの目の前で本物ロミを襲って、あいつに殺された。
 偽ラミ達は、としあきの目の届かない所で、行動を取る事が出来るだろうか?
 或いは、バレるまでに、何か面白い事をしでかしてくれるだろうか?

 ま、本音を言うと、ここであいつらにルミを殺されると、ちょっと都合が悪いんだが… 
 でもまあ、常にライブ感を楽しみにするオレとしては、都合が悪くなる展開にも楽しみは抱ける。

 オレは心躍らせながら、受信機のスイッチを入れた。



□■■


 本物ルミがすっかり熟睡した頃、腹を空かした偽ラミと偽レミは、示し合わせたようにムクリと起き
上がると、彼女達曰く「ぶくぶく太ったデブ実装」を見つめた。
 ルミは、別に太っているわけではないが、部分的に発達した肉体を持つ母親(偽ルミ)を持つ二人に
とって、本物ルミの健康で張りのある肌とボディは風船を連想させ、そのまま「デブである」という発想に
辿り着くようだ。

「プププ、安心しきってぐっすり眠ってるテチ。これなら、大きい奴でもあっさり仕留められるテチ」
「お姉ちゃん、こいつはリミお姉ちゃんを殺した片割れテチ。抵抗力を奪ってからじわりじわりと食い
殺してやるテチ」
「よく言ったテチレミ! そう、リミの仇はワタチ達が討つテチ!」

 母親の偽ルミからの教育で、「自分より大きい物を仕留める時は、まず首を食い千切って血を
噴出させてから」というノウハウが染み付いている。
 寝返りを打って、本物ルミが首付近を無防備に晒す瞬間を待つ。

「う、う〜ん……デスデス…ピー」

 本物ルミが横を向き、首横がガラ空きになる。
 いまだ! と、偽ラミは、実装ファング(単なる歯)を光らせ、ガブッ! と行った。

「ん? ラミ起きたデ……デジャアッ?!?!」

 タイミング悪く目を覚ましたルミは、間一髪で(というか単なる偶然で)、偽ラミの牙を紙一重でかわした。
 偽ラミの顔が、ぼふっと毛布に突撃する。
 本物ルミの、あまりに華麗でムダのない動きは、状況を眺めていた偽レミに、ちょっとした感動と脅威
を与えていた。
「大小問わず、今まで数多くの実装石達を屠ってきたラミお姉ちゃんの牙技を、あの体勢から紙一重で
かわすなんて! なんて恐ろしい実力者テチ! ガクガクブルブル…」
 かろうじてパンコンには至らなかったが、偽レミは、壮大な勘違いの果て、本物ルミの実力に心底
恐怖した。

「まさかと思ったデスが、お前達まで…リミのように…」

「テチーッ! この、リミの仇ーっ!!」
「そうテチ! ワ、ワタチ達は、お前に復讐するんテチーッ! 絶対許さないテチー!」

「リミの仇? それは違うデス。誤解デス。って、お前達も見ていた筈ではないデスか?」
「ギャーッ、ギャーッ、つべこべ言うなテチ! 食ってやるテチ! 身体中食い千切ってボロボロにして
やるテチーッ!」
「お姉ちゃん頑張るテチ! リミお姉ちゃんをヌッコロしたこの悪鬼羅刹に、正義の一撃を今叩き込む時
テチ!」
 だが、二匹はただ吠えるだけで、何もやろうとしない。
 不意を打たないと倒せないという事を、これまでの経験で知っているのだ。
 なんだか訳がわからなくなってきた本物ルミは、しばらく二匹を交互に見つめていたが、やがて腰を
落とし、目線を下げて偽ラミに語りかけた。

「ぶっちゃけ、あなたは、ラミではないデスね?」
「ラミテチ! 生まれた時から正真正銘のラミテチ!」
「…本物のラミなら、そんな恐ろしい事は言わないデス」
「ワタチはラミテチ! ルミって名前の実装石から生まれたラミテチ! ご主人様が付けてくれた大切な
名前テチ! ワタチの誇りある名前を勝手に疑うと、本気で怒るテチーっ!!! ガーッ!!」

 今度は、偽レミの方に振り返り、同じ質問をする。

「ワタチはレミテチ! ルミという名前の実装石から生まれた正真正銘のレミテチ! ご主人様が付けて
くれた大切な名前テチ! ワタチの高貴かつ神々しい名前を勝手に疑うと、貴様は明日の太陽が拝め
ないテチーっ!!! ビャーッ!!」

 ジタバタする二匹を前に、本物ルミは益々混乱してきた。

 ルミは、ひょっとしたらリミは、別な実装石と入れ替わってしまったのではないか、という考えに辿り
ついていた。
 でも、どう考えてもすり替わるような機会はなかったし、何よりリミは最期まで間違いなくリミだった。
 自分の産んだ子供を、親が見間違うはずがない。
 特にリミは、生れ落ちた時に普通より分厚い粘膜に覆われていたため、危なく蛆実装になってしまう
ところだった。
 そんな辛く重い記憶がある娘を、別な実装石と見間違うなんて、絶対ありえない!

 …と今まで思い込んでいたのだが、としあきにリミを潰されてから、ルミは自分の認識を疑い始めた。

 自分が本物だと思いこんでいたから、惑わされたのでは?
 だとしたら、自分が直接追求すればよかったのだ。
 何てことだろう、としあきが怒り心頭に発するまでにその考えに辿り着けていれば、小さく大切な命
をなくさなくて済んだのに。
 そして今度は、ラミとレミの雰囲気が変わった。


 だが。
 本人達は、自分達がラミ、レミであると、強く強調している。
 母親の名前もルミだ。
 これだけ強く言うのだから、きっと嘘はついてないだろう。


 なんだ。
 杞憂だったのか。


 やっぱり二人は本物だ。
 ムダに難しい事考えて、損した。


 安心したルミは、二匹を優しく抱き締めてやった。

「びっくりしたデス。ワタシはてっきり、お前達がニセモノと入れ替わったと思ってしまったデス」
「…テ?!」
「テチ?!」
「でも、ご主人様の付けられた名前に誇りを持っているお前達は、間違いなく本物デス。疑って悪かった
デス。ママを許してほしいデス」
「……」

 正体がバレかけた事に驚き、そしてなんとか危機を乗り切った事に安堵した二匹は、緊張しながらも、
やがて本物ルミのぬくもりに身をゆだね始めた。
 所詮、まだまだ仔実装。
 大きな包容力には弱いようだ。

