実翠石との生活Ⅲ 短編まとめ6 ----------------------------------------------------------------------- こどもは明るい未来への希望 とある休日の昼下り。 秋人が実翠石の裏葉を連れて近所を散歩している時だった。 「美味しそうな匂いです♪」 秋人が提げた袋から漂う甘い香りに、裏葉が目を細める。 紙袋の中身は、今日のおやつにと近所のたい焼き屋で買い求めた、季節限定桜餡入のたい焼きだった。 「ちょっと多めに買ったから、遠慮なく食べてな」 「えへへ、ありがとうございますです」 「・・・お腹の子の分も、たくさん栄養取らないといけないしな」 「ぁ、ぅ・・・はい、です♥」 裏葉は真っ赤になって俯きながら、自身の下腹部をそっと撫でさする。 服の上からではまだ目立たぬものの、裏葉の子宮には新たな命が確かに宿っていた。 いずれ訪れる、新たな家族を迎え入れる事が出来るという喜びに、二人は微笑みあった。 『デププ・・・!』 そんな二人の様子を、電信柱の影から一匹の野良実装が嫌らしい笑みを浮かべながら見つめていた。 託児のタイミングを見計らっていたところでたまたま見つけた、ヒトモドキのデキソコナイとその飼い主。 今日の託児に連れてきたのは、娘達の中でもとびきり出来が良い仔だ。 この仔を見れば、醜い肉人形を溺愛するような愚鈍なニンゲンでも目を覚まして、泣いて喜ぶに違いない。 そうすれば巣に残して来た他の仔供達共々、夢のセレブな飼い実装だ。 あのニセモノは糞喰いの奴隷にした後で、散々に嬲り者にしてから始末してやろう。 栄養失調から来る思考力の減退と幸せ回路の働きにより、野良実装の脳内では薔薇色の未来が既定路線となっていた。 『さあ、行って来るデス!お前の魅力でニンゲンをメロメロに誘惑してくるデス!』 『わかったテチ!』 こちらもやる気満々の仔実装を抱えた野良実装は、ここぞというタイミングで、ニンゲンの提げた袋目掛けて仔を投擲した。 「おっと」 「わっ、きゃっ!?」 電柱の影から何かが飛んできたのを視界に捉えた秋人は、隣を歩く裏葉を抱き寄せながら身を躱した。 結果、仔実装は入り込むべき紙袋を失い、そのまま落下して地面に叩き付けられる。 『テヂィィィィィィィィィッッ!?』 即死こそ避けられたが、右半身から叩き付けられた事により右手足が吹き飛び、仔実装は激痛に泣き叫んだ。 パンツは漏らした糞でこんもりと膨れている。 『デジャアァァァァァァ!?』 娘の惨状に、野良実装も泣き叫ぶ。 クソニンゲンはそのままデキソコナイを抱き上げて、走って逃げて行った。 追いかけようにも実装石の足では人間に敵わないし、託児に失敗したのでは臭いを辿ることも出来ない。 大事な娘を傷物にされた挙げ句逃げられるという屈辱に、野良実装は地面をポフポフ叩いて悔しがる。 だが、野良実装に降り掛かる不幸はこれからが本番だった。 『ヂッ!?』 娘の悲鳴が聞こえたかと思ったら、娘の居た地面には汚い赤と緑の染みが広がっていた。 染みの原材料が娘だと知覚し叫ぼうとしたところで、霧状の何かが野良実装に降り掛かる。 途端、呼吸が止まり、全身が激痛に見舞われる。 『デジィッ!?・・・デ・・・ゲッ!?』 霧状の何かの正体は、噴霧式実装コロリだった。 託児被害の頻発に伴い、町内会からシルバー人材派遣経由で雇われた老人が、託児の現行犯を見つけて駆除に及んだのだ。 程なくして、踏み潰された仔の後を追うように、野良実装は苦しみ抜いて死んだが、野良実装を見舞う悲劇はこれだけでは済まなかった。 『ママ、遅いテチ・・・』 『お腹空いたテチ・・・』 『もう我慢できないテチ!オマエはワタチのご飯になれテチ!』 『テチャァッ!?お姉チャン、噛んじゃいやテチャァッ!?』 『止めるテチ!共喰いなんてダメテチィ!』 『うるさいテチ!