タイトル:【?】 見世物小屋 前編
ファイル:見世物小屋1.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3081 レス数:0
初投稿日時:2006/09/13-23:23:32修正日時:2006/09/13-23:23:32
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                               「見世物小屋」




地元の大学を落ちた僕は、何とか滑り込んだ地方の大学に通う為、
近くのアパートを借りて、親の仕送りとアルバイトで何とかやっている。

今日はある街の広場のお祭りに、暇を持て余した僕は一人でやって来た。
大学での知り合いも出来たんだが、友達と呼べる奴はまだいなかった。
人々が集まり活気付いている一角に、何やら怪しい音楽と、それに合わせた口上が聞こえてくる。
その音楽は何処か懐かしい哀愁を漂わせて、広場の人達も足を止めて聴き入っていた。



           —さあ!さあ!さあ!さあ!お立会い!—

           —!寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!—
    
    —今宵は私達、実装一座が皆さんの為に、特に選りすぐった見世物をご覧に入れますよー—
     
       —ぼっちゃん、穣ちゃん、見てらっしゃい、警察の方もどうですかー—
    
      —実装の国からやって来た、タコ実装にミニ実装、コイツは凄いよ!巨大蛆実装—



口上師の声は耳に心地良く、軽快なリズムを奏でる様に続いていた。
どうやら珍しい実装石を集めた見世物小屋らしい。
僕は見世物小屋が21世紀の現在になって、未だ残っている事に驚いてしまい。
人だかりの一人となって聞いていると、ぐいぐいと引き込まれてしまった。
そして口上も佳境に入り、大道芸人いや・・カタワと言われるの実装石の口上に入って来る。


        —火吹き実装にカメレオン実装、ろくろっ首は実装いかがかなー—

         —えーい!しょうがない!実装一座のアイドルをお見せしよう—

                —パンパン!マキちゃんやー—



口上師が手を叩くと天幕になっている裾が持ち上がり、一人の人間の少女が現れた。

半裸でうずくまるその少女には、両手が付け根からばっさり無かった。

ずりずりと這いずる様に出て来ると、口上師の口上が始まる。


       —生まれは越後の黒部ダム、おとさん工事で出稼ぎに、残った母さん野良仕事—

            —母さんクワで耕すと、マムシの胴体見事!真っ二つ—

             —親の因果か気まぐれか、マムシの執念、子に報い—                  
            
              —哀れ、生まれ出たのが、この子でござーい—    
       
           —さあさあー、大人は二千円、子供は半額、学生さんは2割引—

             —妊婦は倍額、片目は半額!目くらの人は無料だよ〜—



僕はあの少女がとても気になった、僕だけじゃ無い周りの人達の目も、あの少女に釘付けとなる。
両腕の無い哀れな少女、蛇女となって見世物小屋で生きて行くしかないのかも知れない。
せめてあの少女を見物して、見世物小屋のアイドルとしてお金を恵んであげたかった。

僕はお金を払い見世物小屋へ入って行く、結構盛況だあの少女のパフォーマンスが効いた様だ。
中は板で遮り細い通路を歩く様な形式で、
所々に変な形の実装石や芸の出来る実装石が自分の芸を披露して、それを見れる様になっている。

そうお化け屋敷に似ている、お化け屋敷と違うのは演じている物が、偽者でなく本物であると言う事くらいか。
生臭い臭いがする演出も中々だ、最後にガラスで仕切られた中に、あの蛇少女が座っている。
蛇少女は足に白い布を巻き、蛇の真似をしている誰が見ても蛇ではない。

不思議だった、実装石は何かしらの演技をしているのに、この少女は床を這いずっているだけ。
少女の顔は悲しそうで、その姿に周りの者も憐れみを持って見ている。
ガラスの前に箱が置いてあり、そこにはこう書いてあった。

           —この子の治療はアメリカの病院でしか治りません—
             —どうか治療費を憐れな少女にお恵み下さい—


いかにもって書き物だが善良な人間には効果絶大だ、
この中に入った人達も箱を見て理解しているが、
どうせもう訪れる事も無い、しょうがないなと言う顔だ。
騙されていると分かってもはいても、優しそうな夫婦者や親子連れがお金を箱に入れていく。

僕も例に漏れず幾ばくかのお金を箱に入れた、その時ガラスの向こうの少女が笑った、
僕は目が合ってしまいドギマギとしてしまう、見るとお金をくれる人には全員に微笑んでいる。

