タイトル:【観察】 クソ蟲仔実装を教材に自然の驚異を他の仔に教える話
ファイル:クソ蟲で学ぶ自然の驚異.txt
作者:デンスケ 総投稿数:4 総ダウンロード数:1160 レス数:8
初投稿日時:2023/05/11-23:57:04修正日時:2023/05/11-23:57:04
←戻る↓レスへ飛ぶ

「もうイヤテチっ! お外で遊びたいテチャァ!」
「止めるテチ、三女チャン!」
「ママの言う事を聞くテチ!」

 拾った段ボールや木の板を組み合わせて作ったハウスの中で、仔実装達が騒いでいた。母親の成体実装はその様子をじっと見ている。
 生まれた子は仔実装が三匹、親指が一匹、ウジチャンが二匹。親実装は厳しい冬をやっとの思いで生き延びて、今年の春に親から独立したばかりの新米ママ。初めて産んだ娘達はどれも可愛く、致命的な糞虫もおらず食料も豊富だったので今までは全て育てていた。

「テシャァァ! オネチャ達はウルサイテチ!」

 しかし、産んでから十日ほどで三女がトラブルを起こす事が増えた。他の姉妹の餌を欲しがる、ハウスの外に出て遊びたがる、注意されると癇癪を起して喚き出す。
(……悲しい事をするしかないようデス)
 今まで三女を何度も叱り反省を促してきたが、効果は無かった。そして今日で生後二週間、自分を宥めようとする長女と次女に対して三女が威嚇をしたのを見て、親実装は彼女を間引く事にした。

「テシャァァ!」
「静かにするデス、三女!」
「テッ!」
 わがまま放題で癇癪を起していた三女も、自分の三倍以上大きい親実装には逆らえない。怯えたように黙り込むが……彼女の反省はこの場限りで、明日になれば同じように騒ぎ出す事を家族は知っていた。

(さて、どう始末するデス?)
 他の仔達が寝ている内に首を捻って始末するか、子供達の見ている前で見せしめにするか。「悲しい事」の基本的なやり方はどちらかだ。

 しかし、前者は他の仔の教育に活かせない。後者はショックでウジチャン達がパキンしてしまうかもしれない。親実装である自分の恐怖と権威を高めるのは良いが、やり過ぎると娘達にとって自分は親ではなくただの脅威になってしまう。
 初めての仔育てだったため、親実装にはその辺りの匙加減がまだ分からなかった。

(そうデス。今は幸い食料が豊富デス。ワタシのママがやった方法を試すデス)
 悩んでいると、幼い日に糞虫だった姉を始末した母の事を親実装は思い出した。あれは公園の気が色づく秋だったが、春でもきっと上手く行くだろう。

「三女、明日、お昼になったら好きなだけ遊んでいいデス」
「テッ? 本当テチ!?」
「本当デス。ハウスから離れた場所でも構わないデス。一人で好きなだけ遊んでくるデス」
「やったテチ!」

 両手を上にあげて嬉しそうに万歳する三女。その様子を他の娘たちは呆気にとられた様子で眺めていた。
「ママ、いつもはハウスから離れるなって言ってるテチ」
「様子が変テチ。なんで三女チャンだけなんテチ?」
「眠いレチ」
「寝る前のプニプニして欲しいレフ~」





 そして次の日、親実装は朝から夕方までいつも通りに過ごした。そして夕方、普段はハウスの中に帰る頃になると、親実装は三女に向かって話しかけた。
「さあ、三女。好きなだけお外で遊んでくるデス」
「やったテチ!」
「ママ、ワタチも……」

「次女ちゃんはハウスからは慣れちゃダメデス。長女ちゃんと親指ちゃんもです」
「「テェ!?」」
「テププ、ワタチはママに特別愛されてるんテチ。オネチャやイモウトチャは、そこで見ているテチ」

 ハウスから離れる事を許されず肩を落とす姉妹をしり目に、三女は楽しそうに駆け回った。走り過ぎて、母実装から距離が出来たその瞬間、茂みから何かが飛び出して来た。
「ママッ、何かが三女チャンに向かっていくテチ!」
 見た事もない何かの出現に驚いた長女が反射的に母実装に叫ぶが、親実装は動かなかった。

 もし仮にすぐに駆け寄っても間に合わなかっただろうが、彼女は最初から三女を助けるそぶりも見せず、長女達を見守っている。
「あれデスか。お前達、今から起きる事をよく見ておくデス」
「テ? なんテチ?」
 拾った小枝を振り回して遊んでいた三女が気づいた時には、それは彼女に飛び掛かっていた。

