一匹の出産の時を迎えた実装石が公衆トイレの中でいきむ。 実装石特有のガバガバユルユル総排泄口からはそう時間をかけずに六匹の蛆実装が誕生した。 産みの苦しみなどという高尚なものとは無縁故さっさと粘膜を舐め取る親実装。それによって蛆実装達は次々と仔実装へと変態していく。 「やれやれ、元気な仔達で良かったデ…デ?」 「レフレフゥ。ママァ」 最後の一匹を抱えて首をかしげる親実装。その仔、六女は未熟児であり生まれながらの蛆実装であった。 「……ま、こういうこともあるデス 」 テチテチと遊ぶ姉妹達を見て気持ちを切り替える。 六女目は蛆実装だったが五女までは何の問題もない仔実装。今回の出産は当たりと言える部類だろう。 「さあ皆帰るデス。おうちはすぐそこだからママについてくるデスー」 蛆実装を抱えたまま仔実装達に告げ移動を始める。 蛆実装も意味も解らないままレフレフと返事をした……。 この公園の片隅、人間用トイレの近くには直径1m深さ1m程のほぼ真円の縦穴があった。 人間が工事のために開けたものを埋め忘れたのか、何かを立てるために掘ったが不要になってそのままになったのかは定かではないが、ともあれ実装石達はそこを共同トイレとして使うことにしていた。 中には長期間放置され固形化している糞も排泄されたばかりの暖かさのある糞も分け隔てなく捨てられている。 「デッス」 親実装は何の感慨もないままその中に蛆実装を投げ入れた。 「レフ?ママなんで穴に入れちゃうレフ?ウジチャもママと一緒にいたいレ…ウンチいっぱいレフ。食べ放題レフ~♪」 虫より愚かな蛆実装は母親の事すら忘れ夢中で糞に食らいつく。 その様子を確認すると親実装は仔を引き連れて自身のハウスへと歩いていった。 「ウジチャウンチいっぱいで幸せレフ!ウンチ食べたからウンチ出るレフゥ!」 糞を食いながら糞を漏らす。 それは蛆実装の生き方そのものであった……。 蛆実装がトイレに投げ入れられて1ヶ月。相も変わらず糞を食らうだけの毎日が続いていた。 変化があったとすれば他にも数匹の蛆実装が投げ込まれた事くらいだろう。 挨拶もそぞろに食糞に勤しんでいく。 しかし今日はいつになく外が忙しない。 「テチャァァァァ!」 「デヒィィィィィ!」 仔も成体もこぞってトイレで糞をぶちまける。 どうやら人間が遊び半分に低圧ドドンパをばら蒔いていったようでそれを食った連中がこぞって用を足しに来ているらしい。 「ウンチレフ!いっぱいウンチレフ!」 「今日はたくさん食べ放題レフゥ!」 「ウジチャウンチ生き埋めレビャビャビャビャ!(パキン」 予期せぬ糞フィーバーに蛆達も大喜び。普段から食いきれない量を捨てられていて底に堆積していると言うのにお構いなしに大喜びだ。 「漏れるテチ!漏れるテチィィィィィ!」 そんな中に更に慌てる仔実装。 それは生後間もなく捨てられた蛆実装の姉であった。 公園の野良実装の殆どが脱糞を終え貸し切り状態となったタイミングで低圧ドドンパの効果が来たらしい。 「レフ!?オネチャレフ!オネチャもウンチレフッ!?」 「漏れる!漏れちゃうテチィィィィィ!」 姉仔実装は蛆実装の言葉に反応する間も惜しいとばかりにパンツを脱ぎ捨て脱糞する。 母親は厳しく仔実装達を躾ていた。特にトイレに間に合わない等の粗相には厳しく一食抜かれる等当たり前。仔実装はなんとしてでも間に合わせなければならなかったのだ。 「ふいぃぃぃ…間に合って良かったテチィィ…我慢したから数倍気持ちいいテチィィィ…」 「オネチャの出したてウンチ美味しいレフゥ」 脱糞しながら恍惚の表情を浮かべる仔実装。蛆実装も姉の糞にご満悦だ。 しかし蛆実装へのプレゼントはそれだけではなかった。 「レフ?」 蛆実装は食っている糞の中から光る結晶を見つけた。それは姉仔実装の偽石だった。 実装石の中には時折内臓や総排泄口付近に偽石が形成される先天異常を持つ者がいる。姉仔実装はまさにその症例であり、勢いよく脱糞したことで総排泄口に刺さるようになっていた偽石が抜け、遂に落ちてしまったのだ。 「綺麗なキラキラレフ。これオネチャのレフ?」 上を見上げれば偽石を失ったことに気づいたのか落ち着かない様子の姉仔実装。 「オネチャー!綺麗なキラキラありがとうレフー!」 「テ?テェェェェェ!?」 蛆実装の言葉に穴へと視線を向け驚愕する姉仔実装。 なにせ蛆実装の足元には自分の偽石が転がっているのだ。何が起きたのか等理解出来る筈もない。 「ふ、ふざけんなテチャァァァァ!それはワタチの命テチャァァァァ!今すぐ返すテチャァァァァ!」 「イヤレフッ!これウジチャがもらったんレフ!」 