タイトル:【虐】 実装石短編集(虐待率うすめデスゥ)
ファイル:実装石短編集.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:320 レス数:1
初投稿日時:2025/08/31-23:20:56修正日時:2025/08/31-23:20:56
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【死体】


山実装は文字通り山に棲む実装石のことをいう。彼らは人間の住む都市圏にいる野良実装と違い、
豊富な餌や清浄な川の水に恵まれ生きていた。
しかし楽園というわけにはいかなかった。山で拾う木の実はごみ捨て場に捨てられた生ごみよりも食べづらい。
何より人間用に味付けされた食料に比べれば、その味はまるで砂を食べているようにも感じられる。

キノコが豊富に採れる地域もあるが、食べるキノコを間違えれば一晩で一家全滅も珍しくなかった。
虐待派こそいないが、キツネやタヌキ、クマに襲われればひとたまりもない。
稀にハンター兼虐待派の人間に襲われるものもいる。

X県Y村の山々に棲む実装石たちも、そのような環境で生きながらえてきた。
山実装たちの住むその山は、X県だけでなく隣のZ県にも跨ぐ山脈をなすものの一つであった。
急峻な山が続くその地域では、実装石と人間たちが共存しつつ、長い間暮らしていた。

山の斜面に人間が作り上げた畑から作物を失敬する山実装。
そんな山実装を捕まえて干物にして冬に備える人間。
夏になれば山実装はしばしば夏祭りの生贄として生きたまま解体され、その命を人間の神々に捧げられることもあった。

この地域の山実装が、他のものと違うところを挙げるとすれば、ここは「山そのもの」が実装石にとって天敵に思えてくる点であった。
山は山実装に食料や住処といった恵みを授ける一方で、彼らに牙をむくのであった・・・。


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X県Y村の山で、ある山実装の仔が死んだ。
山で暮らす山実装にとって、ケガや病気は一つでもあれば命取りになる。厳しい自然の下では仔を失うことは仕方ないことだった。

だが、悲しい。

母である山実装は悔し涙をこぼし、歯を食いしばった。
よくできた次女であった。
木の実を探すのが上手で、まるでそこにあると知っていたかのように次々と木の実を見つけてみせた。
そしてそれを真っ先にイモウトたちに配り、次に長女と母に配り、自分は最後に頬張った。

実力ある実装石はそれだけでつけあがり他者を見下すものだが、次女はそんなそぶりも見せず、
まさに家族一体となって生きていくことを具現化したような存在であった。

それがどうして、こんな・・・

その日の朝、次女は住処で冷たくなって死んでいた。昨日まで姉妹元気に野山を駆け回り、木の実を見つけ、皆で夕食を食べたのだ。
それなのに、朝起きたら次女だけ亡くなっていた。

一体、何があったというのか・・・

だが、こうしてはいられない。
この山では、死んだ実装石はいちはやく「持っていかなければ」いけない。
それが掟だった。

誰が言い出したのかは分からない。だが、実装石の死体を放置しておくと、恐ろしいものがやってきて、死体を持ち去り、食らい、それどころか遺族にまで累が及ぶのだという。
一体何がやって来るのかは分からない。しかし、それが掟だった。

幼い姉妹たちを住処において、次女の死体を母実装と長女で担ぎ、運び出す。母実装が次女の両腕を肩にまわし、リュックを背負うように持つ。長女は足を持った。
そして山の急斜面を上り、山のてっぺんまで、「持っていく」。

実装石2匹の体力で死体を、それも急斜面の中で運ぶのは並大抵ではなかった。
最初は次女の思い出話をしていた二匹も、すぐに会話する余裕がなくなり、黙って上り続ける。

それにしても薄暗い。まだ昼前だというのに、まるで夕方や日の出前のような暗さだった。生い茂る木々が日光を遮ることはわかっても、異様なほど暗い。
ここは本当にいつもの山の中なのだろうか?どこかに迷い込んだのではないだろうか?
そう思い始めたとき、長女が口を開いた。
「音がするデスゥ、誰かの、声がするデスゥ」

長女はもう成体といっても良いほど成長している。無駄な話をして母を困らせるようなことはしないはずだ。
だが、音も声も、自分には聞こえない。長女は何を聞いているというのか?

