性悪実翠石の妃翠ちゃん ⑤ 花粉 ----------------------------------------------------------------------- スギ花粉が舞い散る今日この頃。 庭飼いされていた飼い実装のミドリは、花粉により妊娠、出産していた。 主人は定期的に避妊薬入の餌をミドリに与えていたのだが、猛威を奮う花粉の効果は避妊薬の効能を上回ったらしい。 勝手な妊娠出産は飼い実装最大のタブーの一つである。 もし飼い主に露呈した場合は、良くて捨て実装、悪ければ仔諸共殺処分待った無しが常だが、 ミドリの主人は「まあ、仕方ないか」と大した関心もなく軽く流していた。 そんな主人の態度を、ミドリは仔を産み育てる事を許されたと都合よく解釈して、日々の仔育てに精を出した。 たった一匹、この世に生を受けた我が仔。 初めての出産で手間取り、固化した粘膜で窒息死させてしまった他の仔達の分まで、ミドリはたっぷりと愛情を注いだ。 我が仔が幸せな飼い実装になれるようにと願いを込めて。 ミドリの仔も親に似て賢い個体だったらしく、ミドリの教えを素直に吸収していった。 もっともっとシアワセな飼い実装になれる事を夢見て。 そんなミドリ親仔の様子を、実翠石の妃翠は嘲笑混じりに眺めていた。 「ほら、今日の朝ご飯です」 妃翠が差し出した餌皿を、ミドリはいつも通りひっくり返す。 『お前みたいな肉穴人形はお呼びじゃないデス!!ご主人サマに会わせろデスゥ!』 朝夕二度しかない貴重な食事を自らぶち撒けるミドリに、妃翠はいつも通り、 愛らしい顔には似つかわしくない小馬鹿にした笑みを返す。 「ご主人さまはお仕事です。朝は忙しいのにお前なんかに構ってる暇なんてないです」 『デギギギギィ・・・!』 悔しげに歯ぎしりするミドリに代わり、ミドリの仔がテチテチと鳴き声を上げる。 『ママをいじめるなテチ、このデキソコナイ!』 親を庇うためか、ミドリの仔は四つん這いになって歯を剥き出し、妃翠を威嚇する。 『ご主人サマはちゃんとママのことが好きテチ!そうじゃなきゃきっとワタチは悲しいことをされてるテチ!』 仔の言葉にミドリはハッとなる。 そうだ、この仔の言うとおりだ。 勝手に仔を産んだにもかかわらず、ワタシタチは捨てられたり悲しいことをされる事なく、飼われ続けている。 それに引き換え目の前の肉穴人形ときたら・・・! 『デププ!そうデスゥ!ワタシタチはご主人サマからちゃんと愛されてるデスゥ! 満足に仔も産めないお前みたいな肉穴オナホのジャンクとは大違いデスゥ!』 実装種に対する最大限の侮辱の言葉を吐きかけられても、妃翠は余裕のある態度を崩さなかった。 「・・・わたしは、時間がかかっても、ちゃんとご主人さまに孕ませてもらいますです。 花粉なんかで簡単に妊娠するお前と違って」 妃翠は己の下腹部をそっと撫でながら、陶然と嘲笑が綯い交ぜになった表情を浮かべた。 「それにご主人さまは、赤ちゃんができにくいなら、その分たくさんエッチしようね、って言ってくれましたです♥」 顔面を皺だらけにして引きつらせるミドリに、妃翠は構わず言葉を続けた。 「そんなうれしいことを言われたら、それだけでもう、濡れてきちゃう、です♥」 ふふっ、と愛らしい顔に女としての勝利を確信した笑みを浮かべて、妃翠は踵を返した。 背後からはデギャデギャテチャテチャと耳障りな鳴き声と、ガチャガチャと鎖を揺らす音が聞こえてくるが、すぐ気にならなくなる。 妃翠にとっては、今夜は主人にどうやって愛してもらうかのほうが、よほど大事だったから。