「こ、このクソウジィィィ!返せ!返せテチャァァァァ!ぶっ殺してやるテチャァァァァ!」 「レフェェェェン!オネチャが怒ったレビャァァァァ!」 益体の無いやり取りを終えると蛆実装は偽石を握り締めるように丸まって泣き出してしまった。 蛆実装とはいえ自身の本体を力一杯掴まれるのは流石に苦しい。姉仔実装はまるで自身の全身を握り締められているような苦痛を味わうこととなった。 「レ…チ…く、苦しいテチ……」 姉仔実装が胸を押さえ呼吸を乱しながら声を漏らす。 決して窒息しないが息をすることが精一杯。更に骨折にも至らないが全身を駆け巡る握り潰されるような痛みはまるで拷問のようだった。 そんな辛さの中でも姉仔実装は必死に自分の偽石を取り返す方法を模索した。 「う…蛆ちゃ~ん!蛆ちゃ~んなんだか良いモノ持ってるテチィ~!」 「レフ?」 良いモノという言葉に泣き止む蛆。第一段階成功だ。 「その綺麗なキラキラなにテチ~イ?オネチャにも見せてほしいテチー!」 「レフッ!オネチャコレが見たいんレフ?」 前後の出来事も忘れ姉の偽石を掲げて見せる蛆実装。 知能が極端に低い蛆実装故に簡単に機嫌を良くし始めた。 「そ、そうテチィ!でもオネチャからは遠すぎるテチ!もっと近くで見せてほしいテチッ!」 つい必死になる姉仔実装。自分が届かない以上相手に持ってこさせれば良い。あとは石を奪い返しクソウジは叩き潰して殺してやる。 姉仔実装はそんな小賢しさを持っていた。 「分かったレフ!ウジチャ今からオネチャの所にいくレフゥ!」 しかし蛆実装はその策略に見事にはまった。ここで待っていればじきに蛆実装は自分のもとへ偽石を持ってくることだろう。そんな事を考え姉仔実装の顔が醜悪に歪む。 蛆実装が偽石を噛んで運ぶ際に心臓に鋭い痛みが走る。だがそれを堪えながら姉仔実装は自分の偽石がやって来るのを待った。だが…。 「レッフ、レッフ。オネチャァァ!無理レフゥ!」 「テェェ!?なんでテチィィ!」 予想外の言葉に驚愕する仔実装。 「この壁高過ぎるレフゥ!ウジチャじゃ登れないレフゥ!」 このトイレの深さは1m。堆積している糞の上に乗っているとはいえその厚みは10cmもない。高さ90cm以上の絶壁を蛆実装が登るのは不可能だ。 「テェェェェェ!が、頑張るテチィィィィィ!ウジチャなら登ってこられると信じてるテチィィィィ!」 姉の言葉に必死に上ろうとする蛆実装。だが幾度挑戦しても1cmすら登ることは出来なかった。 「頑張れぇぇぇ!頑張るテチィィィィィ!」 「レッフ、レッフ…レフェェェェン!」 必死に応援する仔実装とそれに答えようとする蛆実装。 だがその効果はまるでない。 自己のために他者を動かす小賢しい知能はある。相手の為に尽くすガッツはある。 だがそこには知能が、何より体格がまるで足りない。 どれだけ頭が良かろうと、諦めない心を持とうと偽石を届けるなど最初から不可能だったのだ。 「レ、レ…レッピャァァァァァ!」 やがてなんとか壁を上ろうと仰け反っていた蛆実装がすり鉢状の地面を転げ落ちた。 偽石を離してしまい穴の中心へと転がっていく。 「ウジチャァァァァァァン!」 「だ、だいじょぶレフゥ!ビックリしただけレフゥ!」 姉の悲鳴にしっかりと答える蛆実装。だが仔実装はそれどころではない。 「偽石はっ!お石は何処テチィィィィィ!?」 姉仔実装が悲痛な悲鳴をあげる。さっきまであった偽石が何処にもない。 この穴から失くならない筈のものが失くなり姉仔実装はパニックになった。 「見つからない!見つからないレフゥゥゥ!」 「探せぇ!探すんテチャァァァァ!」 「レフェェェェン!ウジチャのお石ぃぃぃ!」 「ワタチのテチャァァァァ!」 半狂乱になって探し回る蛆実装。 だが無情にも周囲をいくら探しても偽石は見つからなかった。 それもそのはず。偽石は蛆実装が転がった際に開けていた口にすっぽり飲み込まれてしまったのだ。 今は蛆実装の糞袋の中である。 「レェェン…見つからないレフゥ…」 「ハァハァ…探せぇ…探すんテチィィ……」 三十分間動き回りヘトヘトになった蛆実装と偽石の消化が始まり息も絶え絶えな姉仔実装。 その体は絶え間無い激痛に熱を持ち、声をあげることすら苦痛になっている。 その瞳からはどす黒い血涙が流れており、壮絶な痛みに苛まれていることを物語っていた。 蛆実装が動き回ったせいで体力が求められた結果糞袋が一気に活動し内容物を急速に溶かしているのだ。 仔実装が少しでも生き延びたければ蛆実装を大人しくさせるべきだった。もっとも、その先にあるのは同じ結末であるが…。 