タイトル:【虐他】 実翠石との生活Ⅲ 短編まとめ11
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初投稿日時:2025/09/01-20:25:39修正日時:2025/09/01-20:25:39
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実翠石との生活Ⅲ 短編まとめ11
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今日は七夕


今日は七夕、という訳で、秋人は実翠石の裏葉と共に、七夕にちなんだ夕食を用意していた。
五色そうめんにちらし寿司、デザートには星々を形どったフルーツゼリーと、娘の松葉が喜びそうなメニューをテーブルに並べる。
「おぉ〜!今夜もごちそうです〜!」
瞳を輝かせる松葉の頭を、秋人は優しく撫でてやる。
「松葉も笹飾りを頑張ってくれたみたいだね。ありがとう」
テーブルの上には、松葉が折り紙で飾り付けた卓上型の笹飾りが置かれていた。
「家族みんなで元気でいられますようにって、頑張ってお飾りしましたです!」
得意げに胸を張る松葉に、秋人と裏葉は顔を見合わせて微笑み合う。
家族思いの優しい娘に育ってくれた事が、何より嬉しかったから。


『何で、何でこんな酷い事をするんデスゥ・・・!?』
飼い実装のミドリは、笹飾りの前で膝をついて滂沱のごとく血涙を流していた。
目の前の笹には、ミドリの娘七匹全てが、禿裸にされ、全身を滅多打ちにされた挙げ句、縛り首の状態で吊るされている。
どの仔も苦悶の表情を顔面に貼り付けて、虚ろな瞳で恨めしげにミドリを見つめていた。
「そりゃお前、今日は七夕だからな。家族の健康や幸せを願ってのことさ」
『こんなの全然健康でもシアワセでもないデスゥ!』
「俺は最初に言ったよな?仔を産んでもいいけど、糞蟲だったら殺すって。そこに吊るされてる奴らはみんな糞蟲だっただろ?」
『デデッ・・・!?』
「次は良い仔を産めるように、こうやって祈ってやってるんだ。少しは感謝しろよ」
『デシャァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!』
ポフポフと床を叩いて嘆き悲しむミドリを見下ろして、飼い主の男は冷笑を浮かべた。

いつぞやたまたま見かけた実翠石の母娘に影響されたのか、ミドリはやたら仔を欲しがるようになった。
糞蟲だったら殺処分すると条件を付けた上で試しに産ませてみたところ、仔実装は日々しょうもない理由で次々と死んでいった。
主にミドリや仔実装自身の不注意が原因だったが、そんな無様な様子がひどく滑稽で面白かった。
このため、飼い主は仔が全滅するたびに新たな仔を産むことをミドリに許した。
ミドリは最初のほうこそ胎教時からしっかりと躾に励んでいたのだが、何度も仔が全滅した事が影響したのだろう。
次第に産むこと自体を目的にし始め、胎教もおざなりになっていった。
必然的に、生まれてくる仔はだんだんと糞蟲の割合が増えてくる。
それはそれで面白かったのだが、さすがに糞蟲ばかりとなると、飼い主としても看過し得ない。
ミドリに反省を促すため、本日は七夕という事で、時節に合った趣向を凝らしてみたという訳だ。
「これに懲りたら、次に産む仔蟲共はしっかり躾けろよ?でないと、次はもっと酷い目に合わせてやるからな」
笑いながらその場を後にする男の背を、ミドリは憎しみと恐れが入り混じった瞳で見つめ続けていた。


