糞蟲しんぼ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 登場キャラ 俺:主人公。実装石の知識には疎い。 ミドリ:成体実装。「俺」のペット。 Yマオカ:大手新聞社員。実装通。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 実装ショップで一匹の実装石を買った。 独り暮らしは寂しかったのと、成体実装で安かったからだ。 帰宅途中で金平糖を一粒与えると、あいつは泣きながら食べていた。 ふふっ、そんなに嬉しいか。可愛いじゃないか。 ミドリと名付けたそいつを水槽に入れた後で、お待ちかねのお食事タイムだ。 ちょっといい実装フードを買ってきたので、喜んでもらえると思ったのだが…。 ミドリは餌入れを持って水槽の中をドスドス歩き回り、声を上げた。 『この実装フードを用意したのは誰デスゥ!?』 「え、いや、この家には俺しかいないし。俺が開封して皿に入れたの見てただろ?」 何だ何だ、何が気に障る事でもあったか? ミドリは餌入れを水槽の床に投げつけ、叫んだ。 『お前デスッ!?お前は首デスッ、出ていくデスッ!』 「何だいきなり、何怒ってるんだ?」 『やかましいデスッ!お前にはワタシを可愛がる資格はないデスッ!』 ミドリは激怒していた…何が何だか分からない。 まあ、明日になれば機嫌も直るかもしれないし、今日はこのまま寝かせよう。 * 「…と、昨日そんな事がありましてねYマオカさん。 それであいつ、今朝もフードを食べなかったんです。 帰っても食べてないようなら金平糖をやろうかと思ってますが」 俺は仕事の帰りに、知り合いのYマオカさんにミドリの事を相談していた。 Yマオカさんは新聞社に勤めていて実装石に詳しく、 紙面で『究極の実装石』という企画の担当をしている実装通だ。 「じゃあ、その実装フードをちょっと見せてください」 「どうぞ…ごく普通の実装フードです。崩れも少ない、それなりの品質のモノですよ」 俺は家から小袋に入れて持ってきていた実装フードを、Yマオカさんに見せた。 俺は虐待派じゃないし、ミドリに質の悪い実装フードを与えるつもりはなかった。 けどYマオカさんは、俺が見せた実装フードを前に鼻をヒクつかせて言った。 「…ふぅん、その実装石の言う通りだ。あんたにそいつを可愛がる資格はないよ」 「えっ、どうしてですか!? 綺麗な皿で出しましたし、昨日開封したばかりなんですよ!」 しかし、Yマオカさんの答えは予想外のモノだった。 「あんた煙草を吸うね?煙草を吸うなら実装石を可愛がるのは諦めた方がいい」 「煙草…えぇ、吸います。でもあいつが嫌がると思って室内では吸ってませんし、 餌をやる時は手を洗いましたよ」 俺はミドリを可愛がるつもりでいたから、その辺は気をつけていたつもりだった。 だがYマオカさんは言った。 「身体に染みついた煙草の臭いは洗っても落ちないし、 開封したり給餌する時に、その臭いが餌にも移る場合があるのさ。 その実装フード、少しだが煙草の臭いが移っている」 「そうだったのか…確かに俺にあいつを可愛がる資格はないですね…」 何て事だ。知らなかったとは言え、煙草臭のする餌を与えていたとは…。 思えば最初にやった金平糖を泣きながら食べてたのもその所為か? と言うか、俺自体も煙草臭かっただろうな…ミドリに我慢させていたのか。 「俺は…飼い主失格のようです」 「確かにあんたも悪い。でも、その実装石も悪いんですよ。 世話してくれる飼い主に『出て行け』などと言う思い上がった糞蟲には ちゃんとワカらせてやりなさい…それが躾ってもんですよ」 「Yマオカさん…ありがとうございます!」 俺はYマオカさんにお礼を言って、帰途についた。 * ——帰宅後、水槽内のミドリに煙草の煙を吹きかけて遊んだ。 『デホッデホッ、臭いデス!やめるデス、クソニンゲン!』 クソニンゲン…躾が足りないな。 俺はミドリが暴言を吐くたびに水槽の中に煙草の煙を吹きかけ続け、 やがてミドリは文句を言わなくなった。 ある時、遊びに来た友人が言った。 「お前の実装石、実装臭はそれほどしないけど煙草臭いな」 ~終~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ おまけ:違うエピソード 「確かにつけあがった糞蟲も悪い。でも飼い主のあんたも悪いんですよ。 あんたは実装石を溺愛し、寿司やステーキなどむやみに高価な餌を与え、 あまつさえ実装ベビー服やポシェットを与えたりした。 これでは実装石が糞蟲になるのも当然だ」 「Yマオカさんの言う通りです…私が間違ってました」 「それで、この糞蟲はどうするんです?」 「私が責任をもって処分しようと思います…」 『…デェッ!?そこは責任もって可愛がりやがれデスゥ!』 ~終~