「お……お石………ワタ……チの………」 四つん這いのまま虚空を見つめ、生命が維持出来ぬほどに偽石が消化されて姉仔実装は絶命した。 穴に向けて身を乗り出すようにしていたために脱力と共にその亡骸が穴へと落ちる。 「レフ?オネチャもウンチ食べたくなったレフ?」 姉が死んだことを理解出来るはずもなく、落ちてきた事に疑問を持つ蛆実装。 「オネチャとウンチかけて遊ぶレフ!ウジチャみたいにウンチいっぱいになるレフ!」 だがそんな思考もさっさと放棄し無邪気に糞を飛ばして姉の体を糞まみれにしていく。 だがそれも疲労からものの十分ほどで終わり、姉の死体の上で眠り始めた。 その後残りの姉妹達が姉を探しに穴の中も確認したがその死体は糞と服の緑が迷彩のように機能し確認されることなく見逃された……。 日が暮れだした頃に蛆実装は目を覚ました。 空はまだ漆黒に染まってはいないが人間用トイレの屋根の真下に位置するこの穴は既に暗い。 「…外に出たいレフ」 それは初めて求めた欲望だった。 この穴の中には尽きない食料がある。仲間の蛆実装がいる。 捕食者や狂暴な同族等の危険はない。充分に満ち足りた生活が送れる筈だ。 だが蛆実装は満たされなくなってしまった。仔実装の偽石を吸収したせいで自我がより強くなってしまったのだろう。蛆実装はより大きな世界を求めてしまった。 自分はいつか外に出る。誰に知られることもなく暗く沈んだ世界に誓うのだった……。 翌朝。早朝から姉仔実装の死体を貪る蛆実装。 実装石の糞は実装石達にとって完全栄養食だ。吸収しきれなかった大量の栄養素が濃縮されており下手な餌を食う以上に彼らの体を健康に、そして頑強に育てる。 しかしそればかりでは足りない。毒味が無くては免疫が育たない。それでは真の意味で強い体は得られない。 強い体を作るための素材は幸運にも手元に転がり落ちていたのだから利用しない手立てはない。 「レフレフ。このオネチャ誰レフ?」 「これはウジチャのオネチャレフ!今は寝てるからそっとしてほしいレフ!」 「レファァ!ウジチャのオネチャ!よろしくレフ!」 仲間の蛆が寄ってきたので誤魔化しておく。 コイツらに食われては堪らない。なにせ貴重な糞以外の食糧なのだから……。 食事が終わったら坂を登る。毎日の体力作りの一貫だ。しかし一向に登れない。これは体力どうこうの問題ではない。 そこで蛆実装はあちこちにある糞の山を崩し始めた。 糞は大別して三種類。 新しい水分の多い糞。乾き始め固くなり始めた生乾きの糞。完全に水分を吸収され固くなり地層となった糞。 それらを使い壁面に土台を作っていく。 地層となっている糞と生乾きの糞。そしてその上に水分の多い糞が層になっているが更にその上に生乾きの糞を敷く。 更にその上に水分の多い糞と生乾きの糞を何層にも重ねて坂を作る作戦だ。 最も固い地層となっている糞は固すぎて動かせないので生乾きの糞を水分の多い糞で接着しつつ伸ばしていく。 しかしこれは蛆実装にとって途方もない重労働だ。 なにせ手足は歩行に使うので使えるのは口だけ。口内の水分が付かないように細心の注意を払わなければいけない。 しかもそうして運搬できる量は雀の涙。土台故に面積は大きめになるが一週間かけて1mmすら増えた感じがしない。 「体が…大きい体が欲しいレフ…」 燦々たる有り様に思わず涙を溢す。 そう思いながら1ヶ月程作業を続けていると、やがて蛆実装は繭に包まれていった……。 そこから更に一週間後。蛆実装は遂に繭から現れた。 「テッチテッチ…朝になったテチ?」 手で影を作りながら空を見上げる。 常に影になる位置にある穴だが僅かに届く日の光が今が朝であることを告げていた。 「テ…?」 間もなくして違和感に気づく。 腕が頭の前に来る。視界が高く感じる。そしてなにより鳴き声が変わっている。 「テェェェェ!?ウジチャン仔実装になったテチィ!?」 驚きと歓喜。自分は遂に願っていた大きな体を手に入れたのだ。 「ウジチャン達見テチ!ワタチ仔実装に…」 周囲を見回すと数匹の蛆実装がいる。 だがそのどれもがぐったりとして動かなくなっていた。 中には糞の中に頭を突っ込んだまま固まっている個体もいる。 「う、ウジチャン達!どうしたテチィ!?」 急いで駆け寄ろうとする仔実装。 だがその思いに反し足元は酷くぬかるんでいて先へ進むのも一苦労だ。心なしかすり鉢状になっていた地面も均一に均されたように感じる。 「しっかりしテチ!ウジチャン!」 やっとの思いでたどり着き蛆実装を抱き上げる仔実装。 だが濁った瞳は何も映しておらず、力無く舌をだらりと伸ばすのみだ。 「テェェェェェン!