「お腹が空いているデス? なら、ご飯はあるデスよ」
「テチ?!」
「ご飯食べたいテチ!」
「待っていなさいデス。今、準備してあげるデス」
 本物ルミは、場を離れて水槽内の餌置き場に行くと、固形半練状実装フードを抱えてきて、二匹に
差し出した。
「本当は、夜中に食べたらダメなんデスよ。今夜だけ特別デス」
「テチ…これ何テチ?」
「いつも食べているご飯デス。忘れてしまったデスか?」
「ワタチ、こんなのいらないテチ。仔実装が食べたいテチ」
「なんて酷い事を言うテチか! いいデスか、実装石は皆お友達デス。傷付けたり殺したりしては
いけないんデスよ」
「テチー、実装石はワタチ達の餌テチー」
「テチー」
「違うデス、ママの言うお話を、よく聞くデス。いいデスか…」
「テチー!! そんなのどうでもいいテチー」

 また暴れだす偽ラミと偽レミ。
 しかし本物ルミは、手を上げたりせず、逆に、異様に冷静な態度で冷たい言葉を放った。


「いう事を聞かないと、あなた達はご主人様に殺されてしまうデス」

「テチ?」
「それはないテチ。ご主人様も、ここのニンゲンさんもいい人テチ。躾はイタイけど…」
「それは違うデス。お前達は、うちのご主人様の本当の恐ろしさを知らないデス」
「テ……?」
「お前達がもっと大きくなったら話そうと思っていたデスが、いいデス、今話してあげますデス」

 本物ルミの声には、どこか抗し難い迫力がある。
 偽姉妹は、思わず息を呑んで、本物ルミの言葉を待った。


「ご主人様は、確かにとても優しい人です。でも——本当は虐待派なんデス」



■■■

「虐待派ぁ?」

 ヘッドフォンから伝わってくる、本物ルミの声に少し驚く。

 そんな筈はない、としあきは、理解のない人間が見たら気味が悪いくらいベタベタの愛護派だ。
 その趣味も、生活もほとんど実装石育成に費やしていて、そのために、そこそこイケメンでいい奴
なのにも関わらず結婚しようともしないし、恋人も作らない。
 そんなあいつが虐待派?
 本物ルミの奴、普段あんなに親しげにしているのに、突然何を言い出すんだか。
 ばかばかしくなったオレは、受信機のスイッチを切り、偽ルミ達の様子を見た。


 どうやら、本物姉妹はその後偽ルミにボコシバキにされたようで、瀕死の状態でアウアウ呻いている。
 激痛で眠るどころじゃないようで、みんな起きている。
 あれ、よく見たら、どの子も右腕が引き千切られているな。
 ちょっと席を外していた間に、随分ハードな躾をされたんだな、こりゃ。
 だが、偽ルミには申し訳ないが、まだこの子らを殺すわけにはいかないんだ。
 オレは、いつも偽石除去後の急速治療に用いている実装活性剤を薄めて、ラミ達に注射する。
 いつもよりちょっとだけ濃い目にしたのだが、みるみるうちに傷が回復していく。
 この様子なら、明日仕事から戻ってくる頃には、腕は完全に復元しているだろうな。
 まったく、なんつーデタラメな生き物なんだろうか。

『ルミ、起きろ』

 オレは、水槽の隅でふてくされるように眠るルミを起こした。
「…デス?」

『こいつらのことを頼む。実装石の肉がまだ残っているようだから、それを使って、こいつら全員に実装
食いを教え込め。ただし、絶対に殺すなよ』

「ご主人様、こいつら、ワタシの娘じゃないデス。どう考えても、違うデス。ワタシの娘達はどうして
しまったデス?」

『前にも言っただろう。こいつらは、遊びに行った先の生活に感化されたんだ。なんとか元に戻して
やらないといけない。難しいだろうけど、頼むよ』

「わかりましたデス…なんか割り切れないけど、頑張るデス」

『頑張れ。今日はお前の大好きな、肉の柔らかい親指を捕まえてきてやるからな。金平糖も詰めて
おくから、食べると甘くておいしいぞ』

「デデ! それを聞いたら頑張らない訳にはいかないデス! まかせてくださいデスっ!」

『よーしよし、それでこそルミだ。いいな、絶対に殺すなよ、もし殺したら、わかるな?』

「デ…わかったデス。家族殺しと家族食いは、最悪の行為デス」

『それがわかればいい。じゃあよろしくな』


 さーて、偽ルミをその気にさせるためとはいえ、随分難しい条件を自分に課してしまった。
 親指か…居るかな。
 今度は、いつもと違う町の餌場(公園)に行くか。
 この前の飼い実装丸ごと誘拐は、さすがにかなりの騒ぎになったようだからな、隣町の公園には行け
そうにない。

 オレは、明日のエサの捕獲方法を色々と考えていた。





 仕事を終えて家に戻ると、オレは適当に捕まえてきた二匹の野良仔実装を取り出した。
 ザッと洗い、髪と服をむしっただけの野良仔実装を、水槽に落とし込んだ。

「デスー! これは約束の親指じゃないデスご主人様!」

『すまん! 全員分はさすがに見つからなかったんだ! 勘弁してくれ』

「デスー。せっかくみんなで楽しみにしてたのに」

『え、みんな?』

 ふと見ると、放り込んだ野良仔実装が、本物三姉妹に追い掛け回されている。
 あれあれ、いつのまに狩りまで出来るようになったのよ。

「テチィィィッッ!! テチィィィィッッ!! タスケテテチーッ!!」
「ヤメテユルシテカンベンシテテチー!! 世界は一家実装類は皆兄弟テチー!!」

 リミが逃げる仔実装達の正面に回りこみ、一匹に猛烈なタックルをかます。
「テギャッ!」
 よろめいた仔実装に、ラミが飛びかかる。
 バシバシ顔面を殴りつけ、抵抗力を奪っていく。
 泣き喚いていた仔実装は、だんだん声が掠れていき、仕舞いには呼吸音だけが寂しく響くようになる。
 さらに、顔面にきついパンチを加えて、鼻を潰す。
 ラミは、その状態の仔実装の口に、何か詰め込んだ。
 どうやら、丸めたボロ布らしいが。

 あー、なるほど。
 あれなら、鼻から呼吸できなくなった仔実装は、いずれ窒息死する。

 直接致死に至らしめる事がまだ出来ないラミ達にとって、これは実に有効な手段かも。
 もちろん、ボロ布を取られないように、腕はヘシ折っておく必要があるけど。
 と思ったら、ラミが次々に仔実装の腕を折っていく。
 実に、無駄がない。
 完全に抵抗力を奪われた仔実装は、えびぞり、のたうちながら、徐々に弱っていく。
 その間に、すっかり怯えきったもう一匹の処理にかかる。
 リミとレミに両腕を拘束された仔実装は、ただ頭を横に振りながら、少しでもラミから逃れようと、必死
に後ずさろうとした。

「悪く思わないで欲しいテチ」

「テ、テヂャ……ナンデ、ドウシテテチ……」

「あなたを苦しめて殺さないと、おいしく食べられないテチ。妹達がママに痛めつけられるテチ。ワタチは、妹達を守る義務がある
テチ」

「テ…ユ、ユルシテ…テチ…オネガイダカラ、コロサナイデテチ…」

 派手に脱糞して、懸命に許しを請う。
 だがその瞬間、リミは、いきなり激昂して、押さえていた仔実装の腕に噛み付いた。

 ボリッ!
 リミが、腕を一撃で食い千切る!
 うわ、こいつらが生きてるのを直接食うトコ、初めて見た!

