タイトル:【SF観察】 SF実装 ある調査船の悲劇
ファイル:SF実装 ある調査船の悲劇.txt
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初投稿日時:2023/06/23-21:34:47修正日時:2023/06/23-21:34:47
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SF実装 ある調査船の悲劇


少し未来の話。
恒星間調査船の荷物の中に、意図されたものか偶然かは分からないが、
一匹の実装石が低温の仮死状態で紛れ込んでいた。

娯楽に飢えていた船員たちの手で蘇生された実装石は、
自分がいる場所が宇宙だと聞かされてもよく理解できていないようだった。
「ウチュウ?コンペイトウがある所デス?」
「ははは、もしかしたらそんな星もあるかもな」
金平糖が宇宙のお星さまのカケラとでも思っているのだろうか。
実装石の無邪気な考えに船員たちは和んだ。

ともかく、ミドリと名付けられたその実装石は、
初めの内こそ娯楽の少ない調査船内でペットとして扱われていた。
だが、実装フードなど積んでいない船内では人間の食べる物を与えるしかなく、
それは人間にとっては平坦で奥行きのない味の宇宙食とは言え
実装フードと比べると味の面ではるかに上だった。
そんな食事を続けたミドリは、やがて糞蟲性を発揮し始めた。

「まったく使えないドレイデス!
 またこのウチュウショクを食わせるつもりデス!?
 ゴハンはステーキか寿司を食わせろと言ったはずデス!
 ウチュウに出てコンペイトウも取ってこいデス!」
限られた荷物しか積んでいない調査船にステーキだの寿司だのはない。
宇宙に出たって金平糖などあるはずがない。
そう言い聞かせても無駄だった。
ミドリは完全に糞蟲になっていた。

船員たちはミドリを持て余し始め、やがて箱に入れて倉庫に閉じ込めた。
殺処分しなかったのは、船員が心優しい人間ばかりだった為だが、
それが悲劇を生む事になる…。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

調査船の食料は大部分が倉庫に蓄えられていて、
一週間分ほどの食料だけが、頻繁に使う荷物を置く部屋に保管されていた。
「そろそろ食料を出しておくか」
ミドリを箱に閉じ込めて数週間後のその日は、倉庫から食料を出す日だった。

船員が倉庫の扉を開けると、中から濃い実装臭が漂ってきた…。
「デスゥ…」「テチ…」「レチレチ…」「テッチャア…」
そして実装石の鳴き声と共に、何かをくちゃくちゃと咀嚼する音もする。
「全く不味いゴハンデス…ここは地獄よりヒドイ場所デス…!」
聞き覚えのある声に、船員は手にしたライトを向けた。

「何だ、ミドリ…?一匹じゃなかったのか!?」
そこには無数の実装石が貴重な備蓄食料をむさぼる姿が!
「なっ…何してんだテメェらぁぁぁ!」
船員は激昂し、壁に立てかけてあったモップを手に実装石の群れに飛び込んだ。

——数分後、その場に居た実装石は緑と赤の染みに変わった。

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この調査船内では、船員の心を慰める為に機械で花が自動栽培されていた。
その花は、船内のあちこちに飾られていた。

そして、どうにかして箱から脱出したらしいミドリが、
倉庫に飾られていた花の花粉で妊娠出産し、実装石たちは数を増やしたのでは…
と判明したが、それが分かっても食われた食料は元に戻るはずもなく、
調査船内を飢餓が襲った。

『調査船F-MAY002船長、トシアキ=シモンより地球へ。
 本船は事故により食料を失った。
 乗組員は冷凍睡眠に入り目標の恒星系への航行を続けるが、
 居住可能な惑星の調査という目的の達成は極めて困難となった。
 なお、事故の原因となった実装石の危険性について(以下略)』

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——数年後。
ニジウラ星系の第五惑星のとある草原に、調査船が着陸した。
この惑星はコンピュータの診断により、人類が居住可能とされた惑星だった。

乗降口が開き、中から緑の服を着た数十匹の生物が地上に降り立つ。
「…ここがコンペイトウのある星デス?」
それは史上初の、外宇宙惑星に到達した地球生物…実装石の群れであった。

冷凍睡眠装置の故障により船員は全員死亡。
だが、倉庫の隅に隠れて駆除を免れていた一部の実装石は再繁殖し、
仔や糞を食料として数年を生き延び、新たな星にたどり着いたのだ!

実装石たちは産まれて初めて見る惑星上の光景…美しい自然の様子に目を奪われ、
しばしうっとりしていたが、やがて好奇心に駆られて
各自が興味を引いたモノを手に取るべく、草原のあちこちへ散らばって行った。

「この赤い草の実、ウマウマデスゥ!」
「この黄色い花の蜜もアマアマテッチュウ♪」
味覚への新鮮な刺激に大喜びする実装石の群れ…。
だが、どんな星にも自然の脅威は存在する。

「デッ!?…デギギ…デギャ!」
赤い草の実を食べていた成体実装は、実の毒に侵されて全身が真っ赤に染まった。
「テッテレーレピャ!」「テッピャ!」「テッテレピャッ!」
両目も赤く染まっていたので無数の蛆実装が産まれてきたが、
毒の影響で親もろともパキンした。

「…テチッ?あっち行けテチ!」
黄色い花の蜜を吸っていた仔実装は、蜂の様な虫の群れに襲われていた。
「痛いテチッ!いたっ、ママッ、助けテチ!ママッ…テッチャアアアアア!」
そして、全身の肉を噛み千切られて肉団子にされた。

「蛆チャ、あっちに逃げるレチッ!」
「プニプニまだレフー?」
周囲で次々に上がる悲鳴に身の危険を感じた親指実装が、
面倒を見ていた蛆実装を抱えて逃げ出した。
だが親指の身体にはトゲの様な物が刺さり、そこから体内に根が伸び始めている。
「か、身体が動かないレチ…?」
「プニフー、プニフー!」
「れ、レちャチゃちゃ…」
すぐに、親指実装を生きたまま苗床として可愛らしい植物が芽を出した。

「プニフー!プニフー!」
親指の腕から草の上に落ちた蛆実装は、親指がプニプニしてくれないので
たまたま近くを通りかかった蟻の様な虫にプニプニをねだった結果…。
「レッ、レピィィィ…」
虫に針を刺され、体の中から溶かされて体液を吸われた。

「デデッ!?こ、ここにはコンペイトウはないデスッ!逃げるデス!」
運良く無事だった一匹の実装石が、調査船の方へ引き返し、船内に逃げ込んだ。
「誰か、ワタシだけでも助けるデス!ドレイニンゲンはどこにいるデスッ!?」
この実装石は、ミドリから人間についての話を聞いていた。
その為、ピンチの時は人間が自分たちを助けるものと思っていたが…。
前述の通り既に人間は全滅しているのだった。

『グルルルル…』
船内で震える実装石の背後に迫る不気味な唸り声。
振り返る実装石が見たのは、毛むくじゃらの動物の、牙の生えた大きな口。
「ド、ドレイニンゲン!早くワタシを助けるデジャアアァァ——」
——ガブリッ


—終—

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SF(Sukoshi Future)なお話でした。
スレに投下したスクに加筆修正しました。

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