どうしてこんな事になったテチィィィィィ!」 予期せぬ蛆実装達のの突然死。 これにより仔実装は独りぼっちになってしまった。 「テ?なんでトイレにウジチャン以外がいるテチ?」 不意に上から声がした。 見れば用を足しに来たのか仔実装が怪訝な表情で此方を見ているではないか。 「テェェェェェン?ウジチャンが死んじゃったテチィィィィ!なんでか教えてテチィィィィィ!」 蛆実装を抱き抱えながら質問する。 なにせこの仔実装は産まれて間もなく親に捨てられた元蛆実装。しかも先程繭から孵ったばかりなのだ。知らないことがあまりに多すぎる。 「そんなの知るわけ無いテチ。それにしてもトイレに落ちるなんてマヌケな奴がいたものテチ」 嘲笑して去っていく仔実装。だがそれは間を置かずに戻ってきた。大勢の仲間を連れて。 「みんなー!ウンチ蟲にご馳走をくれてやるテチー!」 「「「「「テチテチー!」」」」」 仔実装の号令のもとトイレの中の仔実装へと糞投げが始まった。 いつもはトイレにする糞を隣でぶちまけ次々に投擲していく。 「やめっ!やめテチ!ウンチ投げないでテチッ!」 突然の暴力に怯え泣き出す仔実装。 しかし糞投げは勢いを増すばかりで終わる気配がない。 上にいる仔実装達も糞が尽きかけると再び脱糞し投擲を繰り返し心行くまで糞投げを楽しんだ。 「テピャピャピャピャ!いい気味だテチッ!」 「ウンチ蟲はウンチまみれがお似合いテチッ!」 「ウンチいっぱいしたからすっきりしたテチ!」 「帰ったらママにまたゴハン貰うテチッ!」 「食べたらまたウンチ投げてやるテチー!」 好き放題言って去っていく仔実装達。 対してトイレの仔実装は糞を投げられ過ぎてまるで糞山に目が付いているかのような風貌になっていた。 「テェェェェェン!テェェェェェン!」 さめざめと泣く仔実装。 生まれてすぐにトイレを転がり全身糞まみれだ。今更糞まみれにされた事は問題ではない。 突然同族に暴力を奮われた事が悲しかった。 今まで自分の廻りには純粋な蛆実装しかいなかった。それ故に他者から暴力を奮われた経験というものは皆無だった。 どうしてあんな事をされたのか解らない。何がいけなかったのか解らない。 何も解らないまま仔実装は泣き続けた……。 その後、泣き終えた仔実装は再び糞で坂を作り始めた。 体が大きくなった事で作業効率は劇的に改善し、毎日数mmずつ糞を積めている。 なにより感動したのがいちいち糞を回収してから所定の場所へ移動する必要が無くなった事だ。 糞を投げつけられた時の事を思いだし、見よう見まねで糞を投げてみたら思いの外高い場所へとぶつけられた。 軟便であっても壁面の高い場所へ当ててしまえばその場所で乾燥する。かつては固くなるまで待つか、接着剤としてしか使い道がなかった物が一気に便利道具になった気分だった。 蛆実装が全滅した事もプラスだ。 なにせ食い扶持が減りトイレに糞が溜まるのが早くなった。 水気が抜けて地盤のように固くなった糞は容易く高さを増し、ゴールである出口がいっそう近づいたように感じた。 だが大きくなった事で問題も生まれた。 自身の重量、体重が問題になったのだ。 蛆実装であった頃は軟便の上でもなければ体が沈み込むことはなかった。 だが仔実装になったことで柔らかい地盤は容易く沈み、バランスも崩しやすくなった。 しかし仔実装はめげる事無く糞を投擲し、ただひたすら坂の高さを稼いでいった。 いつか外に出るために……。 「デェ…」 この世に生を受けて半年程、仔実装は成体になっていた。 坂もかなり大きくなり蛆実装であった頃とは雲泥の差だ。 しかし実装石は絶望していた。 足場となる糞が一向に増えないのだ。 成体へと成長し体重は更に増加。食べる量も増え必要な糞の量は更に増えた。 成体の食事量は蛆実装の比ではない。その差15倍。 しかも足場の糞を踏み固めて沈めてしまう。その為に糞の坂は最高でも35cmが精々だ。1mの壁を越えるには絶望的な差と言えるだろう。 問題はそれだけではなかった。 糞をしに来る実装石が減っているのだ。 外の世界がわからない実装石には何が起きているのか伺い知ることは出来ないが群れのおよそ3割が減少していた。 糞がなければ坂を作れない。 壁を掘ろうとも試みたが実装石のスポンジハンドではあまりに成果が乏しく3日ほどで諦めた。 「デェェェェン!デェェェェン!」 成体となり知能も上がった分だけ絶望が認識できてしまう。 自分は一生外に出られない。これまでの短い生涯で導きだした結論はそれだった。 「知りだくながっだデズゥゥゥ!ごんなごどなら!世界なんて知りだくながっだデズゥゥゥ!」 