「テジャァァァッッッ!!!!」

「リミ?!」

「こいつら、ワタチの事を殺そうとしたテチ。許さないテチ。ワタチは、ご主人様のおうちに帰るまで絶対
死なないテチ! こんな奴等に殺されないテチぃっ!!」

 どうやら、仔実装ゾンビに襲われた時の恐怖が、今では攻撃意識に変質しているらしい。
 泣き叫ぶ仔実装に飛び乗り、またあの時と同じマウントポジションになると、止めるラミやレミを
振り切り、首絞めに入る。
 今度は、殺意がこもりまくりだ。
 オレですら、ぞっとするほどの攻撃意識。
 仔実装が窒息し、頭ががくっと落ちても、なお手を緩めない。
 それどころか、さらに力を込めているようだ。
 凄まじい殺戮劇場に、オレはやるべき事も忘れ、つい、カップヌードルおこげを取り出して、無意識に
お湯を注いでしまった。

 赤の緑の血の泡が、口から吹き出す。
 完全に死んだ。
 それを確認して、偽ルミがやってくる。
「よくやったデスみんな。さすがはママの子供デス。この調子でいければ、夕べ言った事は取り消して
いいデス」
「テ…ほ、ホントテチか、ママ?」
「本当デス。ただし、それは今そこに転がってる奴等を、お前達が自力で食い尽くせたらの話デス」
「テ……テテ…テ…」

「食べるテチ!」

 真っ先に飛びついたのは、やはりリミだった。
 さっき腕を食い千切った仔実装の死体に飛びつき、齧り付いて行く。
 血が噴出し、服と顔、髪を汚すが、そんなのお構いなしという感じで食べ進めて行く。
 その形相は、まるで…そう、般若みたいだ。
 そうか、そうか。
 偽ルミの、強烈すぎる教育の結果、リミはこの短期間で、偽リミ以上の残虐性に目覚めたわけか。

 よし、動機はともかく、まずは一匹合格だな。
 この調子なら、ラミもレミも、すぐ合格ラインに乗るだろう。

『よくやったルミ。これは報酬だ』

「デスッ?!」

 今回の本命、金平糖をぎゅうぎゅうに詰め込んで致死寸前の親指。
 胴体は、通常の三杯くらいの太さに膨らませてある。
 一匹だけだったが、ちゃんと確保しといたんだよ、お前のために。
 もちろん、金平糖は食べさせたんじゃなくて、内臓洗浄してから直接総排泄口に押し込んだ。
 こいつ自身は、腹いっぱいだけど金平糖をまったく味わっていないわけだ。
 物量は大した事ない筈だが、食い応えはあると思うよ。

「テ…オナカ……クルチ……テ……破裂シ…」

 まだ喋れるのか、やるなこいつ、なかなか見所があるぞ。

『安心しろよ、お前はもうすぐ楽になれるぞ。金平糖で腹も一杯になって死ねるんだ、満足だろ?』

「テ…コンペ……タベ………割れル…ア…」
 こちらの言う意味を理解しているのか違うのか、ポロポロ涙を流して、僅かな生にしがみつく親指。
 とても儚く可愛らしくものだが、オレはそんな奴に過酷な現実を叩き付けるのが好きなのよ。
 こいつはこいつで甚振りたい心境だが、我慢して偽ルミに渡す。
「ご主人様、ありがとうデス! これはおいしそうデス!」

『リミはもう教育は充分だ。ラミとレミを、もっと鍛えてやれ』

「わかりましたデス!」

「テ…テチ……テェェ……」

 オレから親指を受け取ったルミは、ガバッと大口を開け、頭から被りついた。
「いただきますデッス!」

 ガリッ!

「!!!!」


 …相当痛かっただろ、ルミ。

 頭を通り過ぎ、偽ルミの前歯は、金平糖が重なってる部分を思い切り齧っちまったようだ。
 偽ルミは、口を押さえてうずくまっている。
 あーあー、もう、落ち着いて食えよ誰も盗らないんだから。




□□□

「どうデス? おいしいデス?」
「おいしいテチー♪」
「思ったよりもイケるテチー♪」

 ルミが、ラミとレミに実装フードを食べさせている。
 良かった、この子達は、リミのように共食いをしそうにない。
 もし共食いをするなら、ルミは今こうして元気にしていられる筈がない。
 俺は、自分用の夕食の準備をしながら、ルミ一家を見つめていた。

「たまには、代用食もいいテチ」
「そうテチお姉ちゃん、でもやっぱり、本物の実装石の味には叶わないテチ」

 食器を持つ手が止まる。
 なん…だって?

 今、なんて言った?

「な、何を言うデス!」
「テチ。ホントテチよ。これはこれでおいしいけど、たまに食べるからいいのテチ」
「そうテチ。蛆チャンの踊り食いとか、生きた親指を足から齧っていくのには、到底叶わないテチ」
「デデっ! 夕べ、あんなに教えたのに!」
「ママも食べてみればわかるテチ。——ニンゲンさん、明日は蛆チャンが食べたいテチ。五匹くらい
捕まえてきて欲しいテチ」
「やめなさいデス! 夕べのママの話を思い出すデス!」
「夕べ?」
「—テッ!!」

 ラミが、俺の顔を見て真っ青になり、いきなり喋らなくなってしまう。
 それを見たレミも、何か思い出したように反応すると、突然寡黙になってしまった。
 なんだ、俺が何かしたのだろうか?

