タイトル:【山実装】 神の谷 1
ファイル:神の谷 1.txt
作者:特売 総投稿数:42 総ダウンロード数:783 レス数:2
初投稿日時:2023/08/29-18:25:50修正日時:2023/09/13-03:03:41
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神の谷 1

「ねえねえやっぱりこんな事やめるテチ」

仔実装が辺りをうかがいながら先頭を進む相方に声をかける

「なんだと!今更臆病風に吹かれたテチ?」

一方はと言うと相方の制止に対し明らかな不満をぶつける

ここは某県境にある山の一つであり
山実装のコミニュティが幾つか確認されている
貴重な自然が残っている場所でもある

そして好奇心豊かな二匹の仔実装姉妹が
オトナから降りることを厳しく禁止されている
山の麓までの冒険に出掛けていた

勿論見つかればオトナ達の大目玉を喰らうし
事と次第によっては厳しい罰に処されかねない

だがこの位の年頃はそんなオトナの言いつけに素直に納得できず
そこに何があるのか確かめに行きたくなるのだ

麓の雑木林に到達しまず当初の目的の一つは達成された

だがここで連れてきた妹が急に怖気ついて早く戻ろうと言い出したのだ

折角オトナの目を盗んでここまで来たと言うのに
直ぐ帰っては面白くもなんともない
この辺りを探検して何かここに来た証になる物を
持ち帰らなくては村の他の仔に対しても自慢が出来ない

姉はぐずり出す妹を𠮟りつけて探検を開始した

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暫く雑木林の中を歩き回っていたが
急に坂道になっている所に出てきてしまった
気を付けなくては下まで転がり落ちそうだ

すると妹が足を滑らせて転がりだし
姉も巻き込んで下まで一気に落ちてしまった

「イタタタタ…酷い目にあったテチ…ってイモチャ大丈夫テチ?」

辺りを見回すと目を回し伸びている妹がいた

そして側に横たわっている骨を見て思わず悲鳴をあげてしまった

テチャァァァァァァァッ!

「…うーんオネチャ五月蠅いテチ…優雅な朝が台無しテチ」

目を覚ました妹が間近の巨大な骨に気が付き再び絶叫が上がるのに
そう時間はかからなかった

パニックから回復した姉妹はこの大きな骨を調べた

「オネチャこれって一体…」

妹が恐る恐る訪ねて来る

「これはヘビの骨テチ…頭が石で潰されているから
きっとここでオトナに倒されたテチ
それにしても生きているコイツに出くわさなくて良かったテチ
でなければ今頃私達は一飲みにされていたテチ」

姉の説明に妹は増々ビビリだした

「オネチャやっぱりもう帰るテチこれ以上ここに居るのは危険テチ」

かくいう姉も内心は酷くビビっていたが
ここで素直にはいと言えない意地があった

だが妹も簡単には折れずもう少しだけ辺りを探検したら
帰る事を約束させられて渋々応じたのであった

茂みの中に立ち入ると微かではあるが同属の臭いがした

「誰かいるテチ?」

声をかけたが返事は返ってこない

そういえば聞いたことがある
自分達が生まれる前の事で
村の掟に背いて出て行った同属がいたと言う事を

(近くに住んでいる所があるかもテチ)

そう思ったらもう止まらなくなった

自身の中になる好奇心の赴くままに動き出したのだ
慌てて妹が付いて来る
必死になって何か言っているが構うものか
今は抜け出した同属の住処を探したくてしょうがないのだから

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臭いの痕跡を辿り茂みの奥を進んでいく

だが誰かがいる気配は一向に感じられない

もうここには住んでいないかもしれない

すると目の前に不自然な盛り土がされている所を発見したのだ

これは何かを隠しているに違いない
そう思った姉は息切れしながらもやっとたどり着いた妹に手伝わせ
盛り土を掘り返し始めた

土を掘り起こしていくとすぐに木の枝を敷き詰めた層が出てきた

枝を二匹で取り除いていくと

そこにはオトナが潜り込めるくらいの大きな穴が現れたのだ

ためらいなく穴の奥へと進んでいく
妹がその後ろを半ベソ書きながらついて来るが気にしない
暫く歩くと大きく広がった部屋に出た

通路は暗く臭い頼りであったが
暫くすると目が慣れて周りが把握できるようになった

部屋は思いのほか広かったがオトナが暮らすには
やや狭そうに思えた

部屋の真ん中にはここで寝ていたのか落ち葉が敷き詰めてあり
他の部屋に続く通路が三か所見つかった

更に調べると一つの部屋は空っぽで何もなく
もう一つは落ち葉が敷いてあり仔供部屋の様であった

最後の通路は他よりも距離が長く進むにつれ
変な臭いがするようになった
我慢して進むと小さな部屋に出たが
そこには床に板が敷いてあるだけで他には何もなかった

ここに居てもただ臭いだけなので元いたところに戻る事にした

暫くの間部屋の周囲を見て回ったが
それにも飽きてきたのと
いい加減妹が五月蠅いので帰る事にした
だがそれにしても何か土産になる物が欲しい
何かない物かと物色していると

落ち葉を敷き詰めたところの真ん中に何かがある事に気が付いた

それは袋のような形をしていてそこに長い紐が付いていた

仔にはやや大きいがオトナが身に着けるには
小さいかなというサイズであった

姉はこれを持ち帰ることにした

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それから村までの道中を妹とともに戦利品を担いで
山道をヒイヒイ言いながら運んでいった

