タイトル:【観察虐食馬鹿】 実装石イゴイゴダービー 後編
ファイル:実装石イゴイゴダービー 後編.txt
作者:ブタやろう 総投稿数:7 総ダウンロード数:495 レス数:1
初投稿日時:2023/08/14-00:17:18修正日時:2023/08/19-07:52:10
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レースもついに終盤へと突入した。

マテが最終直線へ来て差しの勝負に入る。

それを必死で追い抜こうとするウカ。ヘルもそれを追う。

そして、ここにきてついにヤツがその本性を表そうとしていた。

今まで全くのノーマーク、誰からも注目されずにいた異常な妊娠状態の個体、
番号15番ハラボテエフェジーである。

彼女の頭を騎手が鞭打つ瞬間、彼女の脳裏に文字が浮かび上がる。

特殊蛆形態実装石発射砲台HRBT-004 type E型 MOOD Victory 起動

「ででででで゛ででで゛でで゛ででで゛で゛゛゛゛゛゛゛てててでで゛゛でて」

声に成らない、人の声帯でとうてい表現できない異音を発しつつ、ハラボテエフェジーが震える、両目が緑から黒く変色し、
顔中の穴という穴から蒸気が噴き出す。

「で・・・で・・・で・・・デッスーン!!」

体内で何かの準備が整ったというように声を上げると、ハラボテエフェジーは高速で寝転がった。

そして何か機械的な物が作動したように高速で体を展開させる。

ゴール方面へ足を向け、上体を起こす。足を上げて膝を折り、M字に開く。そしてまた体をガクガクと震わせる。

「でじゃじゃじゃじゃ・・・・・・デズううううううううううううううううううううううう!!」

パンツがグーンと盛り上がるかと思うと、それを破って総排泄口から太い棒状の物が飛び出した。

それは「鉄のマラ」であった。マラと呼ぶには固く、歪みなく凹凸もない、真っすぐな形状で、そこの先端に空いた穴は
やや大きい。蛆実装一匹が入るかというほどだ。

「さあゆけ!HRBT-004!お前の力を見せてみろ!!」

会場から大きく離れた別空間にて、その様子をスクリーン越しの映像で見守っていた何者かが叫ぶ。

この世界には、巨大な悪の組織が存在していた。
それはもう強大で、児童向け漫画雑誌の世界に出てくる、子供向け玩具を改造して子供達に牙を剝き、それをもって世界征服を
行おうかという悪の組織と同等の連中だ。

彼らは莫大な資金と絶大な技術力、大量の構成員を有し、世界をその手に欲していた。
そして今大会での優勝を勝ち取ることで、世界征服の足掛かりにしようとしていたのだった〈な、なんだってー!?

「フフフ・・・・今回のために開発した蛆ちゃん高速射出装置はすごいんだぞぉ。その一撃をもって菊孔賞制覇を勝ち取ってみせる。
くれぐれも外して恥をかかせてくれるなよ?」

スクリーン越しに競石場の様子を見守っている彼女の名は「ロマリッソ・ペタルツ」
齢11歳にしてこの犯罪組織を率いて世界征服を目指す悪の天才科学者である。

今回のミッション、それはロマリッソが開発した大砲を用いて蛆ちゃん弾を的確に射出し、ゴールテープを切らせること。

そして、その母体であるハラボテエフェジーに優勝を勝ち取らせることであった〈な、なんだってー!?

それを認めさせる裏工作や根回しも万全である。

「構成員4545!発射準備急がせろ、弾頭装填」

ロマリッソがそう告げると通信機越しにそれを受け取った騎手に扮していた構成員が返答した。

「了解、弾頭装填作業に入ります」

4545はムチでハラボテエフェジーの仰向けでさらされていた腹を打った。

「で・べ」

命令を受信したと返答する。
その体内は既に80%以上が機械に置き換わっており、偽石と体表の皮、糞袋を除く殆どが機械であった。

その糞袋でさえ切開されて開かれた状態で置かれ、体内の機械部品がその中を監視し、触れられるようにされていた。

糞は一切たまっておらず、糞袋の表面に水膨れのような蛆ちゃんを包んだ袋が貼りついていた。
極小のアームがそれらの中から一つを見定めると、それを剥がしにかかる。

「レフ?蛆ちゃん選ばれたレフ!」
「凄いレフ、おめでとレフ!」
「蛆ちゃん自分のことのように嬉しいレフ」
「頑張ってかましてくるレフ!いちおくそーひのたまぎょくさいレフ!!」

