今日はせっかくの休日だというのに雨が降っている。 どこに出掛けることもできず、仕方なく家の中で一日を潰すことになり仔実装と遊んでやった。 ウチの仔実装はよく転ぶ。というか自分から転んでいる。 「お前何がしたいんだ?」 「コロコロするの楽しいテチ!ゴシュジンサマが言ってたジェットコースターみたいテチ!」 どうやら勢いよく転んで視界がぐるぐると回るのが楽しいらしい。体重が軽く怪我しにくい仔実装だからこそ出来る遊びのようだ。 だがこのままではいつか怪我をするのは明白であり最悪でも成体になる前にやめさせなければいけない。 しかしどうすればいいのか…。 「そうだ。あれがあったな」 思い付きを実行しようと宅配でやって来たダンボールを漁る。ここには大きなフィギュア等を買った際に来た梱包材、所謂プチプチが山ほど入っていた。 「ちょっと待ってろよ~」 そう言ってプチプチの他にハサミと透明テープを用意し、工作を始めた。 それから30分後…。 「よし、完成だ!」 そこには目元や口以外をプチプチスーツで覆われた仔実装が立っていた。 「走ってみろ」 「テチィィ!」 俺の言葉に従いプチプチ仔実装が走りだし、いつものように転がっていく。 「テェェ?」 そして不思議そうにしながら立ち上がる。 「ゴシュジンサマ!痛くないテチ!とっても楽しいテチ!」 どうやら成功だったようだ。 何重にも巻いたプチプチが仔実装をダメージから守り思う存分スリルを楽しませる。 怪我をするのが不安なのであれば怪我をするリスクを無くしてやればいい。逆転の発想の勝利だ。 俺が満足げに頷いていると仔実装が再び転び遊びを再開していた。 そして一日遊び疲れたのか、そのまま眠ってしまった。 俺はプチプチスーツを脱がし、仔実装をケージの中の寝室へと入れてやるのだった。 翌日。天気は快晴。だが俺は急に決まった休日出勤を余儀なくされていた。 「俺が帰ってくるまで一人で留守番してるんだぞ~」 「平気テチ!いってらっしゃいテチゴシュジンサマ!」 玄関を出る俺をプチプチスーツを着た仔実装が元気に送り出す。 普段なら絶対にグズるところだが新しい遊び道具にご満悦のようだ。 俺は安心して部屋を後にする。 それから仔実装は何度も走り転び続けた。 視界がぐるぐる回っても痛くない。何かにぶつかって弾かれてもへっちゃらだ。 この家には仔実装が危険な高さに登れるような場所も、ぶつかって崩れるような荷物も床に置かれていない。 仔実装は安全に、快適にこの遊びを満喫することができた。 だが小一時間もすれば流石に疲れてくるし腹も減る。 男は遊びが充実したことで沢山食べるだろうと実装フードを多めに用意していた。 安全な遊びに山のような食事。仔実装にとってまるで楽園だ。 「いただきますテチー!」 餌皿の前でそう宣言しフードを取る。がそこまでだ。 手が上がらず、口へも運べない。 「テ?何テチ?」 何度試しても食事が出来ず困惑する仔実装。 原因は男が作ったプチプチスーツにあった。 仔実装が怪我をせぬよう厚手に作ったため腕の可動域が制限され、フードが口へと入らないのだ。 「食べられないテチ!食べたいのにゴハンが食べられないテチ!」 何度試しても食べられない。 用意された餌が多い分、余計にストレスが仔実装を蝕んでいく。 フードは量が多いので山のように積み上げ倒れ込めば少しは食べられたかもしれないが頭の悪い仔実装は思い至らない。 更には先日が雨で気温が低かったこともあり仔実装は水をあまり飲まなかった。故に男も給水機の確認を怠ってしまい、中身が空になっていることに気付かなかった。 「テェェェェェ…」 食事が出来ず、補水も出来ない仔実装が大の字に倒れこむ。 遊びに夢中で体力を消耗した仔実装はかなり消耗していた。 更に今日は快晴だ。昨日と比べ外気温は7度も上がり、オマケに雨で湿度もかなり高くなっている。 通気性0のプチプチスーツはまるでサウナスーツであり仔実装の体力を根こそぎ奪っていった。 プチプチスーツはテープで固定されており男の手がなければ自力で脱ぐことも出来ない。 仔実装は飼い主の男が戻ってくるまで耐えなければならないのだった。 「テヒ…テヒ…テヒィィ……」 愛護派の男のもとで快適に暮らしていた仔実装にとってこの餓えと脱水と暑さは凄まじい拷問だった。 「暑いテチ…暑いテチ…お水…お水が欲しい…テ…チ……」 そして日が昇りきり、暑さがピークになる頃に仔実装の偽石は砕けていた。

| 1 Re: Name:匿名石 2023/06/25-18:13:27 No:00007352[申告] |
| 窓に貼る断熱シートに似てるし保温バッチリだね!めでたしめでたし |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/06/26-00:28:33 No:00007356[申告] |
| わが子だとそこまで放置することはないだろうから
人型のペットという特殊性が悲劇を生んだんだなぁ |