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8月3日はハサミの日


「〜〜〜〜♪」
娘の松葉が鼻歌混じりに鋏で折り紙を切っている様を、秋人と裏葉は優しげに見つめていた。
内心では鋏で怪我をしないか少々心配ではあったが、当の松葉は器用に鋏を使って人型らしきものを切り出してゆく。
「できましたです!」
鋏を置いて、笑顔で切り出した紙を見せてくる松葉に、秋人も裏葉も目を細める。
「おっ、よく出来てるね。これは小人さんかな?」
松葉の頭を撫でながら聞く秋人に、松葉は得意げに胸を反らして答えた。
「これは、実蒼石のブルーちゃんです!」
たまに散歩の途中で出会う仔実蒼だったようだ。
たしかに頭の出っ張りが帽子に見えなくもない。
「大事なおともだちです〜♪」
楽しげに笑う松葉の頭を撫でながら、裏葉が秋人にお願いする。
「ねえ、パパ。今度、ブルーちゃんをお家に呼んで遊んでもいいです?」
「ん?ああ、いいよ。今度会った時にお誘いしてみようか」
ブルーちゃんの飼い主である初老の御夫婦の顔を思い出しながら、秋人は頷く。
ブルーちゃんだけではなく、御夫婦もお招きしてお茶会でもしようか。
ご近所付き合いも大事だからな、などと考える秋人であった。


「なあミドリ。今日は何の日だか知ってるか?」
『デ?』
庭で六匹もいる仔を遊ばせていた飼い実装のミドリに、飼い主の男は笑みを交えて聞いてきた。
『わ、分かんないデス・・・』
以前、七夕の日に七匹いた仔全てを全身滅多打ちの上絞首刑に処されて以来、ミドリは飼い主の一挙手一投足に怯えるようになっていた。
再び仔を産む事を許されたとはいえ、仔を失った悲しみが簡単に癒えるはずもない。
どうしたのかとミドリの元に集まってきた仔達を、ミドリは背に庇うようにしていた。
生まれてからまだ一ヶ月も経っていない、今度こそきちんと育ててシアワセにしてあげたいと願ってやまない我が仔達。
もっとも、ミドリの願いにもかかわらず、その半数は既に糞蟲らしさが垣間見えていたが。
「今日は8月3日、ハサミの日なんだそうだ」
ハサミ、と聞いてミドリはゾクリと背を震わせる。
実装石の天敵、実蒼石が同族を狩り立てる時に用いる凶器の名だ。
「デッ、まさか・・・!?」
「そう、そのまさかだよ」
ミドリの心を読んだかのように、飼い主は楽しげに笑った。
「ほら、今日から一週間一緒に暮らす、仔実蒼のブルーちゃんだ」
『ポクッ!』
飼い主の足元から、一匹の仔実蒼が顔を出す。
飼い主が、旅行に行く知人から世話を任された仔だった。
「おいミドリ、挨拶しろ。俺の顔に泥を塗るつもりか?」
『・・・デギギギィ・・・!よ、よろしくデス・・・!』
天敵の実蒼石に頭を下げるなど、無駄にプライドが高い実装石にとっては屈辱極まりない行為だ。
だが、飼い主からの叱責、そして仔実蒼と言えども侮れない戦闘力を有しているという事実が、ミドリに頭を下げさせることを強いた。
ブルーもしっかり頭を下げて挨拶する。
だが、ミドリの娘達は違った。
『チププ、蒼蟲が頭を下げてるテチ!』
『ワタチタチが上だと認めてるテチ!殊勝な蒼蟲テチ!』
『その態度に免じてドレイにしてやるテチ!喜べテチ!』
六匹いる娘達、その中でも糞蟲じみた態度が目立ってきた三匹が、ブルーを見て嘲笑を浮かべる。
『お、お前達、やめ・・・!』
青くなったミドリが止める間もなく、一気に間合いを詰めたブルーが鋏を一閃させた。
『ヂッ・・・!?』
糞蟲三匹のうち、一匹の首が血の尾を引いて地面に転がる。
『・・・チヒィィィィィッッ!?』
『あ、頭が飛んでったテチィィィィ!?』
腰を抜かした残りの二匹にも、ブルーは容赦しなかった。
『チベァッ!?』
『ヂボベァッ・・・!?』
一匹は唐竹割りにされ、最後の一匹は上半身と下半身とで両断されて死んだ。
瞬く間に行われた虐殺に、ミドリも生き残った三匹の娘達も、顔面を真っ青にしてたっぷりと糞を漏らす。
「言い忘れていたが、ブルーちゃんは仔実装達の教育係も兼ねてるからな。お眼鏡にかなわなければその場で打ち首だから、覚悟しとけよ」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら言う飼い主に反感を覚える事すら出来ず、ミドリと娘達はガクガクと首を縦に振る。
飼い主はミドリに糞仔蟲共の死骸を片付けるように命じると、ブルーを伴って家の中へと戻っていった。
さてさて、ブルーちゃんが知人の元に帰るまでに、ミドリの娘は何匹生き残れるかな?
飼い主はどのような結末になるか、今から楽しみで楽しみで仕方がなかった。


