タイトル:【生態】 生き延びる 3
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初投稿日時:2023/08/28-08:27:50修正日時:2023/08/28-11:58:59
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生き延びる 3

前回までのあらすじ

飼い主の都合によって遠く離れた山に置き去りにされた
元飼い実装のジッ君だが
何時か迎えに来るからという言葉を
心の支えに生き延びて行こうと決心した

だが飼育環境下に慣れた元飼いが簡単に適応できるほど
自然界は甘くはなく緩やかに餓死の危機が迫る

事態を打開すべく人里に下り畑の作物を盗むことを覚えたが
己の判断の甘さから罠にかかり絶体絶命のピンチに陥る羽目になる

やっとの思いで罠から脱出し
今後は慎重な行動をすべきという教訓を得て隠れ家を作りつつ
畑を荒らすという事を繰り返し続けた

季節は秋となり元居た雑木林に戻ったジッ君は
暫くの間秋の実りを享受し続けたが

しかしここで次に訪れる冬への備えを何もしていない事に気が付き
慌てて準備をしようとするも冬ごもりに必要な巣穴を作れず途方に暮れた
だが幸運にも放棄された巣穴をみつけ大急ぎで冬支度をした

やがて厳しい冬が訪れる頃
冬ごもりに入り春の目覚めを夢見ながら眠りにつくのだった

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穏やかな陽気の下
雪解け水が山肌を伝い流れる音が心地よく響き渡り
厳しい冬が終わりを告げた

巣穴に籠り時々目を覚ましては備蓄した木の実を食べて過ごしていた
ワタシの鼻孔に微かではあるが暖かい空気がくすぐっていった

言われなくても分かる
これは春がやってきたのだと
目覚める頃なのだと

冬ごもり前に塞いだ出入口を掘り進み外に出た

外に出たとたん全身を暖かい空気が包み込んだ

気分がたちまち高揚する
ワタシは冬を乗り越えたのだと
新しい季節を迎える事が出来たのだと

気持ちを抑えきれずその場で唄を歌い小躍りした

ひとしきり唄って踊り気分が落ちついたワタシだが
早速お腹が空いて来た

巣穴に戻りため込んでいた木の実を食べて満腹になると
もよおしてきたのでトイレへと向かう

気持ち良くひり出そうとしたがすぐに糞が出なくて困惑した
何か途中で詰まっているような感じだった
何度もいきんでやっと出てきたが凄まじい音と共に糞が飛び出てきたのだ
冬の間ため込まれた糞の勢いたるや直撃を受けた蛆実装が破裂してしまったほどだ
糞を出し切ると今度は大量のガスが噴出した

「レピャァァァっ!臭いレフ常世の香りレフ…これはたまらんレフ…」

パキンパキン…何かが弾けるような小さな命の音が次々と鳴り響く

排泄を終えたワタシが穴を見るとそこにいた蛆実装が全て死んでいた

(もうここのトイレは使わない方がいいデス)

排泄物を掃除する蛆実装が全滅した今適切な判断だった

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夜になって辺りを探索したがやはり食べられそうなものは無かった

木の実を食いつくす前に再び人里に下りて食べ物を調達する事が必要になった

次の日の夜残った木の実を全て持ち出しワタシは雑木林を後にした

巣穴への出入り口には軽く土や枝を積んで隠した

何時になるか分からないが何度か戻って来るだろうから
他の誰かに見つからないようにしたのだ

また戦利品の運搬にはあまり役に立たないポシェットは巣穴に置いて来た
実用に乏しいとはいえ御主人様からもらった大切な品である
壊したり無くしたりするよりは何時かまた戻って来る
この場所に置いていく方が良いと思ったからだ

