性悪実翠石の妃翠ちゃん ④ お散歩 ----------------------------------------------------------------------- 「〜〜♪」 実翠石の妃翠はご機嫌だった。 主人と二人きりの散歩なのだから当然と言える。 今までは飼い実装のミドリも一緒だったのだが、度重なる粗相で主人から半ば愛想を尽かされて、 今では庭に繋がれ寂しく留守番している有様だった。 主人と指を絡めて手を繋ぎ、子猫のように身体を擦り寄せる妃翠に、主人も優しい笑みを浮かべていた。 そんなささやかだが幸せな時間だったのだが、ふと主人の表情が曇る。 主人の視線の先には、主に実装石を取り扱うペットショップがあり、 その店先のウィンドウには、処分特価と銘打たれた複数の仔実装達が並べられていた。 『お願いテチ!飼っテチ!』 『良い仔にするテチ!ワガママ言わないテチ!』 『飼ってくれないとワタチタチおしまいなのテチ!助けテチ!』 テチテチ哀れっぽく泣きながら、仔実装達は道行く人々に懇願する。 おそらく店員に、今日買われなければ殺処分する、とでも吹き込まれているのだろう。 どの仔実装も必死な様子だった。 基本的には心優しい主人なので、思うところがあるのかもしれない。 「ご主人さま、ご主人さま。ちょっとかがんでほしいです」 妃翠はそんな主人の手をくいくい引いて屈ませると、その唇に、小鳥が啄むようなキスを降らせる。 仔実装達に見せつけるように。 「元気になってくれましたです?」 驚く主人に妃翠が微笑むと、主人も照れくさそうに笑みを浮かべた。 「ご主人さまには笑顔でいてほしいです〜♥」 などと言って、妃翠は主人の手を引く。 去り際に、仔実装達に向けて舌を出し、嘲笑を浮かべながら。 無論、主人には見えないように気を付けながら。 『ふっざけんなテチィィィッ!!』 『お前が死ねテチ!代わりに死ねテチィ!!』 『肉穴の分際でナマイキテチ!ワタチを飼いにしろテチャァァッッ!!』 怒りと興奮のあまりたっぷりと糞を撒き散らす仔実装達に、周囲の人間は冷ややかな視線を送る。 ペットショップの店員もその例外ではなかった。 『ヂッ!?』 『チュベッ!?』 『や、やめテチ!たすけテヂュバァッ!?』 もはや売り物にすらならないと判断された仔実装達は早々に叩き潰され、ゴミとして処分された。