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8月9日はハグの日だったり野球の日だったり


「ママ、ママ♪」
「もう、松葉ったらどうしたんです?」
実翠石の裏葉に、娘の松葉が抱きつきじゃれついていた。
秋人が笑顔でその様子を見守っていると、今度は秋人の元へやってくる。
「パパ、パパ♪」
「はいはい、今日は妙に甘えん坊さんだな」
今日に限って事あるごとに抱きついてくる娘の松葉を、秋人は苦笑混じりに抱き締め返す。
「今日はハグの日だから、たくさんぎゅ〜ってするんです♪」
そう言って甘えてくる松葉の美しい黒髪を、秋人は優しく撫でさすった。
「ね、ママも、パパに一緒にぎゅ〜ってしてもらいましょうです!」
そう言って、松葉が裏葉を手招きする。
苦笑しながらも秋人の元に来た裏葉を、秋人は松葉と共に抱き締めた。
「・・・ちょっと、恥ずかしいかもです」
そう言って微笑む裏葉にいたずら心が芽生えた秋人は、裏葉の耳元で、彼女にだけ聞こえるようにそっと囁いた。
「・・・今夜、松葉が寝たら、ハグよりもっと恥ずかしいこと、しような」
「あっ・・・、はい、です・・・♥」
頬を染める裏葉を見て、松葉は思ったことを素直に口にした。
「ママったら、パパのこと好きすぎです〜♪」


一方その頃。とある家の庭にて。
「おいミドリ、今日が何の日か知ってるか?」
『・・・わからないデス・・・』
妙に楽しげな飼い主に警戒感を抱きつつ、飼い実装のミドリは慎重に答えながら、背の後ろについ最近産んだばかりの仔実装七匹を隠す。
ここ最近、事ある毎に産まれたばかりの仔を飼い主に始末されてきたミドリとしては当然の反応だった。
ちなみに、前回生んだ六匹の仔実装達は、結局一匹も生き残る事が出来なかった。
そんなミドリに、飼い主は侮蔑混じりの笑みを浮かべて言う。
「今日は野球の日なんだと。だから、お前の仔と一緒に遊んでやろうと思ってな」
そう言って、飼い主の男はバットとボールを取り出した。
『ボールで遊んでくれるテチ!?』
『ドレイにしては気が効いてるテチ!』
『うれしくてウンチ漏れちゃったテチ!』
ボールを見て大はしゃぎを始める仔実装達だったが、ミドリは逆に警戒感を強めた。
今度こそ、この仔達は守らねば。

街中で偶然見かけた忌まわしい実翠石の母娘。おまけに子供の方は、オナホ人形の分際で生意気にも黒髪だった。
『ワタシにだって仔を産んでシアワセになる権利があるデス!』
嫉妬に駆られて、ご主人サマにそんな事を言ってしまった事を、ミドリは酷く後悔していた。
ミドリの懇願に、飼い主は笑いながら一つだけ条件を付けて了承した。
糞蟲は容赦無く殺すからな、と。
飼い主はその言葉を違えることなく、ミドリが産んだ仔達を容赦無く始末した。
これまでに産んだ仔で生き延びた仔は一匹もいない。
最初の内はミドリの不注意が原因で死ぬ事が多かったのだが、生む回数を経る毎に、仔の出来はどんどん悪くなっていった。
トイレを覚えられない、餌に文句をつける、飼い主をドレイ呼ばわりする、飼い主に糞を投げつける、歯を剥いて威嚇する等々・・・。
糞蟲じみた言動をした仔実装達は、飼い主に情け容赦なく始末されていった。
全てはミドリの教育の悪さが原因だったが、反省よりも仔を失った悲しみが勝ったためか、状況が改善される事はなかった。

