愛しても、いいですか?2 ひろあきは、悩んでいた。 目の前に居る、一匹の蛆実装。 今は身体を綺麗に拭かれ、暖かな毛布の上ですやすやと眠っている。 どうやら身体も温まってきたようで、その寝顔はとても穏やかだ。 良かった、発見が早かったみたいだな。 ひろあきは、ようやく安堵の息を吐く。 だが…落ち着いたという事は、そろそろ…アレが来るぞ。 ぷり。 ほら、来た。 早速やりやがんの。 仕方ねーなまったく。 あらかじめ準備しておいた厚手のガーゼで、糞を拭き取ってやる。 それがくすぐったいのか、蛆実装は、寝ながらもじもじと身体をよじった。 ぷり。 ぷりぷり。 ぷりりり。 第二弾。 第三弾。 第四弾は、量が多かった。 おのれ、こやつ、思ったよりも出しやがる。 ぬぐ、用意したガーゼだと足りないかな。 心の中で文句を言いながらも、丁寧に糞を拭き取り、洗浄してやる。 ひろあきの額には、先程まで流れていた冷や汗が光っていた。 ひろあきがこの蛆実装石を拾ったのは、ついさっきのことだ。 帰宅途中、近所の公園の近くで、空の小瓶を見つけた。 ごく普通にある、栄養ドリンクの空瓶だ。 昔、生卵を混ぜて飲むCMを見て、目をひん剥いた記憶が蘇る。 小瓶は、先ほどから突然降り出した雨に打たれ、横倒しになっていた。 その口から、何か妙なものが覗いているのに気づく。 ひろあきは、嫌な予感に駆られてその小瓶を取り上げた。 小瓶の中には、蛆実装が居た。 パッと見、十匹近くは居ただろうか。 恐らく近所の子供が、公園の野良実装から奪い取った蛆を詰めて遊んでいたのだろう。 そのまま放置された蛆達は、逃げ場のないまま雨に溺れる運命にさらされた。 口からはみ出ていた何匹かは、とっくに溺死しており、顔色が真っ青を通り越して紫色になっている。 まったく、酷い事をするもんだ。 傘を背負いながら屈み、溺死した蛆実装達を、手の中に受け止める。 すでに動かなくなった彼女等を、せめて埋葬してやろう。 だが、公園に埋葬したらいずれ野良実装達に穿り出されてしまうかもしれない。 仕方ない、これも何かの縁だ。 自宅の庭に埋めてやるかな。 ハンカチを取り出し、その上に蛆実装の死骸を乗せる。 それを優しく包むと、ひろあきは、岐路を急いだ。 レフー ふと、鳴き声が聞こえたような気がした。 はじめは、ふりしきる雨の音のせいで何か別な音を聞き間違えたのかと思った。 レフー もう一度、はっきりと聞き取る。 鳴き声は、ハンカチの中から聞こえてきた。 慌ててハンカチをめくる。 無数の蛆実装の死体の中、たった一匹だけ、もぞもぞと身体を動かしているのが見えた。 うわ、生きてる奴がいたのか! こりゃ大変だ! 改めてハンカチで包むと、ひろあきは、雨に濡れるのも構わず、全力疾走した。 スーツは雨でびしょびしょになり、しかも、途中で傘を放り捨ててしまったせいで、ひろあきは 全身ぐしょ濡れになって家に戻るハメになってしまった。 濡れたジャケット、ワイシャツやスラックスを半泣きでまとめ、明日のクリーニング行きに決めて隔離すると、 ひろあきは、あらためて蛆実装を眺めた。 体長は約3センチ強。 この蛆実装は、どうやら生まれてそんなに経っていないようだ。 ひろあきが身体を拭いた時、身体に溶け残った粘膜が付着しているのに気付いた。 恐らく、出産直後に誘拐され、瓶に詰められたのだろう。 幸い、顔部分の粘膜だけは母親に舐め取ってもらえていたのかもしれない。 そのため、呼吸が可能な状態で、なおかつ身体は粘膜で守られ、体温低下が和らいでいたのかも。 その証拠に、他の死んでしまった蛆実装のうち、同じくらいのサイズのものは、皆顔にも粘膜らしき痕跡が残っている。 それよりやや大きめな、いわゆる生誕直後に起こる第一次成長段階に達したと思われる蛆実装は、身体の どこにも粘膜の痕跡がない。 もしひろあきの予想が当たっているならば、助かった蛆実装は4番目の子供のようだ。 残念ながら、全部で九匹いたうち、残り八匹は全部死んでしまっていた。 出来るならもう二、三匹助けてやりたかったのだが、全滅よりはましなのかもしれない。 