タイトル:【馬 燈】 既出ネタかもしれません
ファイル:ジャンク品.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3397 レス数:0
初投稿日時:2006/08/31-00:38:18修正日時:2006/08/31-00:38:18
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午後の散歩の締めにお気に入りのジャンク屋へと向かう。

パソコンやオーディオなどのジャンク品を中心に取り扱うその店は
商店街からはだいぶ外れた場所にあるため、
掘り出し物が多いにも関わらず、客足は決して多くない。

もちろん、俺たち好事家にはその方が都合がいいのだが、
立地条件を補うためにしても掘り出し物が多過ぎる。
これで商売が成り立つのかと、こちらが心配になるほどだ。

実際、以前にこの店で入手したパソコン部品などは大当たりだった。
コンデンサという部品が1つだけ劣化してパンパンに膨らんでる、
マニアたちの隠語で言えば”妊娠している”のを交換しただけで
あっさりと動いてしまった。
これで普通に買うよりもはるかに安上がりに済んでしまうのだから
ジャンク品漁りは止められない。

もっとも、それほどの掘り出し物はこの店以外ではなかなかお目にかかれない。
ここの店主は資産家で、道楽で商売をやっているという噂は案外本当なのかもしれない。



人影もまばらとなった夕刻の店内をざっと見回す。
程度のいい液晶ディスプレイがあるとうれしいのだが。

パソコン、スピーカー、アンプ、液晶ディスプレイは・・・残念、売約済みか。

ん?

ジャンク品の山に混じって置かれた鳥カゴの中、
小さなマスクをつけた実装燈がチョコンと座っている。
ジャンクなのか、これ。

見ればマスクには大きな赤い×マークがついている。
これは”ジャンク品につき、商品の説明はいたしかねます”という
お決まりの文句の代わりだろうか。

「実装燈の・・・ジャンク?」

ジャンクという言葉が気に入らなかったのか、実装燈は凄い目で睨みつけてくる。

だが、その目はちょっと潤んでいる。
なんか可愛いな、もう1回言ってみようかな?

「ジャn

「お客さ〜ん、あんまりいじめないでやってよ〜」

店主に止められてしまった。

だが、店主の表情に非難の色はなく、まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべている。
会心の悪戯の結果が待ち遠しくて仕方がない、そんな笑みだ。
どうやら、この実装燈は店主の洒落らしい。

ちょっと興味が湧いてきた。

値札を見てみると、ペットショップの十分の一以下なのだが、
実装燈の元々の値段が高いだけに衝動買いするにはちょっと辛い。

第一、生き物となれば電気製品とは違う。
ハズレだからと言って、おいそれと捨てるわけにも行くまい。

カゴの中で大人しくしている様子からして、それなりの躾はされているようだ。
ざっと見る限りでは身体の欠損も見受けられない。
だが、ジャンク扱いされるだけの理由はある筈なのだ。

大いに迷うところだが、この店でハズレを掴まされたことは一度もない。
いいだろう、店主の洒落に乗ってやろうじゃないか。

実装燈のカゴを携えてレジへ向かう俺を
店主はニヤニヤとして待っている。

「毎度有り〜」

店主、嬉しそうだな。

「お客さん、このカゴはサービスしますよ。あ、こっちの首輪の方がいいかな?」

嬉々として尋ねる店主に首輪がいいと告げると、すぐに支度してくれた。

実装燈は狭いカゴから開放され、嬉しそうに俺の周りをフラフラと飛んでいる。



支払いを済ませて店を出るや否や、
実装燈はマスクを外してプハァッとばかりに大きく息をついた。

やはりマスクは質問お断りの意味だったか。
もういいだろう、訳を聞いてみるとするか。

「なんでお前ジャンクなの?」

『ジャンクって言うなああああああっっ!!!』

「語尾、語尾」

『・・・ジャンクって言うなルト』

「でも、あの店で売ってたってことはジャンク品だぞ」

またしても俺を睨みつけてくる。
だが、その目にはもう力はなく、涙がポロポロとこぼれている。

あまりいじめるのも可哀想だし、これではラチが空かない。
質問の仕方を変えてみるか。

「飛べないとか?」

『どこに目をつけてるルト、さっきから飛んでいるルト』

その通りだ。
さっきから俺の周りをフラフラと飛んでいる。
いささか頼りない飛び方なのは、狭いカゴの中にいたせいで
足や羽根が痺れでもしたのだろう。

「じゃあ、音痴だとか。」

『ル〜〜〜』

俺の肩に止まって実装燈が歌い始める。
きれいな、本当にきれいな歌声だ。
愛玩用として根強い人気があるのも頷ける。

「じゃあ・・・子供を産めないとか」

ちょっと心苦しい質問だが、いかにもジャンク扱いされそうな理由だ。
これから飼うのだから、きちんと確認しておくべきことでもある。

『!』

「当たり?」

『大事なことを言い忘れていたルト!』

「何だよ」

『もうじき子供が生まれるルト!実装石を用意して欲しいルト!』

「え、おまえ・・・妊娠してるの?」

『だから、そう言っているルト!!』



ああ・・・そういうことなのね・・・・・・

妊娠しているからジャンク品・・・・・・



道楽で商売をやっているという噂は、どうやら本当らしい。


(終)

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