タイトル:【観察】親指の世界 二章 「住」 【ボックスサム】
ファイル:親指の世界2.txt
作者:中将 総投稿数:51 総ダウンロード数:1070 レス数:3
初投稿日時:2023/06/28-13:21:05修正日時:2023/07/03-03:48:28
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プールサイドに設えたテントから這い出す。
随分長いこと眠っていた気がするが、寝覚めの気分は爽快だ。

寝ている間の動向を確認するために「世界」の各地にセットしたカメラ動画をチェックする。
夜間は親指たちも寝静まっていたようで動きはなし。
外敵侵入防止策もしっかり機能しているようだった。

これでまず外部からの干渉がないことが確認できた。
さあ今日も本腰入れて観察を開始するとしよう。

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                 親指の世界 二章 「住」


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最初に注目したのはウルシの洗礼をうけた裸足チームだ。
臨時隠れ場所付近からあまり動かずに一塊で夜を過ごしたようだった。

昨日は15匹を3つのチームに分けていたが、今日は頭数的にもそれはままならない。
さてどうするか、と見ていると、リーダーはウルシカブレ1号と2号と何やら相談を始めた。
回復した両名からすこしでも「世界」のリスクを共有し次に生かそうとしているのか。


ここでリーダーは悩んでいるようだった。
今そろっている情報だけでも、「全員で行動し有事の際に救助する人員を確保することで生存性をあげる」
「分散して行動し未知の事態に遭遇した時の全滅リスクを避ける」の二つの方針を選べるからだ。


昨日の失敗も後を引いているのか、なかなか決断できないリーダー。
それにカブレ1号が何らかの提案をする。2号も頷いた。
それを聞き、リーダーは方針を決めたようだった、

リーダーの指示でカブレ以外の9匹は3匹ずつの3班に分けられ、すでに昨日探索済みのエリアを中心に散っていった。
なるほど、折衷案としてリスクの少ない既知の範囲で効率的な再調査を行う選択肢を取ったか。
昨日の探索ではまだまだ見落とした資源もあるし、これはなかなか有効な判断と言える。

どうやらカブレどもは死に瀕した際の濃厚な経験値をリーダーに認められているようだった。
これがのちに「裸足将軍」「裸足軍師」と呼称される二匹が他との差異を見せ始めた瞬間だった。


周辺探索に出た3チームはそれぞれ資源を見つけてきた。
道具として有効なのは武器にもなる爪楊枝、そして水汲みに使えるペットボトルキャップだ。
他にも大小のガラクタをかき集め、さらにはいくばくかの食料も確保していた。
中身の残ったキャラメルの箱は大当たりだ。これには群れ全体が大いに沸いた。

驚くべき点は裸足チームの群れ全体の「お行儀のよさ」だった。
昨日のリーダーの献身的な看護を見ているからなのか、それとも二人の傷病兵への扱いを見ているからなのか、
組織として動くことに一定の安心を得ているのだろう。
編成二日目のチームとしては驚くべき統率力で動いていた。


周辺の探索を終わらせた裸足チームは、あらためて相談を開始したようだった。
資材や食料もかなり集まってきている。隠れ場所に置いておくには少々手狭になってきた。
そうなると次に必要なのは新しいねぐらである。
当然既知の探索範囲には候補が見つからなかったのでこうして作戦会議が必要で、
それは「世界」の中心に再度アプローチする必要性を示しているのだが……

ここで手をあげたのがが裸足将軍だった。

「テチ」
「テテエ?」
「テチ」
「…‥テテエ?」
「テッチ」

心配そうに声をかけるリーダーに将軍は大きく頷く。そして資材から爪楊枝を取り出し剣のように掲げた。

「テッチ テエ!」
「「「「テチ!」」」」

リーダーはその姿に頷くと4匹のヒラ親指に声をかけた。
命令に従った4匹は将軍のもとに組み込まれ、「世界中心探索チーム」が編成された。

すこしでも危険を知っている裸足将軍を軸に探索チームを組めば、リスクを回避できというわけか。
それでいて本隊も温存できる。これも理にかなった判断だ。


将軍たちが出発した後、軍師もなにもしていないわけではなかった。
残った人員を指揮し、集められた資材や食料を手際よく輸送可能な状態にしていく。
大きめの葉っぱの上に細かいものを載せて引きずりやすいようにしたり、
キャラメルの箱に可能な限り他の細かい餌を詰め込んで二人がかりで運べるようにしたり。
箱の類は今後も輸送の際などに役に立つだろう。活用法を積極的に模索できるのは高い適応性を感じさせた。


リーダーの負担を減らすべく能力を発揮し始めた裸足将軍と裸足軍師。
しかし、その一方でリーダーは少し立場を失ったかのように暇そうにしているのが気にはなった。


      *      *      *


禿チームの方でも動きがあった。
1匹を無惨に食肉に変えただけでは当然二日目の11匹+3匹の腹は満たせない。
1匹ずつ奴隷を食いつぶしていくのかと思ったら、禿リーダーはそこまで先の読めていない個体ではなかった。

