飼い実装テヴェールの穏やかな日々 その5 多頭飼い ----------------------------------------------------------------------- とある平日のお昼時。 『いただきますテチ!』 飼い仔実装のテヴェールはセントバーナードのバルクホルンと共に昼食を摂っていた。 餌はバルクホルンと同じドックフードだ。 二匹が餌を食べている横で、ママさんはワイドショーを見ていた。 番組のテロップには【多頭飼いの悲劇!】と題されている。 犬や猫、そして実装石を多頭飼いしたが故に生じた数々の不幸な事例が紹介されているのを見て、ママさんはバルクホルンとテヴェールを横目で見やった。 いつものように仲良さそうに並んでドックフードを食べているのを見て安堵する。 うちのバルクホルンとテヴェールなら、きっと大丈夫よね。 実装石が多頭飼いに向いているか否かについては議論の余地がある。 『テェェェェン、テェェェェン、ご主人サマ、どこに行ったテチィ・・・?なんでワタチを放っておくのテチィ・・・?』 とある単身者が飼っていた仔実装は、日中の大半を一匹で寂しく過ごす事に耐えきれず、徐々に精神をすり減らした後に衰弱死してしまった。 実装石は孤独をひどく嫌う。 仔実装以下の個体に関しては特にその傾向が顕著だ。 仕事の都合で一日放置していただけで、孤独感から偽石に深刻なダメージを受けてしまう個体すらいるほどである。 このため、仔実装の姉妹をセット販売しているショップも少なくない。 『三女ばっかり贔屓されててムカつくテチ!媚びる糞蟲は死ねテチャァッ!』 『次女姉チャン、止めてレチィッ!髪の毛抜いちゃダメなのレチィッ!?』 『次女チャン、止めるテチ!仲良くするテチィ!』 『長女姉チャンも媚びる糞蟲だったテチ!?ちょうどいいから三女と一緒に始末してやるテチャァッ!!』 一方で、実装石は嫉妬深い一面や格下と思った存在には尊大かつ傲慢になる性質、そして強い排他性を有している。 実装石は糞蟲的な気質を有する個体が少なくない。 その中でも、特に仔実装以下の個体は、幼く理性が働かないが故に糞蟲的な言動を発露しやすい傾向がある。 この三匹の姉妹の場合、三女の親指はその体躯の小ささ故に特に飼い主から気にかけられていた。 それに嫉妬した次女は、飼い主が留守にしている間に三女を亡き者にしようと企んだのだ。 賢いが気弱な長女は次女を止めようとしたが、残念なことに返り討ちにあってしまった。 『ヂッ!?』 次女に一方的に殴られた挙げ句、長女は首筋を噛み千切られて絶命した。 『レヂャッ!?』 三女は鬱憤晴らしのために嬲り者にされた後、頭の半分を噛み潰されて死んだ。 飼い主が仕事から帰宅した時、水槽の中は血と糞で全身を汚した次女が姉妹の死体を貪り食うという地獄のような光景となっていた。 糞蟲は全てを台無しにするという言葉通りの現実に、飼い主は嘆息しながら次女の首を捻り千切った。 『ヂべッ!?』 そして実装石の場合、飼い主が意図しない多頭飼いも度々生じうる。 『お、お前達、止めるデス!ご主人サマに失礼デス!』 『うるさいテチ!甲斐性のないクソニンゲンが悪いテチ!』 『早くスシとステーキ持って来いテチャァ!』 『コンペイトウもよこせテチ!』 『使えないクソニンゲンテチ!』 『お前みたいなゴミニンゲンに飼われるなんてワタチタチは不幸テチ!』 実装石はその非力かつ脆弱な肉体による生存性の低さを補うためか、妊娠しやすく多産という性質を有している。 また、本能として多くの仔を産み育てたいという欲求を有してもいる。 このため、避妊措置を怠ると望まぬ妊娠、出産が生じる事になりかねない。 前述の飼い実装の場合、意図せぬとはいえ妊娠した仔を墮胎するのは忍びなく、飼い主に懇願して何とか出産の許可を貰ったものの、結果はご覧の有様だった。 仔の数が多く、おまけにさして賢くもない個体ばかりだったため教育に手が回らず、揃いも揃って糞蟲化してしまったというわけである。 今も実装フードを持ってきた飼い主に対して、悪態をつき、糞を投げつける仔を母実装は必死になって止めようとするが、まるで効果は無かった。 ブリーダーからの徹底した躾を経てから買われた母実装と違い、人間の恐ろしさを知る機会がない故の舐め腐った態度だったが、 飼い主がそうした事情を斟酌してやる義理は無かった。 もう手に負えないと判断した飼い主は、母実装の了解を得た上で仔実装達を殺処分した。 『ヂッ!?』 『チベッ!?』 『チヂィッ!?』 『チョベァッ!?』 『ママァ、助けテヂベァッ!?』 目の前で次々とハンマーで叩き潰される仔実装達を、母実装は血涙を流しながら見つめていた。 例えどうしようもない糞蟲共であっても、自身の飼い実装の地位を守るために見殺しにしたことに変わりはない。 『・・・デェェェンッ、デェェェンッ!』 染みと化した我が仔達を前に、母実装は泣き崩れる。 いくら泣いたところで、保身のために仔を見殺しにした罪は洗い流せるものではなかったが。 -- 高速メモ帳から送信
1 Re: Name:匿名石 2025/07/21-22:58:55 No:00009748[申告] |
構われたがりで孤独は嫌いなのに肥大化した自尊心で同族に排他的ってもうペットに向かないどころか生きモンとして欠陥がやばいなぁ準生物扱いされるのも已む無し…
だからこその積極的な間引きなんだろうけど最後飼い主に丸投げしている無責任な元母実装も先は長くないだろうな |