泣いた実装石 むかしむかし、ある公園にとても賢い実装石が住んでいました。 彼女は常日頃から人間と仲良くなりたいと思っており、どうしたら仲良くなれるのか考えた末にある立て札を立てることにしました。 「心優しい実装石の住む家です。どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます」 けれども人間が実装石の家を訪れる事はありませんでした。 お菓子がコンビニで拾ってきたカード抜きの神羅チョコだったからでしょうか。 それとも雑草を搾って作ったお茶が悪かったのでしょうか。 実装石の書いた文字を読むことのできる人間がいなかったせいなのでしょうか。 理由はともかく、人間が誰一人として来ない事に実装石は絶望していました。 そこへ友達の実装石が訪ねてきたのです。 友達は訳を聞くと彼女のためにある作戦を考えました。 その友達が人間に対しとても失礼な行為を働く。 そこへ実装石が出てきて、友達を懲らしめて人間を助ける。 そうすれば彼女が賢く、心優しい実装石だと人間にも理解できるだろう、と伝えました。 実装石は人間と仲良くなれるかもしれない、という期待を胸に友達と一緒に人間を探しに行きました。 公園の真ん中で細長い棒のような物を手にした人間が立っているのが見えました。 友達はパンツを下ろしお腹に力を入れると、もりもりとウンチを始めました。 そしてウンチを手に取ると、えいや、とばかりに人間に投げつけたのです。 ウンチは人間の顔に当たり、人間は驚いて呆然となってしまいました。 「デプー、糞ニンゲン、オマエみたいな糞は高貴なワタシの糞でキレイに化粧してやるデス。ありがたく思うデス」 そこで心優しい実装石の登場です。 「オマエ、ニンゲンさんに向かって何て事するデス!謝れデス!ニンゲンさんに謝れデス!」 ポカポカと友達の頭を殴りつけます。 もちろん本気ではありません。 「イタイ、イタイ。ごめんなさいデス。ワタシが悪かったデス。反省したデス。もう二度と悪い事はいたしませんデス」 友達の実装石は嘘泣きしながら逃げていきました。 心優しい実装石は逃げていく友達の背を見送りながら言いました。 「ニンゲンさん、もう大丈夫デス。悪い実装石は追い払ったデス!」 呆然としていた人間はその声でハッと正気に戻りました。 そしてこう言ったのです。 「…て、てめぇこの糞蟲…いきなり糞を投げつけてくるとはいい度胸だ。オレん家に行こうぜ。久しぶりにキレちまったよ」 「……デ!?ワ、ワタシじゃないデス!糞を投げたのは悪い奴デス!ワタシはニンゲンさんを助けた、いい実装石デス!」 しかし残念な事にこの人間は、リンガルなどという不思議便利グッズを持っていなかったので、実装石の弁解は全く意味を成さないのでした。 「オラァ、唸れッ!俺のバー(ry」 「デギャス!!」 人間は、殴られて気を失った実装石を引きずりつつ、家へ帰って行きました。 1週間後、ボロボロになった実装石が公園に戻って来ました。 「イタイデス…クルシイデス…タスケテデス…」 虐待派に捕まって虐待、というか拷問を受けていたのですが、隙を見て必死で逃げてきたのでした。 そして実装石は痛む体を引きずって、計画を立てた友達の家までやってきたのです。 計画が失敗だった事を、怒るつもりでした。 虐待されボロボロになった自分を、助けてもらうつもりでした。 もう一度、今度こそは人間に気に入ってもらえる計画を、立て直してもらうつもりでした。 「お、オマエの計画は失敗だったデス、責任とってワタシを助けるデス」 そう言って友達の家に入りましたが、そこには誰もいません。 代わりに一枚の置手紙がありました。 「ワタシはここを出て行くデス。ワタシとアナタが会っているのを、ニンゲンに見られたら仲間と思われてしまうデス。そしたらワタシも殺されるデス」 手紙を見た実装石は愕然としました。 だって友達の実装石は彼女にとって現状で唯一の命綱だったからです。 「だから二度と会わないデス。でも会えなくてもワタシ達はずっと友達デス。あと計画失敗でゴメンなさいデス」 このボロボロの体では公園で生き延びるのも難しいでしょう。 実装石はもうどうしていいか分からなくなりました。 「ふざけるなデス…無責任デス…なんでワタシを助けてくれないんデス…」 恨み言を吐いている実装石に大きな影が落ちてきました。 「…デ?」 「…よう、久しぶり。外の散歩は楽しかったかい?」 それは彼女を拾った虐待派の人間でした。 実装石は自力で脱出したと思い込んでいましたが、全ては虐待派の計画だったのです。 「いや、ずいぶんと必死だったなぁ。命がかかってるんだから当たり前だが」 楽しそうに話しかける虐待派。 「ここがお前の家か?良かったな、最後にもう一度帰ってこられて」 「…デ…」 「で、どうだ?逃げ出せたと思って安心した瞬間に、全ての希望が潰える気分は?」 見つかる前にほとんど潰れていたのですが、ここに至って唯一の希望である『公園でしぶとく生き延びる』という選択肢も消えました。 「じゃ、帰ろうか?俺たちの愛の巣へ」 「…デ…スゥ…」 実装石は 両目から赤緑の液体を流し 泣いた。