 いや、そんな事よりも、さっきの発言が気になる。
 俺は、ルミ達に迫った。

『ラミ、レミ、さっきなんて…』

「あ、あああ、アレは冗談テチ!」
「そ、そそそ、そうテチ! 実装フードおいちいテチ!」
「ご、ご主人様! この子達は何も問題ないデス。ただちょっと、ふざけてるだけデス!」

 俺は、真っ青な顔で懸命に否定する三匹を見つめ、レミを抱き上げる。
 レミは、少し嫌がるようなそぶりを見せたが、じっとこちらを見つめ返してきた。

『レミ、ご飯おいしいかい?』

「はい、おいしいテチ」

『レミはご飯食べるの好き?』

「はい、大好きテチ」

『じゃあ、今度レミの大好きなものを持ってきてあげるよ。何が食べたいか、言ってごらん?』

「嬉しいテチ! じゃあ、じゃあ、蛆ちゃんをお腹一杯食べたいテチ!」

「バ…!!」
「レミ!!」

 レミの口から漏れたのは、以前リミが口走ったのと同じような言葉。
 俺の中で、何かが音を立てて崩れた。
 俺は、レミをぽろりと手の中から落とすと、ふらふらと部屋を出た。

「テ…?」

 どちゃっ

「テチャアァァァッッ!!! あ、足が、足がアァァァッッッ!!!」

「デジャアァァァッッ?!?!」
「レ、レミィィィィィッッ!!!」


 後ろで、ルミとラミが叫び声を上げているが、もうどうだっていい。
 一番恐れていたことが…この15年間、ひたすら祈り続けた「起きて欲しくないこと」が、ついに起きて
しまったのだ。

 由々しき大問題だ。
 このままにはしておけない。


 覚悟を決める時が、迫っているようだ。



■■■

 ラミが大騒ぎしていて、その声でよく音が聴き取れない。
 なんだ、何やってるんだ?
 なんか、レミがどうのと慌てているようだが…

 まさか、偽リミに続いて偽レミも?

 と思ったが、しばらく後に偽レミの声がボソボソと聴こえて来たから、別に殺されたわけではない
らしい。
 なんなんだ、いったい?



□■■


 翌日。

 としあきの手の中から落ちて、両脚を粉々にされてしまった偽レミは、その後、事態に気付いて冷静に
なったとしあきによって手当てを受け、順調に回復していた。
 としあきは必死で詫びてはいたが、それでもどこか態度がよそよそしかった。
 それは、レミを含む三匹すべてが実感していることだった。

 偽レミの負傷に、一番のショックを受けたのは、姉の偽ラミだった。
 本物ルミの言っていた事は、本当だった。
 激怒したとしあきは、突如、思いもよらない暴力に訴える時がある。
 しかも、その瞬間本人は自覚がないのだ。
 偽リミも、それで殺された。
 かつてここに居た子供達は知らないが、本物ルミも、その親も、そのまた親も、ずっととしあきの
突発的な暴力におびえ、耐え、また余計な刺激を与えないように注意し続けて来たのだ。
 彼女達が躾よりも先に身につけたのは、「としあきには逆らうな」という強い認識だった。

 だから、共食いという、としあきに大きなショックを与える発言はしてはならない。
 たとえ、ラミとレミが何かのきっかけで共食いに目覚めてしまったのだとしても、それは決してとしあき
に明かしてはならなかった。

 本物ルミは、実装石の本能の中に共食いというプログラムが眠っている事を本能で知っている。
 自分はそれを理性で「いけない事」と判断し、嫌悪しているが、としあき他愛護派の人間達は、もっと
別な感情でそれを毛嫌いしているらしい。
 そこまではわかっていたが、実は本物ルミ自身、としあきが共食いを嫌悪する感覚を完全に理解して
いるわけではない。
 これは、人間と実装石の違いによるもので、どうしようもない問題だ。
 とにかく今は、「隠し続けなければならない」最大のポイントだった。
 だけど、としあきの誘導に乗ってしまったレミは、うっかり共食い願望を露見させてしまった。
 もしあの時、としあきが本気で怒っていたら、今頃偽レミは緑と赤の染みになっていただろう。

 本物ルミは、あらためて偽ラミに言い聞かせる。
 そして偽ラミは、恐怖の余りパンコンしながら、話を聞いていた。

“い、嫌テチ。こんな家にはもう居られないテチ!
 逃げ出してやるテチ! 元のおうちに帰るテチ!
 訳を話せば、ご主人様もきっとわかってくれるテチ!
 なんとか隙を見つけて、ここから抜け出すテチ。
 レミには悪いけど、お姉ちゃんはどうしても生きていたいテチ!
 あんな怖いニンゲンに虐待されて死ぬのはゴメンテチ!!”

「あらあらラミ、もうおっきくなったのに、お漏らししちゃいけないデス」

 本物ルミが、後始末をしてくれる。
 だが、偽ラミの心はもうそこになかった。
 その目線は、換気のためにいつもうっすらと開けられている、サッシの窓に向いていた。


『ただいまー』

 としあきが帰宅した!
 その声に、ラミとレミは再び身体を震わせる。
 本物ルミは、二匹をしっかり抱き締めながら、としあきが部屋にやって来るのを待った。

『なんだ、部屋に居たのか。出迎えがないからどうしたのかと思った』

「デスデス。お帰りなさいませデス、ご主人様」
「テ…お帰り…テチ」
「テチ…」

『おっ、レミ、怪我もかなり治ったみたいだね。本当にごめんよ』

「テ、テチ…」

 頭を撫でられ、レミは少しだけ警戒心を解いたようだ。
 だが、としあきが抱えている小さなケージに興味を惹かれたらしく、そちらをじっと見つめている。

「それは何テチ?」

『ああ。みんなに紹介するよ。今日から、家族が増えるんだ』

「デス?!」
「「テチ?!」」


「テッテレー♪」

 ケージから元気良く飛び出したのは、頭にピンクのリボンを着け、溢れんばかりの元気を振り撒く、
一匹の仔実装だった。
 だいたいレミと同じか、それより若干年下のようだ。
 仔実装は、くるくる回りながら踊ると、ルミ一家にぺこりとお辞儀をした。

「はじめましてテチ!」

「は、はじめましてデス…」
「「テチ」」

 本物ルミは仔実装に戸惑い、偽ラミと偽レミは、口の中に溢れるヨダレを必死で隠している。
 としあきは、仔実装をルミ一家に近づけると、嬉しそうに呟いた。

『この子の名前はアンリだ。実装ショップで買ってきた、高級飼い実装だ。みんなよろしくな』

「テッチュ〜ン♪」

「か、飼い実装デス? ワタシ達が居るのに、どうして?」

 本物ルミの疑問に、としあきは少し答えにくそうな態度で述べる。

『い、いや、その…色々あって、お前の家族も減ってしまっただろ? だから寂しいかなと思ってね』

「デ……」

 “子供が減ったのはともかく、それなら、また私が産めばいい。なのに、何故?”

 本物ルミは、口に出さなかったがそう考えて震えていた。
 とても、アンリという新参者に笑顔を返すゆとりはない。
 偽ラミと偽レミは、その瞬間、アンリが「テプププ」と笑ったのを、見逃さなかった。

『アンリは血統書付きの立派な実装石なんだ。躾も充分だから、お前達を困らせるようなことはないよ』

 としあきの言葉は、古参の三匹に、更なる不安を植えつけるだけだった。
 本物ルミは、その言葉に、明確な回答を導き出していた。


“ご主人様は…ワタシの次世代選びを……放棄したデス!”



