タイトル:【虐】 後編
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:8489 レス数:0
初投稿日時:2006/09/12-20:31:22修正日時:2006/09/12-20:31:22
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絶望の唄 後編




・・・・そうして本日の査定が終わり、生ゴミと生き残りの仔蟲は狭い飼育水槽に戻った。

生ゴミは不安そうに仔蟲を見つめる。
また、いつもの様に・・・・・・・・、
子供の信頼を裏切り、その上愛すべき姉妹を殺して貪った自分を子供が非難し、拒絶するのではないかと。

しかし仔蟲は少ししてから生ゴミに抱きついて大泣きを始めた。

「こわかったテチュゥゥゥーーーーー!!!!!!
 どうちてニンゲンはあんな酷いことをするんテチュゥーーーー!!」

ワンワンと泣き、生ゴミに縋りつく仔蟲。
随分と演技がお上手だな。

どうやら俺の説明をとりあえず理解し、生ゴミを騙すことの重要性を分かってくれた様だ。
愛する妹たちの仇である生ゴミに最大級の絶望を与えられるのはお前だけだとそそのかしたら、
随分あっさりと事が進むものだ。

俺の事を非難し、生ゴミを慰める仔蟲の演技は真に迫っている。
本心も出ているのだろうが、ここは不問にしよう。

初めての体験に生ゴミは戸惑いつつも自分の正当性を認めてくれる仔蟲を抱きしめて優しく諭す。

「これでママが言ってたことが判ってくれたデスか・・・・。
 ワタシ達家族が自由になるためにはあのニンゲン様を唸らせるほど賢い仔にならないといけないんデス・・・。
 ・・・・・ワタシ達に残された時間は・・・あと7日デス・・・。
 これからは今までとは比べ物にならない位難しいお勉強をしなくてはならないデス。」

「それができれば・・・ワタチたちは・・・・自由になれるんテチュ?」

「そう・・・デスゥ。
 お前があのニンゲンさまに認められれば・・・ワタシ・・・達は本当のご主人様の所に帰れるデス。
 さあ、これからが・・・正念場デス。
 ワタシは今まで躾けられたことを全てお前に伝えるデス。
 そうすれば・・・・お前はワタシと同じ、特級飼い実装になれるデス。
 ワタシが産んだ子供の中で一番賢い仔のお前ならば・・・・きっと出来るはずデス。」
 
「ママ!!ワタチがんばるテチュ!!!
 一生けんめいお勉強ちてしけんに合格するテチュゥ!!」

「その意気デスゥ♪
 さあ、残り時間は少ないデスから、お勉強を始めるデスよ。」

「はいテチュ!!」

そうして生き残りの仔蟲は折り合いを付け、俺の言うとおり今までと同じ従順な仔蟲を演じた。
当の生ゴミは予想通り・・・・・いつもの仔蟲の様に狂って騒がない生き残りの仔蟲に気を良くし、
いままで以上に優しいフリをしている。

初めて正気のまま生き残った賢い子供を手にした生ゴミは、
自分の持てる知識を全て仔蟲に移すつもりで勉強を教えている様だ。
仔蟲も自分が生き残り、生ゴミに復讐するために・・・惜しみなく与えられる知識を吸収している。
ただ、反感を買わない媚び方や人間の役に立つように仕込まれた技能(床拭きやゴミ出しなど)の
俺の出す試練には一切役に立たない勉強を必死にしている愉快な生ゴミ親子。

生き残りの仔蟲も実装石にしては物覚えが良い方だから今回はなんとか試験まで生き残れるかもしれない。
少なくても生ゴミが癇癪を起こして仔蟲を叩き殺すという失態はなさそうだ。
・・・・・まあそうでなくては困る。

これが生ゴミにとっての最後のチャンス。
今腹の中居る仔蟲は全て奇形の上、自身の命も尽きている肥溜めはこのチャンスを外せば
永遠に愛しいご主人様に再会することは叶わない。
生ゴミ自身も寿命が切れ掛かっていることには薄々気付いている様で、
この千載一遇のチャンスを活用し、懸命に仔蟲を一人前に育てようと努力している。

腹の大きくなった生ゴミと生き残りの仔蟲は一見仲の良い親子の様に見える。
だが腹の中はどちらもヘドロの様に真っ黒な有様。

親は仔を売る為に、仔は親に復讐する為に・・・互いを利用するためだけの関係。



そうして7日が過ぎ、運命の試験日がやってくる。
一週間前よりも一回りほど大きくなった仔蟲と
顔色が青白く仔を孕んでいる腹が通常の二倍に膨張している生ゴミは
自信満々に俺の顔を見上げている。

試練は簡単な事・・・・・障害物レースにチャレンジしてもらう。

今回用意したのはイン○ィー・ジョーンズ 最後の聖戦のラストの所で出てきた落とし穴の廊下の簡易版。
アレは名前順に文字を移動しないといけないが、実装石にそんな複雑な芸当は不可能。
そのため、床のパッチワークタイルに○×をふって代用としている。
ただ・・・・○×の意味が逆転しているのに気を付けないと死ぬがな。