「何も聞こえないデスゥ。きっと風の音デスゥ」
母は答える。長女が嘘を言っているとも思えない。だが、自分には聞こえない。「自分には聞こえない」と言い聞かせたかった。
不気味な山で死体を運んでいるときにどこからともなく声が聞こえるなど、あってたまるか。



「ママ、オネチャ」


うしろから声が聞こえた。母である自分にも、聞こえた。
間違いない。次女の声だ。
親仔は止まる。次女の死体を抱えて、聞こえるはずもない次女の声に耳をすませる。

「オネチャ、こっちテチ」
「じ、次女デ・・・」

長女が喜びの声をあげ、枯草を踏みつける音が聞こえた。長女は後ろを振り向いたのだ。
その瞬間、次女の死体が地面にずり落ちた。長女の支えがなくなり、足だけだらんと地面につけた状態になった。

母は正面を向いたまま固まる。わからない。わからないが、振り向いてはいけない。
次女は死んだのだ。あれは、次女ではない。

母実装の耳元で、声がした。


「ママ、、、わたしテチ」

声が聞こえた瞬間、母は一目散に山を駆け上がった。
死体はとうに捨てた。




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【のぼるもの】


実装石は公園によく棲んでいる。だがそれだけではない。河川敷や高架下に棲んでいるものもいる。
珍しいものでは、学校の茂みの中に棲んでいるものもいる。
当然、彼らは子どもたちから苛烈な(死に結びつくような)暴力を受ける。一方で、子ども故に庇護を提供することもある。
前者と後者がバランスしたものだけが、そのバランスはほとんど運で決まるのであるが、生き延びることができる環境であった。

ある日の夕方、小学校の茂みに棲む実装石一家の仔が校庭に出てきた。放課後も終わり、真っ赤な夕暮れに染まるその時は、彼らにとって束の間の休息であった。
日中は子どもの暴力的な遊びに付き合わされる危険もあり、基本的には段ボールハウスに引きこもっておくことが要求される。
成体である親実装たちは、子どもたちが帰宅した夕方から、夜目の効かなくなる夜の間に外出し、餌を探し求めるのだ。

その仔実装の親も例にもれず、子どもたちの部活動が終わって小学校が静まり返ったところで、そそくさと段ボールハウスを出て餌探しに向かった。
仔実装の方はまだ餌探しをするほど成長しておらず、手持無沙汰に校庭をそぞろ歩く。
校庭には遊具があった。ブランコや鉄棒だ。どれも仔実装には大きく、遊べるようなものではない。珍しい建物をみるようにそれらを見回す。

「一緒に遊ぼテチ」

仔実装の目の前に、仔実装がいた。しかも服装が通常ではない。服こそ自分と同じ緑色だが、首に大きな黄色いリボンを巻き付けている。
間違いない。飼い実装だ。
「テ・・・いいけど、何するテチ?」

仔実装は訝しむ。なぜ急に実装石、しかもどう見ても飼いの仔実装が現れたのか?
こいつは誰なのか?飼い実装ということは近くにニンゲンの飼い主がいるのではないか?そんな仔と遊んで良いのだろうか?

