タイトル:【駆除】 OSOMA60 2
ファイル:OSOMA60 2.txt
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初投稿日時:2023/08/25-05:52:03修正日時:2023/08/25-05:54:14
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OSOMA60  2

前回までのあらすじ

農業を経営している敏明は昨年から実装石による
作物の食害に悩まされていた
今年になって被害が拡大したことから
元凶と思われた土竜実装の駆除を業者に依頼し一網打尽にした

だがそれでも作物の食害は収まらず
第三の実装石の存在がいることに気づいた

また村の寄り合いで同様の食害に悩む農家が複数いることが判明し
佐久間という人物が中心となって対策会議を行う流れとなった

10日後に公民館に集まり行われた会議の中で
改めてその被害の範囲の広さと神出鬼没な事が説明され
現在のところ有効な手立てがない事も分かった

勿論ただ手をこまねいてばかりではない
佐久間氏は村役場に掛け合い対策室を設置するように促し
今後は被害の報告と情報の収集にあたるようにしたと報告

またこの狡猾な規格外の実装石にコードネームを与えることを提案した

そして付けられた名前がOSOMA60である

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対策室が設けられ情報の収集と共有化が図られるようになったものの
一か月が経過した現在未だ有効な情報は集まらないでいた

その間にも各地で出没した報告ばかりが上がっていた

対策室に設置された地図に出没した場所と日時を書き込み
その動きを追おうとしたが一切の法則性がなく
まったくの予測不能状態であった

駆除業者がアドバイザーとして参加しているが
彼らもこんな行動をとる実装石は見たことがないと言った

通常であれは実装石は味を占めた作物に執着し何度も食べにやって来る
その習性を利用して待ち伏せたり罠を設置することで駆除してきたのだか
そんなセオリーが全く通用しないのだ

それまでの駆除の経験と知識がOSOMA60に対しては
全て裏目に出てしまっている形なのだ

奴は我々の行動をどこかに潜んで観察して
次の行動を決めているのかも知れない

だとしたら恐ろしく知能が高い個体の可能性すらある
こんなのが何時までものさばっていてはいけない
仔を生み繁殖し親の知能を受け継いだなら最悪の事態になる
出来るだけ早く駆除せねば…
焦る気持ちばかりが強くなってゆく

そして気が付いたら俺は毎日決まった時間帯に
対策室に通うようになっていた

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事態に変化が現れたのはさらに一か月が経過した頃であった

今までその姿をとらえる事が出来なかったのだが
今回被害にあった池野さんの畑に侵入する様子が
設置された監視カメラに捉えられていたのた

その姿は我々が予想していた物とは違っていた
周囲との対比から推測されるサイズは50㎝ほどで
これは野良個体ではよくあるサイズであった

予想していた60㎝とは10㎝の差があったわけだが
この違いはとても大きいモノであった
これまでの行動予想も60㎝級が通れる場所とかに絞り込み
監視網を設置していたのに
まったくの見当外れという事になる

また今まで監視カメラを避けるように行動していると思われたのだが
残された映像からはカメラの存在を気にしていない
というよりカメラと言う物がある事を理解していない様な様子であった

映像の一部始終を見ていた佐久間氏はぽつりとつぶやいた

「奴の行動を見直す必要があるな…
我々はもしかしてとんでもない勘違いをしていたのかもしれない…」

翌日になって役場の対策室を訪れると
佐久間氏と駆除業者が昨日の監視映像を見ながら話し込んでいた
何故サイズの見立て違いが起きたのかその原因を探っているようだ

何度も映像を繰り返して見ていたがやがて業者が原因が判明したと言った
サイズの見立てを誤った原因は奴がとった擬態行動によるものだと

映像を見てみると昨日は気が付かなかったのだが
奴は追跡を躱す為に作物を食った後
元来たところをバックして戻っていったのだ
そしてその足は最初に着けた足跡と重ねていた