親子は唖然としてそれを見つめる。

「ママ・・・・・これの何処に・・・・今までのお勉強が・・・役立つ・・・テチ・・・?」

「デェ・・・・・。
 こ・・・こんなの聞いてないデス・・・。」

今までの必死の勉強が屁の役にも立たないことを悟って固まっている仔蟲を吊るし上げて
ステージにエントリーさせる。

「さあ、仔蟲ちゃんいよいよ運命の試験がやってきましたよ。
 この試験を見事パスできればキミを自由にしてあげよう。」

「わ・・・わかっていますテチ・・・・・・。
 ニンゲンさん・・・・これは・・・ママ・・ううん、アイツが言ってたのとは全然ちがうテチ・・・。」

「ああ・・・そのことか。
 アイツは人の話をよく聞かないで何でも自分の都合のいい様に解釈するからなぁ。
 どうやら試験の意味を取り違えたみたいだね♪」

「て、テェ!!」

初めて目にする悪意の篭った仕掛けに怯える仔蟲。
そして震える仔蟲を不安げに見つめる生ゴミ。

「まあ、俺もいきなり挑戦させるのもかわいそうな気がするから例を見せてあげよう。
 これを参考にして試験の突破を目指してくれい。」

そう言って仔蟲の乗っているステージの上に10匹程の蛆ちゃんを放す。

「レフー♪」
「レッチー♪」
「レリューン♪」
「レフレフー♪」
「レヒー♪」
「レリュー♪」
「レフー♪」
「レフレフー♪」
「レリューン♪」
「レッチー♪」

どの蛆ちゃんも状況を理解しているとは言い難い能天気な鳴き声を上げてステージ上をウジウジと這いずり回る。

「う、蛆ちゃんテチ♪」

感激の声を上げて蛆ちゃんに駆け寄る仔蟲。
ポテポテと駆け寄ってくる大きな同族に興味ひかれた蛆ちゃんたちはワラワラと集まってくる。

「「オッキナオネエチャンレフー♪」」
「「「「プニプニシテレフー♪」」」」
「「レフレフーン♪」」
「「ゴハンホシイレフー♪」」

これから始まるデスゲームのことを忘れて蛆ちゃんたちと戯れ始める仔蟲。

亜種の多い実装石の中で蛆実装というものはかなり特殊な位置にいる。
こいつ等は元々、仔実装や親指実装などに目の色を変えて行う強制出産させた時などに生まれてくる未熟児。
普通なら3週間かけて構成されるモノをたったの数分で済ませて産み落とされるわけだから、
全てが出来損ないなのはあたりまえのこと。

10センチほどの高さから落としただけで死ぬほどチリィし、実装石特有の再生力もまるで無い。
頭もミジンコ並みの仕様になっていて人間の指示どころか、親の実装石の指示すら理解できない白痴ぶり。
知っている言葉も5〜7と大変少なく(野良の仔実装ですら30程の単語を知っている)
言葉による意思の疎通をしようとすること自体がそもそも無謀なのかもしれない。

普通ならこんな連中は即エサになって昇天してしまうと思われているが、
食い意地の張っている実装石どもがこいつ等のことを庇護して育てることがあるらしい。

仔実装や子供を失った親実装が道端をうろつくこいつ等を持ち帰ってペットのような感覚で育てるのだ。
まあ、蛆実装が仔実装に変化するまで生かしておくほどヤツラも気長ではないので・・・・、
何かの拍子にオヤツ代わりパクついて仮初の家族ごっこは終わりを告げている様だ。

親蟲よりも仔蟲の方が蛆実装に興味を引かれるらしく持ち主のいない蛆ちゃんを見つけると
必ずといっていいほど巣に持ち帰り新しい家族にするという。

これは実装石の階級意識の表れといえなくも無い。
親、仔蟲で構成される家族の中に蛆実装という最下級のカーストが生まれるのだから・・・。
そうすれば、仔蟲たちは自分よりも劣った蛆実装という蔑むべき対象が出来てちっぽけな自尊心を満たすことが出来る。

実装石に博愛や慈悲の心など存在しようも無いのだから過剰な期待などしないことだ。
そうでなければ・・・、
自らの理想とかけ離れた実装石の本性を知ってしまい、虐殺派に転向した身勝手な愛護派達の徹を踏むことになる。


蛆ちゃんと戯れて幸せそうな仔蟲に声をかける。

「さて、これから例を見せよう。
 これから起こることをしっかり観察してこのゲームの特徴をしっかり把握してくれよ。」

「テェ!!!
 は、はいテチ・・・。」

立ち上がって構ってくれなくなった仔蟲にプニプにしろと催促をしている蛆ちゃん達に良い物を見せてやる。

「「「「「「「「「「レリュゥゥゥーーーーン♪」」」」」」」」」」

実装石の大好きな金平糖を仕掛け床の最前列に10個並べて置く。
本能に刻まれた金平糖の素晴らしさに突き動かされて蛆ちゃん達はまっしぐらに這いだす。
暢気に這いずり、1分もかかってようやく金平糖の置いてある床に接近する。

「よく見ていろ仔蟲。」

「「「「「「「「「「レリュゥゥゥーーーーン♪」」」」」」」」」」

歓喜の声を上げて金平糖に突撃する蛆ちゃんたち・・・・・・そして、
X印の床以外に乗った蛆ちゃんは床が抜けて下の仕掛けに落ちた。

「「「「「「「「「レビィィィィィイィィィイイイイィィィーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」