お前の事も後で喰ってやるテチ!高貴で美しいワタチのご飯になれることを喜べテチ!』 『喰われる前に喰ってやるテチャァッ!』 巣に残して来た仔実装達は飢えに抗えず共喰いに及び、醜い争いの後一匹残らず死に絶える事となった。 自宅の玄関先まで戻ってきた秋人は、裏葉を腕に抱いたまま後ろを振り返る。 野良実装が付いて来ている様子はなさそうだった。 「パパ、大丈夫です?」 少々息の上がった秋人を心配そうに見つめる裏葉に、大丈夫だと秋人は微笑み返した。 「守ってくれてありがとうございますです、パパ」 そう言って、裏葉は秋人の首に腕を回して、頬に軽くキスをしてから、耳元で囁いた。 「お腹の赤ちゃんも、パパが守ってくれて嬉しいって、思ってるはず、です・・・♥」 ※スレに投稿したものを改題、改編しました。 ----------------------------------------------------------------------- 春の訪れと新たな命と 春は新たな命が芽吹く季節。 厳しい冬を乗り切った野良実装石達が、歓喜と共に春仔を産み育てようとしている頃。 秋人と実翠石の裏葉の間にも、愛の結晶が間もなく生まれようとしていた。 「桜、すごくきれいです」 長閑という他ない天気のいい休日の昼下り。 満開の桜が咲き誇る公園、そのベンチに二人並んで腰掛けて、二人は春の訪れを満喫していた。 この公園は何日か前に野良実装の大規模駆除と環境整備が行われたばかりであるため、本来あるべき憩いの場としての役割を取り戻していた。 ベンチから少し離れた砂場や遊具では、近所に住む幼子達がが元気に遊び回っている。 「・・・元気に産まれて来てほしいです」 裏葉がそう言って自身の下腹部を撫で擦る。 ひどくゆったりした、身体のラインが目立たない服の下には、確かに二人の待望の命が宿っていた。 ひどく妊娠しにくい実翠石故に喜びが大きい反面、初めての出産ということもあり、やはり不安でもあるのだろう。 「大丈夫さ。きっと裏葉似の可愛くて元気な娘になるよ」 秋人は裏葉の肩を抱き寄せて励ます。 秋人自身、結婚して子供を設けて幸せな家庭を作ることを夢見ていた。その夢が間もなく叶うのだから、その喜びは裏葉に勝るとも劣らない。 「あっ、いま動いた、です」 ピクリと肩を震わせた裏葉が、秋人に微笑みかける。 「赤ちゃんも、早くパパに会いたい、って言ってるみたいです」 裏葉が秋人の手を取り、自身の下腹部へと導く。 子宮越しに父の存在を感じ取ったのか、秋人の手にも分かる程の胎動に、秋人と裏葉は微笑みを交わし合った。 「・・・テチィ・・・」 一匹の死にかけの仔実装が、植え込みの影でか細い鳴き声を上げた。 濁りきった瞳には、秋人と裏葉の幸せそうな様子が映っている。 生まれたその日に行われた大規模駆除。 『お、お前たち、逃げるデギャアァァァァァァァァァッッ!?』 出産で消耗していた母実装は生まれたばかりの仔を庇う間もなく噴霧式コロリを浴びてのたうち回りながら死んだ。 『ママ、ママァァァデヂャァァァァッ!?』 他に三匹いた姉妹は母実装同様にコロリで始末されたり、 『デベヂッ!?』 逃げ惑う他の野良実装に踏み殺されたり、 『ニ、ニンゲンさん、かわいいワタチにひどいことしちゃイヤテチィ♥・・・イタイ、イタイテヂャァァァァァァァッッ!?』 駆除業者の人間に媚びてみせて嫌悪を買い四肢をもがれて嬲り殺しにされた。 そこかしこから聞こえてくる同族の悲鳴にパキンしそうになりながら、仔実装は必死に声を押し殺して植え込みの影に身を潜め続けた。 その甲斐あって、運良く駆除から生き延びる事が出来たものの、それは仔実装の余命が数日余計に延びただけに過ぎなかった。 か弱く儚い仔実装が親の庇護なく野良で生き延びるなどほとんど不可能だからだ。 おまけにこの仔実装は産まれたばかりで、生き延びる術など知る由もない。 