だが足跡を重ねたと言っても正確に合わすことが出来ず
どれも少しずれて踏んでいて元の足跡よりも大きく広がっている

また再び踏みしめた事で足跡の凹みが余計に沈み込み
これらがサイズを誤認させていたと言うのだ
 
足跡の擬態はキタキツネがよくやると言う話だが
実装石が行うのを見るのはこれが始めてだと業者は言った

これは奴がとても慎重に行動する個体であることを
改めて認識することになった

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池野さんの所に出没してから半月後
今度は2キロ離れた小林さんの畑に現れたという情報が届いたのだが
佐久間氏が自分に考えがあると言って
今回は対策室の関係者による被害調査を行わないようにした

また小林さんの畑は自宅の二階ベランダから見下ろせる位置にある事から
承諾を得てベランダに監視カメラを設置した

それから一週間後驚くべきことが起きていた
奴が再び現れたのだ
この事を予想して小林さんには一棟を除いて
すべての作物の収穫を済ませてもらっていたが奴は残された作物に
接近しそれを食べ始めたのだ

奴は一度侵入した畑には当分はやってこないはず
なのに一週間しか経ってないのに再び同じ畑に現れているのだ

「やはり思った通りだ」

佐久間氏はそう満足げに言った

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その後の説明によると
佐久間氏は以前の画像を見てから
もう一度過去の被害報告を洗い直していたのだと言っていた

昨年の夏頃から被害が報告されていたのだが
同じころに別件で農作物被害が発生し罠を仕掛けたが
逃げられた痕跡が残っていたと言う報告を見つけたのだと
罠には服の一部が付着していたという

その時は再び罠を設置したが捕獲には至らなかったという

この報告を目にしてもしやと思い
池野さんの畑に侵入した時の画像を見直すと
確かにお尻の辺りの服が一部千切れているのか確認できた

ここで彼は一つの仮説を立てた

それはOSOMA60が過去に罠にかかった経験から
畑に複数の人間や金属の匂いがする所には
警戒して近づかないようにしている

そして他の実装石よりも優れた嗅覚で異変を嗅ぎ分け
罠や待ち伏せを回避しているのではないかと

移動距離が長いのもそういう匂いが完全に感じないところまで
逃げた結果に過ぎないと

成程その仮説通りなら
被害が発生してから監視カメラを設置しても引っかからないわけだ

設置のために畑に業者が出入りすれば多数の人の臭いが残る
奴が近寄らないのも当然と言う事だ

池野さんの畑のカメラに捉えることができたのも
今回の騒ぎが起きる前から監視カメラを設置していた関係で
そういう臭いがしなかったから警戒していなかっただけなのだ

そうOSOMA60は最初の頃に思われていた極めて狡猾な個体ではない

一般的な野良よりも警戒心が強く臆病で
嗅覚に優れているだけの少し賢い個体にすぎないのだと

そして基本的な行動は他の実装石と何ら変わらない

どうやら駆除に向けての糸口がつかめたようだ

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その後も監視を続けていたが奴の行動に変化が表れてきた
当初は酷く警戒していた様子だったのが回を重ねるごとに
警戒が緩み大胆になっていったのだ

畑に来る間隔も短くなってきて最近では毎晩やって来ては
残された作物を食べに来ている

「そろそろ頃合いのようですね…」

佐久間氏はそう言って捕獲作戦の開始を決めた

今回使用する罠の設置に関して小林さんの協力は不可欠であった
奴は金属や複数の人間の臭いに敏感である
そのため罠には金属を使用できない
そればかりか設置作業を行いに行く事すらできないのだ

小林さん夫婦に事情を説明し
お願いした所快く引き受けてくれた

「なあに昔はそうやって畑に悪さしにくる実装石を捕まえて成敗したものだ」

そういって小林さんはカカカと笑った

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罠を設置したその夜
予想通り奴がやって来た
狙いは勿論畑の作物だ
監視中も律義に順番に食べ尽くしていって
今回残ったのが最後の一つというわけだ
おそらくこれを食べ尽くした後に別の畑に
移動するつもりなのだろう