外の世界の存在を知らなければ、無垢な蛆実装のままであったならこんな苦痛を知ること無く一生を終えただろう。 何故自分は外の世界を知ってしまったのだ。何故自分は仔実装などになってしまったのだ。何故無謀な夢を持ってしまったのだ。 ありとあらゆる理不尽が一気に襲いかかってきたような気がしてさめざめと泣く。 そうしていると変化が訪れた。 強い風に運ばれた水が穴へと入ってきたのだ。 「デ?」 それは実装石にとって初めての経験だった。 ここは人間の作った頑丈な屋根があり、上からものが降ってくるなど糞以外経験したことがなかったのだ。 そしてなにより外が異常なほど騒がしい 「何デス?何が起きてるんデス?」 思わず顔を上へ向けて立ち上がる。 そうしていると水は一気に勢いを増して穴へと入ってきた。 「デジャァァ!なんなんデスゥゥゥ!?」 本能的に頭を庇いながら蹲る。 この日公園は台風に襲われていた。普段であれば雨も入って来ることはなく少し騒々しい程度で済んでいた。 だが今回の台風は規模が違い、その風は易々と穴の中へと雨を運んでいった。 これほどになったのは実装石がまだ繭の頃。他の蛆実装を全滅させ、糞を全て液状化させた時以来である。 「デジャァァ!やめてデス!お空さん!やめてデスゥゥゥゥゥ!」 訳もわからず泣き始める。 この世が終わってしまうのではないかと思うほど実装石は怯えていた。 「ワタシが泣いたからお空さんも泣いてるデス!?なら泣かないデス!もう泣かないデスから、早く泣き止んでデスゥゥゥゥゥ!」 そうこうしている間にも雨は容赦なく入り込む。 糞は水を吸って液状化し、一部は地面へと吸収される。 瞬く間に実装石の今までの苦労を無に返していった。 「デギャァァァァァァ!?何するデズゥゥゥ!ワタシの!ワタシの頑張り…!ワタシのぉぉぉぉぉ!」 血涙を流し溶けた糞をかき集めるが無駄なことだ。 全身を糞まみれにしながら走り回る実装石。 深夜に降り始めた台風が去ったのはそれから5時間後の事だった……。 実装石はグズグズになって絶望していた。 何もかもが流され全身はこびりついた糞まみれ。 穴に残っているのは数cmの糞のみ。それも水気を多分に含んでおり、それが抜けた頃には殆んど0と言っていいだろう。 実装石の今までの人生、全ての努力は無駄に終わったのだ。 「デ……デェェェェン!デェェェェン!」 蹲って泣いていると目の前に小さな黄色いトゲトゲが降ってきた。 それは今まで見たことの無いものだった。 「デ?」 「テチャァァァァ!」 それに気付くと同時に上から仔実装の悲鳴が聞こえた。 「それはワタチのテチ!オバチャン!ワタチのコンペイトウ返しテチィィィィィ!」 泣きながら仔実装が懇願する。 実装石は仔実装に振り向きもせずコンペイトウと呼ばれたものをまじまじと見ていた。 「これが…コンペイトウデスか…?」 見たことはない。聞いたこともない。だが魂が知っている。 実装石にとって至宝の甘味。寿司、ステーキに並ぶ三大美味として偽石に記憶されたそれが目の前にある。 思わず手に取り、仔実装を見た。 「デ…」 「オバチャン!返してくれるんテチ!?ありがとうテチー!」 返してもらえると考え歓喜する仔実装を眺める。 自分と違ってまだ子供だ。しかしおそらくそう何度も食べられるものではない。 コンペイトウにありつけるのは仔実装にとっても珍しい事だろう。 「デッ!」 掛け声ひとつ。実装石はコンペイトウにかぶりついた。 「テチャァァァァ!」 仔実装の悲鳴が聞こえたが気にすることではない。 一瞬で口いっぱいに広がる甘さ。コリコリとした食感。鼻孔を満たす甘い香り。 いつも食べている糞とは違う。 苦味だけの味。水のようでありつつべしゃべしゃと全身にまとわりつく気持ちの悪さ。発酵した悪臭。 それらが実装石の食の全てだったというのに。 コンペイトウは一粒で実装石の世界を塗り替えてしまった。 その上自分など一生穴から出られないのだ。コンペイトウを食べる機会など間違いなくこれっきりだ。 ならば自分が食べて何が悪い。 そもそもあの仔実装は穴の外にいるではないか。それがどれだけ幸運なことかを考えればこのコンペイトウは自分への供物と考えるのが当たり前だ。命は平等であるべきだ。 ならば今までずっと苦労と後悔しかしてこなかった自分はこれからコンペイトウ三昧の一生を享受するべきだ。 コンペイトウだけではない。寿司、ステーキ。綺麗な服。暖かい風呂。心安らぐベッド。自分のためだけに奉仕する奴隷達。 それら全てで満たされ幸せになる資格が自分にはある。 実装石はそう確信した。 「旨すぎるデス~ン!これがコンペイトウ!