JOJO苑の焼肉弁当に託児された。 それも5匹も。 ウキウキ気分で帰宅した俺は絶望に打ちひしがれた。 託児て。 この令和の時代に託児て。 それも5匹て。 「テチ?」 「ニンゲンさん元気出してチ」 焼肉のたれで口の周りを汚したまま俺を気遣う仔実装。 ……俺は激怒した。必ずこの邪知暴虐の糞虫を除かねばならぬと決意した。 ……いや、除くべきは目の前の仔蟲5匹にあらず。 敵は託児そのもの。 「リバイバルだ」 「テェ」 「流行りは令和リバイバルだろ!?なぁ!?」 「テ、テェ……!?」 初めて仔実装たちの顔に意味の分からないものに出会った恐怖がよぎる。 それが焼肉弁当との永久の別れを果たした俺の心を少し慰めてくれた。 ********************************* 令和リバイバル ********************************* 15年ほど前、双葉市では実装石による託児被害が後を絶たなかった。 しかし、多くの虐待派、ならびに託児被害ゆえに瞬間的に駆除精神に目覚めた一般人の苛烈ともいえる「警告」「わからせ」行為により 実装石界隈で託児の成功率の低さが広まったらしい。 いつしか実装石たちは託児という行為をあまりしなくなっていたのだが…… 人の世ですら10年も経てばマルチ詐欺も再発する。 世代交代の中で託児のリスクの継承も失伝していたようだ。 ならば、もう一度託児のリスクを俺が思い知らせてくれよう。 * * * 3か月後、とあるコンビニの前。 実装家族が冷やし麺ののぼりの影から託児を狙っていた。 背後には仔が5匹。いずれも今晩のうちに託児してしまうつもりだった。 店から出てきたのはおそらくは女子大生。手にはビニール袋。歩きスマホでこちらには気づいてない。 チャンスデスゥ……親はターゲットを定めた。 マイバッグ持ちはマイバッグが汚れるリスクに敏感だから除外、男性客も逆上リスクが怖い。 このターゲットは親の長年の託児プロファイリングにがっつり適応していた。 親は熟練の動きで仔を抱える。 左手は添えるだけ。 袋の縁で一回引っかかって静止し、そのまま内部に滑り落ちるコースを頭に思い浮かべる。 「……スッ!」 鋭く呼気一閃。 完璧だ。何度も反復してきたフォーム。 仔実装は理想の放物線を描き袋の縁に到達。 そして…… * * * 「リバン!」 俺が鋭く叫ぶのと、一匹の実装石が跳躍するのはほぼ同時だった。 見事なバネで空中を歩くように跳んだ実装石が片手で仔実装をキャッチ、 そのまま仔実装の体をひと齧りした。 その実装石は実装服の代わりにビブスを着込んでいた。まあ俺が着せたんだが。 「テチャアアアアア!」 仔実装の悲鳴がこだまする。 「デエエエエエエ!?」 予想外の事態に親が困惑する。 が、曲がりなりにも親実装、ビブスを着た実装につかみかかる。 俺が指示を出す。 「ゴリ!パス回せ!」 「デッス!」 ゴリと呼ばれた実装石……正式名エグリゴリが食いかけの仔実装を鋭く投げる。 パスの先には同じくビブスを着込んだ実装石が4匹。 「デス!」 がぶり 「テチャア!」 「デス!」 がぶり 「チィィィ!」 「デス!」 がぶり 「ィィィ…」 みな一口ずつ仔実装を齧り、次の仲間にパスしていく。 「やめるデスゥゥゥゥ!」 華麗なパスワークに翻弄され仔実装に追いつけない親実装。 最後の一匹が齧るころには、仔実装は頭だけになっていた。 ラストを委ねられたビブスはそのまま仔の頭をコンクリの地面に叩きつける。 ダダドムゥ! ダダドムゥ! 「デェェェェ……」 血涙を流して追いすがる親実装をしり目に高速ドリブルからのレイアップ。 仔実装の頭は音もなくコンビニ前の燃えるゴミ箱の中に吸い込まれていった。 5匹集まってハイタッチし、互いのプレイを健闘しあうビブス実装たち。 膝からがっくり落ちる親実装。 「ゴリ、これにはハンドチェックとかないんだからもっとガリガリチャージ決めてけ。相手が打った後も止めていい」 「そうだったデスゥ」 俺は拍手しながらも指導は忘れない。 びしっと姿勢を正すビブス実装たちを見て俺は頷き一声。 「もう一本!!」 俺の声にはっとプレイに戻る5匹のビブス実装たち。 ここで俺はスマホのオーディオスイッチを入れた。 これ以上はリスペクトの精神に反するからWA〇DSは流せない。 ので、代わりになんだか世界が終わりそうなワルキューレの騎行を流す。 