『笑顔も金次第か・・』

外に出ると座長らしき人が司会をしていた、どうやら実装石を使っての闘犬ならぬ闘実装だ。
網の中に囲まれた中では、2匹の実装石が闘っている。
かなりの迫力だ、普段公園で見る様な奴らとは体格も違うし、何より技を駆使して闘っている。
奥の籠にも実装石が何体か入っている、次の出番を待っているのだろう。

網の周りにはさっきの人達が、実装石に声援を送っている。
手に何かを持っている、どうも賭け事をしているらしい、
座長の近くには、オッズが書いた看板があった。


見ていると倍率の低い色の実装石が、圧倒的に優勢な様だ。
そして後ろから羽交い絞めにすると、短い首を絞めていく。

絞められた実装石の顔色が変り、目が空ろになると口から泡を吹き出した。

「ゲブオ!!ゴボボボ!!」
「デジャァアlガッ!!」

ゴキリと大きな音がすると、絞められていた実装石の首がカクンと折れ曲がる。
完全に首の骨を折った様だ、首の骨くらいじゃ実装石は回復するだろう。

あらかた見終わると僕は見世物小屋をでる、
考えるとあの内容で二千円程度なら文句は無い、後味の悪ささえなければ。

祭りだと言うのに興が冷めてしまった、僕はこのまま家路に向かう。





家に帰り布団の中に入ったが寝付けない、あの蛇少女の事を考えていた。
痩せこけて肌の色も悪そうに見える、それに何も話さなかった。
親はどうしたんだろう、何であの見世物小屋に・・



考えても仕方が無い、僕は布団から出るとあの広場に向かった。
広場に着くと時間は深夜一時を回った所でまだ人がいる、祭りの片付けが続いているのか。

見世物小屋はまだそのままにしてある、僕はこっそり天幕の隙間から忍び込んだ。
天幕の中は真っ暗だ、僕は明かりを求めて手探りで歩き始める。

少し歩くと明かりが漏れている場所がある、音を立てずに近づいてみる。
明かりには実装石が2匹、昼間に闘っていた実装石だ・・

実装石達は地べたに座り込み何かを話している。
あいにくリンガルのたぐいは持ってない、何を話しているのかは分からない。

「デスデス・・デス」

強い方の実装石がしきりに、弱い実装石に話しかけている。
語気も強めで説教をしている様に見える、黙って聞いていた実装石だが、

「デスゥゥ!!」

突然立ち上がると、捨て台詞を吐いてその場を後にした。
残った実装石もその場を離れ、奥の部屋へ消えて行った。

僕が明かりのある部屋に入ると、いきなりドアが開いた。
開けた者は見世物小屋の座長だ、座長は僕を驚いたような顔で見ると、
大きな声でみんなを呼んだ。

『何やってるんだ君は!』
『何処から入った!みんなー!』
『みんな来てくれ!泥棒だぞー!!』

部屋にはあの変な形の実装石達が入って来ると、僕を取り囲み今にも襲い掛かろうとした。
その時!奥の部屋から透き通る声が響いてきた。

『待ちなさい!!』

一声で周りの実装石所か、座長すら動きを止めた。
両腕の無い少女は実装石を数匹、引き連れて近づいて来ると。
僕を奥の部屋へ来いと命令した、僕はその時、助かったと思ったが、
これから起こる事を知る由も無かった。


見世物小屋の一室、そこは少女の部屋の様だ、質素な机に座椅子が置かれている。
少女の周りを一生懸命に五匹の実装石達が動き回る、腕の無い少女の腕代わりをしているのか。