これがワタシが食べるべきもの!他の奴になんて絶対渡さないデスー!」 「テチャァァァァ!オバチャンがワタチのコンペイトウ食べたテチィィィィィ!」 一瞬にして天国と地獄。地獄の中の天国。天国の中の地獄が形成された。 「お、オマエなんてウンチ食ってろテチャァァァァ!」 たまらず仔実装がパンコンし糞を手にする。 だが実装石のほうが投擲が早かった。 「テギャッ!?」 「デププププ。オマエはウンチ食ってろデスゥ!ワタシにもっとコンペイトウを持ってこいデッシャァァァァ!」 一瞬で糞蟲と化し糞を連続で投げつける。 なにせ糞は水気が多いとはいえ山程ある。自分の糞で嵩増しすれば服へまとわりつく非常に厄介な代物だ。更に毎日投擲しており肩には自信があった。 「テギャッ!?テブチャッ!?オバチャンやめテチィィィィィ!」 糞の山に埋まりながら仔実装が懇願する。 しかし実装石の糞投げは止まらない。 「デシャシャシャシャ!やめてほしかったらコンペイトウを…」 不意に実装石が糞を取り落とす。 食べ慣れない物を食べたせいなのか、急速に腹痛が襲ってきたのだ。 「デ、デェェェ!お腹が、お腹が痛いデスゥゥゥゥゥ!」 「オ、オバチャン…?」 糞山から這い出た仔実装も思わず心配する。 直後実装石は盛大に脱糞し空を飛んだ。 勢いのあまり糞はパンツを突き破り実装石の体を一気に上昇させる。 「ベギャァァァァァァ!!デ…?」 激痛が続く腹。張り裂けそうになる総排泄口。そんな中で実装石は気付いた。 自分は今、穴の外にいるのだ。 そこにあったのは初めて見る光景。 木。砂場。ベンチ。同じく糞で空を飛ぶ数匹の実装石達。公園の光景。 それら全てが初めての世界であり実装石が望んだ世界だった。 「す、凄いデス……」 思わず感動の涙を流す実装石。 数秒の世界見学の後、実装石は落下した。 「デビャッ!?」 運良く糞の上に落下したことで怪我だけは避けられた。 それだけではない。実装石は穴の外にいた。遂に外に出ることが出来たのだ。 どうやら落下した糞は先程口論した仔実装のものだったらしく幸運という他なかった。 「外に…出たデス……」 呆然と歩きだしながらポツリと呟く。 「外に出たデス!外に出たデスッ!外に出たデスゥゥゥゥゥ!」 血涙を流しながら走り出す。 遂に、遂に、自分はやってのけたのだ。 夢にまで見た外の世界。今、自分はそこにいるのだ。 初めて浴びる太陽の光。頬を撫でる風。鼻は糞の臭いで完全に麻痺し使い物にならないがきっと甘い香りが漂っている筈だ。 「なんデスあいつ」「汚いデス」「臭いテチー」 そんな実装石を見て公園の同族が口々に言う。 生まれた時から糞の山で育ち糞を食い糞と共に生きてきた。全身から悪臭を放つ実装石は同族からしても異様な存在であった。 「コンペイトウ!コンペイトウ欲しいデス!コンペイトウくれデス!」 手近な同族に迫る。 なにせここは外だ。楽園のような場所に決まっている。ならばコンペイトウくらい景気良くばら蒔いてくれるだろう。 「汚いのが寄るなデジャァァ!」 触れる寸前に腹に蹴りをぶちかまされた。 野良生活でその余裕がないだけで実装石は本来綺麗好きだ。糞まみれで糞の臭いを撒き散らす存在など近寄りたくもない。 「いきなりなんなんデスオマエ!汚ならしくて厚かましい…ほんっとうに穢らわしいデシャァァァ!」 「な、なんなんデスッ!ここは外デスッ!なんでもある筈デスッ!まさか全部独り占めする気なんデスッ!?」 突然威嚇され狼狽える。 楽園を夢見ていたというのにいきなりの手荒い歓迎に混乱する他なかった。 「なにが楽園デスッ!近場のゴミ捨て場は箱にされたデスッ!おかげでゴハンが取れないデスッ!木の実も全然足りないデスッ!愛護人間もどんどん来なくなったデスッ!さっきも虐待人間の嘘コンペイトウで仔供が飛ばされたデスッ!みんなもう飢えて死ぬしかないデシャァァァ!」 野良実装の言葉に実装石は混乱した。 「なに言ってるデス?だったらウンチを食べれば良いデス」 「そんなモン触ってたから愛護人間が来なくなったんデシャァァァ!」 元々この公園は愛護派がよく来ていた。 しかし餌は小綺麗なものに向けて優先して撒かれており、実装石達はすぐにそれに気付いたのだ。 それ以来この公園の群れはトイレを一ヶ所に定め、糞の臭いにすら気を使って生活してきた。 だがある日仔実装達が糞まみれになって帰っていたのだ。 糞汚れを極度に恐れた実装石達はすぐに服を脱がし洗濯。しかし糞の汚れはしつこくなかなか落ちず、結局多くの仔実装が服を失うことになった。 更に運悪くそのタイミングで愛護派が公園で餌を撒きはじめた。 