落とし穴の終点に辿り着く前にみんな落ちた衝撃で破砕してしまった・・・・。

「て、テェ!!! 
 何で・・・・○がダメなんテチ・・・。
 ○は正解じゃないテチか・・・・・・・・アイツのお勉強は嘘ばっかりテチ!!!」

「サービスは終いだ仔蟲ちゃん。
 これからお前はその足りない頭を駆使してこのゲームをクリアしなくてはならない。
 制限時間は30分、ちなみにタイムオーバーは死刑、リタイアも死刑だからよろしくな♪
 さあ頑張って逝きましょう!!!!」

「そ・・・そんな・・・・もっとヒントがほしいテチ・・・。」

「今ので十分だろ?
 それとも・・・お前の頭は生ゴミよりも馬鹿だから折角のヒントを活用出来ないのかな?」

「テェ!!!!ワ、ワタチがあんなクソ蟲に劣るわけがないテチ!!!
 分かったテチ!今からワタチの方が何倍も優れていることを見せてやるテチ!!!」

そういうと仔蟲は気炎を上げて仕掛け床に挑みかかっていった・・・・。


・・・・・・この仔蟲は中々有能らしい。
何度が早とちりして○の床に足を踏み入れそうになるが、直ぐに思いとどまって×の床に飛び移る。
そうして最前列の所で拾った生き残りの蛆ちゃんを抱えながら順調に歩を進める。

「オネエチャンプニプニレフー♪」

「後で遊んであげるから今は静かにしていてテチ!」

「レフレフー♪」

能天気な蛆ちゃんにイライラしながらも開始7分で中間地点に辿り着く仔蟲。
良いペースでここまで来たが・・・・・これからが難関。
今までよりも床の大きさが小さくなり、安全地帯の×床が少なくしてある。
しかも○の床が格段に多くなり×の床が飛び地の様に存在する仕様。

「テェ・・・・・・・。」

冷や汗がダラダラと流れ落ちる仔蟲ちゃん。

「ほら幾ら時間があってもそんな所で突っ立てるとクリアできないぞ。」

「頑張るデスゥーーーー!!!!
 お前の頑張りにワタシの未来が掛かってるんデスゥーーーーー!!!!」

「ほら、ママも応援してくれてるぞ♪」

「・・・・・・・・絶対・・・・地獄に・・・落としてやるテチ・・・。」

目に暗い炎を宿して生ゴミに毒付く仔蟲。
・・・・・そして仔蟲はまた進み始めた。


手強い仕掛けに苦戦しながらも仔蟲は進み、ようやくゴールの傍までやってくる。
残り時間は後4分、あと少しの距離だが・・・・進めない。
最後の床は2枚以外は全て○の床、そして残りの床は無地。
片方が地獄に落ちて、片方が自由へと続いている。

「ほら、時間が無いぞ仔蟲ちゃん。
 早くしないと死んじゃうぞ♪」

「わ・・・わかっていますテチィ・・・・・。
 でも・・・・どっちが・・・・正解・・・なんテチ・・・。」

「何をやってるデスゥーーーーーーー!!!!!!
 早くゴールに飛び込むデスゥーーーーーー!!!!!」

「だとさ仔蟲ちゃん。
 優しいママだねぇ・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

仔蟲は梅干みたいな顔に変化して床を睨み付ける。
時間はあと2分。

残り1分30秒・・・・・・・仔蟲は決断した。
抱えていた蛆ちゃんを床に置き、右側の床に進ませる。

「レフレフー♪」

楽しげな鳴き声を上げて進む蛆ちゃん・・・・・そして・・・、

「レフゥーー?」

蛆ちゃんは奈落の底に落ち・・・・・、

「レビィ!!!!!!!!」

底に激突して死んだ。

「・・・・・蛆ちゃん・・・・・・・・・・ごめんテチ・・・・。」

仔蟲はホロリと血涙を一滴流して安全が確認された床を渡り、ゴールに辿り着いた。


仔蟲は二つのゴールの前に立っている。
一つは生ゴミが飼い主の元に帰り、仔蟲が虐待用飼い実装になる道。
もう一つは仔蟲が自由を得て、生ゴミがここで朽ち果てる道。

「さて、残り時間はあと30秒。
 早くしないと今までの苦労が水の泡だぞ♪」

「はい・・・テチ。」

「は、早くゴールするデスゥ!!
 急がないと時間が、時間が無くなるデスゥーーーーーーー!!!!!!」

・・・・仔蟲は生ゴミの方を向くと、

「お前はここで死ぬテチ!!!
 仔食いの報いを受けるテチィ!!!!」

そういって自由を得る道へ飛び込んだ。




運命は無常だな。
仔蟲は自由を手にいれ、生ゴミは切なる望みをわが仔の手で砕かれ・・・・ここで朽ち果てることになった。
普通の2倍に膨れ上がった無様な腹を抱えて震える生ゴミに声を掛ける。

「おめでとう、生ゴミ。
 お前の産んだ仔蟲は見事自由を勝ち取ったぞ♪」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・デェ・・・・・・。
 ・・・・・・・・・これで・・・・ご主人様の所に・・・・帰れる・・・・デスゥ?」

「お前さんはここで死ぬんだよ。」

「だ・・・・だって・・・子供がちゃんと・・・ゴールまで辿りついたデスゥ・・・・・。
 ちゃんと・・・約束は守らないと・・・・・・・ダメデスゥ・・・・・・。」

「だ・か・ら、お前の子供は自分だけ自由になれる道を選んだのだよ。
 お前もちゃんと見ていただろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしてデスゥ・・・・。
 なんで・・・あの仔はワタシを裏切るんデスゥ・・・・・。」

「それはなぁ・・・・お前が姉妹の仇だからだよ。」

何で!!という顔で俺を見つめてくる生ゴミ。

ワタシが仔喰いなんて卑しい所業をしたのはお前の所為だ!!!
ワタシはそんな野蛮なことをしたくはなかった!!!!
お前がワタシに強制したからだろう!!!!