選ばれなかった蛆ちゃん達もその弾頭蛆ちゃんを祝福していた。
組織が考えた胎教の歌の効果によって、自分たちがどう扱われるか、何のために産まれてなんのために死ぬのか
しっかり教えられている。それが親と自分たちの幸せであると。

「例え塵と消えるとも、そのきわでたいりんの花を咲かせるレフ!!」
「蛆おねちゃ!蛆ちゃん達のタマシイもいっしょレフ!」

皆笑顔で、膜越しに見える弾頭蛆ちゃんに万歳をして見送った。

「レフ!いってまいりますレフ!」

そうして弾頭蛆ちゃんは小さい片方のお手手を懸命に上げ、反対の手を真下にしっかりと下げて伸ばし、蛆なりの
敬礼のポーズをした。

ごくごく短時間の別れを終えると、アームは弾頭蛆ちゃんをそのまま大砲に装填してしまう。

「で・でっすーん!」

ハラボテエフェジーの黒かった両目が白目に変わる。装填完了、発射準備よしのサインだ。

「よし!構成員4545よりロマリッソ様、発射準備完了いたしました」
その報告を受けるとロマリッソはニコリと微笑んだ。

「発射」

短くそう告げると、構成員4545は
「了解!ロリマンメスビッチ帝国〈組織名〉に栄光あれえええええええええええええええええええええええええええええええ!」
そう叫ぶとハラボテエフェジーの頭を鞭で強く叩いたのだった

どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

強烈で音高い砲撃音が会場いっぱいに鳴り響いた。



ところ戻ってこちらはレースの先頭である。時はハラボテエフェジーに弾頭を装填している最中のころ。

「てっちゅてっちゅてっちゅてっちゅ!」

短く早いスパンの呼吸を繰り返し、ウカは走る。わずか前を走るマテを追い抜かんとして。

「でじゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

いまだ先頭を走るマテはがむしゃらに絶叫のような大声をあげ、全速力で追い抜かれまいと先を行く。
そのペースはデタラメで、呼吸法の意識はまるでなく、ただ最後の力を燃やし尽くしているといった具合で、
余力なく時間もないといった意識でただ賭けていた。
自分の肉体の限界に賭けていた。

そして、この二匹に及ばないものの、まだもしかしたらの可能性に賭けている競争石がいた。
現在三位をキープしている異形の競争石ヘルである。

〈嫌デスー〉

ヘルはマテどころかウカからも距離が離されている。二位との距離、恐らくは1.5実身差という所か。

この距離でそれだけ離されていたなら、普通の競争石であれば完走だけを目指して勝利などは放棄するレベルであるが、
ヘルは違った。

〈嫌なんデスー・・・今回は勝たなきゃダメなんデスー〉

彼女は二位とさえ差が付けられた状態だとしても、諦めていない。

レースでは、もしかしたらがあると思うからだ。
先頭が転倒するかもしれない、力尽きてペースがおちるかも知れない、
様々な要素が絡み合い、自分に勝利の神様の導きがあるかも知れないという思いが、自分がペースを乱されなければ
勝てることもあるかも知れないという希望が。
その可能性に彼女は賭けていた。

ヘルの脳裏に、石主の男の姿がちらつく。

前述の通り、このヘルコンドルブワサという実装の石主は虐待派であった。

牧場との交渉で所有権を買い、名前を付け、レースに出せるよう教育と育成を牧場側に一任する。
最初の頃はヘルも喜んでいた。名前をもらい、飼いにして貰えたと喜んでいた。
しかし・・

「おいヘル!何なんだこの成績は?××年度参加レース中、勝率7割に届かないとはどういうことだ?」

石主の男はヘルがレースに敗北する度に、ヘルの元を訪れてはその首を持ち上げて締め上げる。
「で・・てべべべべ・・・げふっ、ごめんなさいデスー」

きつく締めあげる男の腕を開放してくれとばかりにヘルはペチペチと叩いた。
「私も・・頑張ったデスー・・・でも私・・ステーキコンペイトウもなくて、
ごはんも少ししかもらえなくても・・・・わたし、頑張って走ったデスー」