公園は我が仔の間引きをしようとする成体や裸で泣き叫ぶ仔実装や糞まみれのままの仔実装と阿鼻叫喚。 それに嫌悪感を示した愛護派はさっさとその場を後にし、あまつさえその事を仲間内で触れ回ってしまった。 それから間もなくして愛護派が来る機会は減り、同時にゴミ捨て場への被害が問題になった。 愛護派は人数も多く、実装石を問題視する人々もなかなか話題に出せなかった問題であった為にこのタイミングならばと議題に上げ、即日可決された。 愛護派は能天気に木の実等で生きられるだろうと踏んでいたが無論そんなものでは足らず実装治安は悪化。餓死等も含め個体数は一気に減ることとなった。 そして後には糞を忌避しろというしきたりだけが残り、糞食いをすることなく公園中が飢えていったのだ。 「オマエのようなのがいるからデスッ!オマエのようなののせいで愛護人間が来なくなったデスッ!ぶっ殺してやるデシャァァァ!」 最早時系列も滅茶苦茶に野良実装がぶちギレる。 躊躇なく糞まみれの後ろ髪に掴みかかった。 「なんデスこの髪はっ!今まで糞で洗ってたんデスッ!?引っこ抜いてやるデシャァァァ!」 突然の事態に目を丸くする実装石。 「や、やめてデス!髪の毛抜けたらハゲになっちゃうデス!抜いたら駄目なんデジャァァ!」 「やかましいデシャァァァ!」 糞で固まり、まったくほどけない程に絡まった髪はさしたる抵抗もなく抜け、野良実装はそれを投げ捨てた。 「デ…デ…髪ぃぃぃぃ!ワタシの髪ぃぃぃぃ!」 引っこ抜かれた髪を抱き締め号泣する実装石。 その姿がよりいっそう野良実装達を苛つかせた。 「そんな糞まみれのなにがなんでも髪デシャァァァ!」 「不衛生なのは嫌われるんデシャァァァ!」 「こいつのせい!こいつのせいデシャァァァ!! 」 暴力は集団ヒステリーへと発展し暴力へと変貌する。 実装石も流石に恐ろしくなり今更になって逃げ出した。 「待つデス糞蟲ぃぃぃ!」 「生かしておけないデシャァァァ!」 「死ねっ!死ねっ!死ねデシャァァァ!」 後ろから追いかけてくる野良実装達はすぐさま残っていたもう一房の髪を捕まえる。 手入れなど生まれてから一度もせず、日光も浴びず弱りきった毛根はさしたる抵抗もなく抜け落ちた。 「デヒィィィィ!ワタシの髪ぃぃぃ!」 走りながら後頭部へと手を回し血涙を流す。 それでも実装石は足を止めない。足を止めれば即座に死ぬと理解しているのだ。 幸か不幸か髪の毛がなくなったことで体が軽くなり速度は増した。 それでも諦めない野良集団。 やがて実装石達は公園を出て正面の大通りを掛け始める。しかし目の前の事に気をとられ全員それに気付かなかった。 「デヒャ!?」 道路を渡る途中で転ぶ実装石。なにせ走ること自体生まれて初めてだ。むしろよくここまで転ばなかったと称賛されるべきだろう。 「殺すデスゥゥゥゥゥ!」 「死ねデスゥゥゥゥゥ!」 「あの世で後悔しろデシャァァァ!」 立ち上がろうとして背後を見る。そこには鬼気迫る形相の野良実装達。 距離が縮まる。逃げられない。 血涙を流しながら瞼を閉じる。実装石はまたも絶望することとなった。 「「「デヴレビャッ!?」」」 奇怪な声がすると突然静かになった。 「デ…?」 恐る恐る目を開けると追ってきた三匹がなんだかわからない肉の塊としてひとつになっていた。 どうやら車に轢かれたらしいが実装石には何も解らない。ただ幸運がまだ自分を見放していなかったと思うばかりだ。 「や、やった…やったデス!やっぱりワタシは幸せになれるんデスゥゥゥゥゥ!」 今度は歓喜の涙にうち震える実装石。 これから自分は幸せになれる。だから甘い物も食べられた。だから外に出られた。外の無礼な同族に天誅が下った。 髪の毛は抜かれてしまったがおかげで体は軽くなった。必要な犠牲と考えれば安いものだ。 「ゴハン…まずはゴハンデスッ!コンペイトウデスッ!スシデスッ!ステーキデスゥゥゥゥゥ!」 そう叫んで立ち上がろうとして転んでしまった。 まだ足がもつれるのだろうと視線を向けると、足が、下半身が失くなっていた。 「デ、デェェェェェェェェ!?」 あまりの自体に驚愕する。 先程三匹を潰した車は転んだ実装石の下半身も潰していたのだ。 何かを理解するよりも早く痛みと恐怖が襲ってくる。 「デヒッ!デヒィィィィ!」 なんとか這いずって歩道へ上がろうとする。しかしその段差が越えられない。 「なんなんデスッ!なんなんデスこの高いのは!!いっつもそうデスッ!ワタシの周りはいっつも高いデスッ!ワタシがいったい何をしたと言うんデシャァァァ!」 おびただしい血を流しながら発狂する。 