「そら!」
『チベッ!?』
飼い主は遊んで貰えると思って足元に群がって来た仔実装達にボールを叩き付けた。
直撃を受けた仔実装の一匹が腐ったトマトのように潰れる様子に、ミドリ一家は一瞬呆然とした後、火が点いたように騒ぎ出した。
『デ、デ、デ、デシャァァァァァァァッッ!?』
『テヒィィィィィィッッ!?』
『テヒャァァァァァァァッッ!?』
潰れた仔実装の死骸を掻き集めるミドリを余所に、飼い主は逃げ惑う仔実装達を拾い上げてはノックの要領で叩き潰していく。
「かっ飛ばせー、ってな!」
『チベァッッ!?』
『チョベッ!?』
『チヂッ!?』
『ママァ!助けテチ!助けテヂェァッ!?』
仔の数が残り少なくなったところで、ミドリが飼い主の脚に縋り付く。
『お願いデスゥ!もう止めてデスゥ!』
「俺はお前との約束を守ってるだけだぞ」
『チュバッ!?』
飼い主はミドリに構わず仔をバットで殴り殺した。
最後に残った仔だけでも守ろうと、ミドリは仔をきつく抱き締めるが、あっさりと飼い主に奪われてしまう。
『ママァ!このドレイニンゲンをやっつけるテチィ!』
「今回も揃いも揃って糞蟲ばかりだったな。よっ、と!」
『テチュバッ!?』
最後の仔もあっさりと叩き潰され、ミドリの仔は全滅した。
『デシャァァァァァァァァァァァァァッッ!!』
地面をポフポフ叩きながら嘆き悲しむミドリに、飼い主は笑いながら命じた。
「飛び散った生ゴミを片付けておけよ。終わるまで飯抜きだからな」
ミドリは血涙を流しながら、かつて仔だった肉片を拾い集めると、いつまでも抱き締め続けていた。
抱き締め返してくれる事は決してないと知りながら。


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8月18日の高校野球の日に因んで


「パパ、パパ!キャッチボールがしたいです!」
仕事から帰って来た秋人に、出迎えもほどほどに松葉がボールを差し出しながらそんな事を言ってくる。
裏葉曰く、どうやら日中にテレビで見た高校野球に影響されたらしい。
「松葉、パパはお仕事から帰ってきて疲れているんです。そんなワガママを言ってはめっ、です」
「は〜いです・・・」
母親らしく嗜める裏葉に、松葉はしぶしぶといった感じで頷く。
そんな様子を苦笑混じりに見ていた秋人は、松葉の頭を撫でながら言う。
「夕飯を食べ終わったら、ちょっとだけしようか、キャッチボール」
「ほんとです!?」
笑顔を浮かべる松葉に、秋人は目を細めて頷く。
「でも、お外はもう暗くなるから、お家の中で遊ぼうな」
松葉の腕力なら、そうそう強くは投げられないだろうという算段もあった。
「パパ、あんまり松葉にワガママを許すのは良くないです」
眉を顰める裏葉に、秋人がまあまあと言いながら額にキスすると、裏葉は赤くなってそれ以上何も言えなくなってしまう。
松葉は、そんな仲良さそうな両親を見るのが大好きだった。


