土竜の唄1 ハァハァハァ… (駄目テチこのままではニンゲンに見つかってしまう何とかするテチ…) 一匹の仔実装が息切れしつつもヨタヨタと再び駆け出そうとしていた 災厄はある日突然に訪れた 人間の畑を見下ろす位置にある雑木林に巣を構え 静かに暮らしているだけのはずであったのに 彼らは容赦なく巣を破壊して自分たち家族を捕まえ殺そうとしてきたのだ ママは自らを囮にして私達姉妹を逃がすため立ち向かっていった その犠牲を無駄にしない為にも私達は振り返ることなく全力で巣から脱出した 妹は蛆ちゃんを見捨てられないと抱えて逃げたが やはり速く走れなくて落伍した 途中まで走ったところでお姉ちゃんは迫ってくる人間の気配を察して 自分が食い止めるから先に逃げろと言ってきた 迷っている暇など無かった… 次女は泣きながらお姉ちゃんを後にして駆け出した やがて遠くからママの断末魔の叫びが響き渡り それから少し間を置いて蛆ちゃんと妹の悲鳴が聞こえ 走り続けて足を止めた時に背後からお姉ちゃんの悲しい叫び声が上がった 次女ちゃん生きて…そうハッキリと聞こえた ***************************************************** 再び死に物狂いで走っていたが それよりも早くニンゲン達の足音が近づいて来る そう奴らは実装石よりもはるかに早く移動できるのだ 川岸近くにまで逃げてきたがこれから先は逃げ場がない とっさに土手の草が生い茂っている所に潜り込む ここで静かにしていれば見つからないかもと考えてのことだった できるだけ奥に隠れようと進んだのだが そこでぽっかりと空いている穴を見つけた とっさにこの穴の中に隠れようと思い潜り込む 穴は思ったよりも深く奥へ奥へと進んでいった (この中にいれば見つからないはずテチ) 次女はこの穴の中に潜伏して息をひそめた 暫くしてニンゲンの足音が近づき付近を探し回る気配がした 生い茂っている草をガサガサと探りを入れている音がする もしあのまま茂みにいたらたちまち見つかっていただろう やがて諦めたのか足音が遠ざかり辺りに静けさが戻った だが以前ママに言い聞かされていたニンゲンはずる賢くて 一旦去ったふりをして近くで待ち伏せしたりするから すぐに安心しては駄目という事を思い出しそのまま動かずにいた 排泄すらも我慢して耐えていたが やがて夜の虫の声が聞こえてきてやっと危険が去ったとを知った ***************************************************** その後次女はこの穴を数日かけて探索した 考えていた以上に穴は広い範囲に坑道が掘られていることが分かった 中は光が入らない為真っ暗で視力はあまり役に立たなかったが 嗅覚を頼りに穴を進んでいった 途中でミミズや虫の幼虫と遭遇しそれらを食べながら進んだ やがて少し広い場所に出た そこは先ほどの坑道と違い手足を伸ばせるくらいの広さがあり 臭いからしてトイレ用の場所も作られていた 前にここに住んでいた生き物の巣なのかもしれないと思ったが 臭いからの判断で長くここは留守になっているようなので ここに住み着くことを決めた それからは餌探しを兼ねた坑道の探索や拡張を行い 巣に戻って眠ると言う生活パターンが構築された 狭い坑道を行き来していく内に服は破れて髪も千切れていったが 地中では温度が高い事もあってやがて服は捨てた 手の先も最初はボロボロになって血も滲んだが 今では手先の皮が分厚くそして固くなって 土を掘るのに適した状態になり やがて次女は成体へと成長した ***************************************************** ある日の夜次女はママの事を思い出していた 村で暮らしていた事 毎日忙しくこき使われて落ち葉や木の実を集めさせられていた そしてある夜の事ママに起こされ村を出ると言われ 真夜中に抜け出したこと ママは追っ手を気にしていたけど誰も追いかけてはこなかった そして近づくなと長老様に言われていた人里の近くにまで下りて行き 雑木林に潜り込みそこで冬越しの為の巣を大急ぎで掘った 木の根元に空洞があったおかげですぐに家族が全員が入れる巣が出来て 今度は大急ぎで落ち葉や木の実を集めて回った 毎日が忙しくそして必死だった 冬越しの準備が整った頃には冷たく重い空気が流れ始めて 季節はもう秋から冬へと移ろうとしていた 冬の間は穴に籠って貯えた食糧を食べながら できるだけ体を動かさないようにして暮らした その間にママは村を抜け出した理由を語った ママの話によると私達三匹と蛆ちゃんは夏の終わりに生まれた 秋仔と言われる存在なんだと 村のしきたりで秋仔は冬越しの準備のための労働力として使い 