■■■

 携帯が鳴る。
 としあきからだ。
 オレは、実装石達の声が届かないところまで移動してから、電話に出る。

「もしもし、どうした?」

『聞いてくれひろあき。俺の15年間は、失敗だった』

「な、なんだ出し抜けに?」

 様子がおかしい。
 としあきの声は、何か思い詰めたように暗い。
 こいつがこういう声になる時は、だいたいろくな事を考えない。
 なんだなんだ、偽ラミと偽レミに何かされたのか♪

「何があったか言ってみろ、相談に乗るから」

『ありがとう、でもいいんだ。俺はもう答えを出したから』

「答え? 何なんだよ」

『ルミ達が、共食いしたがるようになったんだ』


 キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
 
 効いてます、効いてますよとしあきに!!


 ごめんよとしあき、オレはなんて酷い奴なんだろう♪
 お前に恨みはないし、むしろ色々助けられて感謝しているくらいなのに、オレって自分の欲望に忠実
なんだよね〜♪

 オレは心の中で、はしゃぎながらとしあきに詫びると、深刻な態度を演じて、返答する。

「共食い…? り、リミちゃんの時みたいにか?」

『そうなんだ。これはもう、あいつらに大きな問題が起きたとしか思えない』

「問題って?」

『あいつら一族には、遺伝子単位の欠陥があったんだよ。共食いをしたがるという、糞蟲レベルの下劣
な行動願望が眠っていたんだ。それが、何かのきっかけで発動したらしい』

「げれ……」

 ちょっと、待て。
 としあき、それは違うぞ。

 実装石の共食いは、本能単位で刻みつけられているもので、飼い実装は理性で抑えたり、或いは
その知識を丸ごと欠如させているだけなんだ。
 そんな事言ったら、すべての実装石は欠陥品だぞ?!

 つかこいつ、15年も育ててきてそんな事も知らなかったのかよ!

 呆れて次の言葉が出てこない。
 だがとしあきは、こちらの反応に関係なく、ぼそぼそと話を続けている。

『だから、今まで育てて来た一族の血脈は、今のルミの代で終わりにするつもりだ。俺はまた、一から
やり直すよ』

「おいとしあき! 今までの一族にだって、そういう性質の奴が少しは生まれたんじゃないのか?! それ
はどうしたんだよ!」

『処分したよ。糞蟲だからな』

「しょ…」

 おいおい。
 としあきが、糞蟲を間引いて優良な個体だけを選別し続けてきたのは知ってるけど、まさかこいつ、
ろくに教育もしないで間引いてたのか?!
 共食いなんて、生まれてすぐ躾が出来れば、たいがい押さえ込めるもんなんだぞ?!(つか俺もやった
し)

『共食いしたがるのが、もしルミだけだったらまだ良かったんだ。だけど、言い出したのはラミもレミも
なんだ。これじゃもう、この先優良な個体は生まれない事確定だ』

 そりゃまた随分失礼なことを。
 アレだって、結構賢いし、オレだって苦労して育てたんだぞプンプン。
 まー、この一発ネタのためだけに、と付くけど。

「でも、ルミちゃんが共食いしたがらないなら、また彼女に産ませれば…」

『いや、あいつから生まれた子供は、ほぼ全部共食いをしたがるようになった。今後も、あいつが産むの
は同じような奴ばかりになるのは目に見えてる』

「おい…それはちょっと酷すぎないか?」

『実はもう、新しい血統書付きの実装石を購入したんだ。ルミ達はこのままにして、子供は産ませない。
その後はいつものようにするよ。——悪かったな、ちょっと聞いて欲しかっただけなんだ』

「としあき……」

 うわあ。
 予想外にダメージデカかったんだな。

 ルミだけは最後まで交換する気はなかったから、たとえ子を取り替えもとしあきの血族が途切れる
ことはないと思ってたけど、まさか自分の疑心暗鬼で途切れさせちゃうとはね〜。

 すまないな、としあき。
 じゃあせめて、ルミと、うちの可愛い娘達は、寿命まで育ててやってくれよ♪

 ホントは、一通り引っ掻き回してから本物の娘達を丸ごと返して、びっくりしている所を間近で観察してやろう
と思ってたんだけど、必要なくなっちゃったかな♪


 いつのまにか、電話は勝手に切れていた。
 オレは、予想外の展開に少し戸惑いながらも、あらたな状況変化に心を躍らせていた。
 
 ホントにごめんよ、としあき♪



 としあきの心境変化は、もちろんすぐに本物のラミ・リミ・レミに伝えられた。
 偽ルミから離れた所で、オレは三匹に説明する。

「テチャアァァッッ?!?!」
「ありえないテチ! ご主人様があっ?!」
「おうち帰りたいテチ! ママにアマアマしたいテチ! テェェェン」

『というわけだから、お前達はここで、あのママと一緒に死ぬまで生き続ける事になった。あらためて、
よろしく頼むな』

「テ…ニンゲンさん、あなたは本当に悪魔テチ!」
「あなたがワタチ達を取り替えなければ、こんな事にはならなかったテチ!」
「酷いテチ! あんまりテチ! ワタチ達、ママとご主人様の所に帰れるようにって、我慢してお友達を
食べてたテチーッ!!」

 なんだ、そうだったのか。
 じゃあ、共食いライセンス合格は剥奪かな。
 お前達には、自ら望んで実装石を捕まえ、食べられるようになって欲しかったんだが。
 理由? ただ面白いから。

『残念ながら、お前達があのまま家に居ても、多分みんな殺されていたと思うよ』

「テ?」
「テチ?」
「それはどういう意味テチ?」

 これは、さっきのとしあきとの会話から得た、ほぼ確信めいた考えだった。
 オレは、惜しげもなくその考えをラミ達に伝えてやった。

『昔から不思議だったんだ。
 としあきが、多産の実装石を15年も飼い続けている事がさ』

「それがどうして不思議テチ?」

『お前達には難しいかもしれないが、考えてみようか。
 一匹の成体実装が妊娠して、例えば十匹子供を産んだとする。
 その十匹がそれぞれ成人してまた十匹ずつ子供を産む。
 さらにそれが成人して、また十匹産む。
 こんなサイクルが、たった一年間の間に、平均約5回から、多い時は10回弱くらい行われる。
 そうすると、一年後…つまり、お前達が生まれてからママになれるくらいまでの間に、何匹の実装石
 が生まれると思う?』

「テ? え、え〜と…」
「テッチテッチテッチ…沢山テチ!」
「そんなのわかんないテチ〜!」

『もし、一匹も死ななかったとしたら、一番少ない5回のローテーションでも、単純計算で50匹になる。
 ちょっと多くて8回だったら、80匹だ。
 でも、二年目だとそれ全部が最初の親と同じ数だけ産めるようになるから、2500から6400匹に増える。
 三年経って、最初の親がまだ生きていて同じペースで子供を産めたら、なんと125000から512000匹だ。

 512000匹ってだけでもすごいぞ。
 成体実装の身長が60センチとして、全部縦につなげたら約307キロメートル。
 これは、長崎県の南北の距離とほぼ等しい。
 こんなのを、としあきは15年間も繰り返したんだ』

