タイトル:【生態】 生き延びる 1
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初投稿日時:2023/08/26-04:03:38修正日時:2023/08/26-06:47:16
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生き延びる 1

「ここで待っていてね何時か迎えに来るから」

御主人様はそう言ってワタシを置いて帰っていったデス…

だが…ここはどことも知れない山の中
御主人様に言われた事は守らなくてはいけないが
この先一帯どうすれば良いのデスゥゥゥゥ

困惑と悲しみが混じった叫び声が山中に木霊した

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ワタシの名はジッ君
御主人様が付けてくれた大切な名前デス

まだ仔実装だったワタシを迎えてくれた御主人様は
それそれは大切に育ててくれたデス

只優しいだけでなくワタシが悪戯とかをした時は
厳しく叱り悪い事をしてはイケないと教えてくれた

美味しいゴハンに温かいお風呂ふかふかの寝床
そして御主人様と共に過ごした日々
どれも皆かけがえのない大切な物だったデス

だが今はそれらを全て失ってしまった

ある日何時もの散歩だと思ってお出かけの準備をしようとしたのだが
その日に限って何時もと様子が違っていた
お気に入りのピンクの服を着ようとしたら止められて
地味な緑の服を着るように勧められた

散歩の時に必ず着用させられたハーネスを付けようとせず
病院に連れて行くためのバッグに入るように言われたデス

車に乗せられて出発したが何時もの病院ならばもう着いても
いい時間になってもまだ到着せず長い時間車を走らせていた

やっと車が止まりバッグから出された所は見たこともない場所だったデス

そして突然別れを告げる御主人様…
山には仲間が住んでいるから頼りなさいと

ショックのあまりお石が砕けるかと思ったデス
だが何時か迎えに来てくれるという言葉を聞いて何とか耐える事が出来たデス

本当は泣き叫びたかった

御主人様にすがってイヤイヤをしたかった

だがワタシは躾を受けた良い仔だと
自分に言い聞かせて泣きたいのを我慢したデス

それでも御主人様の車が見えなくなるまで見送った後たまらなくなって
叫んでしまった

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ひとしきり叫んだ後冷静になったワタシは持ち物の確認をした

手元にあるのは愛用のポシェットのみ
中には好物の実装フードがパンパンに詰め込まれている
これは当面の食糧兼山の同属への手土産というところみたいデス

ここで立ち止まっていても仕方が無いので
まずは山の同属に会いに行く事にするデス

山奥まで歩いて進んでいくと微かではあるが同属の臭いがした
だがそれは他の飼い実装の香水の混じった臭いや
公園でたまに見かける不潔な野良実装の鼻が曲がりそうな悪臭とは違う
木や土の匂いが混じった独特の臭いがした

更に進んでいくとその臭いがだんだんと強くなってきた
がっそれと同時に不穏な雰囲気が漂ってきた

それは肌からビンビンと伝わって来て何時の間にか汗が噴き出してくる
頭の中にこれ以上近づくのは危険だと何かが伝わって来る

これはきっと敵だと誤解されている
何とか誤解を解かないといけないデス

そう思い森の奥に向かって大声で話しかけてみた

「初めましてデスゥ!ワタシはジッ君という者デス
訳あってこの山で貴方達と暮らすように命じられはせ参じましたデス
どうか仲間に加えていただけないデスゥ?」

だが相手からは何も返事が返ってこなかった
それどころか増々殺気が強まって来た

事態を好転させるべくワタシは持っていたポシェットの中身を見せつけた

「これはお近づきの印デス…とっても美味しいフードデス
どうかお受け取りくださ…」

と言い切る前に石が飛んできて顔を掠めた

駄目だ山の同属達はワタシを拒絶している
何を言っても無駄だろう
それどころかこのままでは命が危ない

ワタシはゆっくりと後ずさってその場を離れた
そして殺気を感じない距離まで離れると一目散に山を下りた

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山の麓まで無我夢中になって駆け下りてやっと一息つくことができた

「ここまで来ればもう追ってこないデス」

安心して気が抜けたのか
疲れと恐怖からその場にへたり込んで暫く動けなくなった

しばらくして疲労から回復したところで
お腹が空いてきたので持っていた実装フードを食べた
だが口の中の水分が奪われるために三つほど食べたところで喉を通らなくなった

「水が飲みたいデス」

こうして水を求めてとぼとぼと山道を下って行った

雑木林を抜けたところで水が流れる音が聞こえたので
それを頼りに進んでいくと
小さな小川が流れている所に出た

ワタシは大急ぎで川岸に近づき川に直接口を付けて夢中になって水を飲んだ
渇きが癒されると再び空腹感を感じたのでフードを齧りながら水を飲んだ

腹が満たされたところで今度は眠気が来たので眠る事にしたが
そのままここで寝るのは危険だと判断して
近くの草むらに潜り込んでその中で眠った

朝になって目が覚めるとフードを食べて周囲の散策を始めた

だが散策を開始して間もなくカラスの襲撃にあった

執拗に突かれながらも雑木林の中に潜り込んで逃げる事が出来た

追撃を躱してほっとしたのもつかの間
今度は何故か怒っているヘビに追いかけ回された

「デェェェェェェっ!ワタシが一体何をしたというのデスゥゥゥ」

茂みの中をしつこく追いかけ回されたが相手は一向に諦める気配がない
このままでは何をされるのか分かっものではない

そして坂を駆け上がると追いかけてきたヘビめがけて
周りに落ちていた枝や石を手当たり次第に投げつけた
その内のいくつかが命中したのかヘビは坂の下まで転がり落ちていった