不満が顔ににじみ出ている生ゴミだがさすがに声に出しては何もいわない。
賢いだけあって今までの境遇がちゃんと教訓になっている様だ、偉い偉い♪

「まあお前さんはあと半日もすれば勝手に死ぬ状態だ。
 いまさら元の飼い主の所に戻っても意味はあるまい。
 それにお前の飼い主だった愛護派って人種は上辺でしかものが見えない浅はかな連中だからなぁ。
 もしも俺の気が変わってお前さんを元の飼い主の所に送り返してやったとしても
 開封してお前の姿を見るなりすぐにゴミ箱に捨てると思うぜ。」

「・・・・・そ・・・んなこと・・・ないはずデスゥ・・・。
 ご主人様は・・・きっとカワイイワタシを受け入れて・・・くれるデスゥ・・・・。」

「無駄無駄、あいつ等は表面の綺麗なものしか目に入れようとしない。
 お前が後生大事に飼われていたのもその・・・なんだ?
 ・・・今風にいうとキモカワイイとか言う外見に騙されて貢いでいたようなもんだろう。
 昔のままなら、受け入れてくれたかもしれないが・・・今のザマでは到底なぁ・・・・。」

自分の体を見下ろして黙り込む生ゴミ。
・・・・・・・思い当たる節が有るのだろう。

「まあ百聞は一見にしかずだ。
 これでも見てよく考えてみてくれ。」

一枚の写真を生ゴミに手渡す。
そこに写っていたものは、裕福そうな男と愛らしい顔をした実翠石のツーショット。
どちらの顔からも幸せに満ち足りたオーラが漂ってくる様な笑顔をしている。

・・・・そう、この写真に写る男は生ゴミの前の飼い主。
生ゴミをこの苦境に叩き込んだ・・・・・・・優しい・・・元飼い主。

・・・・生ゴミは差し出された写真に写る元飼い主の笑顔を見てぱっと表情が明るくなるが、
主人の腕に抱かれている実翠石を見るなり顔が梅干の様に皺だらけの不満顔に変化した。

「コイツは・・・ワタシの・・・ご主人様じゃ・・・ない・・・デスゥ・・・・。
 ワタシのご主人様・・・なら・・こんなブサイクには・・見向きもしない・・・はずデスゥ・・・。」

「嘘なものか・・・ほれ、これがお前さんの在りし日の姿だ。
 横に写っている人間の顔をよく見ろ?
 ご主人様がちゃんといるだろ?」

「ご・・・・ご主人様ぁ・・・・ワタシの・・・やさしい・・・ご主人・・さま・・・・デスゥ・・・。」

そういって豪華な実装服をきた飼い実装を抱きかかえて楽しそうに笑う男が写っている画像を生ゴミに見せてやる。
とある愛護派掲示板から拾ってきた画像をプリントアウトした荒い代物だが生ゴミには十分らしい。
幸せだった昔(1年ほど前)を思い出して過酷過ぎる現実から逃れようとしている様だ。

「で、この男は誰だい?」

さっきの写真を目の前に突きつけてやる。

「デェェェ!!!!!!!!!!
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご・・・ご主人・・・さま・・・デスゥ・・・。
 何でワタシのご主人様が・・・・・こんな奴と・・・一緒に居て・・・幸せそうに・・してるんデスゥ・・・。」

「それはなぁ、お前のことを捨てた後に購入した実翠石との生活が
 お前のどうでもいい我侭を全部叶えながらの飼育に較べれば1万倍は楽しいということの表れみたいなもんだよ。
 何にも出来ない実装石に較べて実翠石は自分の世話ぐらいは教えられなくてもこなすし、
 実装石の様に欲望の催促が無制限に増長することはないからな。」

「・・・・・それじゃあ・・・ワタシが我侭だったから・・・捨てられたんデスか・・・・。
 ワタシは・・・・そんなに・・・無理難題を・・・・言わなかった・・・デス・・・。
 そうしないと・・・先生達に死ぬほどぶたれる・・・デスゥ・・・。」

「そんなことは無いだろ?
 金持ちの元飼い主がウンザリするほど我侭放題だったみたいじゃないか。
 ちゃんと裏を取ってあるんだよ糞蟲ちゃん。
 あるツテを使って元飼い主さんにお前を飼っていたときの苦労や不満を聞かせてもらっているよ。
 お前たちは持ち上げると直ぐに付け上がって何でも自分のいう通りになると思い込むから始末が悪い。
 それに物の価値がまるで分からない実装石に大枚はたいて高価な餌を食わせても意味の無いことだしな。」

