俺はとてもイライラしていた。つーか現在進行形でしてる。 『こんな世界なんて滅びちゃえばいいんだ』と思うほどに不愉快だ。 幸せそうな家族連れ。 ——ムカつく。 仲睦まじいカップル。 ——憎しみで人が殺せたら! ちくしょう、俺がこんなにも辛いのに、苦しいのに、 貴様ら 何が そんなに た の し い の か ドス黒いオーラを漂わせつつ、歩いていた俺の目に、あるものが写った。 緑色の不思議生物が、道端でなにかキョロキョロとしている。 実装石。 馬鹿だったり、賢かったり、愚かだったり、なんかよく分からない生物。 興味がわいたので、しばらく観察する事にしよう。 外見は薄汚い感じだ。 いや、野良にしてみれば綺麗な方なのかも。 なんだかソワソワと辺りを見回している。 デスデス鳴いている所を見ると成体実装か。 あ、パンツを下ろして道端の草叢にしゃがみ込んだ。 トイレだったのか。 「…デッスゥ〜〜ン♪」 結構距離が離れてるのに、ブリブリと排泄音が聞こえる。 そして実装石の顔は恍惚として、とても幸せそうだ。 俺の心に再びドス黒い感情がわきあがる。 テメェ、この下等生物が、そんなに、排泄するのが、 し あ わ せ か きょうもおなかいっぱいたべられた。 わたしは「おとな」っていうものになっちゃったから、ママとはいっしょにいられなくなっちゃった。 でもへいき。 ママはわたしに、いろんなことをおしえてくれた。 おうちのつくりかた、ごはんのあつめかた、なかまにおそわれないようにするほうほう。 いっしょうけんめいおぼえたら、ママが「おまえはかしこい」ってほめてくれた。 ママのおしえてくれたとおりにしてれば、きっとなにがあってもだいじょうぶ。 あ、おなかがくるくるってしてきた。 ウンチするときはきちんとぱんつをおろす、そしてなるべくみられないところでする。 ちゃんとまもれてるよ、ママ。 ウンチぷりぷり、とてもきもちいい。 いっぱい、いっぱい、ウンチでる—— 「——っふぅ」 思わず本気で蹴りを入れちまった。 糞を噴出しながら、10メートルくらい吹っ飛んでピクピクしてるが、多分命に別状はないはず。 摘み上げて話しかけてみる。 「よう、初めまして実装石。お前にちょっとしたプレゼントをくれてやる」 聞こえてないようだが、気にせず家に持って帰る。 「たしか昆虫採集セットとか、押入れに入ったままだよな」 7〜8年前のだが、実装石だし…問題ないよな。 家についてもまだ気を失ったままだったが、念のため麻酔を打っておく。 昆虫採集のな。 そしてある手術を行った。 実装石の体をナイフで裂き、手元の『ブツ』を埋め込んでいく。 まぁそれだけなんだが。 実装石はものすごい再生力があるらしいから、軽く縫い合わせとけば朝には癒着してるだろう。 後は元の場所に戻すだけだ。 おっと、その前に実装用の餌とかも買っとかなきゃな。 俺は実装石の今後がどうなるのか、とても楽しみだ。 やべぇな、こんなに浮かれてるのは久しぶりかも。 念のためもう一本麻酔を打ってから寝ることにしよう。 わたし、どうしたんだろう? きがついたら、おねんねしてたみたい。 ごはんをたべてからウンチして、それから、それから…おもいだせない。 とてもいたかったようなきがするけど、いまはいたくない。 きになるけど、おもいだせないんだから、しかたない。 あれ?なんだかいいにおいがする。 みるとおいしそうなごはんと…コンペイトウ! しってる!ママがおしえてくれた!とってもあまくておいしいモノだ! …でも、なんでこんなところに?さっきまでなかったのに。 おなかが、きゅうってなった。 いっぱいたべたけど、さっきウンチしたから、おなかがすいちゃったんだ。 なんでごはんがあるのか、とてもふしぎだったけど、おいしそうでガマンできない。 すこしだけ、ごはんをたべてみる。 おいしい!いままでたべた、どのごはんよりもおいしい! こんなのはじめて! むちゅうでたべた。 ごはんのつぎはコンペイトウ。 ……あまい。あまくておいしい。 いっかいだけ、ママがたべさせてくれた、あのときとおなじあじ。 『コンペイトウ、おいしいデス?』 ママのこえが、きこえてくるみたい。 おいしい、あまくておいしい、ママ、わたししあわせだよ。とてもしあわせ——。 いっぱいたべすぎて、ちょっとくるしい。 おなかがくるくるってしてきた。 ウンチするときはきちんとぱんつをおろす、そしてなるべくみられないところでする。 ちゃんとまもれてるよ、ママ。 ウンチするのは、とてもきもちいい。 いっぱい、いっぱい、ウンチでる—— 「デッギャァァァァアアアアッッ!!!!」 実装石の叫びが響き渡った。 よし、手術は無事成功した。おめでとう実装石! 泣き叫びながら糞を漏らす実装石を見て満足する。 なんの手術かって? いや、実装石の総排泄口付近に5mmくらいの鉄材を、何個か埋め込んだだけなんだけどね。 まあ、トゲ付き鉄球が肛門に何個も埋め込まれてると思ってくれりゃいい。 糞をする→総排泄口の括約筋が伸縮する→埋め込まれた鉄球のトゲが周りを傷つける→激痛 と、こういうわけ。さらに 激痛で脱糞→激痛→脱糞→激痛→脱p(ry という無限コンボ。 なんかストレスを感じると、脱糞時の快感で解消するって聞いたんで。 「デギャギャギャギャァァァァ!!!!」 おお、すごい勢いで糞を漏らしてるな。 あんまり叫ぶんで他の実装石が集まってきた。 ククク、辛いか?苦しいか?なんで自分だけが、って思うだろ? 「デプププ〜」「テプププ…」 集まってきた実装石達が、叫びながら糞を漏らし続けているのを見て、嘲笑っている。 「デギャア!ギャァァアアス!!!」 苦痛の叫びの中に、怒りの叫びが混じる。 憎いだろう?自分を哂ってる奴らが。自分より幸せな奴らが。自分が幸せになれない、この世界が。 「デギャ、デギャアア!!!」 叫ぶ実装石。 お前は俺だ。 自分の不幸を、苦痛を、他人や世界を憎む事で、少しでも和らげようとしている。 「ギャァァアアアア!!!!!」 実装石、お前は俺だ。俺はお前だ。 緑の不快生物に妙な共感を抱きつつ、俺は店へと向かった。 (終わり) 「すいませーん、ボラギノールください」 「…あんた、一度きちんと医者行った方がいいんじゃないかい?」