「言い訳するな!」

男は忌々しげにヘルを壁に向けて叩きつける。
「でじゅっ」

その腹に蹴りをいれ、うずくまることもできずにフルフルと震わせることしかできないヘルを見下ろす。

「苦しいか?だが俺だって辛いんだよ・・」

男は並々ならぬ実業家であった。
競争石の権利を買えるのだからそれは億に届く収入がある。

だが、数千万の金をあぶく銭として余裕で溶かせるほどの権力があるかと言えばそうではない。

レースに出場させて勝たせ、名声を得る。負ければ特別な玩具として弄び苦痛を与える。

その二つの楽しみを満たせるからこそ、ヘルを飼っていられた。

男のヘルに対する虐待は小一時間は続く。

その間にこの牧場の職員がヘルのために駆けつけることはしないし、
ヘルの偽石は既に取り出され、栄養剤に付けられて砕けないようコーティング処理も済ませてある。
こと延命させることにかけては抜かりなかった。

「で・・・でず・・・でずず・・・」
痛みで這いまわることもできず、うつ伏せのままヘルの両目から赤と緑の涙が溢れ出す。

泣き真似をしている時のような透明な涙でなく、

おろろーん おろろーんと大げさに憐れみを誘うこともできないほど、ヘルの心と体は消耗していた。
その姿を男は無言で見下ろしていた。

「・・・・ヘル?あまり俺を失望させるな。お前には金がかかっているんだ」

ここが男の心理の歪なところであった。
男は心から自分の飼い競争石に勝ってほしいと望み、そうできる可能性の高い個体を競り落とした。

そしてヘルの勝利に願いを賭けた。
そしてヘルはその男の願いに応えてきた。

最初の頃には五割に届かない戦績も今では七割強。
菊孔賞に参戦できる権利を有するまでになったのだが、男はまだ不満であった。

それでも十割に届いてない。九割が最低ラインだろうと男は厳しいハードルをヘルに押し付けていた。

そしてそれに応えられず、他人の期待を踏みにじるバカは嫌いだと男は思った。

だからそのための罰を与えることを男はいとわない。

平気でヘルの餌を減らし、トレーニング時間を増やし、心身ともに痛めつける虐待を行える残虐性と
ヘルはもっと勝てるようになるかもという願いが同居している。

「ヘル・・・・お前は俺に贖罪しなくてはならない。どうすれば良いか分かるよな?」

男はタバコの一本に火を付けると、それを一吸いして煙を吐き出し、無造作に床に捨てた。

「どうするんだったか覚えているか?」

「はい・・・わかるデスー・・・・」
未だまともに動かすこともできない体を必死で引きずるように這って、ヘルは落ちたタバコの傍に寄った。

そしてやっとの思いで状態を起こすと、そのタバコの熱も恐れずにそれを掴み、あろうことが迷わずに
その火を自分の胸に押し当てたのだ。

「でじゅぃやああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

ジュっと何かを焦がす音、黒い煙をプスプスとあげる。
根性焼きを自らに課すヘル。
それはまさにやり慣れていたようだ。
両の目から血涙を流すヘルを見て、男は初めて笑顔を見せた。

「いいなヘルコンドルプワサ?
死を呼ぶ大いなる怪鳥の羽ばたきよ。お前には期待しているんだぜ。

次の菊孔賞、死ぬ気で食らいついて勝て。それができない時は・・・・死ね 」
そう冷たい言葉を浴びせかけ、その日のヘルは開放された。

〈私は嫌デスー・・・・どんなに苦しくても死ぬの嫌デスー・・・・・・だから今回だけは諦められないデスー!〉
今までと違い、明確に負ければ殺すと宣告されたヘル。

それもきっと男のことだ。ありとあらゆる拷問を繰り返され、想像を絶する苦しみの後に死ぬのだ。

故に最後の瞬間のその時まで、彼女は諦めずに駆けるしかなかった。



そして、ウカも最後の瞬間まで闘志を燃やし勝利を信じて駆け抜けようとしていた。

「マテちゃん・・・やるデスー・・・どこからあんなスタミナが湧いてくるデスー?
後ろからも強いプレッシャーが来るデスー・・・・今までになく、怖いデスー」

前方のマテと後方から追い上げんとするヘル、その二つの圧を賢い個体であるウカは逃さず感じ取ってしまう。
「でも私だって負けないデスー! ご主人様にカッコイイ所見せるデスー!」