「テ…え、えと」
「ナガサキケンって何テチ?」
「壮大すぎて全然ピンと来ないテチ」

 うっ、さすがにこいつらじゃ無理だったか。
 仕方がないので、俺は「放っておいたら、お前達の家族だけで地球が埋まってしまうくらい」と、
ものすごくテキトーに言い換えた。
 さすがにそれは通じたらしく、三匹は「デギャッ!」と大声で叫んだ。

「そ、それはとんでもない事テチ!」
「ワタチ達、一歩間違えたら地球を滅ぼしていたかもしれないテチ!」
「地球が悲鳴を上げるところだったテチ!」

『わかっただろ。
 でも、そこでもう一度考えろ。
 そんなに沢山居る筈なのに、今お前達の家族は何匹だ?
 ルミ、ラミ、リミ、レミ、そして死んだロミのたった五匹。
 じゃあ、残りはどうしたんだ?』

「アレ?」
「そういえばおかしいテチ」
「もっともっと、一杯家族が居た筈テチ」

『オレは、10年くらい前にこれに気付いてな。ずっと不思議だったんだ。
 だから、いつかその秘密を調べようと思ってた。
 で、お前達の協力のおかげで、それがやっとわかってきたんだ』

「テチ? どういう事テチ?」
「ワタチ達には難しくてわからないテチ」
「教えて欲しいテチ。ご主人様は何をしていたテチ?」

 オレは、一旦わざと黙って、三匹の注意を引き付けてから、声色を変えて、脅かすように言い放つ。


『あいつは、生まれた子供達の中から一匹だけを選んでみんな殺していたんだよ。
 お前達のママが、その選ばれた一匹なんだ。

 だから、お前達が大きくなっても、たった一匹しか選ばれないんだよ。

 ラミが選ばれたらリミとレミ、リミが選ばれたらラミとレミ、レミが選ばれたらラミとリミが殺されるんだ、
ご主人様の手でね。

 わかるか? お前達は生まれた時から、殺される運命にあったんだよ!』


「「「デギュ———ッ!」」」


 その言葉に、三匹はほぼ同時に失神した。
 ボリュームたっぷりのパンコン付きで。

 くせーってば。



□■■

 それから数日。

 としあきは、上機嫌だった。

「テチテチテッチ〜♪ テッチュ〜ン♪」

『ハハハ、アンリは本当にいい子だな、可愛いぞ♪』

「テッチュ〜♪」

 新参者のアンリに付きっ切りになり、本物ルミ達は、ほとんど相手にされなくなった。
 風呂に入れる事も忘れられる、食事の用意も忘れられ時間が不規則になる。
 トイレの後始末もいい加減になり、水皿も濁り始めている。
 給水器はとっくに空になっているのに、いつまで経っても交換してもらえない。
 もちろん、ルミ達は必死でデスデス呼びかけているが、としあきの耳には全然届いていないらしい。
 しかし、ルミ達とは別に用意されたアンリの水槽は、完璧なまでに整えられ、かつての自分達以上に
豪華な状態になっている。
 やがて、アンリはルミ一家をあざ笑うようになり、今ではもはや、完全に格下扱いだ。
 両方の水槽は自由に出入りできるようになっているため、ルミ一家とアンリはいつでも触れ合うことが
できる。
 しかし、ルミ達はアンリの水槽に立ち入る事は固く禁じられていた。
 なんとか実装フード生活に慣れたのに、今度は精神的屈辱感をたっぷり味わわされるハメになった
偽姉妹は、ついにアンリに殺意を抱くほどになった。

「デジャーッ!! お前、いつか絶対殺して食い殺してやるデチッ!」
「首を洗って待っていろテチ!」

「ふーん、お前達、ワタチにそんな事言っていいテチ?」

「デ?!」

「後でご主人様にいいつけるテチ。そうしたら、お前達は明けの明星が夜空に輝く頃、三つの光になって
宇宙へ飛んでいくハメになるテチ」

「デ?!!? デ、デデデ…」

「言いつけられたくなかったら、ワタチの前にひざまづくテチ!」
「デデ…クッ」

 もう、やりたい放題だ。
 ご主人様という強大な後ろ盾に屈し、土下座する三匹に向かって、アンリはパンツを下ろした尻を
向けると、豪快にひり出し始めた。

 ぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶり

「デジャァァァッッ!! なんじゃこりゃあデスぅっ?!?!」
「緑の恐怖デチっ!!」
「ぺっぺっ! なんて事をするテチ!!」

「ケラケラケラ。お前達、早くそれを舐め取って綺麗にするテチ。ご主人様にバレたら大変な目に遭わ
されるテチよっ!」
「こ、これはお前がやっ……ぶにゅっ!」
 アンリのかかと落としが炸裂して、大量の糞に顔を埋める偽ラミ。
 本当に仔実装一匹の腹から出てきたのかと疑いたくなるような膨大な糞に嘔吐させられながら、
三匹は、抵抗の術なくただなすがままにされていた。

「今度からお前達はワタチの糞を食べて生きるがいいテチ! 実装フードなんかもったいないテチ! 
テチャハハハハハ♪」

 本物ルミは言うに及ばず、共食いを躾けられてきた偽姉妹も、食糞行為だけは絶対に嫌だった。
 そこまでやるようになると、いやしい糞蟲と同等に成り下がってしまうという自負があったからだ。
 だがアンリは、その最低の行為を強要している。

 何が血統書付きか。
 誰がどうみても、こいつは、最悪の糞蟲だ!

 偽ラミは、ついに、我慢の限界に達した。

「うおおおっ!!! テメェ! 調子に乗ってんじゃねぇぞぉデチぃぃぃっっ!!!」

「テ、テチ?!」
「食い殺してやる、今すぐこの場で食い殺してやるデチーッ!!」
「テチャァァッッ!!!」
 そう言いながら、久しぶりに牙を振るう。
 糞まみれになりながら逃げるアンリ、追う偽ラミ、それを押さえようとする本物ルミと偽レミ。
 もう、部屋の中は緑の地獄、グリーンインフェルノだ。

『ただいまー…ん、なんか臭いな』

 としあきが、実に絶妙のタイミングで帰ってきた。

 偽ラミの動きが、止まった。






             □□□ EPILOGUE としあきSIDE □□□


 もはや、なにもかもだめになった。
 泣き叫び助けを求めてくるアンリと、糞まみれになってアンリを襲おうとするルミ達。
 アンリは、彼女達に糞で汚された事、食べられそうになった事、殺すと脅迫された事を報告してくる。

 もう…だめだ。
 ラミやレミだけでなく、ついに、ルミにまで。

 あれだけ厳格にテストを繰り返し、選び抜いた優秀な一匹だったのに。
 糞蟲化が始まった者と一緒に居ると、まるで感染するように、優秀な者まで糞蟲になる。
 その典型例になってしまった。