「テヂィィ!? バケモノテチャァァ!?」
 三女を襲ったのは、ゲジ(画像検索する際は注意してください)だった。ムカデよりも多くの、そして長い脚を生やした虫で、獰猛なハンターでもある。通称ゲジゲジ。

「テヂャァァァ!? オテテが痛イテチィィ!」
 ゲジは長い脚で捕まえた三女の腕に噛みつき、毒を注入する。ゲジの顎の力はムカデより弱く、仔実装相手でも服の上からでは牙が肌を貫通できない事がある。そのため、ゲジが仔実装を捕食する時は服に覆われていない腕や脚、顔に牙を突き立てる。

「なんテチ!? 体が動かなくなってきたテチ!?」
 そしてゲジは毒もムカデより弱い。しかし、仔実装を一時的に麻痺させて動きを鈍くする程度の毒性はある。
「ヂィィィィ!?」
 それからゲジは生きたまま三女を食べ始めた。柔い肌を破り、腕の肉を貪る。

 三女はどうにか逃げようとするが、毒が効いている上に元々非力で短い仔実装の四肢ではしっかり組み付いたゲジを振りほどく事が出来ない。
 そのため、三女は激痛に泣き叫び悶えながら糞を出す事しかできなかった。

「ママッ、三女チャンを助けないと死んじゃうテチ!」
「助けないデス」
 声を上ずらせる次女、そして震えながら縋りつく親指をゲジから守るように立ちはだかりながら、親実装は冷徹な声で答えた。

「もう三女は助からないデス。ママやハウスから離れた仔は、ああなるデス」
 実際には、親実装が今からでも駆け寄ってゲジを追い払うか潰すかすれば、三女が助かる見込みは十分にある。ゲジの口はそう大きくないし、毒も弱い。そして実装石には強力な再生能力がある。肉を抉られても、十分な体力があれば数日もかからず回復するだろう。

「ママッ! ママァ~っ! なんで助けてくれないテチっ!? 可愛いワタチが食い殺されちゃうテチャァ!」
 しかし、「悲しい事」をすると決めた仔を親実装が助ける意味は無いし、惨たらしく死んだ方が長女達の教育になる。
 だから親実装は助けるつもりは一切なかった。

 これが親実装のママが行った糞蟲の利用法……故意に糞蟲一匹だけで行動させ、危険な動物の餌食になる様子を他の仔に見せて戒めにする方法だ。
 食料が豊富な春や秋で、対象の糞虫が「一刻も早く始末しなければならない」程ではなく、更に糞虫が人間とトラブルを起こさないよう見張れる環境でのみとれる方法である。

 一家が暮らしている場所には、公園を利用する者も滅多に近づかない奥まった場所にあるので実行する事ができた。

「ヂッ! ヂィィィッ!」
 ゲジは旺盛な食欲を発揮して、三女を食っていく。G(実装ではなく黒くて素早い衛生害虫)を獲物にした際は羽も残さず喰らうほぞ、ゲジは貪欲だ。
 しかし、獲物を食べている最中でも他の獲物を見つければ、食事中の獲物を放り出して狩ろうとする。そのため親実装は、他の仔がゲジに襲われないよう注意しなければならなかった。

 だがGよりも体積が多い仔実装は流石のゲジも食い切れなかったらしい。満腹になったゲジは三女をその場に放り出すと、現れた時と同様の素早さで草むらに戻っていった。

「いいデスカ? 三女チャンのようになりたくなければ、安全なハウスやママから勝手に離れてはいけないデス」
「「「はいテチ(レチ)!」」
 ゲジが戻ってこない事を確認した後、親実装は娘達に授業を始めた。

「あのゲジゲジは、昼間は茂みや物陰から出てこないデス。三女チャンのように、自分から草むらや物陰に近づかない限り、滅多に襲われないデス」
 ゲジは夜行性で、乾燥に弱い。だから、昼間は茂みや暗がりから動かない。それにゲジが抑え込めない中実装以上の大きさに成長すれば、襲われる事はなくなる。

「ヂ……死にたくないテチィ……」
 親実装が娘達にゲジについて教えているその時、三女はまだ生きていた。

「マ……マ……助けテチ……もっといい仔になるテチ……もうワガママ言わないテチ……」
 か細い声で助けを求めながら這いずって親実装と姉妹の元に戻ろうとする三女。しかし、実際には自分が流した体液で湿った地面を意味もなく掻くだけで、まったく移動できていない。

 そこに、新たな捕食者が現れた。
「ママ、三女チャンの死体に何かが近づいてきたテチ!」
 三女はもう死んだと思い込んでいる長女が見たのは、長い後ろ脚を持つ昆虫が三女に近づく光景だった。