ジャイアントツウカ、という名前はご主人様と仰ぐ華麗堂 夏から付けられた。

夏はウカをとても溺愛し、こまめに石房に顔を見せてはウカに触れる時間を作っていた。

無論、それは愛情を与えた個体の方が伸びが良い、という迷信にも似た情報を教育方針として取り入れた故であり、
本当の愛情を持っていたのかは不明である。

だがウカはその愛情が本物と信じていた。
その愛情に応えようと努力した。デビューしてからも結果を残していた。
何故なら

「でびえええええええええええええ!!ご主人様!許してデスー!私もう負けないデスー!」

そこには一匹の競争石がいた。
白衣をきた職員に持ち上げられて拘束され、その職員の手にはシリンダーになみなみとピンクの薬品が
満たされた注射器が一つ。それをその競走石に流し込む。

「イヤです!死ぬの嫌デス!その綺麗なお薬入れないでデスー!ママ!ママア!!助けてデスー!私イヤー死にたくないデスー!
しにた・・・」
パキン
そいつは薬を流し込まれると偽石が瞬時に砕け散り、絶命した。

そのピンクの薬は偽石粉砕剤といい、文字通り体内に流されて実装の血液と混ざると化学反応を起こし、
偽石を砕いてしまうのだ。

夏が用済みとなった飼い実装や競争石を処分するのよく使う薬だった。

ウカもその薬を使って仲間が処分されていくのを何度も目にしてきた。

夏お嬢様は自分には優しいけど、自分以外にはとても厳しい人だと理解していた。

だからこそ、なおウカは夏を愛した。

自分を大切にしてくれる、他の実装達と違って殺さないでいてくれるご主人様を。
愛して、自分に対するご主人様の思いをウカは裏切ってはならないと考えた。

〈だからこそ私、負けられないデスー!ご主人様、マテちゃん見てるデスー!私は絶対に勝つデスー!!〉

その強い思いがウカを突き動かす。
ウカもマテに倣って、自分の限界を信じることにした。
もうペースを守っていられない、自分の限界を超えるのだ、越えてみせるのだ。

そうして勝利を大好きなご主人様に捧げるデスー!

ウカの速度が増す、マテとの距離が詰まり始める。

「おっとここで速度を上げ始めました一番ジャイアントツウカ、ただいまトップを走る七番マテナイフクコナイとの差、
0,5実身差まで迫っております、ラストスパート残り10m地点を通過しました」

「勝つのはマテナイフクコナイか、ジャイアントツウカ、はたして勝利の行方は・・・・」

怒涛の追い上げに観客の熱狂も頂点に達しつつあった。
息をのみ、怒声や歓声を上げることよりもその決着の瞬間を見逃すまいと、
むしろ口を閉ざす観客が目立ち始める。

「ロリマンメスビッチ帝国〈組織名〉に栄光あれえええええええええええええええええええええええええええええええ!」

どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

ハラボテエフェジー砲が発射されたのは、まさにその時であった。


「えっ!?」
「でべっ?」
「えっ????・・・・・」

その発射の瞬間、三方向から声が上がる。

1人は砲を発射させた構成員だ。
一人は離れから中継で確認していたロマリッソだ。
そして最後はハラボテエフェジー本石だ。

砲撃の瞬間、その威力に耐えられずにハラボテエフェジーの体は爆発四散したのだ。

その頭部は空高くに飛びあがり、その最後に残った空気が音となって最後の一声を発せさせた。

「あら・・・・・うっかりしたねぇ。
砲撃の威力を上げることばかりに気を取られて本体の強度のことを考えるのを忘れていたよ。
これでは使い捨ての兵器で終わって、費用対効果のバランスが悪いねえ、失敗しっぱい、ハハハハハハ」
そういってロマリッソは笑った。

成功に失敗はつきものというように、また次頑張れば良いやというように。

だがただでは終わらない。蛆ちゃん弾は無事発射されている。

「レフー!早いレフー綺麗レフー!!」

産まれて初めて目にする外の風景。それが超高速で目の前を流れていくのを蛆ちゃん弾は感動していた。

このまま飛び続けてゴールを通り抜ける。それが自分の目的だと蛆ちゃんも理解していた。

蛆ちゃんは体をピンと伸ばし、より風の抵抗を受けないように飛ぶ体制を既に作っていた。

高速で蛆ちゃんがゴール迫る。

〈負けないデスー・・福の神様・・・どうか見ててほしいデスー・・・・・・〉

負けじとマテは最後の力を振り絞って駆けていた。その最後に胸に抱いていたのは、きっと産まれて初めて試みる行為、

神への祈りだった。

〈ワタシ頑張ったデスー・・・・きっと神様のお手手掴んでみせるデスー・・・・
だって私の名前はマテナイフクコナイ!
神様がくるのを待てずにお迎えに行ける子ってお名前デスー!!