「ルミ、俺は恥ずかしい。この一年間、お前を育ててきたのは間違いだった」

「デデッ?!?! デスデス、デスーッ!」

 もう、リンガルなんか使う必要はない。
 こいつらの処分は決まった。
 言い訳は、もう絶対に聞く気がなかった。


 しかし、よく見ると、ラミが居ない。
 どんなに捜しても、どこにも居ない。
 不思議に思っていると、緑の汚れが、点々とサッシの方に伸びている。
 どうやら、換気用に空けておいたサッシの隙間に身体を通して、脱出したようだ。
 ご丁寧に金網まで開けているから、間違いない。
 しかし、そこから出ても庭を彷徨うだけだし、門はくぐれないから外へは行けない。
 まして、温室育ちのラミが外に出ても、生きていける筈がない。
 可哀想だが、ラミを追いかける理由はもうなかった。

「デスーッ! デスーッ!!」
「テチーッ、テチテチ、テチーッ!!!」

「テッチテッチテッチ〜♪ テッテッチュ〜ン♪」

 さすが利口なアンリ。
 もう早速機嫌を直してくれたようだ。
 とりあえず、ルミとレミの処分は後にするとして、今は部屋を片付けよう。

 清掃用具を取りに向かおうとした時、携帯が鳴った。

 ひろあきからだった。



■■■

「ここは何処デチ? 真っ暗でわからないデチ」

 庭へ脱出した偽ラミは、としあきが窓際に来た事に焦り、つい縁の下に入り込んでしまった。
 随分狭い所もあったが、身体の弾力を活かし、どんどん潜っていく。
 少しでも戻ったら、としあきに捕まって殺されると思っていたからだ。
 としあきの手が絶対に届かない所まで、逃げなければ。
 偽ラミは、そんな焦燥感に突き動かされていた。


 どれだけ進んだだろう。
 地を掴む偽ラミの手が、突然、硬いものに触れた。

「デチ? これは…」

 どこかからわずかに差し込んでくる弱い光に照らされたそれは、何か複数の物体が折り重なって
いるように見える。
 それは様々な形状をしており、どうやら、随分と広範囲にちらばっているようだ。
 偽ラミは、その物体に興味を抱き、一番深い所に入り込んだ。

「く…お、お尻がつっかえ……ギュッ!」

 ぶりっ
 キュポン!

 更に狭い空間に身を遠し、硬いものが一番沢山詰まれている所にたどり着く。
 尻が挟まったところは、パンコン時の糞が潤滑剤になって、すり抜けられた。
 ようやく、暗闇に目が慣れてくる。


「デ…これは……ほ、骨っっ?!?!」


 詰まれていた硬いものは、すべて骨だった。
 正しくは、白骨死体。
 全てを確認したわけではないが、形状から、恐らくすべて実装石のものだろう。
 偽ラミは、見慣れているだけあって確信を得るのが早かった。
 なんでこんなところに、こんな大量の骨が?
 よくわからなかったが、とにかく、本物ルミが言ったとおり、この家は普通ではなかった。
 やっぱり、長居してはいけない。
 偽ラミは、自分もこうならないようにと、慌てて今来た道を戻った。



「…あれ?」

「頭が通るけど…そっから先に進まないデチ」

「ぐぎゃっ! く、首も抜けなくなったデチ!」

「どーなってるデチ?! さっきはなんとかすり抜けられたデチ! どうして今度はダメデチ?!」

 偽ラミは、さっきとは高さも幅も違う隙間をくぐろうとした事に、気付いてなかった。
 さっき潤滑剤にした自分の糞の匂いを辿ればすぐだったのに、実装石の骨の山に驚き、それすらも
頭からすっ飛ばしてしまったのだ。

 その瞬間、偽ラミの運命は決まった。

「そうだ! ワタチの体内には反陽子爆弾のスイッチ…じゃなくって、ご主人様に声を送る機械があった
デチ!」
「メーデーメーデーSOS! メーデーメーデーSOS! ご主人様、心を突き刺す必死の悲鳴を聴く
デチーッ!!!」


 
 だが、その声は、ついにひろあきの許へ届く事はなかった。
 運悪く出かけていて、部屋に居なかったのだ。

 実はひろあき本人は、この時板一枚挟んで偽ラミのすぐ頭上に居たのだが、その声はもはや永久に
届かない。

 偽ラミは、そのまま骨山の一角になるまで、隙間に挟まれ続けた。






             ■■■ EPILOGUE ひろあきSIDE ■■■


 それから、ニヶ月が過ぎた。

 オレは、カップヌードル酢豚を食べながら、目の前で展開するバトルを楽しんでいた。


「デジャアウッ! ナンデ、食われなきゃならないデスーっ?!」

「テチーッ! ママーッ!!!」

「レピャアァァッッ! 蛆チャン食べないで、蛆チャン食べないでレフゥゥッッ!!!」


 ずるずる、ぴちゃっ。

 がぶり、ぐっちゃぐっちゃ。

 元成体実装と、その子供の仔実装三匹、さらに親指と蛆だった肉塊が、ルミとレミに呑み込まれて
いく。
 もはやすっかり成体実装になったレミと、その親にして大胆不敵さをブーストアップさせたルミは、
惨めな飼い実装達の生肉に舌鼓を打っている。
 うーん、食が進むなあ♪

「グフグフ、こんなんじゃまだ足りないデス、ご主人様」
「そうデス。もっと捕まえてきて欲しいデス、ご主人様あ」

『そう言うな。お前等の大好物の、大人しくて心優しくて暴力のボの字も知らない飼い実装なんか、
そう簡単には捕まえられないんだから』

「だったら、ワタシ達を公園に放して欲しいデス」
「全部の実装石共を食いつくしてやるデスゥ♪」

 ぶくぶく太り、すっかり巨漢になったレミには、かつての面影は微塵もない。
 そうだなあ、確かに、面白いかもな。
 こいつらも、もうこれ以上飼っていたら可哀想だ。
 オレはよほどの事がない限り、自分が育てた実装石は殺さない。
 間引く以外は、な。
 偽ロミだけは例外だったけど。

『そうだな、じゃあ、ひろあきの家の近くの公園にでも放してやるか。あそこは野良だけと賢くて子煩悩
 な親実装が山ほど居る。お前達も喜ぶと思うよ』

「「 デ ス ゥ ゥ ゥ ッ ッ ッ ♪ 」」

 歓喜の声が重なって響く。


 しかし、結局最後まで生き残ったのは、お前達だったとはねぇ。
 なんか、ストレートすぎというか、予想通りという感じで、全然面白くなかったけど。
 まあ、途中経過が楽しかったから、いいか♪