「ワタシ、水飲み場でお水ぱちゃぱちゃしたいテチ。水飲み場はどこテチ?」

黄色いリボンの仔実装は言った。
怪しい仔だと思った思った仔実装は、とりあえず場所だけ指し示すことにした。
「水飲み場ならあっちテチ」
仔実装たちがいるのは、学校の敷地の茂みのすぐ傍。水飲み場はそこから数十m離れた校舎のすぐ近くにある。
人間なら歩いて10秒とかからないが、仔実装なら数分はかかる距離だ。


ぱちゃぱちゃ キャッキャッ

「テ・・・?」

さっきまで目の前にいた黄色いリボンの仔実装は、いつの間にか水飲み場で水遊びをしていた。
そんな、さっきまで目の前にいたのに、いつのまに・・・?
仔実装は頭がパニックになる。


「一緒に遊ぼテチ」
「テエエエ!?」

黄色いリボンの仔実装が目の前にいた。

「さっきまで水飲み場にいたはずテチ?どうやって・・・」
「一緒に遊ぼテチ」

畳み掛けるように黄色いリボンの仔実装は繰り返す。
仔実装は黄色いリボンの仔実装が不気味に感じた。はやくママに帰ってきてほしい。

「ワタシ、ニンゲンみたいにブランコで遊んでみたいテチ。ブランコはどこテチ?」

仔実装は思った。
この仔は、おかしい。関わってはいけない仔だ。

「ブ、ブランコは・・・たてものの屋上にあるテチ!」

仔実装は校舎のてっぺんを差し示した。

「テチチ・・・」

黄色いリボンの仔実装は笑っていた。

「テチャチャチャチャチャチャチャチャチャ!!!!!!!!!!」

黄色いリボンの仔実装は実装石とは思えない速さで校舎の垂直な壁を四つん這いで上りあがり、消えていった。


「あれはなんだったテチ・・・?」
仔実装は背筋に冷たいものを感じ、全身が震えながら一部始終を見ていた。

*******************************

夕暮れ前、仔実装の母が餌探しから帰ってきた。
なけなしの生ごみを齧りながら、仔実装は母に質問してみることにした。
「ママ、黄色いリボンをつけた実装石とか、お友達にいないテチ?」
「黄色いリボンデスゥ?ワタシたちの服にはそんなものないデスゥ、そんな実装石は知らないデスゥ」
「そうテチ・・・」
やはりそうか、仔実装はうつむきつつ、食事を続ける。

「そういえば、デスゥ」
母が思い出したように話し始めた。
「昔このあたりで、ニンゲンの子どもからとても可愛がられた実装石がいたということを聞いたことがあるデスゥ」
「可愛がられた、テチ?」
「そうデスゥ」
「その実装石は・・・その仔は、今どこにいるテチ?」
仔実装が見上げるように母に問う。

「その仔は・・・もういないデスゥ」
「テエ?どういうことテチ?」
「その仔は、優しいニンゲンの子どもから黄色いリボンを付けてもらって、お家こそ段ボールだけれど、とても可愛がってもらっていたそうデスゥ。
 でもある日、怖いニンゲンの子どもに殺されてしまったそうデスゥ」
「テ・・・殺されてしまったテチ・・・?」
「そうデスゥ。なんでも、首にまいた黄色いテープを、ニンゲンの子ども二人がかりで引っ張って、息がでくなくなるくらい首を絞められてしまったそうデスゥ」
「テェ・・・」

「ご近所からきいた話デスゥ。お家はこの段ボールハウスの近くだったそうデスゥ」
仔実装は言い知れぬ恐怖を覚えた。
もしかして、あの黄色いリボンの仔実装は、殺されてしまった仔ではないのだろうか?
だとしたら、屋上にいった後、どうなってしまったのだろう・・・




「テチャチャチャチャチャチャチャチャチャ!!!!!!!!!!」



あの黄色いリボンの仔実装の声が、仔実装の中でこだました。



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【夢でもいいから】


ある住宅街の一角、木造戸建ての家で、一人の老人が孤独死した。
いや、正確には孤独死ではない。ペットの実装石が一匹、一緒だったからだ。

飼い実装はいつかこの日がくるだろうとは思っていた。飼い主である老人は身寄りもおらず、近所づきあいもなく、時折苦しそうに咳をしていた。
実装石でも分かった。飼い主には寿命があり、それはそう遠くない日に来るのだと。
布団に寝たまま動かなくなった飼い主をみて、実装石はさめざめと涙を流す。