一方・・・。
「おいミドリ。今日は高校野球の日らしいぞ」
『・・・デェェェ・・・』
野球、という言葉の響きに、庭に出されたミドリは顔を険しくすると共に、産まれて3日程しか経っていない四匹の仔達を背に隠す。
前回生んだ仔達は七匹全てが野球の名の元に虐殺された。
遊んで貰えると喜んでいたらボールをぶつけられて潰された仔、バットで殴られて赤と緑の染み化した仔。
どの仔もまだ産まれて間もないのに、糞蟲扱いされて殺されてしまった。
(実際に仔は糞蟲揃いだったのだが、ミドリは都合よくそうした事実を無視していた)
今度こそ、この仔達は立派に育ててシアワセにしてあげたい。
そう思っていたのだが・・・。
『おいドレイニンゲン!さっさとスシとステーキもってこいテチ!』
『コンペイトウもよこせテチ!』
『役に立たないクソドレイはぶっころすテチ!』
『ドレイとしての立場をわきまえろテチ!』
「今回も見事に糞蟲ばっかりだな〜!」
仔達の身の程知らずの暴言に、飼い主は妙に嬉しそうだ。
「という訳で、ミドリ、分かってるよな?」
飼い主の笑顔にミドリは戦慄した。
目が笑っていない。
糞蟲は容赦無く殺すという約束を、飼い主は今回も実行するつもりだ。
飼い主はミドリの仔を一匹摘み上げて、軽く握り締める。
『チュベヂボォォォォォッッッッ!?』
ミドリの仔は全身の骨を砕かれ、口と総排泄孔から血と臓物と汚物を溢れさせた。
「今日はキャッチボールにしようか。しっかり受け止めてやれよ!」
そう言って飼い主はミドリに向かって仔を思い切り投げつけた。
『ヂッ!?』
『デギャァァァァッッ!?』
仔はミドリの服にべったりと貼り付くように染みと化した。
仔がぶつかった衝撃で肋骨が折れたらしく、ミドリは染みが出来た箇所を押さえてうずくまる。
「おいおい、そんなんじゃキャッチボールにならないぞ?」
そんな事を言いながらも、飼い主は残った三匹の仔実装を最初の仔と同様にミドリに叩き付けた。
『チュベァッ!?』
『テヂュッ!?』
『チヒヂェアッ!?』
頭蓋骨が陥没し、腕が折れ、内臓にもダメージを負ったミドリに、飼い主は相変わらず楽しげに告げる。
「また駄目だったな、ミドリ。ま、次はせいぜい躾を頑張れよ。無駄だと思うけどな!」
飼い主は言うだけ言って家の中へと入ってゆくを
我が仔だった血肉と汚物にまみれながら、ミドリは思った。
ワタシタチは、シアワセになりたいだけなんデス・・・。
なのに、どうして、どうしてこんなカナシイことになるんデス・・・?
答えは単純明快で、ミドリが躾をしっかりやればいいだけの話なのだが、ミドリは何度繰り返しても正解に辿り着けなかった。
おそらく、今後も辿り着く事はないだろう。
こうしてミドリの悲劇はいつまでも続いてゆく。
己を省みる事が無い故に。


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8月19日はハイキュー!!の日


「ママ、ママ!あれ、あれをやってみたいです!」
裏葉が洗濯物を畳んでいると、松葉が興奮した様子でテレビを指さす。
テレビの中では、人間さん達が飛んだり跳ねたりしながら凄い勢いでボールを飛ばしたり、飛んで来たボールを受け止めたりしていた。
さすがにあんな勢いでボールが飛んできたら、きっと松葉は大怪我をしてしまうだろう。
とはいえ、遊びたい盛りの松葉に、頭ごなしに駄目だというのも気が引けた。
さてどうしようか、と考える裏葉だったが、以前にパパがどこかでもらってきた風船があったのを思い出す。
苦労して膨らませて口を縛ると、優しく松葉に向かって押し出した。
「さあ、松葉、どうぞです」
「わっ、わっ!えいっ!」
ふわふわと向かってくる風船に精一杯腕を伸ばして押し返す松葉に、裏葉は優しげな笑みを浮かべながら再度松葉に向かって風船を押し出した。
パパがお休みの日には、こうして家族三人で遊びたいな、などと思いながら。