 としあきが、糞まみれの部屋を掃除している頃、オレは、なんとなく思う事があって、としあき宅を訪ね
た。
 間一髪だった。
 としあきは、壮大すぎる粗相をぶちかましたとして、本物ルミと偽レミの処分を決めたところだった。

 偽ラミはどこかに逃亡してしまい、それからまったく姿を見なくなってしまったが、もしあの時としあきの
家に行かなかったら、大切な命が、また二つ無駄に失われるところだった。

 オレは、としあきに交渉し、言い含め、涙まで流し(←これは科学忍法でどうとでもなる)、としあきの
心を動かした。
 あれだけ一緒に遊び、親しんだひろあきがここまで言うのなら…と、としあきは、「じゃあ、お前に預けるよ」
と言いながら、本物ルミと偽レミをオレに渡してくれた。
 ああもう、実装リンガル使ってたらなあ、二匹がこの時なんて言ってたかすごく興味あったのに。

 とにかくそんなわけで、当初予定になかった本物ルミのご招待と、奇跡の偽レミ帰宅は果たされた。
 命拾いしたと安堵する本物ルミは、たとえご主人様の許を離れても、慣れ親しんだニンゲンさんの傍
なら充分幸せな筈だと、本気で思っていたらしい。

 だが、家の中で待っていたもう一匹のルミと、その下で生き続けていた自分の娘との再会は、彼女を
これ以上ないほどの大混乱に導いた。

 奇跡の再会を喜ぶ一家と、同じ名前を授かっている“すでに三人の子供を失った”一家の共存。
 こんなものが、成り立つはずがない。

 どうせなら盛大なフィナーレを飾ろうと思い、オレは、すぐに全員を同じ水槽に叩き落し、こう言った。


『これから二日間、お前達には一切エサを与えない。
 それと、オレはこの中から、たった二匹しか飼う気はないからな。
 それ以外の奴等は、二匹のエサになる。
 二日後にこの水槽の蓋を開けるまでに、決着を着けろ。
 最後まで生き残った二匹だけを飼ってやる。
 としあきの所のルミ! お前も、娘を殺さないと生き残れないぞ!!』


 こうして、一切の光を奪われた上に押入れの奥深く封印された水槽の中では、蟲毒よろしく実装石
同士の命がけのバトルロイヤルが始まった。

 実装石食いと狩りに慣れた偽一家側は、たった二匹。
 元としあき一家側は、娘達こそ実装石捕食に慣れ始めていたが、倒すべき相手が師匠の上、共食い
未経験の母親が足手まといになっている。
 それぞれに、面白いハンデがついているわけだ。
 しかも、真っ暗闇だからどの実装石も冷静な判断と行動が出来ない。
 凄まじいパニックの中、サバイバルマッチをしなければならないわけだ。
 ああ、暗視カメラ持っていればよかったなあ。
 こんなの、滅多に見られないのに。

 こっそり水槽に仕掛けておいたマイクの音声によると、どうやら、本物ルミは真っ先に食い潰されたようだ。
 しかも、どうやら実の娘達に。
 そして、偽ルミ側に媚びようとし始めた本物三姉妹は、偽レミの怒りを買い、襲われたみたいだ。
 結果、偽レミ対三姉妹の対決になったが、途中から、大御所・偽ルミが動き、本物三姉妹をあっさり
屠ったらしい。
 二匹は悠々と勝ち残り、解放されるまでの時間、本物一家の肉を食い繋いで生きていた。

 そしてその後、偽ルミと偽レミは正式なオリジナルとなった。
 もう、偽などと呼ぶ必要もないのだ。


 すまんなあ、としあき。
 これで、お前が15年かけて育てた血族は、本当に途絶えちゃったよ。
 でもまあ、捨てたのはお前だし、お前んトコには、可愛い血統書付きの糞蟲・アンリちゃんが居るから
いいだろう。

 あんな、ある程度経験を積んだ者なら一目で糞蟲だとわかる奴を、血統書付きだってだけで高い金払って
買ってくるお前の節穴さんぶりに乾杯だ。

 ありがとうよ、としあきに本物ルミ達。
 本当に楽しい時間を過ごさせてもらったよ♪
 

 オレは、次にどういうプログラムで、どこの飼い実装を罠にはめるべきか、構想を練り始めた。

 

 






















































 と、突然、携帯が鳴った。

「もしもし。あ、としあきか。どうした?」

『ああ、ひろあき。ルミ達はその後どんな調子だ?』

「ああ、今、元気に食事してるよ」

『そうか…いや申し訳ない。実はまた頼みがあってさ』

「今度はなんだ? アンリちゃんに胎教の歌でも歌ってやろうか?」

『いや、もうアンリはいないから——』

 ボトッ
 携帯が手から落下する。

 な、なんだって?

 幸い、回線はまだ繋がっていた。
 オレは携帯を耳に戻し、どういう事かと追求する。

『あいつ、一人になったら突然糞蟲化し始めてね。
 ワガママ言うわ部屋は汚すわ、あげくに俺に糞を投げつけてくる。
 なんとかそれでも躾けようとしたんだけど、どうもブリーダーがまともに仕事してなかったみたいでさ。
 もう全然、補正が効かなかったんだよ。

 で、今朝、やむなく処分した。

 そこで申し訳ないけど、そちらに預けておいたルミ達を、引き取りに行きたいんだ』


  な  ん  だ  と  え  。


 お、おいおいおい!
 なんてワガママな奴だ!

「ち、ちょっと待てよ! お前、ルミ達は俺に譲ると…」

『譲るとは言ってない。“お前に預ける”と言ったんだ』

 えっ。
 まさかこいつ、初めから、何かあったらルミ達を取り戻すつもりだったのか?
 なんだよそれ! 奢った物をはき出して返せって言ってるようなものじゃねぇか!
 それに普通、ああいう場で預けるって言ったら、譲り渡すって意味だろ?!

『とにかくそういう訳でさ、悪かったよホント。俺ももう一度気を取り直して、ルミ達を鍛え直してみるよ』

「ちょっと、待て」

『ああ、もちろん、お前の好きな酒を礼代わりに用意しているからさ。今からそっちに持っていくよ。
 いい酒だから期待しててくれ』

「 待 て と い う に 」

『実はさ、俺、お前の家の玄関前から電話してたんだわ♪ ハハハ、びっくりしたか?』


 ピンポーン♪


「ご主人様、誰か来たデス」

 言うな、わかってる。
 もう、お前等隠す時間もねーよ。




 オレはどうやら、もう一つの15年物を、ぶっ壊すハメになりそうだ。


 ——それだけじゃ済まなそうだけどナー





   (完)



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 途中の計算、ろくに検算してないので、間違ってたらスルーお願いします。


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1 Re: Name:匿名石 2023/07/15-17:48:55 No:00007525[申告]
面白かった
悲壮感がなくていいね!
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