中央分離帯遭難生活 一日目。 「デスゥゥゥゥ!?」 信号待ちしていた車から、中央分離帯に実装石が投げ捨てられた。 「何するデス、クソドレイ! クルマに乗せるデス!」 口調から糞蟲だと分かるその実装石は、ペスペスと飼い主の車のドアを叩いて抗議する。 だがドアが開かれる事はなく、信号が青になると車は走り去った。 「ど、どうなってるデス…? なんで高貴なワタシが投げ捨てられるデス…?」 投げ捨てられたのではなく、捨てられたのだという実感はまだないようだ。 糞蟲はしばらくの間、茫然としたまま立ち続けたが、飼い主が戻ってくる様子はない。 仕方ないので家まで歩いて帰ろうと(家の方向など分かるはずもないが) 周囲を見回したが、糞蟲がいるのは草木が生えた細長い場所で、 左右は車が無数に走る車道に挟まれていた。 糞蟲は車の恐ろしさは一応知っていたので、迂闊に道路を渡ろうとはしなかったが、 それ故に交通量の多いバイパスの、中央分離帯に閉じ込められる形になった。 …事の起こりは今朝の食事の時。 「クソドレイ、こんな実装フードじゃなくステーキか寿司をよこすデスゥ!」 ペットにしていた実装石の糞蟲化に気づいた飼い主は、 外出のついでに糞蟲を捨てる事を決意し…今に至るという訳だ。 そして、糞蟲の遭難生活が始まった。 初日は、すぐ近くを走る車の速度に怯えて道路に下りられなかった。 よく観察すれば(赤信号で)定期的に車が止まる時間があったのだが、 冷静さを欠いていた糞蟲はそれに気づく事なく日が暮れるまでの間をウロウロして過ごし、 暗くなる頃には疲れて眠ってしまった。 * 二日目。 相変わらず車の速度に怯え、道路を渡れない糞蟲。 「腹減ったデス…この葉っぱは食えるデスゥ…?」 空腹に耐えかね、糞蟲は植込みの葉をむしゃむしゃと食べてみるが。 「臭いデス…クルマのオナラ(排気ガス)の味デスゥ」 実装石は悪食で何でも食べるとは言え、肉食寄りの食事を好む事。 そして植込みは絶えず排気ガスに晒される場所に生えているが故に、 その葉は排気ガスまみれで非常に不味く、食べるのは諦めた糞蟲であった。 その日も中央分離帯をウロウロしながら道路を見つめ、 たまに道路を渡ろうとしては車に怯えて諦めるうちに一日が終わった。 * 三日目。 捨てられていたダンボールとビニールシートで家を作った糞蟲。 日差しを避けて一日の大部分をこの中で過ごすが、その所為で道路の観察が疎かになり、 交通量が少なくなった瞬間、つまり横断できそうなチャンスを逃していた。 また、僅かだが雨が降り、ビニールシートに溜まった水滴で喉を潤す事に成功する。 「デェ…でも臭い水デスゥ…」 排気ガスや汚れがこびりついたビニールシートに溜まった水は臭かったが、 それでも、ここ数日の喉の渇きを潤すには飲まずにいられなかった。 夕暮れ時、信号待ちで偶然近くに車が止まったので、 「ワタシを飼わせてやるデスゥ~ン♪」と媚びてみた。 …全く相手にされなかった。 怒った糞蟲は糞を投げようとパンツに手を突っ込んだが、逆に煙草の吸殻を投げつけられる。 辛うじて命中しなかったものの、ビビった拍子に盛大に糞を漏らしながら転んでしまい、 車は人間の笑い声を響かせながら走り去った。 「デシャア! クソニンゲン、なんでこんなに美しいワタシを飼わないデスゥ!?」 糞蟲はぷりぷりと憤慨しながらダンボールハウスに戻って横になり、 怒りの余りぷりぷり糞を漏らしていたが、やがて眠りに落ちた。 * 五日目。 糞蟲は中央分離帯をウロウロ歩き回るうちに、弁当の食べ残しが入った袋を見つけた。 通りすがった車のドライバーが捨てて行ったのだろう。 モラルも何もあったものではないが、ここ数日は小さな虫しか食べておらず、 食料事情がひっ迫している糞蟲には天の恵みだった。 なお、この個体は糞蟲ではあるが、(元)飼いというプライドが糞を食う事を躊躇わせていた。 (ウンチを食べるなんて野良糞蟲のやる事デス…! ワタシは高貴な飼い実装デスゥ、糞蟲とは違うデスゥ!) そんな事を想いつつ、糞蟲は残飯を漁っていた。 「まだおいしそうなのが残ってるデス! …もぎゅ、もぎゅ…ウ、ウマウマデスゥ~ン♪」 今日の食事はエビフライのしっぽと、ソースが少し染みたご飯の残り…ゴチソウである。 ここ数日の糞蟲は、餌を探す以外の時間はダンボールハウスで寝て過ごしていた。 徐々に中央分離帯での生活に適応し始めているようだ。 * 十日目。 いつになく真剣な表情で、糞蟲は道路を見つめていた。 「きょ、今日こそ道路を渡るデス…!」 そう、糞蟲はこの道路を横断する決意をしたのだ。 この十日間、ついに信号待ちという車が止まる時間について気づく事がなかった糞蟲は、 無謀にも車が走っている最中に道路を駆け抜けようとしていた。 「デシャアアアアアアアアアアア!」 糞蟲は走り出した。 猛スピードで走る車の間をすり抜けるようにして道路を駆け抜け、 運が良かったのか車に轢かれる事なく、ついに歩道にたどり着いた。 そして…歩道に落ちていた『それ』を拾い上げる。 「ハァ、ハァ…やっぱりペットボトルだったデス…! 昨日から気になってたんデスゥ! こ、これで水を溜められるようになるデッスゥン♪」 空のペットボトルを抱え、嬉々として中央分離帯の家に戻っていく糞蟲。 これに水を溜めればもう喉の渇きに悩まされる事はない、と満面の笑みを浮かべて。 …そのまま脱出できた事に気づくのは、ダンボールハウスに戻って一息ついてからである。 —終— ————————————————————————— スレで書いたスクを加筆修正しました。 元ネタは浦安が舞台の某ギャグマンガの馬鹿教師遭難ネタです。 中央分離帯で暮らす実装石のシリアス調のスクが読みたい方には 他の方が書かれた『道実装』をお勧めします。

| 1 Re: Name:匿名石 2023/06/08-05:28:20 No:00007275[申告] |
| 愚か者過ぎて笑えるオチです |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/06/08-07:34:47 No:00007276[申告] |
| この実装石に限ってはc.v.一条和矢で脳内再生される! |
| 3 Re: Name:匿名石 2023/06/08-13:01:33 No:00007277[申告] |
| 浦◯懐かしいwwwww
思えばあの漫画の登場人物達って実装スク並みに酷い目遭ってるよなぁ... |
| 4 Re: Name:匿名石 2023/06/08-22:03:44 No:00007278[申告] |
| 某道〜の仔実装と違って学びも哀愁も完全ゼロなのが笑える |