とある家の庭にて。
「おいミドリ。きょうはハイキュー!!の日らしいな」
『・・・デジィィィィィッッ・・・!』
バレーボール片手に妙に朗らかな様子の飼い主とは対照的に、ミドリの表情は酷く険しい。
ミドリの背後には、今朝方無理矢理産まされた親指実装が三匹と蛆実装が二匹いる。 
これまで生んだ仔達でまともに育った仔は皆無だ。
初期に産んだ仔達はミドリの不注意によって失われ、最近産んだ仔達は糞蟲であるというだけで、そのことごとくが飼い主により惨殺された。
もうこれ以上我が仔をカナシイことになんてさせないデス!
決意も新たに飼い主を睨みつけるミドリだったが、そんなミドリを余所に親指達はレチレチレフレフ好き勝手に鳴くばかりだ。
おそらく、生まれて初めて見る外の世界に興奮しているのだろうが、危機意識に欠けること甚だしい。
興奮してなのか、それとも頭も総排泄孔も緩いためなのか、親指も蛆も揃って糞を漏らしている。
どうやら今回も糞蟲揃いらしいな、と飼い主は侮蔑に満ちた笑みを浮かべた。
「そ〜ら、アタック!」
飼い主はポールを高く上げると、スパイクの要領でミドリに向かって思い切り叩きつけた。
『デギャァァァァッッ!!??』
顔面にボールの直撃を受け、たまらずひっくり返るミドリ。
『レヂッ!?』
『ヂッ!?』
『レヂャッ!?』
『レフィンッ!?』 
『レビャ!?」
ミドリの背後に居た親指達は、その全てがミドリの身体に押し潰された。 
背中に広がるグチャグチャとした感触に、ミドリは顔を青ざめる。
起き上がって自身が倒れていた箇所を確認すると、そこには自分の娘だったものが赤と緑の汚い染みとなって広がっていた。
『デジャァァァァァァァァァッッッ!!??』
悲鳴を上げて必死になって染みを掻き集めるミドリに、飼い主は冷笑を浮かべる。
馬鹿な奴だ。
まともに仔の躾もできないくせにやたらと繁殖したがる低能には似合いの結果だ。
しかし、今回産まれてきたのは親指や蛆ばかりだったな。
そろそろ“この”ミドリで遊ぶのも限界か?
飼い主は庭の片隅に視線を送る。
そこには、代々のミドリが眠る小さな墓がひっそりと置かれていた。


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8月21日はバニーの日


「ただいま〜」 
秋人が帰宅すると、実翠石の裏葉と娘の松葉が、手作りと思しきウサギ耳のカチューシャ を付けて出迎えてくれた。 「おかえりなさいです、パパ」
「パパ、おかえりなさいです!」 
元気よく抱きついてくる松葉を笑顔で抱き上げながら、一体どうしたのかと尋ねると、 
「今日はうさぎさんの日だから、パパにたくさんぎゅーって甘えるんです♪」
とのこと。 
今日はバニーの日。そしてウサギは甘えん坊で寂しがり屋だから、ということらしい。 
気付けば裏葉も秋人に腕を絡めて、ぴったりと身体を寄せてきている。 
頬に赤みが差している事から、松葉の前ではやはり恥ずかしいのだろう。 
それでも秋人に甘えたいという気持ちが勝ったようだが。
「ママと一緒に、パパにはた〜っぷり甘やかしてもらいますです♪」
可愛らしく宣言して抱きつく松葉、そして控えめながらも腕に力を込める裏葉の体温を感じながら、秋人は幸せだなぁ、などと呑気に考えていた。



