生き延びる 2 前回までのあらすじ 突如として飼い主によって見知らぬ山に置き去りにされた 飼い実装のジッ君は何時の日か迎えに来ると言う 飼い主の言葉を信じて生きていく決心をする だが最初に頼ろうとした山実装達からは拒まれてしまい やむを得ず単独でのサバイバル生活を始めた 持たされたフードを食いつなぎ水場と仮の寝床を確保したが 周囲の探索を開始したとたんに天敵の襲来という危機が訪れる カラスに突かれ逃げ込んだ雑木林で今度はヘビに追いかけ回されたが 死に物狂いの抵抗が功を奏してヘビを仕留めることに成功する ここで食糧の現地調達という課題に挑むもあまりのヘビ肉の不味さに挫折 その後も採取したあらゆるものを試すも どれも食用には適さない事が分かるにとどまった その後雑木林での食糧調達を断念して人里に下り そこで畑の作物を盗んで飢えを凌いだ だが次に再び来た時に仕掛けた罠にかかり なんとか抜け出したが服の一部を破損させてしまう そしてより一層の警戒を強めて行動することを強く誓ったのであった ***************************************************** 潜伏している茂みの中でワタシは今後の行動について考えていた ニンゲンは一度被害にあうと驚くほどの速さで対策を講じて来る 一度侵入した畑にすぐ戻るのは致命的と言える だとすればとるべき行動は一つ その都度新しい場所に移動していくしかない だがここで問題が発生するそうやって移動を繰り返せば 今確保しているこの潜伏拠点からどんどん遠くなるのだ 夜が明けるまでに戻らなければ危険なのは実装石の頭でも理解できる事だ 考えに行き詰まり暫くの間考えこんだ するとまた御主人様と見たテレビ番組の事を思い出した 「確かあの中でハゲマッチョが言っていたデス…サバイバルにおいて 複数のシェルターを確保する事が大切だと」 シェルター…つまり隠れ家を幾つか確保して ここに戻らなくても安全に過ごせるようにする事で 畑を移動する事での問題が解消されるのだ 早速翌日の夜に行動を開始した 食糧を携帯する必要を感じたので 先日確保した作物を袋に詰めて持ち歩くことにした 日が沈んだ頃に出発し山道を下っていく 途中までは先日罠にかかった畑の近くを通る必要があったのだが 相変わらず幾つかの人間と罠の臭いが漂っていた ワタシはそこを大きく回避するルートを進んだ あの臭いが感じ取れなくなるまでひたすら移動した 「ここまで来ればもう安心デス…まずは隠れ家探しからデス」 それからワタシはあらゆる場所を物色した 生い茂った藪の中や放置されている小屋とかを見て回った そしてイイ感じに放置され朽ちている小屋を発見した どこからか中に入れないか周囲を調べて回る 扉は手で押したくらいでは開かなかったが 壁の一部が崩れていてそこから出入りできた 小屋の中は埃塗れで少し動くだけで舞い上がり 思わずむせてしまった 中にはよく分からない物が沢山置いてあった 何か食べる物は無いかと探したがそっちは皆無であった ともあれ隠れ家を一つ確保する事に成功し 早速周囲の畑の位置を確認すべく偵察を開始した そしておおよその見当をつけた後 夜が明ける前に小屋に戻り 持って来た食料を食べて眠りについた ***************************************************** 昼を過ぎた頃に目を覚ましたワタシは周囲に人がいない事を確認して 小屋から出て周りを散策した 暫く歩き回っていると遠くの方からきな臭い匂いが流れてきた 臭いのする方を観るとそこには先日まで潜伏していた 雑木林が白い煙に覆われていた 「デデッ!これは火事デスあそこに長居をしていたら ワタシも巻き込まれていたところデス」 煙に包まれている雑木林を眺めながら運が良かったと思うのであった やがて夜が訪れた 前の晩に目星をつけていた畑へと向かう 今度のターゲットはトウモロコシであった 背が高く成っている房は手を伸ばしても届かない位置にある だが茎が丈夫なのでワタシが登った位では折れたりはしない 房の所まで登って折るようにして落としていく 五本くらい落としたら十分なので回収して脱出する 念のため畑から出る時に靴に着いた土を落してから小屋に戻った 小屋に戻って一息つくと早速トウモロコシを食べにかかる 房を包む葉を剥きぎっしりと詰まった黄色い粒に齧りつく プチプチと粒が潰れる食感と広がる甘味にしばしの間酔いしれた 一本も齧ればもう満腹になった 再び夜になってトウモロコシ畑に近寄ってみたが やはりニンゲンと罠の臭いが漂っていた 「ニンゲンは動きが早いデス…私も早くここを去らなければ」 ワタシは急いで次の畑へと向かって行った この後隠れ家になる所を探して潜伏し そこから畑を荒らしてまた新たな場所に移動する事を繰り返していった やがて季節は過ぎていき朝夕が涼しくなり 気が付いたら日中も過ごし易くなっていた そしてワタシは雑木林に戻って来た 戻って来た理由の一つは以前ここで起きていた山火事の跡がどうなったのか 気になっていて見ておきたかったのだが いざ到着すると不思議な事に何も燃えた形跡がなく出ていく前と変わってなかった 敷いて言えば若干煙の臭いが残っていたくらいである それだけではなかった 戻って来た雑木林には変化が起きていた あれ程食べるものに乏しかったはずなのに 地面には木の実が沢山落ちていて 茂みの草木には小さいながらも赤くて甘い実が沢山実るようになっていた 