このため、この仔実装は植え込みの影で飢えと孤独と恐怖を友に数日を過ごし、この日とうとう力尽きた。 今際の際に見せつけられた実翠石の幸せな様子に、仔実装の偽石は蝕まれるようにひびが入る。 どうしてワタチタチはニンゲンにカナシイことをされるのに、あのヒトモドキは愛されているのか。 どうしてワタチは産まれてからずっとさびしい思いをしていたのに、あのデキソコナイの隣にはニンゲンが寄り添っているのか。 どうして、どうして、どうして・・・。 『ヂィッ・・・』 パキンッと小さく乾いた音と共に仔実装の偽石が砕けるが、その音は誰に聞かれる事もなく虚空へと消えていった。 ----------------------------------------------------------------------- ポーチの中の仔実装 とあるコンビニのベンチで、女子高生達がガールズトークに花を咲かせていた。 「見て見て〜、かわいいでしょ?」 女子高生が友人達にぬいぐるみポーチ入の仔実装を見せる。 『テチュ〜ン♪』 仔実装は注目されていることに気付くと、ひと媚びしてからイゴイゴと手足を動かし始めた。 どうやらダンスをしているつもりらしい。 「え〜、かわいい〜!」 「踊ってるの?すご〜い!」 女子特有の上っ面だけの同調だったが、それでも仔実装は気を良くしたらしい。 得意になって、さらにイゴイゴとお得意のダンスを続ける。 「でもでも、可愛さならあの娘の方がすごくない?」 友人の一人が指差す先では、父親とその娘と思しき二人が手を繋いでコンビニに向かって歩いて来ていた。 真ん中に挟まれたまだ小さい少女は、美しい黒髪を有していた。 家族連れでのお出かけが嬉しいのか、見る者を和ませる笑顔を浮かべている。 「ホントだ、すっごいかわいい〜!」 「お人形さんみたい〜!」 『ヂィッ・・・』 女子高生達の賛辞があっさりと他に移ってしまった事に、仔実装は苛つきを隠そうともせず黒髪の少女を睨み付ける。 少女達の瞳は紅と碧のオッドアイだった。 偽石に刻まれた記憶が、あいつらは実翠石だと教えてくれた。 『チヂィィィィィィィィッッ!!』 卑しい穴人形如きが、目が節穴のクソニンゲンに媚び散らかしている様に、仔実装は瞬間湯沸かし器の如く激昂した。 忌々しい事に、二匹もいる肉穴風情の内、小さい方の一匹は黒髪だった。 大きい方の穴人形は、飼い主のクソニンゲンとの間に子を儲ける事に成功したらしい。 しかも、それがよりにもよって黒髪とは。 実装石にとって、黒髪の仔を産むというのは自身のシアワセを表す一種のステータスでもあり、特権でもある。 断じてあんなニセモノ共に許される行為ではない。 『ヂシャァァァァァァァァァァッッ!!』 仔実装は盛大に糞を漏らしながら、怒りの叫びを上げ続ける。 あまりに度を越した怒りに、脳の血管が切れんばかりになっていた。 「ねえ、その仔大丈夫?めちゃくちゃウンチ漏らしてるよ?」 女子高生の一人が嫌悪感も露わに仔実装が入ったポーチを指差す。 ポーチの中は狂ったように鳴き叫ぶ仔実装が漏らした糞でパンパンになっていた。 既にうっすらと悪臭が漏れてさえいる。 「うげっ」 ポーチの持ち主の女子高生は思いっきり顔を顰めると、ポーチを躊躇いなくコンビニのゴミ箱に突っ込んだ。 「いいの?」 「いいよ、汚いだけだし。大して可愛くもなかったし」 さすがに友人の一人が懸念を示すが、持ち主の女子高生はどこ吹く風だった。 秋人と実翠石の裏葉、そしてその娘の松葉は散歩の途中でコンビニに立ち寄っていた。 「こんにちはです〜」 屈託のない笑顔を浮かべた松葉がコンビニのベンチで駄弁っていた女子高生に手を振ると、女子高生達も笑顔で手を振り返してくれた。 人懐っこい明るい娘に育っている事に、秋人と裏葉は微笑み合う。 