禿リーダーは最初に呼応した2匹と奴隷1匹を身の回りに置き、他をヒラ4匹に奴隷1匹の2チームに分けた。

リーダーと側近の2名がいるところを本陣とし、それぞれに周辺探索を命じたのだった。

恐怖で全体を縛っている禿チームは禿チームで統率は取れている。
それも各チームに奴隷を配置していることで、数で奴隷を見張りながら、
それ以外が「自分が奴隷以外でいること」への連帯感で協力して行動している。
群れるいじめっ子の心理とでもいうのだろうか。

特に危険な探索は奴隷に行かせ、めぼしい発見物があればヒラ親指が取り上げる。
姫リンゴの木にも奴隷がよじ登らされ、そのうえでその実を頬張ることは許されなかった。
やがて、ボロボロの奴隷と比較して、ヒラ親指たちは十分な戦利品を確保していた。

うち1チームは禿チーム側の水場も発見する。
禿チームも当面の生活インフラは確保できたようだった。


「テッチ!テッチュ!テッチューン!」
「テチチ!テェ!」
「テチテチ?テッチィ!」

「……テチ、テテチ?」

「テチ?チプププ」
「テチチィ?テピャァァァ!」
「チ!チププ!テエ!」

プリプリプリプリプリ

「「「テェェェ……」」」

帰還した2チームの戦利品はリーダー以下ヒラ親指が平らげ、奴隷たちの食事は当然同族の糞だった。
バラバラに配属された奴隷たちは連携を取ることもできない。
これを見越しての禿リーダーの人員配置なのだとしたら、禿リーダーの指揮力は裸足リーダー以上と見ていい。

「テッス」

食事が終わると、禿リーダーは行動を開始した。
収集した食料はほとんど食いつくしてしまっている。身軽なものだ。
リーダーは群れを引き連れると、水場の近くに移動した。

禿チームは備蓄の考えはないようだ。
隠し場所を意識しない水場近くの石の上に次の拠点を見定めたようだった。
おそらくいざという時は奴隷を食いつぶせばいいという保険があるからこそ、
こういう行動理念で動いているのだろう。

「チップ テッチ」

禿リーダーは石の上の最も高い場所を自分の居所とした。
その周辺を側近が、さらにその少し下にヒラ親指が。
奴隷は石に上がることを許されず地面だ。
これは隠れるための棲家ではない。


むしろ、視界内の奴隷が逃げないか見張るために支配する「城」であった。



      *      *      *


中心部に向かった裸足将軍のチームは各種自然トラップに目もくれずに進撃を続けた。
余計な好奇心は毒を踏むことを知っている将軍とその統率下にあるチームはただ新しい棲家を探すという目的にのみ進んでいるようだった。
観察している側としてはアクシデントもなけりゃ不満もある。そのくらい将軍のチームは慎重だった。
欠員を出してはなるものかという使命感まで伝わってくるようだった。

この「世界」の中心には非常に有力な「人工物」がある。
その名も「SUKE-BASE」…スケベ椅子だ。
横から見ると凹の字に見えるタイプで、壁面にあたる部分には入り口になるような穴をいくつかあけてある。
各種凹凸に潜り込める屋根、頑強な壁面を備えたSUKE-BASEはそのままでも強力な陣地に、
手を入れればさらに強固な要塞になる代物だ。
当然最初に見つけたチームは他のチームに対して大きなアドバンテージを得ることになる。

裸足将軍たちはかなり最短のルートでSUKE-BASEに向かっていく……ある意味当たり前だ。
トラップ植物を避けて行けば最短で「世界」の中心に向かえるような配置にはなっていた。
親指たちの予想外の知能の高さに驚く。
いや極度の緊張感の中で急激に進化適応しているのだろうか。


そうこうしているうちに、探索チームの一匹がとうとうSUKE-BASEを発見した。

「テッチャ!」

喜びの声をあげて駆け寄る一匹。追従する他4匹。しかし将軍はここでも慎重だった。
無警戒にSUKE-BASEに入ろうとする一匹を制し、まずは爪楊枝で周辺をつついたりかきまわしたり。
そうやって一応の安全を確保すると、将軍は本隊への帰還を指示した。


将軍の報告を受けて、本体は探索チームと合流し、即座に拠点の移動を開始した。
裸足チームは非常に順調にこの「世界」を攻略しているように見えた。


しかし、この段階で裸足将軍の「功績」がリーダーのそれを大きく上回ってしまっていることは
まだ群れの誰も気づいていないようだった。


      *      *      *


大石に拠点を移した禿チームも午後の行動を開始した。
といっても拠点移動前のそれと同じ、奴隷を含む5匹の2チームを周辺に派遣し、収集物を得る方針は変わらない。
今回違うのは探索領域だ。
直近の姫リンゴを発見してしまった後となっては、新たな食糧は「世界」の中心を目指さなければ確保できない。

「テーチテチテチ」
「……テェェ」

危険を知ってか知らずか、奴隷を先頭に立たせ後ろから小突きながら進軍する5匹。
リスクを奴隷1人に負わせた甲斐もあってか、1チームがほどなく一本の実のなる木を発見した。

「テッチテェ♪」

当然奴隷にその甘露を味あわせようとはしない。
奴隷が発見した木の実をどれ尾を差し置いてヒラ親指の一匹が口にし

「テェ……」

予想外の苦さに怪訝そうな顔をし、

「テテェ……?」

体の異常にうろたえ始め

「オベロロバババブゥア!