「ワタシは違うデスゥ!!!
 ワタシは学校の先生達の言う通り色んなことを我慢したデスゥ!!」

「具体的には?」

「え・・・・えっと・・・、
 ご飯はステーキとかお寿司じゃなくて・・デスゥグリージャムの金の皿で我慢したデス。
 でもデザートの・・・プリンだけは譲れなかったデスが・・・。
 とても疲れるから・・・やりたくない床掃除も3〜4日に・・・・一回やったデス。
 ご主人様が帰ってきたら・・・眠くて面倒くさくてもリビングまでお出迎えに行ったデスゥ。
 そうすれば・・・コンペイトウを貰えるから・・・デスゥ。
 ・・・・ご主人様は・・・ケチ・・・デスゥ。
 コンペイトウぐらい・・・好きなだけ食べさせて・・・くれたった・・・いいのに・・・デスゥ・・。
 お洋服も一週間に一つしか買ってもらえなくても我慢したデス。
 でも・・・カタログの服は・・ワタシに似合う・・・素敵な服が少なくて・・・こまったデスゥ・・。
 だから・・・いまいちの品揃え・・・だったときは・・・一番高い物を・・・買わせたデスゥ・・・。
 賢い仔だけを生むためにお腹の赤ちゃんを殺された時もバケツ入りのアイスクリームで許してあげたデスゥ。
 ワタシの仔が糞蟲な・・・わけないのに・・・数を減らせと・・・言われたときは怒った・・・ものデスゥ。
 だけど・・・特別なときしか食べさせてくれない美味しいアイスクリームをバケツで食べさせてあげると・・、
 言われたから・・・しょうがなしに・・・堕胎した・・・デスゥ。
 殺された子供は・・・かわいそう・・・デスが・・・あのアイスは美味しかったデスゥ♪」

・・・・・・・・・愛護派という人種はとても物好きな人種なんだな・・・・・・・。
こんな糞蟲を200〜300万円の大枚を叩いて購入して、更に無駄金を惜しみなく投入するとは・・・・。
こんな浅ましいものに愛を注ぐ忍耐強さに俺は敬意を表したいね。

「どの道・・・お前はもうお終いだよ。
 飼い主という名の便利でやさしい奴隷に再会することは決して無い。」

「まだまだデスゥ!!!!
 このお腹にいる仔は・・・あの裏切り者よりも何倍も賢いデスゥ!!!
 今度こそ・・・合格してご主人様のところに・・・帰って幸せになるデスゥ!!!!!!!」

気炎を吐く生ゴミにある物を見せてやる。

「これが何だか分かるかい?」

「・・・・・なんデスゥ・・・。
 この歪で・・・汚らしい色の石は・・・・?」

楽しいことをおっしゃられる生ゴミちゃんの前で歪で汚らしい色の石の入った小瓶を振ってやる。

「で・・・・デギィ!!!
 デギャバアッババァァァーーーーーー!!!!!!」

「この歪で汚らしい色の石はお前の偽石だよ。
 自分の命も分からなくなるぐらい知能が退化したみたいだな?」

「わ・・・ワタシの命・・・・!!?」

「そうだ、この歪で汚らしい色の石が卑しいお前の命そのものだ。
 こんなボロボロではいつ崩れてもおかしくない状態で、まあ後半日持てば良い所だな。
 それになぁ・・・・お前の腹の中にいる仔蟲どもは全て奇形で粗方死んでるよ。」

俺の宣告を鼻で笑うと生ゴミはほざく。

「そんなことは・・・無いデスゥ! 
 赤ちゃんは・・・ちゃんと生きてる・・デス。
 命が残り少ないなんて・・・嘘を付いても無駄デスゥ♪
 ワタシはこ〜〜〜んなに元気・・・・・ぃ?」

突然、生ゴミがうずくまると・・・・ブルブルと震えだして転がり始める。

「デデデデェ、デギィィィィィィィィーーーーーー!!!!!!!
 お、お腹がぁーーーーー破けるデスゥーーーーー!!!!!!
 たたたったたた、助けテェェーーーーご主人様ァァァァーーーーーーー!!!!」
 
陣痛とはまるで違う痛みに悶え苦しむ生ゴミ。
とうとうコイツの寿命が尽きた様だ。

腹の中で死んだ仔蟲達の死骸から出る屍毒でただでさえ弱っていた内臓をやられて、
今まで生きていたのが不思議なくらいだ。
しかし・・・飼い主の元に帰り、昔の様な安楽な生活をするという望みだけでここまで粘る・・・、
実装石の思い込みとは凄まじいものだな・・・・死すら騙くらかすとは・・・。

唯一の希望が打ち砕かれた今、
コイツを支えるものは何も無く、腐った体を震わせて死ぬ瞬間まで苦しみぬくしかない。

「なんでぇ・・・・・・いい子のワタシがぁ・・・・なんでぇ・・・こんな酷い目に・・・あうんデスゥ・・。
 もう痛いことも・・・苦しいことも・・・悲しいことも・・・こりごり・・・デスゥ・・・。
 お願いデスゥ・・・・どうかぁ・・・お慈悲をぉ・・・・・・デスゥ・・・。」

