実装スタジアム…それは実装石同士を戦わせる競技。 当初は飼い・野良問わずリングで戦わせて楽しむという娯楽めいたものだったが、 いつの頃からか実装スタジアムの運営組織ができ、鍛えぬいた実装石同士が戦う場と化していた。 そして実装トレーナーという、実装石を鍛え、戦闘実装を育てて金を得るという職業まで誕生した。 * * * その日、実装スタジアムの底辺と言われる蛆リーグで衝撃の試合が行われた。 蛆リーグの試合は、蛆実装同士の押し合いで勝負が決まることが多い。 相手蛆をリングの外に出した方が勝ちというシンプルな決着だ。 シンプル過ぎて面白みが少なく、人気はあまり無い。 それでも素質のある蛆を探し出して今のうちから鍛えたいというトレーナーもいるため、 ぎりぎりでリーグが廃止されない程度の客入りはあり、ある程度の投資も行われている。 とは言え、普段の試合であまり客が沸くことはない。 …だが今日の最終試合は違った。 試合が始まるや否や、青コーナーの『糞丸』と名付けられた蛆が相手に背を向けた。 蛆の試合は、開始直後にいきなり戦意喪失したり、 そもそも戦意がなく相手蛆や客たちにプニプニをねだる個体もいるくらいなので、 今回も逃走するパターンかと思われた。 だが、糞丸はリングに踏ん張ると海老反り、相手に総排泄孔を向けて…。 ブババババッと糞を発射したのだ。 「レフィィィィ!」 「レピィッ!?…レフェェェェェン!」 側頭部に糞を勢いよくぶつけられた相手蛆は、回転しながら弾き飛ばされ泣き出してしまう。 たまらず相手トレーナーがタオルを投げ、糞丸の勝利となった。 審判の一人からドドンパを飲ませたのではないかという物言いがついたため、 即座に検査薬で糞丸の糞が調べられたが、ドドンパ使用の痕跡はなく糞丸の勝利が確定した。 『勝者、青コーナー!糞丸!』 「レフッ!」 後ろ足で立ち上がり勝ち誇る糞丸は、こうして華々しいデビューを飾ったのだ。 * * * 糞丸が行った糞発射戦術は一気に注目され、他の蛆トレーナーも真似をしようと躍起になった。 だが鍛えられた蛆であっても相手を泣かせるほどの勢いで糞を発射することは難しかった。 あるいは、勢いよく発射した反動で自らが吹っ飛んでしまい大怪我する者もいた。 発射の姿勢、ふんばり、発射角度と量、そして狙う場所…全てが揃わなければ、 糞丸のように糞発射をメイン戦術として勝つことは難しかった。 「糞丸の才能ですよ。自分は何もしてません」 トレーナーのシモンは取材に対してこう答えるのみだった。 糞丸はその後も試合に勝ち続け、一ヶ月後にタイトルマッチまで登りつめた。 * * * そして来たる蛆タイトルマッチ。 現在の蛆チャンピオンは、通常の蛆実装としては規格外の大きさを誇る『蛆乃山』。 マニアに珍重される大蛆と呼ばれる種ではないかと抗議されることもあるくらいで、 その体格は並の蛆の3倍ほどの大きさがある。 ちなみに大蛆とは丁寧に育てられた、10cm以上に育った蛆実装だ。 確かに大きさで言えば、蛆乃山は大蛆並みである。 だがその辺りは厳格な基準があるらしく、あくまで愛玩用の大蛆と、 闘うために育てられた蛆乃山では、体格や鳴き声に明確な差異があるらしい。 それでも、大きすぎる体格はフェアではないという意見もあった。 だが、運営はその意見を却下した。 理由はただ一つ、単純な押し合い勝負になりがちだからこそ、 体格差を攻略する蛆実装が現れるかどうか…それを運営側が見たいと思っているからである。 『ファイッ!』 タイトルマッチが始まった。 挑戦者の糞丸は、試合が始まるや否や例によって背を向け、糞を発射! しかし蛆乃山の巨体には効果が薄い。 「レ゙フゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙…」 蛆乃山がゆっくりと突撃してくる…! このまま糞丸は押し出されてしまうのか、誰もがそう思った時! 「レフゥゥッ!」 糞丸は相手の突進をギリギリまで引き付けて身軽に転がって避けると、そのまま距離を取る。 そして、糞丸の方に振り返ろうとしていた蛆乃山に糞を再発射した。 その糞は蛆乃山の右目に命中し、緑に染めた! 「レ゙フゥ゙?……レ゙ヒャア゙ア゙ア゙ア゙…!」 強制妊娠してしまい、腹の中でうごめく胎児実装に混乱する蛆乃山は暴れ出し、 勢い余ってリングから転げ落ちて顔面を傷つけ、血が目に入って強制出産してしまった…! 「レ゙ピィ゙ィ゙ィ゙ィ゙…!」 あっと言う間に体力を消耗し、萎んでいく蛆乃山。 トレーナーが慌てて駆け寄り蛆乃山の目を拭うが、これではもう再起不能だろう。 『勝者、青コーナー!糞丸!新たな蛆チャンピオンの誕生だ!』 「レフゥッ!」 キワドイ勝利ではあったが、見事に勝利した糞丸。 トレーナーのシモンに向けて前足を上げ、勝利を喜んだ。 糞発射だけと思われていた糞丸の、身軽な回転移動は場内を再び沸かせた。 これ以後、蛆リーグの試合は急速に進化を遂げる。 単に力任せで押し合う試合は廃れていき、テクニカルな試合が増え始めた。 回転移動や跳躍などの戦術、また糞を使ったいくつかの戦術も生み出された。 しかし、糞丸は糞発射だけに頼ることなく技術を磨き、様々な挑戦者を退け続け、 その後1年もの長きに渡り蛆リーグの頂点に君臨するのだった。 * * * なお、糞発射による強制妊娠は蛆実装の身体には危険が大きすぎるとの意見も上がったため、 申請した選手には赤と緑のカラーコンタクトの装着が認められた。 強制妊娠を100%防げる訳ではないが、着けないよりは危険が減るとのことである。 ~終~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ スレに投下された『実装スタジアム』の設定をお借りして書いたスクの修正版です。 大蛆については、kfさんの『大蛆・売ります』を参考にさせていただきました。 お二方にお礼申し上げます。