エグリゴリが腰を落として親実装をマンマークする。 「テチャアアアア!」 「ヂィィィィ!?」 「放すテチャアアア!」 「ママァァァァ!」 そんな親の前で他の4匹が放置されていた仔実装をめいめいスティールし、ゴミ箱に向かって一斉にラン。 親は駆け寄ろうとするも、腰を落としたエグリゴリのブロックに阻まれ身動きできない。 「どくデスゥゥゥゥゥ!?」 「ディーフェンス! ディーフェンス! ディーフェンス!」 「デジャアアア! そこの人間ウルサイデスゥゥゥ!」 「マ…マ…」 「あんよがァァァ」 「痛いテチィ! もういやテチィ!」 「……ティ」 そしてそれぞれに胴を残さず齧り取られた仔実装の頭4つはこれまた綺麗な放物線を描いてゴミ箱に吸われていった。 今度こそ力尽きて身動き取れなくなる親実装。 「巻け」 俺の号令でビブス実装たちの手によって親実装が禿裸にされガムテープ巻きにされる。 「いいテーピングデスゥ」 エグリゴリが満足そうにうなずいた。 そのまま道端に血涙の乾いた目で見上げてくる親実装を転がし、俺は告げる。 「試合終了だ」 この親には悲惨な託児失敗談を周囲に広めてもらわねばならない。 だからこの場ではあえて仕留めない。 いつの間にか逃げていたさっきの女子大生がどうやら通報したらしい。 サイレンの音が近づいてきたのでビブスたちを引き連れてその場を急いで離れる。 * * * このビブスたちは俺が飼っている。 だが、正式に飼いの登録を出してはいない。 だから、今回の件も仮に見とがめられても書類上は「野良同士の喧嘩」である。 かつて託児への制裁の際に問題になったのが、実装の遺骸の放置問題であった。 実装への加害が問題になったのではなく、「トロフィー」を残された建造物の所有者が苦情を言ったのである。 その後、いろいろな法律や条例が定められ、窮屈な世界になってしまったが…… 俺が仔実装たちに飼う条件として提示したことは2つ。 ひとつ、俺の下でアンチ託児技術の訓練をすること。 ひとつ、なにかあった際に自らを飼い実装と名乗らないこと。 結果として、こうやって3カ月ほどでもろもろの法律に引っかからない見事な託児ブロックチームが完成した。 このチームなら今後も戦っていける。その確信がある。 「もうこれ以上悲惨な焼肉弁当の被害を出さないために」 「そういってワタシタチには結構いいご飯食べさせてくれてるンデスよねえ」 「いいプレイをした選手は労わないとな」 「……ゴシュジンの倫理観のバランスは所々歪んでると思うデス」 「主人は飼い主に使う呼び方だ。ゴシュジンではなく監督と呼べ」 「「「「「サーイエッサー」」」」」 「監督と呼べ」 「はっ!? 訓練の時のフルメタルな記憶がついついフラッシュバックしたデスゥ」 俺は実装石が嫌いなのではない。 託児されるのが嫌いなのだ。 完 ********************************* 中将◆.YWn66GaPQ 自分自身は託児+制裁ネタ大好きです。 最近コンビニ前にゴミ箱なくなりましたね。 まだある世界軸ってことでひとつ。 ところどころ誤字修正。

| 1 Re: Name:匿名石 2023/07/05-21:01:20 No:00007442[申告] |
| 2k以上の弁当に被害を与えてくるのはギルティ過ぎる…
私刑が実装同士のやる事ですからって言うなら地域実装ならぬ自警実装なんてのがいてもいいかも |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/07/06-00:05:48 No:00007445[申告] |
| すげぇ面白い。続編を希望する。 |
| 3 Re: Name:匿名石 2023/07/06-01:04:05 No:00007446[申告] |
| いきなりバスケ始まるの笑う |
| 4 Re: Name:匿名石 2023/07/06-11:35:31 No:00007451[申告] |
| タクジダンク or スラムタクジ |
| 5 Re: Name:匿名石 2023/07/07-04:33:05 No:00007456[申告] |
| 君が好きだと叫びたいデスゥ |
| 6 Re: Name:匿名石 2023/08/26-07:50:05 No:00007854[申告] |
| 速やかに通報されてて吹いた |