更にトドメだと言わんばかりに一番大きな石を持ち上げ放り投げた
正に火事場の糞力であった
頭に石が直撃したヘビはあえなく絶命した

「助かったデス…」

ワタシは安堵からか全身の力が抜けその場に座り込んだ

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体力が回復したワタシは倒したヘビの様子を見に下りた

単なる好奇心からではない
ここで大事な課題に気が付いたのだ
それは自ら狩った獲物を食べると言う事だ

今はまだフードがあるから凌げているが
これは遅かれ早かれ無くなってしまうものだ
そうなればここで食べ物になる生き物や植物を
採取し食べなくてはいけない

これはまたとない機会なのだ

しかしワタシは今までこうして生き物を殺して食べた経験はない

せいぜい御主人様と一緒に見たテレビの中で
そういう事をしているのを見たくらいしかないのだ

だがこれは克服しなくてはいけない事なのだ
御主人様が迎えに来るその日までワタシは生き延びなくてはいけないのだ

とはいうもののどうしたらいいのか分からず途方に暮れていたが
過去に見た番組の内容を思い出した

「前に見た番組ではヒゲマッチョが食べていたデス
あの時は確か…そうまず皮を剥いていたデス」

ワタシはまず皮を剥くことから始めた
潰れた頭の部分から皮が剥離している所を見つけ
そこを引っ張って剥いていく

半分ほど剥いたところで身の状態を確認する
鱗に覆われた皮の下からは白くて透明がかった綺麗な身が姿を現していた
昔に御主人様と一緒に食べたオサシミという物に似ていた

「これは味が期待できるデス」

そう言って身に齧りついたが次の瞬間それを酷く後悔することになった
口いっぱいに生臭い匂いが広がり肝心の味はというと何もなかったのだ
思わず吐き出しその場でえづいてしまった

「これは無理デス…食べられないデス…」

こうしてワタシはヘビを食べることを断念した

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その後ワタシは様々な物を採取して食べてみたが
どれも不味くてとてもじゃないが食べられなかった
こうしている間もフードは減っていく

最早この辺りでは食べられる物は無いと諦め
ワタシはさらに麓の方に下りる決断をした

先日の教訓から日中は行動する事を避け
日が沈み辺りが暗くなるのをみからって移動した

茂みを抜け雑木林からまっすぐに麓のほうへ抜ける道へと出て
暗闇に乗じてとぼとぼと歩いて行った

遠くには民家の明かりが見える
ふと脳裏にニンゲンに助けを求めてみようかという
考えが浮かぶ

だが今の薄汚れたなりのワタシを見ても飼い実装だとは思わないだろう
それどころか野良実装の侵入と見なされてそのまま殺されかねない
ワタシはこの安易な考えを否定した

その時風にのって嗅ぎ慣れた臭いがしてきたのだ

臭いを辿っていくとそこには畑があった

畑には見覚えのある様々な野菜が実っていた
みずみずしいキュウリに赤いトマト
奥の方にはスイカが成っていた

「どれも美味しそうデス…どれ一つ…」

とここでハッと気が付いたのだった

「これはノーカというニンゲンが丹精込めて育てた作物デス
それを勝手に食べるのはドロボウなのデス」

ワタシが今やろうとしている事は悪い事だと言うのは理解できている
たがその一方でこれらの作物を食べたいという誘惑にも駆られている

もうポッシェットの中のフードも残りわずか
何とか節約しながら食べているが持って三日という所だ

背に腹は代えられなかった…

「ノーカの人ゴメンなさいデス」

ワタシは畑の作物を食べ始めた

それはとても美味しかった

試しに齧った野草の葉っぱや茎とか草の実
そのどれもがこの味にはとうてい及ばない

気が付けば夢中になって作物を食べていた

そしてお腹が満たされる頃には夜も更けていた

心地よい満腹感に浸っていたワタシだったが
突如として催してきたのだ
水っぽい野菜を一度に食べ過ぎたのか
はまたまた野菜の繊維質に腹が刺激されたのか
強烈な便意が襲ってきたのだ

たまらずその場でパンツを脱ぎしゃがみこんだ
真夜中の畑に汚い排泄音が響いた
排泄を終えるとここに長居は無用と判断し
持てる限りの作物を持って畑から退散した

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なんとか夜が明けるまでに雑木林に戻り
そのまま御主人様と分かれた場所まで移動した