良い子の松葉と、良き母として松葉を育ててくれている裏葉に、何か甘いものをご馳走してあげようか、などと財布の紐と共に口元を緩める秋人だった。 『暗いテチ!臭いテチ!ここから出せテチィ!』 ゴミ箱に放り込まれた仔実装は、己の糞でパンパンになったポーチから出ることもできず、鳴き喚き続けていた。 ポーチの中をせり上がった糞が喉元まで来ていて臭くて堪らなかった。 下手をしたらこのまま糞食を強制されかねない。 仔実装への糞責めは、他のゴミが詰め込まれて圧死するまでの数時間に渡って続くことになった。 ----------------------------------------------------------------------- 感謝の心は大事です 「パパ、いってらっしゃいです〜!」 実翠石の松葉は、母親の裏葉と共に仕事に向かう父親の秋人を見送った。 肩越しに手を振り返してくれる秋人に、松葉も嬉しくなって大きく手を振り返す。 秋人を見送った後、裏葉は洗い物や洗濯、掃除を順番にこなしていった。 その間、松葉は邪魔にならないよう、秋人に買ってもらった花の写真集を眺めて過ごす。 「松葉、お待たせです」 一通り家事が済んだところで、ようやく大好きな母と過ごせる時間が訪れた。 裏葉に自慢の黒髪を梳いてもらいながら、常々思っていた疑問を口にする。 「ねぇママ、どうしてパパはいつもお仕事に行っちゃうんです?もっとパパと一緒にいたいです」 松葉の子供らしい問いに、裏葉は優しく答える。 「パパともっと一緒にいたいのは、ママも同じ気持ちです」 でも、と裏葉は言葉を続けた。 「パパは私達のためにお仕事を頑張ってくれているです。 パパがお仕事を頑張ってくれているから、私達は立派なお家に住めたり、おいしいご飯が食べられるです」 「わあ、パパ、すごいです!」 「だから、パパがお仕事から帰って来たら、お疲れ様、ありがとうってお出迎えしましょうです。疲れて帰ってくるパパを、私達でしっかりお世話するです」 「はーいです♪」 聞き分けの良い松葉に嬉しくなった裏葉は、ぎゅっと松葉を抱き締める。 何年もかかって、やっと授かった大切な娘。 愛するパパとの間に出来た愛の結晶。 その幸せを願わずにはいられない存在、それが松葉だった。 「・・・って嬉しいことを言ってくれるからさ、仕事頑張ろうって気になるんだよね」 家に帰ると家族が感謝の気持ちと共に温かく迎えてくれる。それが仕事のモチベーションに繋がっている。 そんな秋人の惚気混じりの話に、部下のまだ若い女性社員は愛想笑いを返すだけだった。 ランチミーティングと称して昼食を奢ってくれる上司への対応としては、ぎりぎり及第点と言えるだろう。 ちなみに、同席している同期の男性社員は、ランチに夢中で碌に話を聞いていなかった。 感謝の気持ち、か。 愛想笑いの下で、女性社員は思った。 私が飼っている仔実装なんて、感謝どころか・・・。 上司への羨望と、自身のペットへの忌々しさに、女性社員は思わず奥歯を噛み締めていた。 一人暮らしの無聊を慰めるために買った、値段の手頃だった仔実装。 最初のうちこそ甘えてくる様が可愛く思えてあれこれと世話を焼いていたのだが、今となっては・・・。 苛立ちを誤魔化すために、隣に座る同期の男性社員の脇腹を肘でつつく。 「がっついてばかりいないであんたも何か話しなさいよ」 ランチで頬を膨らませながらきょとんとした表情を返す同期に、秋人は苦笑しながらいいよいいよ、遠慮なく食べなさいと促す。 上司とは十歳も離れていないはずなのに、この差は何なのだろう?やはり余裕の為せる業なのだろうか? 上司の態度にすら若干の苛つきを覚えつつ、女性社員はアイスコーヒーを口に含む。 ガムシロップを入れているはずなのに、妙に苦味が強かった。 「ただいま」 誰ともなく女性社員は口にする。 聞かせる相手が居ないにもかかわらず口にするのは、両親の躾が良かったからだろう。 