だから神様・・・・一つだけお願いデスー・・・・神様の元までたどり着けたら、私のこと、撫でてほしいデスー・・・・〉
そう願った瞬間のことだ。不思議な風が吹いた。

ファサー

その風は強く、横殴りで、観客も含めた多くの人々が顔などを手で覆った。

ふいな暴風が蛆ちゃん弾の弾道を大きくそらせ、本来ならゴールテープを切れるはずだった所が、大きく上に反らされた。

「レフー?」

何かがオカシイということはわかる。だがどうおかしくなったのかわからない。

わからないまま蛆ちゃんはゴールの外枠に顔面から突撃し、血の花を咲かせた。

この世に産まれ出でて、外の世界を眺められた期間ざっと3秒もあっただろうか。

だが被害はそれだけでは終わらなかった。

血の花を咲かせた蛆ちゃんの体液が飛び散り、それが落ちる。

その内の一滴が、ウカの片目にかかった。

「で!?」

ボン!とウカの腹が膨らみ、強制出産状態に入る。

そしてその股の間からワラワラと小粒の未熟蛆を流し始め、ウカの戦いは潰えた。

そしてその未熟蛆をうっかりと踏み潰したヘルはそのぬめりと体液で足を取られて、転んだ。
「でびゃっ」

後頭部を強く打ち付けたヘルはその衝撃で首の骨を折ったらしく、パキンした。

そしてゆうゆうとマテがゴールテープを一番に切ることになる。

「ゴール!勝ったのは七番!マテナイフクコナイ!!」

マテは晴れ晴れとした心持でウィニングランを始める。

コースの外周をテチテチと走り、観客達にその雄姿を見せるのだ。

自分にカメラが向けられていることに気づく。スマフォから専用チャンネルで流される映像を取ろうと局のカメラや
大小さまざまな人々の視線が、カメラがマテに注目がそそがれる。

それを気分よく味わったマテは、ぴたりと足を止めた。

ある特技を披露しようというのだ。

マテは四つ足の状態から両手を上げて立ち上がり、その両手を目いっぱいに伸ばすと
「テッテレー!!」とアピールをしたのだった。

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!立った!立ったぞ!!」

「すげー!競争石って立ち上がれるのかよ!初めてみたすげーよ!!」

そう、本来の競争石として育てられる実装は四つ足に慣らされて立ち上がれなくされる。

だが、マテは違った。

四つ足で慣らされてもなお、彼女は二本足で立ちあがることができる。
これは立派な特技といえた。

その一芸を見せてまた観客の熱気と歓声が巻き上がる。
それを受けて一層、マテは嬉しい気持ちでいっぱいになった。

ふいにまた強い一陣の風が吹く。

その風はマテの体を強く撫でるようで、ふっとマテは何か大きな手で撫でられたような錯覚を覚えた。

________よく頑張ったのお・・・マテナイフクコナイ

こうして、一つのレースは幕を閉じ、この日のレースもまた、伝説の試合として語り継がれることとなる。

END


エクストラステージ

そうしてレースが終わって間もなくである。

過激な出産を終えてボロボロになったジャイアントツウカは別室へと通された。

片目の血はぬぐい落され、もう強制出産は解除されたが、ウカの体は瀕死である。

「でぇ・・・でぇ・・・・ご主人様・・・どこですー?お会いしたいデスー」

近くには白衣をきたスタッフが何かごそごそと準備を進めている。

きっと自分の治療をしてくれようとしてると思ったウカはそちらをジッ見つめながら、頭は夏の事でいっぱいだった。

〈謝らないと・・・・次は絶対に勝つって約束して・・・・いっぱい練習も頑張るデスー・・・・〉

白衣のスタッフは何かを手を持つとクルリと振り返る。
その手にはピンクの薬が入った注射器が握られていた。

「で!?」

何でですー?私…ご主人様のお気に入りのはずデスー・・・・なのに何で!?