やっとの思いで村の入り口に辿り着いたのだが
そこで門番をしているオトナに見つかってしまった

タイミング的にも仔が二匹行方不明になっているという情報が
丁度伝えられたばかりだったので
門番は伝令役にこの事を知らせるように言って村へ走らせた

その頃村はちょっとした騒ぎになっていた
突如として仔が二匹も行方不明になったのだ
村にとって次代を担う仔は大切な存在であり
また場合によっては外敵の襲来の可能性もあるので
いずれの場合に対しても対応できるようにと
長老を始めとした村の幹部役が招集されたのだ

あと一刻して戻らない様であれば捜索隊を組織して
事にあたらねばならないということで
その選抜やもう一つの可能性である外敵に備えての
武器使用の許可などが話し合われていた

そこに門番のところに配置していた伝令が走って来た
行方不明の仔が帰ってきたことをその場で伝えると
全員からの安堵の声が漏れた

暫くして今回の騒ぎの元である姉妹が連れてこられ
二匹が持ってきた品も運ばれてきた

長老や幹部といったオトナ達の前で二匹は顔を真っ青にして震えていた

辺りの空気が張りつめていく

そして長老が口を開いた

「オマエたちは今まで一体どこにいっていたデス?正直に答えなさい」

口調こそ優しいが語気は強く周りの幹部たちの顔にも緊張が伺える

やがて覚悟を決めたのか姉が喋り始めた

「長老様ごめんなさいワタチは村の禁を犯して麓まで行ったテチ」

その言葉に周りからどよめきが立った

長老は皆を制すると質問を続けた

「では妹も同じように禁を犯したというのデス?」

「いいえ長老様イモチャはワタシが強引に連れて行ったテチ
一匹で行くのが怖くて無理を言って付いてこさせたテチ」

もう姉の膝はガクガクと震え立っているのも困難な有様だった

その時であった件の品を見分していた幹部がある事に気が付いた

「長老!大変デスこの品は昨年侵入しようとやってきた余所者が持っていた物に
間違いないデス」

この報告に長老を始めとした全員が凍り付いた

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あれは去年の事だった
一匹の余所者が村に近づいてきたのだ

村の掟は余所者は絶対排除すべしとなっていた
受け入れれば必ず厄災をもたらし村を滅ぼすからだとされている

しかもあろうことか奴は言い伝えに聞く悪魔の食物である
実装ふぅどを持っていたのだ

この世のものではない美味しさで一度口にすれば
二度と山の食べ物が食べられなくなるという
恐るべき悪魔がもたらす食べ物だ

成程村が滅ぶと言うのもさもあらんである

思わず皆をまとめていた幹部が奴めがけて投石すると
身の危険を感じたのかそのまま後ずさりしながら退散していき
当面の危機は去った

察するに奴はその後麓に住み着いて生活していたようだ

そして仔達はよりにもよってその余所者が暮らしていた
巣穴に入り込んだと言う事になる

とここでもう一つの懸念が生じた

それは仔達がその実装ふぅどを食べていないかと言う事だ
もし食べているというのなら
二匹には悲しい事をしなくてはいけなくなる

「ところでオマエ達この品の中に何か入ってなかったデス?」

その問いかけに姉はハッキリと答えた

「いいえ中には何もはいってなかったテチ!嘘は言ってないテチ」

その返答には一切の澱みが無かった

ここで長老が仔達に向かって話しかけてきた

「オマエが嘘を言っていないのは分かったデス
ところで仔達よそろそろお腹が空いてきてないデス
そろそろ夕食の時間デス」

そう言うと側仕えに目配せをした
側仕えは一礼をするとスッと下がって行き
暫くすると盆に様々な御馳走を乗せて戻って来た

たっぷりと盛られたシイの実とムカゴに
川で獲れたエビを干した物
さらには貴重なキノコの干物にと
特別なハレ日の時にしかお目にかかれない物ばかりであった

「ささっオマエ達遠慮はいらないから存分に食べるデス」

長老が言うと姉妹は夢中になって目の前の御馳走を食べ始めた
今日は朝に一度食事をしただけで空腹だったこともあり
盆に盛られた御馳走はあっという間になくなった

暫くその様子を眺めていた長老であったが何か納得したように何度も頷いていた

そうこれは長老なりに姉妹を確かめていたのだ
もし実装フードを口にしていたならこの御馳走とて
不味くて食えないと言うはずだからと

仔達が御馳走を食べ終わった頃をみからって
長老が沙汰を告げた

「村の禁を破った件でこの者達にお尻叩き五回の刑に処すデス
下界の品を持ち帰った事に関しては不問とするデス」

すると二匹の親であろうオトナが長老の前に出て土下座をした

「長老様…寛大な処置に感謝するデス…」

そう言って土下座をしたまま泣いていた

「これにて一件落着デスゥ」

その日の夜村の外れから何かを叩く音と仔実装の悲鳴が五回響き渡った

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仔実装達の裁きが終わり村の者達が立ち去った後
長老と幹部や若い衆達はまだ残り
待ちこまれた品の処置について話し合っていた

このまま村には置いておけない
そんな事をしたらいずれこの品が元となって災いが起きるだろう
どうしたらよいか考えあぐねていたが
長老が提案をした

「神への使いを仕立てた後に神の谷へと赴き
この品を神の手にゆだねて来るのデス…それしか方法が無いデス」

長老の発言にその場にいた皆は重い気持ちになった

                          続く 

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1 Re: Name:匿名石 2023/08/29-22:07:51 No:00007894[申告]
一連作、緩やかに話が関係性あるのと読み手はある程度顛末を俯瞰で把握できるのがいい
2 Re: Name:匿名石 2023/08/30-14:29:54 No:00007904[申告]
お尻叩き五回の刑とか
仔実装のやらかしが結構多いと言う事か
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