雨が降り出してそんなに時間が経ってなかったというのもあるだろうが、あんな状況で、一匹でも生き残っただけ まだマシなのかもしれない。 もう一度、蛆実装を見つめる。 さすが実装石。 まだ蛆実装とはいえ、回復が早い。 いつのまにか、寝息も軽やかなものになっている。 体格から、相当な未熟児のようだ。 これは、回復したからって、すぐに親元に返せるかどうか、微妙なところだな。 だが、親はきっと心配しているだろうな。 もし、親が無事だったらの話だが。 仕方ない……最悪の場合、長年の禁を破るか。 ひろあきは、棚の上に置かれた水槽の中に佇み、こちらを見つめている実装石に向かって、小声で囁いた。 「ごめんよ、アンリ。俺、こいつの面倒見る事になるかもしれないわ」 雨が上がった後、自宅の庭(と言っても、アパートの一室の窓の周りの小スペースだが)に八匹の埋葬を済ませた ひろあきは、実装リンガルを手にした。 蛆実装は、ぐっすり眠っている。 自分の勘では、当分目を覚ますことはないだろう。 念のため、すぐ傍に半練状の実装餌を、さらに水で溶いたものを置いておく。 目が覚めた時に空腹だったら、これに口を付ける筈だ。 室温も整え、準備万端。 ひろあきは、公園へ向かった。 数分後、公園に辿り着く。 子供を捜して彷徨っている実装石がいないか、探してみる事にした。 と言っても、公園の中にはどれだけ多くの野良実装が居るかわからない。 いちいち一匹ずつ尋ねて回るわけにもいかない。 やむなくひろあきは、長年使用していなかった、対実装石用の秘密能力を使う事にする。 実装リンガルをONにして、こちらに興味を持ち近寄り始めた実装石達に、少しだけ大きな声で呼びかける。 『プププ、なんデスかその格好! ズブ濡れのみっともない姿で、よくまあ人間サマの前に姿を見せられるものデス。 恥を知るデス!』 「デジャアアアッッ!!!」 早速、野良実装達が、反応する。 実装リンガルで効率よく会話を展開するため、ひろあきは姿勢を低くした。 『おいお前達。みすぼらしい格好でつっ立ってないで、私の話を聞くデス』 これは、決して野良実装の台詞ではない。 ひろあき自身の言葉だ。 以下、野良実装達の翻訳言語。 「デジャアっ! なんデスか唐突に! この糞人間はっ!!」 「生意気デス! 奴隷の分際で、私達をバカにしてるつもりデス!!」 「立場というものがわかってないデス」 「おいニンゲン! とっととおいしい物を食わせるデス! ボヤボヤしてると食っちまうデス!!」 『ヒヒヒ、お前達如きに食われるほどおちぶれてないデス〜♪ そんな事よりお前等、私の質問に答えるデス』 「いきなり何デス?!」 「それが人様に物を尋ねる態度デスか?!」 「ぐひ〜、クソナマイキなニンゲンです! きっと社会不適合で何も出来ない、オロカモノの代表みたいな奴に 決まってるデス!」 「おいニンゲン、お腹が空いたデス。金平糖を出すデス。ないなんて言わせないデス」 四匹の成体実装が、しきりに罵詈雑言を浴びせる。 だがひろあきは、その反応に怒るどころか、逆にニヤリと微笑んだ。 予想外の笑顔に、野良実装達の動きが一瞬止まる。 『社会不適合の代表生命体であるところのお前等が、どのツラ下げてエラソな事言い出すデスか。 物を尋ねる態度を問う前に、尋ねられる態度を知るデス。 ニンゲンとみると媚びと脅迫と要求しか出来ない糞蟲のお前等に、高貴な私がわざわざ直答を許してやっているデス。 むしろ感謝すべきデスプププ♪』 「な、な、な…?」 「こいつ、本当にニンゲンデスか?!」 「ニンゲンだったら、ワタシ達の可愛さにメロメロテッチュ〜ンってなるか、怒り出してバカみたいに暴れるだけデス。 こいつは人の皮を被った、超巨大実装石デス。ワタシにはわかるデス」 言いたい放題だが、そんなものでひろあきの笑みは崩されない。 にんまりと不気味な笑顔を浮かべたひろあきは、さらに容赦ない悪態を叩きつける。 『ニンゲンじゃなかったら何だと言うデスか? お前等の仲間? 超巨大? さすが、オガクズ並の発想しか出来ない 低脳単細胞超絶低級最悪汚物幻滅生命体のお前等らしい発言だと思うデスけどね〜♪』 本能により、悪態つきに関してはどんな生物よりも秀でている筈の野良実装四匹は、人間であるひろあきの罵詈雑言に、 完全に押されていた。 