「拾ってください。うちでは飼えません。 人懐っこくていい子達です。 好物はうどん、ゆでたまご、鶏肉です。 甘い物はなんでも大好きです。」 4匹の仔実装を拾った。 箱の中で4匹は寄り添って震えていた。 寒かったのだろう、ひもじかったのだろう、心細かったのだろう。 極限状況でギリギリの中なんとか生きていたといったところか。 三匹が私を見る目は明らかに警戒を孕んだ眼差しだった。 私はこの子達を連れ帰ることにした。 自室に招いてまず最初に風呂桶にぬるま湯を張って洗ってあげた。 ひどく汚く臭いので致し方なし。 具合悪そうにしていたが食べ物をあげたら元気を取り戻すだろう。 とはいえいきなりガツガツ食べられるわけもなさそうなのでレンジで温めたミルクを飲ませてやる。 私は一匹を掴み、スプーンでミルクを口に注ぎ込んでやる。 ギャっと悲鳴をあげて暴れる。 ミルクが嫌いなのか?好き嫌いはいけない。 続けて嫌がる仔実装の口を指で無理やりこじ開けて ミルクを注ぎ込んだ。仔実装の顔の周りは赤くただれた。 おや?火傷したのか。思えばミルクは煮えていた。 レンジの温め時間が多かったか。 ピーピーと泣き喚く仔実装。 ごめんな、後で火傷の治療してやるよ。 残りの子達は冷ましたミルクを飲ませてやった。 何日か経って、元気を取り戻した仔実装達は朝からうるさい。 枕元でピーピー泣き喚き私の頭を揺すってくる。 食べ物を食べさせろということか。 犬や猫のように専用のフードもあるらしいのだが生憎うちの近所に取り扱う店がない。 あれでも食べさせるか。 朝食に準備を始める。 確か好物はうどんだったよな。 熱々のうどんを用意すると一本箸で掬い取って仔実装に食わせる。 ウマそうに口に運ぶ仔実装。他の子達が次はワタシだとばかりにパタパタと身振り手振りでせがむ。 ああ、こいつが食べ終わったらな。 うどん飲み込んで行く仔実装。 美味しいうどんを次々と飲み込み、、、動きが止まった。 うどんが噛みきれないようだ。 欲張るからだよ。さあ吐き出して。 仔実装はもがきながら何度もうどんを吐き出そうとしたが喉につっかえてうどんを吐き出すことができない。 仔実装はうどんを口にしたまま卒倒した。 なんだこいつ。まあいい、次の子に食わせよう。 残りの子達は怯えてうどんを食べようとしなかった。 うどんは嫌か、じゃあ次はゆで卵だ。 しっかりと殻を剥いてゆで卵を一匹に差し出す。 このゆで卵は特別なのだ。仔実装は嬉しそうにゆで卵に齧り付いた。齧り付いてすぐさま後方にひっくり返った。ひっくり返ってそのまま口をパクパクさせて 動かなくなった。 なんだこれもダメか。実装石って贅沢な生き物なんだなあ。 デスソースでふんだんに味付けしてやったのに。 残りの子達はご飯はいらないのか、欲しがるそぶりも見せず退散していった。 三日後、何やら怯えてご飯を食べようとしなかった仔実装達だったが、いよいよ腹が減ったみたいでまたピーピー泣き始める。 仕方ない。とっておきの料理を用意してやるか。 皿に盛り付けたのはお肉の照り焼き。 しっかり火を通し、タレがしみ込んでいる。 さあ食べていいよ。 仔実装はうまそうに照り焼きを頬張った。 あれ?二匹いたのに一匹どっかいっちゃったか? それにしてもうまそうに食べるね。 次はケーキだよ。 緑と赤のホイップクリームが美味しいそうだろう? 仔実装ヘッドの飾りがおしゃれポイント。 さあ召し上がれ。 「ママはこうしてニンゲンから逃げてきたんデス。 ムスメ達もママに見習ってかしこくしぶとく生き残るんデス。 大丈夫デス!アナタ達はママの子デス!みんなみんなかしこくてかわいくて強い子なのデス!」 「ん?なんか甘くて美味しそうな匂いがするデス。 ムスメ達はここで大人しくしているんデス。 この草むらの中は安全なのデス。じゃあママはちょっといってくるデス。」 「あー、なんか仕掛け罠に何かかかりましたよ! うわ!実装石の成体だ!こんなの湧いてたんですね。 一匹いたら100匹でしたっけ?ゴキブリみたいだなあ 罠をこのままにしとけば次も掛かりますかね? とりあえず空き地の方はちゃんと芝刈りで雑草全部刈り取っておきますから、終わったら連絡したしますね。」 「ママ遅いテチ。探しにいったお姉ちゃん達も戻ってこないテチ」 「きっとママだけ美味しい物を独り占めしてるんテチ!ずるいテチ」 「ママはワタチ達を捨てたんテチ」 「ひどいテチ!こんなにかわいいワタチを捨てるなんて!」 「もういいテチ!ママなんて!ワタチは飼い実装になって幸せになるテチ!」 「カワイイワタチならニンゲンなんて簡単にメロメロテチ!」 「だめテチ!ママはここで待っててっていったテチ!」 「ママは帰ってこないんテチ!ワタチ達は捨てられたんテチ!」 「あ、ニンゲンさんテチ!ニンゲンさん!ワタチを飼ってチー」 「今日からよろしくテチ!おいしいゴハン食べたいテチ」 ブーーーーン!バリバリバリ!グシャグシャ!! 実装石を連れて散歩に出かける。 すっかり飼い慣らしたうちの子は私にとても従順だ。 餌は待てといえば我慢するし、トイレの躾も万全。 ほんといい子に育ってくれた。嬉しく思う。 実装石はちょこちょこと私に一歩遅れでついてくる。 カルガモの子供みたいで愛らしさがあった。 散歩の途中、私達の前に小さな影が遮った。 一匹の仔実装だった。 ひどくぼろぼろで息絶え絶え。今にも死にそうである。 何かに追われてるんか? 私は仔実装をつまみ上げるとそのまま上着のポケットの中に仕舞い込んだ。 この子かわいそうだな。ちょっと手当してやろう。 一か八か、まあ死んだら死んだ時だ。 実装石はポケットに入っている仔実装に対してニヤリと笑い、舌舐めずりをした。 この子が息を吹き返したら・・・・・・。 まあ、お前にもそろそろ飽きてきたところだしな。 私達は散歩を切り上げて家路を急いだ。