一方その頃。
これまで産んだ仔のことごとくを糞蟲認定されて惨殺されてきたミドリは、どうすれば仔と共にシアワセになれるのかと頭を悩ませていた。
答えは単純で、産まれてきた仔をきちんと躾ればよいだけの話なのだ。
だが、元々の妊娠・出産の動機が、散歩の途中でたまたま見かけた実翠石の母娘(しかも娘のほうは生意気にも黒髪だった)への対抗心だったのが原因だったのだろう。
あんなヒトモドキでブサイクな媚び穴人形共でもシアワセになれるのだ。 
ワタシが仔を生めばシアワセになれること間違いない!
・・・などといった具合に思考が凝り固まったミドリは、胎教の時から、
『産まれてくればシアワセ間違いなしデス〜』
だの、
『この世はお前のためにあるデス〜』
などと都合の良い妄言ばかりを吹き込んでいた。
これでは生まれた時から糞蟲化するのは目に見えている。
だが、ミドリは己の愚行を顧みず、ここ最近は産む前から糞蟲化させたあげく仔を全て惨殺されるという愚行を繰り返していた。
そんな折に、飼い主が点けっぱなしにしていたテレビが視界に入る。
テレビの中では、頭に長い耳のような物を付けたニンゲンの女の子達が持て囃されていた。
これだ!
あの耳のようなものを付ければきっとご主人サマもワタシの仔を気に入ってくれるに違いない!
そうすれば家族みんなでシアワセになれる!
見当違いも甚だしい考えに至ったミドリは、飼い主にウサギ耳を付けて欲しいと懇願した。
『ご主人サマ、ご主人サマ!ワタシタチにもアレを付けて欲しいデス!』
飼い主は楽し気に笑って快諾し、仔の数の分だけ爪楊枝とボール紙でお手製のウサギ耳を拵えた。
昨日妊娠させられ、今朝方産まされたミドリの仔達の内訳は仔実装、親指実装、蛆実装が一匹ずつだ。
実のところ、他にも奇形児やただの肉塊が幾つもひり出されていた。
それらはミドリの妊娠・出産能力、そして生命力が限界を迎えつつある証拠だったのだが、当のミドリはそれらを都合よく無視した。 
だが、唯一仔実装として生めた個体ですら、明らかに知能に問題がある様子だった。 
テチー、テチーと意味のない鳴き声を上げながら、よだれを垂らし、虚ろな視線を彷徨わせ、パンツの中にたっぷりと糞を漏らしている。
逆に親指実装は面倒見が良い性格なのか、蛆実装を抱き締めてあやしていた。
仔実装と違い、糞を漏らすような真似もしていない。
もっとも、ミドリは仔実装にしか関心がないようで、親指実装と蛆実装は少し離れたところに半ば放置されていた。 
「ほれ、できたぞ。付けてやるよ」
『お、お願いしますデス!』
時折目が霞み、足元がふらつくが、それでもミドリは仔実装を抱え上げて飼い主へと差し出した。 
あれさえ付ければきっと家族皆でシアワセになれると信じて。
『テヂッ』
仔実装は爪楊枝で頭蓋を貫かれた。
「ほら、可愛いウサギ耳だろ?」
飼い主がウサギ耳を摘まんでぐりぐりと揺らすと、爪楊枝が頭蓋内で暴れ回り、脳を始めとする頭部に詰まったあらゆるものを破壊してゆく。
『ヂッ・・・テヂュ・・・ヂベッ・・・』 
神経が刺激されてか仔実装はビクビクと身体を震わせる。 
鼻や口、耳の穴からは、破壊された脳漿その他が血液と共に溢れ出ていた。 
『チュバァ・・・(パキンッ!)
激痛だけをたっぷりと味わった後、仔実装は偽石を割って死亡した。
『・・・な、なんでデス・・・!なんでなんデスゥ・・・!
』
ガックリと膝をつき、血涙を流して嘆き悲しむミドリに、飼い主は呆れ半分、嘲笑半分といった様子で言った。 
「おまえ、本当に学習しないな」
『・・・デェェェェ・・・』
「俺は最初から言っていたよな。糞蟲は殺すって。仔を糞蟲にしたくなければ、ミドリ、 お前がしっかり育てればよかったんだぞ?」
『ワ、ワタシのせいだって言うんデス・・・!?』
「ああ、その通りだ。お前の育て方が悪かったから仔蟲共は全部糞蟲になって殺された。お前のせいで仔蟲共はみんな死んだんだ」 
『ワ、ワタシは・・・!シアワセに、家族みんなでシアワセになりたかっただけデス・・・!なのに、どうしてワタシのせいだなんてひどい事言うんデス・・・!?』
「ただで幸せが手に入るわけないだろ?幸せを得るためにはな、それなりの努力が必要なんだよ」 
『で、でもデス・・・!あのヒトモドキ・・・肉穴人形の実翠石だって、シアワセそうにしてたデス・・・!』
実翠石の名を口にしたせいか、ミドリは悲しみと憎悪が入り混じった表情を浮かべる。
『黒髪の娘まで産んで、愛されて、シアワセそうだったデス!クソ生意気デス!許せないデス・・・!』
「いや、実翠石はお前ら実装石と違って人間の役に立とうと努力してるだろ。掃除とかいろいろ出来るみたいだし」
本能的なものとはいえ、ここまで実翠石を憎悪出来るとは大した物だな、と妙な感心を覚えつつ飼い主は思ったままの事を口にした。
「だいたい実翠石が肉穴人形だったら、お前みたいな実装石はただの糞穴人形だからな?」
『デッギィィィィィィィィィッッ・・・!!』
ただでさえ度重なる妊娠と出産で弱り切っているところに、忌まわしい実翠石以下の存在だと、 よりにもよって飼い主から罵倒されたのだ。
ミドリが精神に受けたダメージは致命的だった。
偽石に走る激痛に蹲り、呼吸すら困難になりながらも、ミドリは呪詛のように言葉を紡ぐ。
『ワ、ワタシタチだって・・・シア、ワ、セに・・・』
パキンッ!と音が鳴り、ミドリはそれっきり動かなくなった。
「・・・ご苦労さん、ミドリ。なかなか楽しかったぞ」 
飼い主は相変わらず嘲笑を浮かべていたが、その口調はどこか優しげですらあった。

