飼い実装テヴェールの穏やかな日々 その9 ドールハウス ----------------------------------------------------------------------- 飼い仔実装のテヴェールは、飼い主の秋穂とママさんに連れられて、秋穂のお友達の家へと遊びに来ていた。 着いたと同時にママさんはママ友とのお茶会に、秋穂は子供部屋へと分かれる。 テヴェールはもちろん秋穂と一緒だ。 子供部屋には、小さな動物の人形達が住まうドールハウスが置かれていた。 今日はこのドールハウスで、テヴェールと共に遊んでみようという事になっていた。 「さ、入って入って〜」 『お邪魔しますテチ!』 秋穂の友達が勧めるままに、ドールハウスの玄関をくぐるテヴェール。 『テチャァ〜!すごいテチ〜!』 普段は大きすぎる感のあるニンゲンさんのお家が、まるで自分にピッタリの大きさになったような気がして、テヴェールは感嘆の鳴き声を上げる。 体格差故に自身で使うことなど想像すらできなかった様々な物が、自分に丁度よいサイズで並んでいる様に、テヴェールは驚きと感動で瞳を輝かせた。 秋穂達は秋穂達で、普段遊んでいる玩具がテヴェールの存在によりまた違った面白さを発揮することを発見できたためか、 テヴェールの一挙手一投足に歓声を上げる。 少女達にとっても、そしてテヴェールにとっても楽しい時間は瞬く間に過ぎていった。 「お邪魔しました!」 『お邪魔しましたテチ!』 揃って頭を下げる秋穂とその母、そしてペットの飼い仔実装 を見送った後、友達の少女は自身の母親に仔実装が欲しいとねだり始めた。 母親はスマホで仔実装の値段を確認し、これぐらいの安さならいいか、と首を縦に振る。 数日後には、近所のペットショップで安売りされていた仔実装が迎え入れられることとなった。 「さ、今日からここがあなたのお家よ」 『テッチャァァァァァー!』 テチーナと名付けられた仔実装は、自身の住処として与えられたドールハウスに大はしゃぎだった。 『これが夢の飼い実装生活テチ!?セレブテチ!勝ち組テチ!』 あまりの喜びに飼い実装として受けた躾など何処かに吹っ飛んでしまったテチーナは、あっという間に増長し始めた。 『おいドレイ、早くステーキとスシを持ってこいテチ!』 『ワタチのウンチを片付けさせてやるテチ!感謝しろテチ!』 『使えないドレイテチ!役に立たないなら邪魔だからとっととくたばれテチィ!』 豪華な食事を寄越せと喚き、これ見よがしに糞を垂れ、飼い主をドレイ呼ばわりするテチーナは、 翌日朝には飼い実装の地位を剥奪されて、ペットショップへと返品された。 その際、店員が返品しに来た女性にたっぷりと罵声を浴びせられたのは言うまでもない。 「ざけんじゃねぇぞこの糞蟲が!」 『ヂッシャァァァァァァァァァッッッッ!?』 テチーナは見せしめとして、陳列された他の実装石達の前で禿裸にされた挙げ句、切れ味の悪くなったカッターナイフで寸刻みにされて処刑された。 ペットショップで買われてから一日足らずの、極めて短い飼い実装生活であった。 テヴェールはお家に帰った後、お留守番だったセントバーナードのバルクホルンに、ドールハウスで遊んだのがいかに楽しかったかを、 テッチュテッチュと嬉しそうに報告していた。 当のバルクホルンは寝そべって半分まどろんでいただけだったが。 それを見ていた秋穂は、子供らしい素直さでテヴェールに聞いてみた。 「テヴェールもあんなお家がほしい?」 秋穂の問いに、テヴェールはテェェェと少しだけ考えたが、結局は首を横に振る。 『小さいお家だとご主人サマやバルクホルンと一緒にいられないテチ。ワタチはみんなと一緒の方が嬉しいテチ!』 そう言ってテヴェールはバルクホルンの前脚に頬ずりする。 バルクホルンも満更ではないらしく、鼻先でテヴェールの頭を撫でていた。 「そっかあ〜。そうだよね〜」 秋穂がテヴェールの頬を指先で優しくつつくと、テヴェールは頬ずりする先を秋穂の指先に変更する。 ママさんはそんな秋穂達の様子を、家事をこなしつつ優しく見守っていた。 -- 高速メモ帳から送信
1 Re: Name:匿名石 2025/08/31-03:25:31 No:00009769[申告] |
良個体見て勘違いして安価な奴なんか入手したらまずハズレだよな
余程の物好きか実装に詳しい好事家でもなきゃみっちり手間暇掛けて躾け直すなんてないし まあ返品されるだけマシ、反面教師として他のシアワセを掴む確率を上げる助けにはなれる |