実装石の一匹が少女に命令されて、座布団を僕に持ってきた。
僕は部屋に上がり座布団に座った、少女は座椅子に腰掛、足を投げ出している。

『あなた・・昼間のお客さんね』

少女は僕の事を覚えていた、あれだけの人数から憶えているとは、記憶力はかなり良い様だ。
昼間とは違い薄いベージュのワンピースを着て、長い髪が腰まで伸びていた。

座っていると考えてしまう、なぜこんな事をしてまで進入したんだろう。
いや僕は知っている少女に会いたかったからだ、今その少女に会っている。

『憶えてくれんだ光栄だよ』

少女はクスリと笑うと、話を続けた。

『小屋の人以外の人と話すのは、久し振りなの』

少女の受け答えはとても快活で、想像とは違った。
僕の意識の中では、昼間に見た蛇女の姿とだぶらせて見ていたからだ。
少女は話を続ける。

『所で・・どうしてここへ』
『不法侵入よあなた!』

聞かれるとは思っていたが、僕は答えを用意していなかった。
しどろもどろで、何を話したのかさえ憶えていないくらい焦っている。

『いや・・なんて言うか・・その』

少女はフーと一言ため息を付くと、僕の変わりに理由を話し始めた。

『あなたも私が目当てね』
『変な姿でしょ・・わたし』

その通りだった返答も出来ない、少女は人一倍自分の姿を、気にしてるいるのかも知れない。
僕に自責の念が押しかかる、好奇心であの子に嫌な思いをさせてしまったのか。
急に少女は話さなくなった、それを察知したのか周りの実装石達が、少女の元へ集まって来る。
そして僕に対して怒りの目を向け睨みつけた。
       —そんなに睨むなよ、僕も反省しているんだ—

一匹の実装石が僕の前に来て何やら怒り出した、昼間の格闘で負けた実装石だ。

「デジャァア!」
「デス!デス!デス!」

僕を指差し必死に怒っている、今にも飛び掛かってきそうだ。
少女が実装石を諌めた。

『チビ!お客さんに失礼は駄目よ』

少女に怒られ、チビという名の実装石はすごすごと部屋の角に行き、
がっくり首をうなだれ体育座りをした、落ち込み様は見ていて痛々しい位だ。
僕は差し当たりの無い所から聞いてみる。

『マキって名前だったね君』

少女は首を横に振ると答える。

『違う・・名前はサチよマキって言うのは芸名』

悪いと思ったが、サチに見世物小屋やサチの事を、色々と聞いてみた。
元々父親はいないそうで、母親はサチを産んですぐに死んでしまう。
親戚の家に預けられたが、すぐにこの見世物小屋に売られてしまったそうだ。
今時、人身売買などと思ったが、彼女を見ると嘘ではないらしい。

傾いていた実装石専門の見世物小屋も、サチが看板になってから客足も伸びて、
今では結構繁盛していると言う。
座長もサチの事は金のなる木なので、大事にしてくれているらしい。

この実装一座は座長と口上師、そしてサチの3人しか人間はいない。
実装石は50匹ほど飼われており、奇形の実装石は座長が人工的に形を変えているらしい。

「デス!」

実装石がサチに上着を持ってきた、何匹かの実装石は手分けをしてサチに上着を着せる。
両方の袖はだらりと下がっている、手がないから当たり前か。

その光景は介護をしている実装石という感じだ、ここの実装石は媚びる様な個体がいない。
皆一様、献身的にサチの為に働いている、それだけサチとの信頼関係があるからだろう。

『僕の名前は「」って言うんだ』
『さっきは助かったよ、ありがとう』

僕とサチは他愛無い話を繰り返し、話し込んでしまった。
時間が気になったので、ここを出ようとサチに挨拶をしようとしたら、
サチの方から話しかけてきた。

『お願いがあるの』

お願い?一体なんだろう僕は気になったので聞いてみる事にした。

『お願いって、なんだい』

少し間を置きサチは話し始めた。

『明日の見世物小屋の荷造りを、手伝って欲しいの』
『二人とも年でもう大変だから・・』
『アルバイト料も出すように言って置くから』

明日は月曜日なので学校があるんだけど、まあ一日くらい休んでも、どうって事はないだろう。
サチには迷惑を掛けたし他ならぬ頼みだ、僕は二つ返事で返答をした。

『ああ良いよ、明日の荷造りは僕も手伝う』
『ここに何時ごろ来れば良いんだい』

OKの返事を聞くとサチの顔が明るくなる。

『今日は遅いから見世物小屋に泊まって』
『部屋はチビが案内してくれるわ』

『チビ!お客さんを、お部屋にご案内なさい』

いや・・小屋に泊まるつもりは無かったんだが、サチのペースに乗せられたらしい。
僕はしょうがなく実装石の後を着いて行った、行く間際にサチが机の上に置いてある機械を咥えた。
咥えたものは対話式リンガルだった、サチの口から手に取るとサチが話しだす。

『ここではそれが無いと困るから貸してあげる』

リンガルを受け取るとチビの後を追いかけ、突き当たりの一室に着いた。

「ここがお前の部屋デス」
「あまりうろちょろするなデス」

僕はチビには嫌われているらしい、チビは僕を部屋の中へ入れた。

「朝になったら起こしに来るデス」
「まったくサチ様の気まぐれにも困ったものデス」

バタン!