「ダメだよ♪
 誰が楽にしてやるものか。
 俺はお前がくたばるその瞬間までお前の苦悶と絶望に打ちひしがれる様をたのしませてもらうよ。」

信じられないと言いたげな顔で俺に縋り付こうとするが、
もう動くことすら侭ならない生ゴミはただ両手を差し出して俺に助けを求め続ける。

「お・・・おねがい・・・・デスゥ・・・。
 せ、せめて・・・お腹の赤ちゃんだけでも・・・・助けて・・・・くださいデスゥ・・・。」

「へえ、自分の命はいらないのかい?
 腹の仔蟲とお前の命のどちらかしか助けないと言ったらどっちを選ぶ?」

・・・・・考え込み始めやがったよ・・・・・。
本当に死ぬまで糞蟲だな。
最後ぐらい潔くしろよな・・・・。

「まあいい死に逝くお前の手向けとして腹の子を摘出してやろう。
 どの道、お前にはもう子供を産み落とす体力は残されていないからな。」

「あ・・・・ありが・・・・デギィ!!!!」

生ゴミが返事をするよりも早く、通常の妊娠実装の2倍に膨らんでいる腹を縦一文字に切り裂いてやる。
肉が生きながら腐り始めているのでいつもの様にスパッと切れず、
熟れ過ぎたトマトを切ったようなグチャグチャな傷口から胃の内容物が噴出してくる。

ここ2〜3日中に喰った餌はまったく消化されておらず、噛み砕かれて臭い唾液にまみれた状態・・・・・。
本題の仔蟲も・・・・・・どれ一つとしてまともな姿をしたものがいない。
頭が無いもの、骨格の無いもの、四肢の無いもの、下半身の無いものなどはまだマシな方で、
歪な肉の塊や赤緑のゼリーみたいなものなどが次々と噴出してくる。

「デデェ!!!!! 
 な・・・・・・・・・何なんです・・・・・これは・・・・。」

「これは皆、お前の自慢していた子供だよ。
 お前があの裏切り仔蟲よりも賢くて将来が明るいと抜かした仔蟲どもだ。
 どうやら先に死んだ奇形仔蟲の屍毒がまだ生きていた仔蟲達の体を歪めて最終的に殺したみたいだな。
 ここ最近のお前の産む仔蟲はみんな体が弱くて、
 いくらチリィ仔実装とはいえ簡単に死んでしまう虚弱仔蟲ばっかりだったからなぁ。」

ブルブルと震えながら辛うじて仔実装の形をしている仔蟲を力の入らない手で持ち上げて・・・抱きしめる。

「なんで・・・デスゥ・・・・。
 どうしてこの仔たちは生まれることすら出来なかったんデスゥ・・・・・。」

「お前の所為だよ。
 お前が糞蟲だからこいつ等は死ななくちゃならなかった。
 ただそれだけのことだ。」

「ワタシは・・・・糞蟲じゃない・・・デスゥ!」

「いいや、糞蟲だね。
 そうじゃなきゃ、お前の愛しいご主人様はお前を捨てなかっただろう。
 そしてお前が稀に見る偽善糞蟲じゃなきゃ俺の興味を引かずに済んだはず。
 お前がただの堕落した飼い実装なら一ヶ月ほど拷問してから火炙りにして終わりだったのに・・・惜しいことだ。」

蠢く腐ったトマトの様になった生ゴミは・・・・・・・、

「・・・・・・・ご主人さまぁ・・・・・かわいい赤ちゃんが生まれたデスゥ♪。
 ワタシにそっくりの・・・・かわいい・・・カワイイ・・・カワイイ・・・赤ちゃん・・・・。
 恥ずかしがり屋でちっとも鳴かない・・・ワタシのかわいい赤ちゃん・・・・デスゥ♪」

生ゴミは奇形の死骸を愛しそうに抱き、壊れたスピーカーの様なダミ声で実装石の子守唄を歌いだす。
すると・・・濁った赤緑色の血涙が真っ黒に染まり、
再生能力の恩恵が失われた傷口からもタールのようなドス黒い体液が滲み出してくる。

実装石を極限まで嬲り潰し、偽石の生体エネルギーを全て消費させて死に追いやるとこういう楽しい現象が見られる。
この黒い体液は、実装石の体内で生産される老廃物や取り込んだ汚染物質が腎臓等で浄化されなくった血液。
実装石が劣悪な環境で生ゴミなどの腐ったものや体中に汚染物質を溜め込んでいる同族を喰らって生存して
いられるのも出鱈目な再生能力に勝るとも劣らない強靭な腎臓の働きがあればこそ。
その働きが失われてしまえば・・・・いくら出鱈目な再生能力を誇る実装石でも生きながら毒に蝕ばれて、
腐敗と再生を繰り返しながら長い時間をかけてジクジクと死ぬことになる。
その時に見せる苦悶の様は虐待を嗜むものなら一見の価値がある。

「がわいいぃぃぃ・・・ワダジだち・・・・は・・・・しわあせ・・・になるたべにぃ・・・
 うばれてきた・・・デズゥ・・・・。
 おいしい・・・ごはん・・・に・・あったか寝床・・・・きれいな・・・ふぐが・・・ワダジたちを・・・
 まっで・・る・・・デズゥ・・・。
 ニンゲ・・・ン・・・は・・ワダジたち・・・のどれ・・い・・・一生懸命・・・奉仕・・・さぜる・・デズゥ。
 だから・・・こども・・・たち・・いい暮らし・・・が・・しだければ・・・かわいらじさ・・をふりまいで・・・
 ニンゲンども・・・を服従さぜる・・・デズゥ・・・・。
 がわいく愛想・・をふりまいて・・・従順そうなニンゲンに・・飼わぜてやると・・媚びるデズゥ。
 うまくいけば・・・お前たちより・・・かわいい・・ワダジがなのり・・・でて・・・家族・・・一緒に・・・
 飼わせてやって・・・・皆・・幸せに・・・なれる・・・デズゥ・・・・。