優しい飼い主であった。
言葉をかけてもらうことはあまりなかったが、三食忘れずに食事を用意してくれたし、たまにお風呂に入れてくれた。
寝るときも老人の布団の隣に小さなタオルケットを敷き、そこで寝ていた。
天気と老人の身体の調子が良ければ、たまにだが近所を散歩することもあった。

なにかできごとがあるわけではない。だが、時間がゆっくり流れるような、そんな日々だった。
「ご主人さま・・・もう一度、ご主人さまと一緒にご飯が食べたいデスゥ。もう一度、ご主人さまとお風呂に入りたいデスゥ。」
布団で仰向けになり動かなくなった飼い主に実装石が語り掛ける。

飼い主は動かない。
しかたない。生き物はいつか死ぬのだ。実装石である自分も、いつか死ぬのだ。
「死んだら・・・死んだら、また、ご主人さまに会えるデスゥ?」

答えるはずもない飼い主に向かって独り言を言う。当然、答えは返ってこない。
飼い主の死んだその日も、実装石は飼い主の横たわっている布団の隣にタオルケットを敷き、眠りについた。


ササッ


音がする。
何だろう?こんな夜更けに。

実装石は、眠気眼をこすりながら周囲を見る。ネズミか、ゴキブリだろうか?
周囲は真っ暗で、何も見えない。
何も見えないのでは仕方ない、もう一度眠りにつこう。

そう思ったとき、実装石の腹の上に重みを感じた。
この重みは・・・

思い出した。飼い主が自分を寝かしつけるとき、腹に手を置いたときの重みだ。
この腹の重みは、何ともいえない安心感があった。この重みと共に、眠りに落ちるとき、自分は本当に飼い主に愛されているのだと、心から思い、
心が満たされ、温かい気持ちになったものだ。
改めて思う。飼い主に会いたい。夢でもいいから、幽霊でもいいから、会いたい。
実装石は目を開いた。

「ご主人さま、、、もう一度あいたい・・・・デデッ!?」


そこには、死んだはずの飼い主が実装石を見下ろしていた。
それも、見たことのないような険しい顔、激しい怒りを示した顔をしていた。

「デ・・・グゲッ・・・・!!!!!!」

飼い主は実装石の首元を両手で抑え、思いっきり体重をかける。
そんな、なぜ、ご主人さまは、自分を愛していたのではないのか?愛情をもって飼ってくれていたのではないのか・・・?

横に目をやる。布団の上には、相変わらず飼い主が横たわったままであった。
では、今自分の首を絞めている老人は、誰なのか!?飼い主ではないのか!?

「グ、グゲ、、ゲ、、、」

実装石は飼い主の愛情への疑いと、自分の首を絞めている老人が飼い主ではないのではないかという考えが混ざり、血の涙を流し、そして、喉の骨が砕けて死んだ。



一週間後。
近所の通報により、老人の遺体は発見された。

「遺体は損傷が激しいですが、身の回りの品から身元は特定できました。」
家の前で警察関係者が話す。

「他に異常はなかったか?」
「特にはないですが・・・」
「どうした?」
「家の中で、実装石を飼っていたようなんです。実装フードとか、実装石の替えの服とかがたくさん積んであったので。」
「ペットは見つかったのか?」
「それが、肝心の実装石が見当たらないんですよ。家の窓は中から施錠されていましたし、ちゃんと飼い実装が逃げ出さないようにペット用の追加の錠まで設置されていました。
 もし実装石がペットになっていたなら、家の中にいたはずなんですが、どこを探しても見つからないんですよ」
「うーん、公園で野良実装に餌や服をあげいてただけかもしれないなぁ。事件性もないから、まぁ、放っておいて良いだろう」
「分かりました。」

警察関係者は捜査道具一式を片付け、パトカーに乗り、家から去っていった。


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1 Re: Name:匿名石 2025/09/02-07:52:31 No:00009771[申告]
実装石に聞かせてあげるための怖いお話、といったところの3本。残暑しのぎに良さそう。乙です。
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