「ワタシが戻ってくるまでここのお留守番をお願いするデス…」

そういって愛おし気にポシェットを眺め寝床に置いて行った事を思い出し

去り場にもう一度巣穴の方を見た

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以前同様まず潜伏先を探すことから始めた

今度の隠れ家は放置された軽トラックであった
長い時を朽ちるに任せていたのか周囲は草に覆われ車体には蔓草が絡まっていた

これなら簡単に発見される事は無いだろう
草をかき分けて車内に入りあちこちが破れたシートに腰掛ける

そのまま夜になるのを待ち周囲の偵察を行った
一通り見て回り再び戻ってくるころには日が登ろうとしていた

急いで隠れ家に潜り込むとそのまま眠りについた

そして日が暮れると狩の時間がやって来た

今回狙うのはキャベツ畑であった

出来るだけ隠れ家から遠い畑まで歩いて物色した時に見つけたのだ

念のため周囲の様子をみて臭いを嗅いで異常が無いか確認する
そして大急ぎで畑に侵入する

隠れ家までの移動時間を考慮するならばあまり長い時間は留まれない
ワタシは急いでキャベツを食べ始めた

だが最初に齧った葉は固くあまり美味しくなかった
もしやと思い葉を剥がすとその下から柔らかそうな葉が現れた

剥いで齧るとそれはとても柔らかく噛むほどにほのかな甘みが感じ取れた
夢中になって葉を剥がし口に運んでいたが
我に返ると残りの葉を剥がして袋に詰め込んでいった

そろそろ戻る頃だと思った時だった

緊張が急に解れたのか便意が走ったのだ
慌ててその場にしゃがみ排泄する

現場での排泄行為は危険だと分かっているのだが
どうしても我慢できないのだ

排泄を終えると慌ててパンツを引き上げ畑を脱出した

その後隠れ家までの道を身を隠しながら移動し
東の空が明るく成る頃に辿り着くことができた

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隠れ家で一日過ごした後再び移動を開始する

移動しながら改めて辺りの畑を見たが
まだ春先と言う事もあるのか見かける作物は種類が少ないように思えた
それでも移動しながら飼われていた頃の記憶を必死に絞り出し
今ある中で食べられそうな作物を思い出そうと懸命になっていた

有効な情報を思い出せないままワタシは一件の廃屋を発見し侵入した

廃屋の中は長い事放置されていたのか家具とかが一切なく
荒れるがままになっていてあちこちが腐っていた

だが隠れ家としては申し分なかった
なによりも広い部屋というのがありがたかった

思わず寝転がり手足を伸ばす
こんな風にくつろぐのは久しぶりだった

このままずっとゴロゴロしていたい気分であったが
とりあえず食事を済ませた後今後の活動について考えた

昨年ここに連れてこられた頃は夏であり畑には作物が
豊富に実っていた

だが今は違う

多くの作物はこれから大きくなっていく時期で
食べられるものが極めて少ない
またどの部分が食べられるのかも分からないままである

実という形であれば分かりやすいが
先日のキャベツみたいなのだと
それを知っていなければただの葉っぱの塊と見なして
食べようとすら思わなかっただろう

だが何も手立てがない訳ではない
それはニンゲンが収穫を始めている作物は何かしらの部分が
食べられる状態になっていると言う事だ
それを何とかして知る事が出来ればこの問題は解決するのだ

しかし昼間にノコノコ現れて様子を見て回るというのは出来ない
そこで夜に様子を見に行く際には臭いを
今まで以上に注意深く嗅ぎ分けるようにした

畑を荒らした直後に感じるのとは違うニンゲンの臭いに
機械特有の刺激のある臭い…
こういったものが入り混じったものが漂っている畑には
何かが収穫時になっている可能性がある

方針が決まった所で次の日の夜に偵察に出掛けた
目ぼしい畑の周辺で臭いを嗅ぎまくり
少しでも違う臭いが混じっていた時は侵入し畑の作物を調べた

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偵察を開始してから二日が経過した
思った通り臭いが混じっている畑には
何かが育っていた

だがどこが食べられるのかはまだ分からずじまいだった
そろそろ持ち込んだ食べ物が無くなる
焦る気持ちを抑えながら再び偵察に出掛けた

見当をつけた畑に侵入し作物を見て回る

今回の畑には何か細長いものが成っていた
見た限りだとそれはまだ緑色でかつ薄っぺらかった
これから育って熟していくのだろうか?
だが違和感があった
それらにはニンゲンの臭いが強く残っているのだ
間違いない近い内に何かを収穫するはずだ

ではどこを集めるつもりなのだろうか?
今目の前にある実はまだ未熟なはず
だが…まさか…
ワタシは試しにその未熟な実を一つもぎ取り齧ってみた

青臭い臭いがしたがエグ味はしなかった
そして何よりもその実は柔らかくそれでいて程よい歯ごたえが返って来る

「間違いないデス…人間はこの未熟な実を収穫しようとしているデス」

早速ワタシは未熟な実をもいで袋いっぱいに詰め込んだ

今回の件でコツをつかんだワタシは
それからまた転々と場所を変え作物を調べて
食べられそうなものを集めた

そして季節は暑くなり夏を迎えた

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今年の夏の暑さは何時になく厳しく
夜になっても和らぐことが無く
ワタシの体力を消耗していった
食べ物の確保以上に水の確保が重要になってきていた