用が済んだら服と髪を奪って谷底に捨てられる運命だったと言うのだ ママは春に産んだ仔を全て失っていてそれもあって 秋仔を捨てる事に耐えられなかったのだと言っていた 悩み抜いた末にママはワタシ達を連れて村を抜ける決心をしたのだと もう子供達を失うという悲しい事はしたくなかった そう何度も私達に言った ***************************************************** そして季節は春を迎えた 巣から出てきた時に浴びた太陽の温かさが心地よかった それからは日々食べ物探しに翻弄された 外敵の脅威は山よりは少ないとはいえ警戒は怠れなかった 一度なんかヘビが巣穴に侵入しようとして皆で石を投げて追っ払った だが食糧が乏しい事は何時までも解決しなかった 季節が暑くなって来る頃にママはある事を決断した それは畑に侵入しニンゲンが作っている作物を盗むというのだ 今のままだと実りの秋が来るまでこの辺りでは満足に食べ物が集められない だがニンゲンの畑に行けば食べ物が手に入る 危険は承知だがこのままでは餓死しかねない やるしかないのだと そしてその日の晩に家族総出で畑への侵入を決行した 恐る恐る侵入したニンゲンの畑は食べ物に満ち溢れていた 思わず声を出しそうになって慌てて口を塞いだ位だ ママはここに来る途中で拾ったビニール袋に畑に実った作物を入れていった それでもママは必要な分以上は取らないように言い 十分な量を取ると速やかに畑から出て行った 巣に帰り戦利品を並べワタシ達は歓喜した ニンゲンが作る作物はどれも大きくそして美味しかった そしてその日は皆でお腹いっぱい食べた それからは定期的に畑に行った 勿論ニンゲンの作物に依存するのは危険という事で できるだけ雑木林周辺で食べ物を採取していたが 食べ盛りの育ち盛りのワタシ達姉妹のせいもありどうしても不足しがちであり 足りない分を畑から盗んで補填すると言うことを繰り返していた 盗みは悪い事と分かっていたが生きるためには仕方がなかった できるだけ迷惑をかけないように回数を絞り盗る野菜も必要最低限に留めていた だがニンゲンはそんなワタシ達の行為を許さなかった そして破滅の時が訪れた… 飛び交うニンゲンの怒号 泣き叫ぶ妹にママの悲鳴お姉ちゃんの今わの際の言葉 それらが次女の周りを渦巻いていた ここで次女は目を覚ました どうやら何時の間にか寝入って夢を見ていた様だ ***************************************************** 昔の夢を見た数日後次女の体に変化が現れた そう妊娠したのである 何をすべきかは本能が教えてくれる 巣に籠り日々大きくなるお腹をさすりながら 次女は胎教の唄を口ずさんだ その唄は地表にもわずかに漏れ出ていた あたかも土竜の唄のように 続く

| 1 Re: Name:匿名石 2023/08/22-12:28:33 No:00007816[申告] |
| 静かに暮らしてるだけじゃねーじゃねーか! |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/08/22-12:38:06 No:00007817[申告] |
| いいねぇ、地中に適応した実装石が生まれる過程の話か |
| 3 Re: Name:匿名石 2023/08/22-12:54:25 No:00007818[申告] |
| 山実装の間で秋仔が何故捨てられる掟なのかを身を持ってして証明していくような糞蟲一家で笑う |
| 4 Re: Name:匿名石 2023/08/22-15:29:08 No:00007819[申告] |
| チューインガムをプレゼントしなくちゃ |
| 5 Re: Name:匿名石 2023/08/22-18:33:24 No:00007820[申告] |
| これは害蟲
地中の穴に差し込んで巣穴を根絶やしにする噴霧式コロリの開発が早急に望まれる |
| 6 Re: Name:匿名石 2023/08/22-21:03:34 No:00007822[申告] |
| 名作の予感レフ♪ |
| 7 Re: Name:匿名石 2023/08/22-21:07:56 No:00007823[申告] |
| こいつら元は山実装だったら味は良さそうだな |
| 8 Re: Name:匿名石 2023/08/28-04:43:47 No:00007874[申告] |
| 畑荒らしておいてなんて言い草だ |
| 9 Re: Name:匿名石 2023/11/12-20:27:32 No:00008455[申告] |
| HAHAHAHAHAHA増長しきったところで地獄に落ちる!
そう、それが虐待紳士の嗜みさ! HAHAHAHAHAHAHA!! |