仕事を終え、アパートに帰宅して明かりを点ける。 途端に部屋の奥に置いた水槽からテチテチとやかましい鳴き声が聞こえてきた。 『遅いテチ、このクソニンゲン!早く高貴なワタチに相応しい豪華な食事を持って来いテチ!』 水槽に備え付けのリンガルから、神経を逆撫でするような音声が聞こえてくる。 頬を引きつらせながら水槽を見やる。 一目見て、見るんじゃなかったと後悔した。 アクリル製水槽の透明な壁面には、仔実装の投糞により至る所にベッタリと糞がこびりついている。 水槽内に置かれた餌皿にも、中に盛られたフードの上からたっぷりと糞がひり出されていた。 留守番中寂しくないようにと買い与えた蛆実装のぬいぐるみは、ところどころが齧られ、糞を塗りつけられて水槽の端に打ち捨てられている。 水槽内がこれだけ糞まみれなのにもかかわらず、トイレは使われた形跡が無い。 『何をグズグズしてるテチ!?まったく使えないクソニンゲンテチ!』 仔実装自体も酷いものだった。 フードのやり過ぎで下膨れになった顔からは、飼い始めた当初に感じていた可愛さなど微塵もない。 顔中に皺を寄せて唾を飛ばしながら鳴き喚く姿は、地獄の餓鬼のようだった。 おまけに身体の至る所に糞をこびり付かせている。 こんな不潔極まる外見で、よく高貴だなんだとほざけるものだ。 思わず漏れる失笑に、仔実装はますます喚き立てる。 『ヘラヘラ笑ってんじゃないテチ!お前みたいな役立たずなニンゲンに飼われるなんてワタチは不幸テチ!』 その一言で、何か張り詰めていたものが切れたような気がした。 そんなに言うなら、それに相応しい扱いをしてやろうじゃないか。 女性社員は仔実装の入った水槽を持ち上げると、浴室へと向かう。 『ようやく言うことを聞くつもりになったテチ?今更遅いテチこのクズニンゲン!!』 戯言を無視して水槽の蓋を開け、熱湯を注ぎ込んでやった。 『テヒィィィィィィィィィィィッッ!!??』 熱湯に浸された仔実装はジタバタ暴れて熱さから逃げようとするが、すぐに水位が上がって溺れ始める。 『テボガボォッ!?テボォァッ!?』 閉じることのできないミツクチから熱湯が入り込み、呼吸が出来ずにもがき苦しむ仔実装を、女性社員は口元を歪めて見つめていた。 糞を漏らして熱湯を汚しながら、水槽の底で空気を求めてイゴイゴと蠢く仔実装。 このまま始末しようかとも思ったが、溜まった鬱憤を晴らすには到底足りないなと思い直し、水槽を蹴り倒す。 『テベェッ!テホォッ!』 かろうじて溺死を免れた仔実装だったが、熱湯による全身火傷で半死半生となっており弱々しく痙攣するのがやっとだった。 「・・・ふふっ♪」 女性社員の口元から思わず笑みが漏れる。 最初からこうしておくべきだったのだ。 仔実装をつまみ上げて目線の高さまで持ち上げる。 ようやく己の立場を思い出したのだろう。 『・・・テチュ〜ン♪』 仔実装は口元に右腕をやり小首を傾げて媚びてみせた。 女性社員は笑顔を崩さず、挨拶代わりに右腕を引きちぎってやった。 『チヒィィィィィィィッッ!?』 激痛に悲鳴を上げる仔実装に、女性社員はますます笑みを大きくした。 これからたっぷりと教育してやる。 まずはどんなに痛い目にあっても「ありがとう、ご主人サマ」と言えるぐらいに感謝の心を叩き込んでやるからな。 -- 高速メモ帳から送信
1 Re: Name:匿名石 2025/05/06-05:42:50 No:00009637[申告] |
この世界の地域パトロールの人って実装対策とかも少なからずやらされるんだろうな大変だ |
2 Re: Name:匿名石 2025/05/06-14:51:24 No:00009640[申告] |
>春の訪れと新たな命と
これもダブルミーニングかな? 望まれ祝福されると命と糞へと還るゴミとの差が気持ち良いんじゃ~ |