「ウマイ…ウマイデスこれだけあれば畑で盗みをしなくてもやっていけるデス」 ワタシは毎日夢中になって木の実や草の実を集め食べていた だがここでふと脳裏にかつて見た番組の内容が浮かんできた そこには四季がある地域では夏が過ぎ秋になると沢山の実りが発生するのだが それはこの次訪れる厳しい冬への備えをするためでもあると言うのだ 「確かホモマッチョが言っていたデス…保存の効く木の実は貯蔵しておき 食べ物が乏しくなる冬に備えるのだと… あと冬の寒さに耐えられる頑丈なシェルターを作る必要もあると」 あの番組の中では屈強な男が三人 それぞれの長所を生かして小屋と倉庫を建て 寒さに備えた準備や食料の備蓄を行っていたが そんな事は一匹の実装石ではできるはずはない 「他にの方法は何かないデス…考えろ思い出せデス」 そして思い出したのが冬籠りをする動物の生態であった 洞穴や地面に掘った巣穴に籠って冬をやり過ごすと言う物だ さっきのよりは現実味はあるがそれでも実現は困難であるに変わりなかった 「デェェェェン…そんな都合のいい巣穴なんか簡単に見つかるわけないデスゥ ワタシは冒険野郎マクガイバーじゃないデスゥ!ダクトテープの一つでも寄こしやがれデス」 などと悪態をついていたがふと目の前にその都合の良い巣穴への入り口が広がっていた ワタシはあまりにも好都合な展開に呆れてしまった ***************************************************** その穴はワタシが入るには十分な大きさがあった 誰が何時何のために作った物かは知らない 臭いをかぐと山の同属に似た臭いがしたが新しい匂いはしなかった 今分かるのはこの巣穴が最近まで誰かが住んでいて 理由は分からないが放棄されてしまったと言う事だ 恐る恐る中に入り進んでいくと広くなったところに出た 中は外からは想像できない程に広くこれは根元の空洞を掘り当てたものかも知れない とは言うもの天井が低いのでこうして四つん這いで這って行くしかないのだが 冬に籠る場所と割り切れば悪くは無かった よく見ると違う場所に繋がっている横穴が幾つかある まず最初に探索した所は食料の貯蔵庫のようで僅かに食べ物が残っていた 試しに食べてみたが不味かった 次に探索した所は落ち葉が敷き詰められていた そこは仔実装が寝ていた部屋のようだった そして最後に残された穴は入った瞬間微かではあるが悪臭が漂ってきた 我慢して進んだが他のトンネルよりも長く掘られていて進んでいくと 小さな部屋に出た 部屋の床には一枚の板が敷いてありそれを開けると強烈な糞臭がする穴があった 思った通りだここはトイレなんだ 冬の間外で用足しをしたらそのまま死んでしまうからここにトイレを作っているのだ また普段の季節でも外敵を心配しなくていいし糞の臭いで位置を悟られない利点もある ただ一つ疑問なのはこのまま糞をし続けていたらいずれ溢れてしまう 一体それはどう対処しようと言うのだ そんな疑問はすぐに解消された 穴の奥からなにやら声が聞こえてきたのだ レフ—レフ—…とそれは弱々しかったが何かがそこにいた もう一度臭いをこらえながら穴を見ると そこには数匹の蛆実装がいた 「ママーやっと帰って来てくれたのレフ…ずっとゴハンがもらえなかったから みんなお腹ペコペコなのレフ~ゴハンがないから仕方ないから土を食べていたレフ」 そうここで排泄された糞は蛆実装が食べて片づけていたのだ これならば汲み取らなくても糞があふれる事は無い よく考えられている そして山の同属は例え蛆実装であってもタフである 丁度催してきたのでトイレで用を足すと穴の底で蛆実装達の歓喜の声がした 「わーい久しぶりのゴハンレフ…ママのウンチおいしいレフ…」 ワタシはトイレの板をそっと閉じた ***************************************************** それから忙しい日々が始まった 木の実を集めて貯蔵庫に収め草の実は自分のゴハン用に集めた そして防寒用に落ち葉や枯草を集めて巣穴に敷き詰め冬籠りの準備を整えた やがて季節は冬となり外に出るのが辛くなってきた頃 最後の仕上げとして出入口を土で塞いだ 通気口は数か所確保してあるのでこれで窒息する事は無い これは外敵や寒気が入るのを防ぐためであった そして寝床に戻ると少しばかり木の実を食べて眠りについた こうして春が訪れるまで半ば眠りについた状態で過ごしていくのだ 暖かい春の訪れを夢見ながら 続く

| 1 Re: Name:匿名石 2023/08/26-23:50:14 No:00007860[申告] |
| 実装石にもアメリカ人並のダクトテープ信仰が、と言うかマクガイバーが懐かしすぎる…
凄い豪運のようでコイツの末路は知ってるというね |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/08/27-12:26:26 No:00007862[申告] |
| モグラになっても蛆ちゃんはトイレでウンコ食ってる安心感よ |
| 3 Re: Name:匿名石 2023/08/27-15:12:03 No:00007863[申告] |
| 無責任飼い主には勿体ないぐらい知能もサバイバル心も高いのにあの結末なのが泣ける |
| 4 Re: Name:匿名石 2023/08/27-21:49:30 No:00007870[申告] |
| 蛆実装の寿命の謎 |