事実この実装石が何をしたというわけではない。ただそうした運命のもとに生まれただけなのだ。 「デヒー…デヒー…デァ?」 突如目の前に降りた影を見上げる。そこには見たことのない生き物が立っていた。 「おお、オマエェ…ワタシを…ワタシを助けるデス!そうすれば褒美にコンペイトウ」 言葉を聞くより早く生き物は実装石の傷口へ嘴を突き立てた。 生き物の正体はゴミ捨て場が封鎖され困っていたカラスだった。 カラスは躊躇なく実装石の体を貪り始めたのだ。 「やめっ!やめてデスッ!痛い!痛いからやめっ!お願いデスやめてぇぇぇ!」 悲痛な悲鳴も虚しくカラス達は次々集まっていく。なにせ貴重な肉だ。無駄にはできない。 「死ぬ、死ぬ…死んじゃうデス…まだ何も…なにもしてないのに死んじゃうデスゥ…」 目を抉られ内蔵を啄まれながら死が近いことを悟る。 実装石は生きながらにして鳥葬のように食い荒らされるのだ。 「やめ…デ…死にた……い…」 実装石の脳裏を走馬灯が駆け巡る。 あの穴に戻りたい。穴の中に飢えは無かった。危険は無かった。ただ生きるだけならあの穴こそ楽園だったのだ。 何をするでもなく、ただ糞を食って毎日を生きる。なんと素晴らしく怠惰な一生か! 自分は、あの穴に生かされていたのだ。 「死にたく…ないデス……」 その願いが叶ったのか、カラス達は一斉に飛び立っていった。 「デヒー……デヒー……デヒー」 残った左目で周囲を見る。 カラスは一羽もいない。代わりになにか大きな塊がひっきりなしに走っていく。 なんてことはない。信号が青に代わり車が走り始めたのでカラス達は退避したのだ。 良かった。助かった。 心の底から実装石は思った。 しかしもう声は出なかった。 無事な四肢は無く、一呼吸ごとにおびただしい血が吹き出している。 実装石が助かる見込みは何処にもなかった。 残っているのは形容しがたい激痛だけだ。 痛い。痛い。痛みで訳がわからないくらい痛い。 お石が割れる。はやく楽になりたい。 思わずそう願う。 だが実装石を食おうとしたカラスは遠く、車が轢くには歩道に近過ぎる。周囲には通行人など一人もいない。同族がここまで来るなど有り得ない。 滅茶苦茶になる思考でその事を理解し黒い涙を流し始める。 「(あの穴を出ようとなんてしなければ良かったデス…)」 たっぷりと死と痛みの絶望を味わいながら実装石は息絶えた……。 同じ頃、トイレの縦穴の底でモゾモゾと動く物体があった。 「テヒィ…ここは何処テチ?」 それはドドンパを落とした仔実装だった。 トイレの中にいた実装石の糞に押されそのまま底へと落ちたのだ。 「高いテチィ…」 立ち上がり出口である真上を見る。 到底届くような高さではない。 「テッチ!テッチ!」 穴から出ようとジャンプしてみる。 しかし当然のように届かない。 「テェェ…」 困惑しながら周囲を見る。 何もない。同族もいない。独りぼっちだ。 「テェェェェン!テェェェェン!」 どうしようもなくなり号泣する。 出る方法もわからない。食べ物も何処にもない。 仔実装には生きていく方法が分からなかった。 「出しテチィィィィィ!出しテチィィィィィ!」 どうしようもなくなった仔実装はただひたすらに泣き続けた………。
1 Re: Name:匿名石 2025/05/31-03:56:31 No:00009667[申告] |
今年出たスクの中で一番の傑作だった |
2 Re: Name:匿名石 2025/05/31-05:52:28 No:00009668[申告] |
糞に塗れた一生の中で生活を向上させる可能性を感じるだけでそもそもその能力を有していない実装石にとっては不幸にしかならんのが皮肉だ |
3 Re: Name:匿名石 2025/06/12-02:54:48 No:00009690[申告] |
単純に粘膜無しの子実装と共に蛆実装も生まれてくる設定の方、蛆実装=未熟児設定で良かったんじゃねえの
蛆実装を実装肥溜めに投げ入れる理由にもなるし 最初意味わからんぞ |
4 Re: Name:匿名石 2025/06/18-21:35:56 No:00009698[申告] |
粘膜を落とされず仔実装になれなかった蛆実装と最初から蛆実装として生まれた蛆実装
両方いる設定は昔からあるし何がわからんのだ? |
5 Re: Name:匿名石 2025/06/21-14:47:38 No:00009706[申告] |
粘膜取らないと固まって手足が伸びずウジになってしまうって設定自体後から出来たものだしね
仔と一緒にウジが産まれても何もおかしくないしそういうスクいっぱいあるよ |