・・・・俺の方とプリントアウトしたコイツの元飼い主の画像をちらちらと窺っている・・・。
奇形仔蟲の死骸を抱いておままごとをする生ゴミの姿は浅ましいを通り越して・・・哀れとしか言いようが無い。
死ぬ間際まで実装石として振舞うコイツの最大の不幸は・・・・・この世に生れ落ちたことだろうな。

タールの様に真っ黒な血涙と体液を垂れ流して生ゴミは幸せの唄を死んだわが仔に歌っている。
そして・・・既に動くことすら侭ならないはずなのに、
生ゴミは奇形仔蟲の死骸を抱えたまま元飼い主の画像の元にノロノロと這いずって往く。

「ごじゅじんざまぁ!かわいい子供が生まれたデズゥ。
 ほらこんなにカワイイデズよ・・・・、だからそんなクズをさっさと捨ててワダジたちをまた飼うデズ。
 そうしたら・・・かわいいワダジを捨てた大罪を許してあげるデズゥ!
 さあ、早くデズゥ!!!」

写真に向かって無意味な要求を繰り返す生ゴミ。
黒い血涙を流し、壊死した内臓を引きずって写真の元に辿り着くが・・・・写真の飼い主はウンともスンとも言わない。

「ごじゅじんざまぁ!!ばやくうけどるデズゥ!!!
 ばやく・・しないと・・・・もうゆるしえ・・・・あげないデズゥ!!!
 ・・・・・なに・・・だまってる・・・デズゥ・・・・・。
 なにか・・・・言え・・・デズゥ!!!」

瀕死の生ゴミは何も言わない写真の飼い主に悪態を吐き始めた。
自分のことは棚に上げて、聞くに堪えない罵詈雑言を吐きかけているのだろう。
黒い体液を口から垂れ流したまま叫んでいるので、実装リンガルでは訳せないくらい言葉が崩れてしまっている。

こうなってしまえば・・・野良蟲も飼い蟲も大差ないな。
野良蟲と飼い蟲の差という物は・・・厳しい調教で本音を吐いて人間を不愉快にしないようにしてあるだけ。
それもこういう極限状態に陥れば全てが剥がれて、卑しい実装石の本性が白日の下に晒される。
実装石の本当の良し悪しが分かるのが死の一歩手前というのは・・・・なんとも可笑しい話だ。

・・・・・とうとう・・・生ゴミは抱いていた奇形仔蟲を振り回して写真の飼い主に叩き付け始めた。
何処にそんな力が残っていたのかは知らないが、随分元気そうに奇形仔蟲ちゃんを振り回している。

「し・・・ね、しね・・デ・・ズゥ!!! 
 ものの・・・・がちの・・・わがら・・ない・・・クソ・・ニンゲンめ!!!
 お・・・ま・・・・・ぇ・・・・・・・・・・・・・・・・。」

狂おしい激情に駆られて元気になっていた生ゴミが、糸の切れた様に倒れこんで動かなくなる。
・・・・・・死んだ様だな。

悲嘆と絶望が深く刻まれた顔を黒いタールの様な血涙で濡らしたまま、生ゴミは取るに足らない一生を終えた。
糞蟲の最後としてはまあまあのものだろう・・・・・少なくても俺を楽しませくれたのだからな。
名前と同じ生ゴミになったコイツの死骸を厚手のビニール袋に詰めて処理する。

・・・・・さて、残るは開放してやると約束した裏切り仔蟲ちゃんの始末だな。







次の日、裏切り仔蟲ちゃんと河原に散歩に行く。
仔蟲ちゃんとの約束を果たすために・・・・・。

禿裸の様ではみっともないから、
生ゴミの着ていた無駄に沢山のフリルが付いた最高級実装服を洗濯して着せて、
髪も飼育している他の仔蟲から毟ったものを接着剤で付けてやり、
とりあえず飼い実装らしい格好をさせてから初めてのお外に出発する。

初めての外の世界をみたいと箱の中でテチテチあんまり騒ぐので、
騒がないことを条件に紐で繋いで自由に歩かせてやる。
早朝なので通行人もいないからちょうどいい。

全てのものが初めて目にするものなので興奮しっぱなしの仔蟲ちゃん。
口に手を当てて鳴かないように気を付けながら辺りを観察し、おぼつかない足取りでポテポテと歩き回っている。
こうして見ていれば・・・・仔実装もそれなりに可愛いものだ。
でも、この純粋さも環境に慣れるまでのこと。
環境に慣れてしまうと直ぐに糞蟲的な要求を開始して人間を苛立たせる。

コイツも今のうちは可愛く見えるかも知れないが、情に流されて飼育してしまえばものの2〜3日で
親蟲そっくりの糞蟲に変化するだろう。
コイツは生ゴミとは違って猛烈な調教を施されていないただの仔蟲だから大した糞蟲になるだろうな。
それに俺は実装石を愛でる趣味は無い。