ひろあきが虐待行為に走るか、愛護的行動に移るかと、牽制しながら様子を窺っていた四匹は、予想を大きく覆す反応に、 いつしか言いようのない恐怖心を覚え、数歩後ずさっていた。 だが、逃げる事はできない。 逃げた途端、何をされるかわからないという、防衛本能も働いていたのだ。 野良実装達のやかましい文句が完全に止まったところで、ひろあきは息を吸い込み、本題に入った。 『質問があるのは本当デス。この辺に、生まれたばかりの子供をニンゲンに盗られた親実装はいるデスか?』 「子供を盗られた?」 「随分マヌケな親実装デス」 「普通、ニンゲンなんかにみつからないように産むのがセオリーデス」 「そいつを教えたら、何か食べ物よこすデスか?」 四匹目の要求に、ひろあきはニッコリ微笑む。 『教えてくれたら、ここに持ってきた金平糖、お前等全員にもれなくプレゼントしてやるデス!』 「ひ、一袋?!」 「ドヒーッ、ものすごい量デス!」 「デ、デチィィィ——ッ!!」 「ブクブクブク」 ひろあきが懐から取り出した巨大な袋を見て、四匹は卒倒しそうなほど驚いた。 否、言いだしっぺの四匹目は、本当に泡を吹いて失神してしまった。 この中には、安物だが合計500グラムほどの金平糖が、小袋に分けて入れられている。 元々公園の実装石に分けてやるつもりで、以前から用意していたものだ。 『毒じゃない本物の金平糖デス。ほら、私も食べてみるデス』 小袋から一個取り出すと、それを口の中に放り込み、満面の笑顔を浮かべる。 そんなひろあきの様子に、三匹は、ダラダラと涎を垂らし始めた。 一個ずつ取り出し、四匹の口の中に押し込んでやる。 三匹は声を上げる間もなく甘味にのた打ち回り、四匹目は、瞬間的に飛び起きた。 『それは前金デス。残りが欲しかったら、とっとと探してくるデス! もちろん、見つけたら私をそこに案内するデス!!』 「テチィーッ!!」 「わ、わかったデスっ! だ、だからせめてもう一個」 『調子に乗るなデスっ! ひろあき真空デコピンっ!』 野良実装の顔の直前で、デコピンを空打ちする。 微かに発生した風圧におののき、野良実装の一匹は、後ろにひっくりかえってパンコンした。 『あの公園の時計の針が、十分経過するまで! それまでに見つけられなかったら、お前達全員糞抜きして裏返して 炭火でコンガリ焼いて塩振って、実装串焼きにして他の連中に振舞ってやるデスっ!!』 「デ、デピィィィッッ!!」 『わかったらとっとと捜しに行きやがれデス、このノロマ、ウスラトンカチ、クソタレ、ヨクバリ共っ!』 「デギャアァァッッ!!」 「——ふう。これでよしと」 リンガルのスイッチを一旦切り、ひろあきは、腰を上げた。 久しぶりに、自身の特殊能力を使用した。 手にしている大量の金平糖は、一応すべて本物である。 特に、何か仕掛けがしてあるわけじゃない。 ひろあきは、口調こそあんなではあるが、虐待派ではない。 無論、実装串焼きにしてやるつもりなど、さらさらない。 ただ、奴等と会話していると、脅し文句が自然に口を突いて出てくるのだ。 ふと、背後に気配を覚える。 少し離れた所に、あの四匹とは別な実装石が居る。 先ほどの罵詈雑言の連投に、何事かと様子を見に来たようだ。 丁度いい、こいつらにも頼むか。 ひろあきは、再びリンガルのスイッチを入れ、姿勢を低くした。 『そこのお前達、ちょっと話があるからこっちに来るデス』 「…ニンゲンさんに近づいたらアブナイって、ママが言ったテチ」 「そうテチ」 どうやら姉妹のようだ。 無防備に近づいて来ない上、反射的に媚びを売らないところをみると、結構賢い連中かもしれない。 ひろあきは、先ほどの態度とは違う、優しい雰囲気で話しかけた。 『じゃあ、そこに居てもいいから聴くデス。実はこの公園に、子供達を盗まれて悲しんでるママ実装が居るかもしれないデス。 お礼をするから、そのママ実装が居るかどうか、捜して教えてくれないデスか?』 「テチ?」 「捜してどうするテチ?」 『そのママの子を保護しているデス。