今夜が捕獲のチャンスというわけだ

我々は佐久間氏が用意した軽トラの中で待機していた
警戒されないように小林さん宅から二キロほど離れた道路の横に車を止め
ノートPCから監視カメラの画像をリンクして様子を見ていた

奴は悠々と畑に侵入し作物へと近づいて行った
だがあと少しで届くという距離に近づいた時
突然足元の地面が崩れてまっすぐに落下していった

そう今回仕掛けた罠はオーソドックスな落とし穴であった

設置に至り一切金属類は使わず竹を細く切った物を掘った穴に置き
その上から枝を敷き詰めてから土で覆った

奴は今まで落とし穴にかかった経験がないこともあって
まったく警戒していなかった

罠にかかったことを確認して現場に急行したのだが
奴は突然の事に穴の中で狼狽し悲鳴を上げていた
作戦は成功したのだ
今まで散々裏をかかれてきたが今度は俺たちが奴の裏をかく番だ

その後別の場所で待機していた面子に来てもらい
穴から奴を引きずり出す手伝いをしてもらった
そしてケージに移そうとした時であった
突然暴れ出し抑えていた手を振りほどいて逃走したのだ
意外と素早く追いかけたが車道に飛び出していった

このままでは逃げられる
と思ったその瞬間であった

突如高速で侵入してきた乗用車に跳ね飛ばされてしまったのだ
夜の車道に急ブレーキ音が響き渡った

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佐久間氏は乗用車の方に向かい

俺は跳ね飛ばされた奴の方へと向かった
車に跳ね飛ばされた体があらぬ方向にねじれていてすでに絶命していた

一旦車に戻って備え付けの実装処理袋を持って戻り
死体を回収しようとしたらカランと何かが落ちる音がした
落ちた物を拾い上げライトで照らすと
それは赤いガラス玉のようなものだった

「これってもしかして…」

俺は実装石の顔を確認した
右目にあるべき赤い目玉がなく
その眼孔の奥は焼き潰した跡があった

「やはり不妊処理が施されていたのか」

近頃では飼い実装の出産による飼育崩壊を防ぐために
こうした不妊処置を施すことがあるとは聞いている
やはり奴は元飼い実装だったのだ

確認が終わった後死体を袋に詰めて密封した

また付近に血痕が残っていたのでバケツで水を汲んで洗い流した

一方乗用車の人間の安否を確認しに行った佐久間氏は
そこで予想外の事を知ることになった

怪我がないかと尋ねたところ中に乗っていたのは若い女性であった
突然動物をはねてしまった事に動揺していたが
野良実装を轢いただけだと伝えると落ち着きを取り戻した

幸いに怪我はなく車も汚れこそしたが傷がつかなかったことに安堵していた

だがこんな夜中に若い女性が一人で山のある方向に向かっている事に
疑問を感じた佐久間氏は理由を尋ねた

聞けば昨年の夏頃に引越し先の部屋の都合で
今まで飼育していた実装石を飼う事が出来なくなり
かと言って処分するのも可哀そうに思っていた所
この先の山に山実装が住んでいると聞いて
そこでなら仲間たちと仲良く暮らしていけると思って
山に連れて行って置き去りにしてきたのだと言うのだ

「ここで待っていてね何時か迎えに来るから」と言って

だが今年になって近所に実装石と同居可能なマンションが完成し
入居者の募集をかけていることを知り
申し込んだところ入居が決まり引っ越した
また以前のように実装石を飼えるようになったので
これから山に置いて来た飼い実装を連れ戻しに行くのだと言う