そうして30分ほど時間を掛けて目的の河原に辿り着く。

「さて、着いたよ仔蟲ちゃん。
 これから楽園に行く準備をしようね。」

「はいテチ♪ 
 ニンゲンさん、おねがいしますテチ。」

持ってきた紙製の菓子箱を開けて、蓋と箱を重ねてガムテープで止める。
それに割り箸に厚紙を挟んだオールを乗せて完成。

「出来たよ、お前さんの船・・・・名を仔蟲丸とでもしようか。」

「やったテチ♪これでいい仔のいける楽園にいけるテチ♪」

喜び勇んで仔蟲丸に乗り込む仔蟲ちゃん。
ワザワザ自分から乗ってくれて手間が省けるもの。
俺の与太話を真に受けて自分はこれから楽園にいけると信じ込んでいる能天気な仔蟲ちゃん。
豪華な服を着て、付属の実装ポシェット一杯の金平糖を与えられてご機嫌の仔蟲ちゃんは
船出の時を待ちきれないようだ。

「じゃあな仔蟲ちゃんせいぜい幸せになることだ。」

「はいテチ♪ニンゲンさん。
 これからは妹たちの分も幸せになるテチ♪」

「さあ船出の時だ・・・・・バイバイ、仔蟲ちゃん。」

「さよならテチ。やさしいニンゲンさん!!!」

仔蟲ちゃんはブンブンと両手を振り回して俺に別れの挨拶をする。
仔蟲丸は岸を離れ、流れの強い川の中央に向かって進み始める。

「バイバイテチーーーーー!!!ニンゲンさーーーん!!!」

俺も笑顔で手を振ってやる・・・・・・・・仔蟲の死への門出にな。
能天気な裏切り仔蟲ちゃんを乗せた紙製の仔蟲丸は海を目指して川を下ってゆく。





さて・・・・・観察を始めようか。

堤防の上に登って、川の方を眺めると・・・・・まだ仔蟲丸は健在。
双眼鏡を取り出して、仔蟲ちゃんの様子を探ると・・・・・・。

どうやらお食事中らしい。
実装ポシェットの金平糖をガツガツと食い漁っている様だ。
仔蟲ちゃんの言う楽園とやらに着くまでにどれ位の時間が掛かるのか知らんが、
唯一の食料を無計画に喰い散らかしていいのかな?
・・・・・・・・・・・・と言ってる間に完食したよ・・・。

満足そうに欠伸をすると仔蟲ちゃんは寝そべって居眠りを始めた・・・・。


10分ほど経つと・・・・仔蟲丸が水を吸って沈み始める。
まだ蓋の部分が水を含んでふやけた状態なので暢気な仔蟲ちゃんの寝ている床までは辛うじて届いていない様子。
ブサイクな寝顔に鼻提灯をつけて幸せそうに寝ている。


更に3分後・・・・・仔蟲ちゃんが飛び起きる。
どうやら満遍なく仔蟲丸がふやけた様だ。
慌てふためいて仔蟲丸の中で暴れる仔蟲ちゃん・・・・そんなに暴れたら床が抜けちゃうぞ♪
ただでさえ脆くなっている床で地団駄など踏んだら・・・・・仔蟲ちゃんが沈み込んだ。
床を踏み抜いてしまいスーパーピンチな仔蟲ちゃん。


船出から20分・・・・仔蟲丸は楽園に着く前に沈没しそうだ。
仔蟲ちゃんは辛うじて形を保っている部分に縋りつき、必死で何かに助けを求めている。
裏切ったママにでも恥も外聞も無く助けを求めているのかな?
仔蟲丸は川の藻屑となりかけ、仔蟲ちゃんの余命も残り幾ばく。


25分経過・・・・仔蟲丸は完全に沈没し、裏切り仔蟲ちゃんは川の流れに揉まれていた。
泳げない実装石の体に加え、親の形見の豪華な実装服が大量の水を含み仔蟲ちゃんを水底に誘おうとしている。
だが・・・さっき食べた金平糖を糧に、ありったけの力を振り絞って仔蟲ちゃんは岸に向かおうと努力する。


しかし・・・・・・・努力は売り物にならないなぁ。
金平糖パワーで10分ほど根性の水泳をしていた仔蟲ちゃんだが、とうとう力尽きて・・・・・波間に消えた。


外の世界に出てから約1時間、果てしない希望と欲望を胸に秘めた裏切り仔蟲ちゃんは川魚のご飯になった。
仔蟲ちゃんが俺の嘘を見抜いてその場で解放されることを選択していれば・・・結果は違っていたはず。
まあ、少なくても自由にするという約束は守ったのだから・・・この結果は仔蟲の責任だな。
俺の口車に乗って実装石の楽園があるなんて夢想してどう見ても罠の紙舟に乗ってしまう仔蟲が悪い。
姉妹の仇を討つという大業をこなして気が緩んでいたとはいえ間抜けな話だ。

コイツの様に賢い実装石が繁殖したら・・また碌でもないことになりそうだからこれでよかったのだろう。
あの仔蟲ちゃんも実装石には厳しいこの世界で生きてゆくのは、
今までの生活が天国に思えるぐらい辛いものになるだろうから早く楽になれて良かったんじゃないかな?



さて、今日も善いことをしたなぁ・・・・・帰って朝飯でも喰うか。






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