部屋の中は電気が付いておらず真っ暗だ、部屋の電気を付けようと手探りでスイッチを探した。
グリュリ・・何かが足に当たっている、僕は部屋のスイッチを探し当てると電気をつけた。

パチチ!

部屋の中では巨大な蛆実装が僕を見つめている、他にも折れ曲がった蛆実装や、
ボールの様にまん丸な奴もいる、ここは蛆実装の部屋らしい。
それにしてもでかい、僕よりでかい様だ、太さも相撲取りくらいはある。

蛆実装の間を抜けて畳のある所に座ると、巨大な蛆実装が擦り追ってくる。
僕は怖さより好奇心のほうが勝ってしまった、巨大蛆実装のお腹を撫でてみた。

すりすり  すりすり

「エフェェェエ!気持ち良いレフェェ」
「もっとやって欲しいレフェェ」

僕の周りに他の蛆実装も、相手をして欲しいのか寄って来た。
幾らなんでも一人では無理なので、全部の蛆実装を順番にぷにぷにしてあげた。

「嬉しいレフ、嬉しいレフゥ」
「今日はぷにぷにまだだったレフ」

小一時間ほど相手をしてあげると、蛆実装たちは大人しくなった。
そして口々に不満を話し始めた。

「今日はサチ様、来なかったレフ」
「さびしいレフ、さびしいレフ」
「悪い仔だから嫌われたレフ」
「レフェェェェェエエン!!」

どうやら毎日来ているサチが来なかったから、不安でしょうがないようだ。
来なかったのは僕のせいなんだが・・泣き声がうるさい、僕は蛆実装の間でごろ寝をした。
横になりながらこの蛆部屋でサチが、蛆実装を可愛がっている姿を考えながら眠りに付いた。



朝になるとチビが起こしに来た、僕は寒かったのか巨大蛆実装に抱きついて寝ていた。
簡単な朝食を貰うと朝から僕は荷造りの仕事をした。

座長は最初、僕の事をいぶかしんだがすぐに慣れてしまい、普通に会話をするようになる。
口上師は仕事の時はあれだけうるさいのに、それ以外の事となるぶっきらぼうで無口な人だった。

お昼ごはんを食べる頃には、僕達はすっかり打ち解けてしまい、笑い声も聞こえるようになる。
荷造りには実装石も手伝いに来ている、昨日の格闘実装2匹も一生懸命だ。

大きな荷物を巨大蛆実装に積むと、巡回しているトラックにそのまま積み込んだ。
戦車でも積み込むように、巨大蛆実装はトラックまで上がると、
小さなものは実装石に、大きなものは人間が手分けをして作業を進める。

3時頃になると全ての作業が終わり、僕は別れの挨拶をした。
一行は次の催し場へ行くのだろう、サチが近づいて来た。

『はいこれ・・』

サチの視線の胸ポケットには紙袋が入っている。

『アルバイト代、それと・・・』

『手紙が入ってる、家に帰ったら見て』


僕はサチの胸ポケットから紙袋を手に取って見ていると、サチは別れも言わずに走り去ってしまった。
実装一座が去っていく、トラックに満載された実装石と一緒のサチを、僕は見守っていた






家に帰ると僕は、リンガルを返すのを忘れていた事を思い出した。

サチから預かった紙袋を開けると、1万円札が一枚と手紙が添えられていた。
筆ペンで書いてある文字は、お世辞にも上手いとは言えず読むのも大変な位だ。
おそらく僕達が荷造りをしてる間中、口に咥えて書いたのだろう。

中身は挨拶や僕の感想、身の回りの実装石の事が稚拙な文で書いてある。
読み進めていくと、次の開催地の詳しい文も書いてある。

彼女に僕は気にいられたのかも知れないな、悪い気はしなかった。
最後の方の文に気になる事が書いてあった。



あなたの街で開催していたのは、ほんの一部の催しです
本当の私達の舞台は、次の街で夜中にひっそりと開催されます
裏の実装一座を見に来てください、本当の見世物はそこにあります
開演時間は・・・




裏の見世物小屋か・・彼女はなぜ僕に見て貰いたいんだろう。
返し忘れたリンガルを眺めながら、僕は考えていた。









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今回の話は途中まで書いて、ふっと考えてしまいました、
題材に問題ありと考えたからです、マイルドにと言うより、
話は根幹から全く違うものに変ってしまいました。

後半は山を作って盛り上げ様と思います、
口上はフォーク世代の人なら分かるかもしれませんね。



見張り作者
 













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