尻と口から盛大に内容物を吐き出して爆発するように絶命した。

「「「「テッチャァァァ!?」」」」

驚愕する奴隷含めた4匹。
ヨウシュヤマゴボウは本来遅効性の毒を発揮する植物だが、
代謝が早く体の小さい親指には特に強力に作用したらしい。

びくんびくんと痙攣する仲間の死骸を見下ろし、ヒラ3匹がとった行動は極めて実装石的だった。


「テチャ!」

ポグス

「テティ!?」


ヒラの一匹が奴隷を殴りつけた。

「テチィ」
「テェ」
「テッチテエエエエエエ!!」

ポグス ポグス ポグス

「テチャアアアアアア!?」

どうやらヒラ3匹はこの始末を奴隷への私刑で処すと決めたらしい。
『自分達は絶対安全』なはずの奴隷を盾にした探索行、
そのはずが奴隷を飛び越えて『上位階級』が死ぬ羽目になったのだ。

もちろん奴隷を生かしておいては『筋が通らない』。

ボグ ボグ メキ パキ メチョ

「テ…チ…ア…」

メキョ グキョ グチョ

「……テ」

不始末をした奴隷はミンチになり、3匹はその肉を啜って腹を満たすと、
服毒視した『仲間』をその場に放置して本拠に帰還したのだった。


      *      *      *


「テッチテチ、テチ」

本拠にはすでにもう一つのチームが多少なりの食料をもって帰還していた。
その前でヤマゴボウ遭遇の3匹はリーダーに報告する羽目になった。
いささかばつの悪そうな3匹のうち、代表報告をしていた1匹にリーダーが近寄る。

「テッチ」
「テス」

労うような一言。
その直後、禿リーダーは報告した一人の頭を押さえつけ、その服を破り取った。

「テチ!?テチャアアア!?」
「テッチア!!」
「…!」

抗議する報告ヒラ、しかしそれをリーダーは一喝する。
報告ヒラは結局ガタガタ震える他のヒラ2匹の前で靴も奪われ完全な禿裸になった。

なるほど、貴重な奴隷という群れの資産を失ったことに対する補填と罰としての「転落奴隷」か。
ヒラとはいえ不始末をすればいつでも奴隷に落ちるという禿チームの恐怖の掟であった。

「テヒィィィ」

ほうほうの体で他の2匹の奴隷のとこに泣きつく転落奴隷。しかし、

「テチ」

ポグス

「テギャ」

古参奴隷の2匹は新参の奴隷に冷たかった。
刑務所で一番冷遇されるのが元刑事や刑務官の犯罪者という。
奴隷の中にも序列が発生し始めたようである。

ついでにいうなら、勝手に奴隷を食った他の2匹も、順番としては次に奴隷になる側ということになる。
もし次奴隷が減ることがあればだれが奴隷にされるのか明確だった。
ヒラの中でも序列が発生しだした。


恐怖で縛られた禿チーム、その中に細かい上下関係が生まれ始めたようである。


      *      *      *


今日の記録は禿チームに×がふたつ。数は変わらないから身分のスライドはあったがこれでいいだろう。
残りは裸足チームが12匹、禿チームも12匹(うち3匹が奴隷)。

数の上でバランスはとれたが、強力な拠点得て「世界」の中心を抑えた裸足チームが優勢か。

さて、これからは「世界」の中心での観察が中心となる。
いつの間にか普及していた…寝ていたの一晩だよな?…ドローンというものを導入してもいいかもしれない。
さて、明日はどんな行動を見せてくれるのだろうか。
俺は次のイベントの仕込みをしながらテントの中で眠りについた。


続く


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中将◆.YWn66GaPQ

十…何年ぶりですかね。
最近また実装界隈が活気づいてるとのことで、せめてエタらせてたスクだけでも完結させようと戻ってきました。
いない間もコメントいただいていたようでうれしいです。

本人証明に匿名になってた過去スクに署名入れてきます。

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1 Re: Name:匿名石 2023/06/28-14:16:47 No:00007376[申告]
続きが読めて嬉しいデス
2 Re: Name:匿名石 2023/06/29-10:07:11 No:00007386[申告]
裸足チームを応援したいがちょっと不穏な感じもあるね
続き楽しみデス
3 Re: Name:匿名石 2023/08/03-13:15:28 No:00007691[申告]
メタ気味なドローン発言わらた
おもしろいです!
完結楽しみにしてます!
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