返してあげないと可哀想デス』 「保護って何テチか?」 『死んじゃったり、ギャクタイハのニンゲンに殺されたりしないように、私が守ってるデス』 「テチ!」 「ニンゲンさん、アイゴハテチ?」 『そんな事はどーでもいいデス。はやくしないと、赤ちゃんが寂しがって死んじゃうかもしれないデス。お願いだから、 力を貸してくれないデスか?』 「テチ〜!」 『わかる限りでいいデス。無理は言わないデス』 「わかったテチ。捜してみるテチ」 「ワタチもテチ」 『よろしく頼むデス』 この子供達には、金平糖の袋は見えないようにする。 ひょっとしたらすでに気付いているのかもしれないが、あえて報酬の話はしないでおく。 もちろん、戻ってきたら報酬は渡すつもりだ。 ひろあきは、近くのベンチに座り、吉報を待った。 さっきまで雨が降っていた事を失念していたので、ひろあきのお尻は、これ以上ないくらいびしょびしょになった。 でも、立ち上がると濡れた服がヒップをなで回してしまいそうなので、あえてそのまま座り続ける事にした。 十分を過ぎ、十五分を過ぎ、いい加減イライラし始めた頃、ようやくさっきの四匹がやってきた。 ほうほう、集中力がない実装石にしては、よくやったものだ。 「見つけたデス! 見つけたデス!」 「ワタシもミツケタデス! だから早く金平糖渡すデス!」 「ワタシなんか三匹も見つけたデス」 「見ろデス! こんなに大きな蛆ちゃん拾ってきてやったデス!」 「レフ〜♪」 どっから持ってきたんだよ、ソレ。 四匹目には、ひろあきデコピンを直に食らわせる。 もっとも、ものすごーく手加減してだが。 『お前等、嘘ついてもすぐわかるデス! 本当なら、その親の所まで連れて行くデス!』 「デヒッ?!」 『金平糖が欲しくて嘘ついてるとわかったら、その場で服と髪と生皮剥いでやるから覚悟しとくデス。 それとお前! その蛆ちゃんをちゃんと返してくるデス!』 「デ、デス〜」 『お前の生皮剥ぎは楽しそうデス。串焼きにする前に、仲間たちに一かじりさせてやるのも悪くないデス〜♪』 「ヒ、ヒ、ヒ、デヒ〜ッ!!」 プリプリブハッ 『あ〜らら、やっちゃったデス』 ここぞとばかりに、あざ笑ってやる。 他の三匹プゲラッチョと笑い始めるが、こちらの咳払いですぐに止める。 まあ期待はしていなかったが、こんなものだろうか。 どうやらこいつらの態度から判断するに、見つけてはいないらしい。 本当に見つけたなら、こちらが否定した時点で絶対食ってかかるはずだ。 こいつらも、それなりにプライドは高い。 本当の事を言ってるなら、それを否定されるとムキになる性質もわかっている。 もっとも四匹目は、無理矢理でっちあげたようだが。 パンコンしながらも、四匹目は蛆実装を抱えて、元来た道を戻っていった。 なんだ、素直な所もあるんだな。 三匹は、何か言いたそうな態度でじっとこちらを眺めている。 まあ、言いたいことはわかる。 報酬の請求だろう。 結果はどうあれ、見知らぬニンゲンのために動いてくれたんだからな、それなりの代価は支払わねばなるまい。 『ホラ、捜してくれた礼デス』 「デッス〜ン♪ 待ってたデス〜」 『ただし! 嘘ついて報告したんだから、報酬は大幅減額!』 「デ、デチィィィィッッッ!!!」 そう言いながら、大袋の中に収めておいた、金平糖の小袋を取り出す。 小袋といっても、中身は人間の大人が軽く握ったくらいの量がある。 こいつらの体格にとっては、かなりのボリュームの筈だ。 それを、一袋ずつ与えてやる。 元々これだけ与えてやるつもりだったが、大袋全部をもらえると思い込んでいた実装席達は、不満げな表情を浮かべた。 『報酬はその程度しかくれてやらんデス! ホラ、用が済んだからとっとと帰れデス! ソレを他の連中に気付かれたら、 大変な事になるから、せいぜい気付かれないようにコッソリ持ち帰るデス!』 「クソニンゲン! セコイデス! もっとよこせデス!」 「そうデス! 奴隷の分際でそんなに沢山金平糖を独占するんじゃないデス! お願いだからもっとワタシに与えるデス!!」 『これだからバカ共は始末が悪いデス。全部渡しても、お前には重すぎて持ち帰れないデス。