「大丈夫ですジッ君なら賢いから山の仲間とも上手くやっているだろうし
私の事は忘れないから呼んだら必ず戻って来るから」

何故か自信たっぷりに話す彼女に佐久間氏は呆れていた

「ところで昨年山に行った時にはこの車で行ったのですか?」

そう尋ねると彼女は明るい表情を浮かべながら

「そうです」と答えた

そしてお礼を述べた後
車を山の方向へと向けて走り去っていった

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その後奴の死体を佐久間氏の知り合いの動物病院で解剖調査したところ
飼い実装の登録データーが記録されているマイクロチップが発見された
獣医の説明によればデーターを照合して飼い主の特定はできるが
自治体や警察以外には個人情報は開示できないと言われた

佐久間氏は一連の農作物被害に関しての責任を追及する構えで
警察に被害届と作物の被害に関する資料全てと
車の女性との会話を録音したICレコーダーを提出した
なんでも仕事柄言った言わないで揉めることが多いので
常に持ち歩いているのだとか

あの時も様子が変だったのでもしやと思って
こっそり起動させて会話を録音したのだと言う

その後実装生物の飼育と管理に関する違反行為と
県が定めた迷惑行為防止条例に抵触しているとして
元飼い主の女性は逮捕起訴されることになり
罰金刑の有罪判決を下された

更に佐久間氏は民事裁判を起こし
これまでの農作物への弁済と対策に掛けた費用を
弁護士を通じて元飼い主の女性へ請求した
どうやら女性の実家がかなりの金持ちだったようで
請求金額を全額一括で支払う事で和解が成立した

得られた賠償金は被害にあった農家に分配された

こうして異質の実装石OSOMA60との戦いは幕を閉じた
今回の件は色々と考えさせられるものがあった

相手を侮ってはいけないが
だが一方で買い被ってもいけない

正確に相手を見極める事の難しさを思い知った気がした

そういえば奴を捕らえた時突然暴れて逃げ出したのは
通りがかった元飼い主の車の音を覚えていて
自分を迎えに来てくれたと思って向かっていったのかも知れない

確か山に置いていく時に何時か迎えに来るとか言ったらしいし
その言葉をずっと覚えていたのだろう
やはり奴は賢い実装石だったのかもしれない
ある意味では奴も人間の身勝手に振り回されていたのかもな


                          終

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1 Re: Name:匿名石 2023/08/25-07:02:17 No:00007842[申告]
淡々と着実に炙り出して追い詰めていく感じがいい
結局、畑に執着しないと生活出来ないのは元飼い実装の限界って感じがする
あっさり轢死したのはアレだったけど生きてても飼い実装に戻ってしまった可能性もあったので何ともね
元凶が結局金しかペナルティないのが闇で事例として増えそうと感じてしまうな
2 Re: Name:匿名石 2023/08/25-07:13:13 No:00007843[申告]
それと当実装が基本出て来ない感じが農家側視点で色々想像できて実装駆除モノとしては珍しいドキュメンタリー感があった
3 Re: Name:匿名石 2023/08/25-09:18:09 No:00007844[申告]
OSOMA60もある意味被害者だな
畑を荒らしたのは許されないがそれも飼い主が捨てたせいだし
4 Re: Name:匿名石 2023/08/25-10:04:50 No:00007845[申告]
OSOMA60も飼い主の都合に振り回された被害者で口約束の為に生き延びようとしてただけってのが無常観ある
5 Re: Name:匿名石 2023/08/28-22:56:40 No:00007880[申告]
関係あるの知らなくて生き延びるシリーズ読んでから来ました
飼い主は迷惑なバカだけどちゃんと迎えには来たんだな…やるせねえ
6 Re: Name:匿名石 2023/09/08-05:58:49 No:00007948[申告]
一番悪質なのは馬鹿で責任感の無い飼い主か…なんとも皮肉な話だ
7 Re: Name:匿名石 2023/11/13-00:32:13 No:00008462[申告]
この淡々とした語り口調で自体が急転していく様子、冷静に駆除していくハンターの雰囲気満点で凄い!!
狡猾な敵に冷静に対処するプロってこんな感じなんだろうかと思いにふけってしまった
一番の悪党に関しても淡々と法的措置がとられていくラストも秀逸だ
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