去年は直接水場で補給したり作物の水分で喉を潤していたが
今年の暑さはとてもじゃないがそれでは足りない

何時通り隠れ家を決めた後は付近の茂みとかを探し回ってペットボトルを集め
最寄りの水場を往復して水をストックした

そして畑には見覚えのある作物が沢山実り始めていた

ある日の夜の事であった
何時ものように狙いを付けた畑に侵入し作物を食べていた
とにかく喉が渇くので赤い実を夢中で齧っていた
渇きを癒し作物を袋に集めていた時だった
ふと視界の隅に赤い光を感じて見上げると
頭上に見慣れない物が幾つかある事に気が付いた

それは四角くて白っぽい箱のようなものだった
真ん中に丸いものが付いていてその脇に小さな赤い光が点っていた

「これは一体なんデス?罠ではないみたいデス」

暫く観察したがこれといった変化がないのでその場を退散した

今回は何も起きなかったがこれからはさっきのような物にも
注意した方が良いかもしれないと思った

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再び移動をし隠れ家の確保をした後

ワタシは今までの行動の見直しをしていた

隠れ家を探すのと準備そして周囲の偵察まで早くて三日はかかる
その一方で畑から盗みを行った翌日には隠れ家を放棄して
次の場所に移動していた

しかし隠れ家に使える場所は限りがある
最近では探すのも一苦労している有様だった
同じところ再び戻るのは出来れば避けたい

過去に利用した場所はもう既にニンゲンに看破され
マークされている可能性があるのだから

そこで一度確保した隠れ家を拠点にして
そこから幾つかの最前線基地に適した場所を探して確保
もしそれに適した所が見つからないのなら
速やかに拠点に戻ることにした

こうして数日かけて前線基地に適した候補地を複数確保した

また今回から拠点に集めた戦利品や水を備蓄する事で
前線基地の簡素化を計れるようにした

畑の盗みの時に一度きりだけ使う使い捨てであれば
凝った事はしなくても良いのだ

それからは拠点から予め設置した前線基地に向かい潜伏
その日の夜に周囲を偵察して目ぼしいものを探し逃走経路を確認し
翌日に盗みを行って前線基地に一旦戻り夜になるのをまって
拠点に戻るというルーティーンを繰り返した

ある日の事
風に乗ってきた臭いを嗅いだワタシの体に電気が走った

これは忘れるはずが無い…
あの幻の甘々トマトの臭いだ

あれは去年の事だった
何時ものように畑に侵入したワタシは見慣れない形をしたトマトを発見した
それは丸くて小さい実であったが口に含んだ瞬間
頭の先からつま先まで衝撃が走る程にとても甘く美味しかった

それから夢中になって食べて食べ過ぎたせいでその場で粗相をしてしまった程だ
残りの実を袋に詰めてその場を後にしたが暫くの間あの味が忘れられなくて
もう一度取りに行きたいという誘惑に何度もかられた

なんとか気持ちを抑えて移動したがそれ以後は
同じようなトマトを見つけることはなかった

「確かあっちの方角にも前線基地を設けていたデス
早速準備をして調査に出かけるデス」

ワタシはあのトマトを再び食べることができるかも知れないと
想像しただけで喉が鳴った

                           続く

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1 Re: Name:匿名石 2023/08/28-17:29:52 No:00007876[申告]
ジッ君めちゃくちゃ優秀だし頑張ってるな
人間視点だと害獣そのものだけど…
2 Re: Name:匿名石 2023/08/28-18:16:49 No:00007878[申告]
農作物食うだけじゃなくてうんこするとかギルティすぎる…悪気はないだろうし実装石だから仕方ないっちゃ無いんだろうけど
生きてるだけで罪を重ねる業深き生物よ
3 Re: Name:匿名石 2023/08/29-07:22:44 No:00007882[申告]
結局、人間に敵対したくせに寄生しなければ成立しない生活は遅かれ早かれ破綻する優秀といっても結局どこまでいっても場当たり的
4 Re: Name:匿名石 2023/10/25-04:31:44 No:00008152[申告]
実装石のくせに寂しさと無縁かよ
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