『レ・・・ママ? お姉チャン?どうしたんレチ?』
『レフ〜?』
それまで離れたところで蛆実装の面倒を見ていた親指実装が、異変に気付いてレチレチと蛆実装を抱えてやって来る。
そういえばこいつらが残っていたな、と思い出した飼い主は、親指実装達を摘まみ上げて手のひらに乗せた。
驚きながらも親指実装は飼い主にペコペコと頭を下げて懇願した。
『ご主人サマ、ママとお姉チャンの様子が変みたいレチ!見てあげて下さいレチ!!』
ほう、と飼い主は面白そうに笑う。
なかなかどうして賢くて愛情深そうな個体じゃないか。
もっとも、ミドリの教育の成果などではなく、生まれつきの素質故なのだろうが。 
これまで楽しませてくれたミドリに免じて、ここは一つ、この親指実装を育ててみるか。
蛆実装もついでだ。
うまく成体まで育てば、次代の“ミドリ”にするのもいいかもしれない。
仔実装の状態で成長が止まっても、糞蟲化しなければ里子に出すなりペットショップに卸すなり出来るだろうし。
笑みを浮かべる飼い主を不思議に思いながらも、親指実装はママとお姉チャンを助けてと、レチレチ鳴き声を上げ続けていた。


松葉を寝かしつけた後、秋人と裏葉は夫婦水入らずの時間を過ごしていた。
ソファに寄り添って座り、互いの体温を感じながらあれこれと会話を楽しむ、ささやかな幸せに満ちた時間。
話題の大半は無論松葉の事だ。
秋人が仕事で日中は不在にしている間、松葉がこんな事をしていた、あんな事があったと裏葉が嬉しそうに話すのを、秋人は微笑を浮かべて耳を傾ける。
ひとしきり話し終えた後は、その日のお互いの気分等に合わせて、寝室でより親密な時間を過ごすこともある。
今日がまさにそんな日だった。
「パパ・・・♥」
ベッドに横になった秋人に、ウサギ耳のカチューシャを付けた裏葉が覆い被さる。
そのまま、ぷち、ぷち、と寝間着のボタンを外しながら、熱い吐息混じりの声で囁いた。
「パパ・・・、今日はウサギさんな私を、たくさんたくさん甘えさせて、ほしい、です・・・♥」
二人だけの夜は、まだまだ終わりそうになかった。

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1 Re: Name:匿名石 2025/09/02-02:50:03 No:00009770[申告]
仔実装って結局簡易コピーみたいなもんだからか親実装は執着する割には倒錯した手段だったり惰性みたいのが出る事多い気がするな
結局この飼い主は良個体は里子に出していいと思ってるのは実装の痴態を愛しているのだろう
2 Re: Name:匿名石 2025/09/03-23:01:37 No:00009773[申告]
最後に残った善性の総和が親指分だけだった、というわけやな。
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