ふんばっている内に 他の連中に気付かれて、食われて漁られてそれっきりデス。ついでにお前達も食われるデス。身の程をわきまえるデス!』 「ググ、デ、デス〜」 『また何かあったら私の頼みを聞くデス。そしたら、また色々持ってきて、貧しいお前等に恵んでやるデス。 ——ホラ、ありがたく頂いてとっとと帰れデスっ!』 そう吠えて、足を思い切り強く踏み鳴らす。 それに慌てた三匹は、蜘蛛の子を散らすような勢いで逃げ去っていった。 ああやって脅かしておけば、奴等は金平糖の存在を知られないようにするだろうし、他の金平糖を持っている連中と 奪い合いを繰り広げたりもしないだろう。 取り合いの喧嘩をしたら、そこから金平糖の入手経路を仲間に知られ、吊るし上げられるだろうからな。 それに、あの金平糖を食い尽す頃には、一緒に貰った連中の事情なども忘れているだろうし。 次に、さっきの姉妹仔実装がやってくる。 「ニンゲンさん、ごめんなさい、見つからなかったテチ」 『一生懸命捜してくれたデスか?』 「ワタチタチ、一生懸命捜したテチ。ママにも手伝ってもらって、周りのみんなに聞いたテチ。でも、子供がいなくなったって いう人はいなかったテチ」 これは信用できそうだ。 少なくとも、さっき四匹目が盗んできた蛆実装の親が該当するわけだが、十匹もの蛆実装をごっそり奪われてしまった ほどなら、もっと大騒ぎになって彼女達の耳にも入るだろう。 ひろあきは、念のため、家族ごと虐待派に殺された家族などが居ないかも尋ねたが、少なくともそんな騒ぎは、 しばらく起きていないという。 どこかの家族が丸ごと死滅となったら、そのパニックは大なり小なり仲間に伝染する筈だ。 だとすると、あの蛆実装は、どこから…? 『お前達、ご苦労だったデス。お前達のうちの近くまで送ってやるデス』 「テ、テチ〜…」 『今お前達に、このお礼を渡しても運べないデス。だからうちまで運んでやるデス』 「テチ?」 「テチーッ」 『悪い事はしないから安心するデス。お前達には感謝するデス』 二匹の頭を軽く撫でてやると、ひろあきは、袋を持って後を付いていった。 やがて、母実装と六匹の仔実装の居るダンボールハウスに辿り着く。 母実装は、ひろあきの姿を見るなり怒濤の如き威嚇をしかけてきたが、丁寧に事情を説明し、金平糖の詰まった小袋を 人数分置いてやると、いきなり態度が豹変した。 ひろあきは、『他の連中に盗られないように、気をつけて保存するデス』と念を押すと、一家に見送られながら公園を 後にしようとした。 「デスー」 ふと見ると、さっきの四匹目が、さっきまでひろあきの居た辺りをうろちょろしている。 そうか、あいつに報酬をやってなかったな。 まあ…いいか。 『食らいやがれデス、糞蟲めっ!!』 「デスーッ?!」 背後からこっそり近寄って、金平糖の袋で顔を覆い、押し付け、パニックを起こさせる。 これくらいの脅しは、ペナルティの範疇だろう。 すぐに解放してやるが、何が起こったのかまだ把握できないようで、転がってジタバタしている。 『それをなんとか無事に持ち帰るデス! ボヤボヤしてると仲間に見つかって横取りされるデスよ!』 「デ、デヒィィィッ!!」 袋を引っつかむと、四匹目は、こちらを見ようともせずに林の奥へ走り去った。 実に見事な逃げ足だった。 さて、急いで帰らないと。 蛆実装が目覚めていたら、ちとやっかいな事になっている筈だ。 ひろあきは、急いで家に向かう。 お尻のびしょびしょが張り付いて、ひろあきの形の整ったプリティなヒップをなで回す。 えらく気持ち悪かった。 (続く) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「愛しても、いいですか?」の執筆者です。投稿2作目です。 掲示板では、多くのご意見ご感想ありがとうございました。 前回は文章量を要約する事を意識しすぎたのか、描写を削りすぎてちぐはぐになってしまったので、 今回のネタは、その辺を自分なりに改善してみました。 タイトル通り、前ネタとは同一世界観の物語ですが、まったく異なる方向性にしてみようと考えてます。