怯えつつも、部屋の周囲を見回す。
そうだ、きっと自分以外の競争石がここにいるんだ。
あの薬はそのダメな奴に対する薬で私に使うものではないに決まってる。

だが、この部屋をいくら見回しても、ウカ以外の実装が室内で見つかることはなかった。

そっと優しく、スタッフはウカを持ち上げた。

「で・・・でぇ・・おろろーんおろろーん・・・いや・・デスー・・・・いや、なんで私が…

助けてほしいデスご主人様・・・・・なんで、私が」

身を必死にイゴイゴとよじるが、出産の疲れで思うように体を動かすことができない。

それでも最後の瞬間までウカはイゴイゴとしていたのだが、安々とスタッフはその針をウカの背中に差し入れ、
ピンクの薬を流し込むのだった。



「・・・・ええ、ええ、はい、そうなんですお爺様。申し訳ございません・・・・私が至らぬばかりに

ええ・・・次こそはきっと、お爺様のお気持ちに応える競争石を育ててみせます。それでは・・・・」

静かに夏は電話を切ると、傍に控えていた従者の五代にそれを預けた。

「旦那さまは、なんと?」

五代がそう尋ねると夏は何も言わずに空を仰ぎ見て、一拍

「別に?私のお爺様よ?・・・何も言わずに許してくれて、また次の競争石を買ってくださるそうよ。」
「それはよろしゅうご・・」
「ただ、あの役立たずのゴミムシは自分達でしっかり処分しなさいって、それがお前の宿題だっていわれたわ」

少しむくれて見せる夏。
それからは淡々と事後処理を進めた。

次のレースが始まる前に、特別場内アナウンスが流れる。

先ほどのレースでジャイアントツウカは負傷した。そして検査の結果、止む無く安楽死の判断が下されたと客たちに伝えられ。
多くのファンが落胆し、涙を流した。



エクストラステージ2

元来、競争石というものは前を走る石を追い抜くことを教え込まれており、性格の荒い石が多いという。

だが、マテナイフクコナイは少し違った。

確かに一時は例にもれずに気が荒く糞虫気質を感じたのだが、次第にそれは治まっていた。

菊孔賞で優勝した後はドドンとファンが増え、牧場には年間百人ほどのファンが訪れた。

それに対して、マテは会いに来たファンによく頭をなでるのを許し、受け取った差し入れを美味しそうに食べ、
よくファンサービスのできる石だったという。

誕生日の五月22日には、三十箱ものリンゴやコンペイトウのプレゼントが届いた。

だが、あくる年の七月31日朝のこと

マテは住まいから出てきて草の上に座り込むと、そのまま静かに息を引き取った。

飼育員さんは「最後までみんなに姿を見せてあげるなんて優しいな」と思ったそうな



エクストラステージ3
それは数十年の月日が過ぎたある日のことだ。

「よおとしあき!お前アレ始めたんだって?」
何か中学生の集団が集まってスマホを見せあっている。
「誰か推しの子見つけたのか?」

それはとあるゲームについての会話だった。そのとしあき少年以外の仲間は全員
そのゲームをしてるというのに、としあきだけが出遅れていたのだが、
この度、無事にデビューしたのだという