そして茂みの中に潜り込んで眠りについた

再び目を覚ました頃には日が西に傾こうとしていた

ワタシは前回の行動の反省会をしながら
昨晩の戦利品を齧っていた

昨日までの試みの結果これからの食糧の調達は
ニンゲンの畑から作物を盗む以外に選択肢が無いと言う事が決まった

また戦利品を持ち帰るにあたりもっと沢山運べる袋の調達が課題として挙がった
御主人様から渡されたポシェットはそういう目的に使うには
あまりにも小さすぎこれに代わる何か他の物を探さなくてはいけないのだ

沢山持ち帰れば危険な畑への侵入回数を減らすことができる
毎日通えば必ずニンゲンが待ち伏せして捕まえようとするだろう

数日後再び前回侵入した畑に向かった
途中で川に捨てられているレジ袋を見つけ回収した
これなら前よりもたくさんの作物を持ち帰ることができる
思わぬ収穫に気を良くしてワタシの歩みは軽くなっていた

畑に到着したワタシは以前来た時に感じなかった違和感に気が付いた

この前来た時にはしなかった他のニンゲンの臭いがする
それにもう一つ違う臭いがした
臭いの先にあったのは良く熟れたトマトが一つ入った箱であった

ワタシの喉がゴクリと鳴った

「おいしそうなトマトデスいただくデス」

箱の中に体を半分ほど突っ込みトマトを取ろうとしたが

ガシャンと言う音がして扉に体を挟まれてしまった
抜け出そうにも上から強い力で体を抑えつけられてうまく身動きが取れない
ワタシはニンゲンが仕掛けた罠にまんまとハマってしまったのだ

もがいている内に少しずつだが抜け出すことができた
あと少しで脱出できると思ったが体が抜けると
勢いよく扉が閉まり服の裾が挟まれてしまった

外そうとしたが外れない仕方なく服を破って逃げ出した

破れた個所を確認したら丁度お尻の辺りが破け
そこからパンツが見えている事に少し羞恥を感じた

だが恥ずかしがっている暇はない大急ぎで作物を袋に詰め込み畑を後にした

そして潜伏先の茂みに戻った
今日体験したことは今後の教訓として生かさなければならない
少なくとも一度作物を盗んだ畑は警戒すべきと
嗅いだことのないニンゲンや罠の臭いがしたら絶体に近寄らない事
そうなった時は臭いがしないところまで逃げる事
ワタシはこの事を忘れないように決めた


                            続く

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1 Re: Name:匿名石 2023/08/26-04:30:18 No:00007850[申告]
実装石視点で面白いデスゥ
2 Re: Name:匿名石 2023/08/26-05:44:55 No:00007852[申告]
かわいそうな仔だ
だが罪は罪
悲しい結末もやむなしだ
3 Re: Name:匿名石 2023/08/26-06:05:35 No:00007853[申告]
浅知恵に低い倫理的障壁、実装視点で見ると所詮甘やかされた飼い実装なのがよくわかる
山実装と泥棒を安直に天秤にかけて「ゴメンナサイ」程度で殺される危機感を持たない時点で詰んでるので同情の余地が無い
真に生き延びるには腹を括ってどちらかと交渉するべきだったのかもしれない
(あからさまに飼い実装でタグ入りなら人間は安直に処分しない可能性もあった)
早々に追い出した山実装の経験則と飼い主のお花畑具合とのギャップがいい
4 Re: Name:匿名石 2023/08/26-12:23:23 No:00007855[申告]
いい子ぶっててもあっさり畑から盗むのをメインの食料調達に決めるのは所詮実装石か…
5 Re: Name:匿名石 2023/08/26-14:42:57 No:00007856[申告]
こればかりは一番糞なのが飼い主って言う
一応山実装に言われた通り接触してる上手土産まで出してる辺り大分弁えてる

おまけに世間知らずの元飼いだが、本石の主観だと迎えに来るって言ってるから捨てられたって言う覚悟すら持てない状況でやれる事をやってる印象が強い

惜しむらくは山実装と同じ様に農家にでも接触出来ればワンチャン生き延びれたんだろうけど、虐待派や駆除派に当たったら詰みだし個体そのものとして見る飼いとしてはそれなりのモラル持っていて頭は回るが愚直過ぎたのが良くなかったか
6 Re: Name:匿名石 2023/08/26-19:02:29 No:00007858[申告]
山実装が飼い実装の侵入を排除するのは糞虫化を防ぐのと
実装フードを食べてしまって山のゴハンが食べられなくなることを
恐れての事だと聞きますね
7 Re: Name:匿名石 2023/08/26-19:15:10 No:00007859[申告]
人間の立場だけで考えるなら畑の作物盗みやがってだけど実装石の立場なら仕方ないと言えるわ
生きるためにせいいっぱい頑張ってその結果がOSOMA60なのは無常だが
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