「ちなみに俺の推しはコイツー」

そういって友人の一人は画面を見せる。

それは実装人イゴイゴダービーといい、過去に競争石としてブレイクした名石達を人気イラストレーターの手で
美少女化させ、育成し競い合うというゲームであった。

その友人が見せた画面には、ジャイアントツウカが写っていた。

「ああ、凄い可愛いよねその子。ソックスの色が左右違ってて元ネタ再現なんだっけ?」

「そうそう!怪我のせいで安楽死させられてさ、可哀そうではかなげで、そして強いんだよ!!」

そう強く力説されても、始めて間もなくのとしあきにはその魅力を理解するにはまだ早かった。

はかなげだの早死にだの、いささかとしあきにはダークなワードに感じだ。

「おれだったら断然コイツだわ。ホウカイメイオー」
「「ああそれいいよな」」

現在環境を握るとされるその名キャラに誰もが納得する。

「おれキングハメハメあはーん」
「「ああ・・・・・納得だわ」」

デザインが巨乳系でその異常なバストサイズでエロ画像が大量に量産されたことで知られるそのキャラを好む
プレイヤーに対する視線は冷たい。

「べ、別に良いじゃんかよ!」
「で?としあきはどのキャラが気に入ったんだ?」
華麗にスルーされた。

「え・・えと、僕はまだよ分からないけど、
この子。チュートリアルガチャで引けたんだ」

それは、チュートリアルガチャでさえ確定保証のないSSRキャラであり、pickupもされていない現在
ひける確率0.019%のある意味レアキャラであった

「「おおおおおおお!!」」

一同、食い入るようにとしあきのスマホに見入る。そのキャラはそう特別ではないが、

なにぶん排出率の低さから、まだグループの中の誰も手に入れていない石であったのだ。

そのキャラの名前の隣にマイクマークが付いており、それをタップするとサンプルボイスが再生される。

としあきはそれを皆に聞かせようと流した。

「テッテレー!!」

それはあの日のレースの最後に観客に向けて披露したあの一芸の掛け声と同じであった。

「これからよろしくな。マテナイフクコナイ」



エクストラステージ ファイナル

ここは、天界。八百万の神々が住まう世界であり、時にある程度の功績を上げた人間や動物達も招かれ、
一時の安らぎを得る場所でもある〈はずである〉。

そこには福の神様の御殿が建っていた。

ジュウウ

その奥殿から、何やらとても香ばしい良い匂いが漂ってきた。

「でじゃあああああああああ!!やめるデス!神様!!私のお手手食べちゃダメデスー!!あんよ焼いちゃイヤデスー」

そこには裸に向かれて頭だけになったマテの霊体が、自分の体を鉄板でジュージューと焼かれ、貪り食われているのを
無理矢理眺めさせられていた。

食っているのは勿論、福の神さまである。

「うむうむ、旨い!この肉汁がたまらんのお、歯ごたえも弾力があって、うむうむメシが進む進む!!」

福の神は大喜びしながらマテの切り身を次々と焼いていき、タレに付けて白米の上に乗せ、食べ進めていた。

「おろろーんおろろーん。。。どうしてデスー。どうして福の神様、わたしをこんな目に・・・・」

マテは血涙をポロポロと流し、自分の体だったものを咀嚼する福の神を恨めしそうに見つめていた。

「(´~`)モグモグモグ・・・そんなの決まっておるじゃろう。
わしら神々はそうやって生き物を導き、育て、そうして熟成させて死んで天に召されてきた時、その命を頂くものじゃ。

でなければお前のような実装石に加護など与えるものか」

そういいつつ、福の神は箸の先でマテの頭部を強く押し付けた。
するとずぶりと箸の先がマテの中に沈みこみ、そのまま箸先でマテの脳みそをクチャクチャとかき混ぜてみせる。

「で・・でべべ?てぶぼ??ぼべびびび!あびゃははははははは!!」

泣いたり怒ったり笑いだしたり、箸の当たり方次第で幾重にも反応を変えるマテ。

思う存分脳みそシェイクを終えた福の神はまた視線を鉄板の上に戻すのであった。

「まあしばしの辛抱じゃマテナイフクコナイ。
お前さんはこれから、夜に寝ては肉体が再生し、朝目覚めるとわしに食われることになる。

その味に飽きたら開放してやる故、それまではこの旨い肉をたらふくご馳走してもらうぞ」

そういって、神はまた一切れ、肉を頬張るのだった。

「おろろーんおろろーん・・・・」

やはり実装石には神はいないようである



ほんとにEND

どうも、ぶたやろうです。
まだまだ暑いですね。水分補給大切ですね。
本当はこの話、今の二分の一ほどのボリュームの予定だったのですが、なぜか伸びて伸びて伸びました。
楽しい話ならともかく、この程度のストーリーって読み手はどう思うだろう?
と心配にもなりましたが、その分、書きたいことを全て出し切ったという実感があります。
もしよろしかったらコメントや足跡残して頂くと励みになりますので、お願いいたします
では運がよければまた次回でお会いしましょう  ノシ


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1 Re: Name:匿名石 2023/10/28-07:21:53 No:00008176[申告]
まあ競争石として生を全うできたし福の神にも会えたから幸せな実生だったんじゃないですかね…
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