「あれはカマドウマデス。ゲジゲジと同じで昼間は隠れていて、暗くなり始めると出て来るデス。ゲジゲジよりは怖くない虫デス」
 カマドウマ、通称便所コウロギは夜行性で幅広い雑食性の昆虫だ。生きている昆虫、昆虫や実装石の死骸、腐った果実、落ち葉までなんでも食べる。共食いだってする。だから特に狙って実装石を狙うという訳ではない。

 だが、死んだも同然の三女はカマドウマにとって栄養満点のご馳走だ。ゲジのおこぼれに預かろうとしたのだろう。

「テヒィ! あんなのに襲われたら信者うテチっ!」
「襲ってきたのが一匹だけなら、親指チャンやウジチャンじゃなければ大丈夫デス。でも一度にいっぱいのカマドウマに襲われたらピンチデス。その時は走って逃げるデス。あいつらはジャンプが得意だけど、着地が苦手デス。逃げられるかもしれないデス。
 皆、分かったデス?」

「「「分かったテチ(レチ)!」」」
 ゲジやカマドウマについて教える事が出来た親実装は、娘たちの返事を聞いて満足そうに頷いた。
「じゃあ、お家に帰って晩ゴハンデス。今日は若葉のサラダと赤い実デス」
「サラダ大好きテチュ♪」
「赤い実楽しみテチ♪」
 悲しい事になった三女の事を意識から外し、晩御飯に胸を躍らせる長女達。これぐらいでなければ野良生活は続けていけない。

「ヂィ……ヂィィ……」
 三女は家族が巣に帰った後もしばらくかすかな声で鳴いていたが、集まってくるカマドウマに食いつくされ、朝には血と糞の後しか残らなかった。




●実装石がいる世界のゲジ

 ゴキブリ等に加えて実装石(仔実装)も食べてくれる益虫として認知されているが、外見のエグさは相変わらずなため不快害虫扱いなのは現実と変わらない。
 噛む力が弱いのと大きさに差があるため中実装以上は襲わないが、仔実装、特に何らかの理由でハゲハダカになってしまった仔実装を餌食にする。

 逆に、実装石はゲジを滅多に襲わない。ゲジは無数の脚で素早く走るため、実装石の足では追い付けないためだ。
 しかし、ゲジはトカゲの尻尾のように足を自切し、囮にして逃げる習性があり、この足を目当てに見かけたゲジを威嚇する成体実装もいる。

 湿った環境を好むため、極稀に実装石が作ったトイレの中に入り込み、その中で養殖されている蛆実装を食べてしまい実装石に被害を及ぼす事がある。



●実装石が存在する世界のカマドウマ

 ゲジと同じく仔実装を獲物にするが、カマドウマはゲジやムカデと違って毒を持たず、一撃で仔実装に致命傷を与える武器もない。また、食べる量もゲジより少ないため、デタラメな再生力を持つ実装石にとって回復が可能な範囲の傷しか及ぼせない。

 また、食性が「幅広く雑食」なので仔実装を集中して狙う訳ではないため、害虫駆除を期待できる程ではないので益虫と呼べるかは微妙。

 また、実装石にとってカマドウマはゲジよりずっと振り払うのは容易だし、武器になる小石や棒があれば一匹なら追い払う事ぐらい出来る。
 それにカマドウマは跳躍力に優れるが着地が下手でよく転んで横倒しになったり、跳躍した結果壁に激突して命を落とす事もある。そのため仔実装でも逃げ切れる可能性は十分ある。

 逆に成体実装に捕まって食料にされる事も多い。

■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため9004を入力してください
1 Re: Name:匿名石 2023/05/12-00:19:14 No:00007149[申告]
糞虫にふさわしい末路だ
2 Re: Name:匿名石 2023/05/12-01:08:03 No:00007150[申告]
間引きと仔への躾と知識授けを両立できる良い方法デス
3 Re: Name:匿名石 2023/05/12-02:32:54 No:00007151[申告]
害蟲を襲う不快害虫達、益虫だね
悪食なカマドウマそこそこのハリガネムシ宿者なので食った成体実装が最終宿者になって欲しい。蟲だし
4 Re: Name:匿名石 2023/05/12-07:05:52 No:00007154[申告]
実装のいる世界での昆虫等の設定面白いなあ
実装サイズだとなかなかに凶悪なデカさの虫だけど母は強しだね
5 Re: Name:匿名石 2023/05/12-12:51:51 No:00007157[申告]
太古から実装石が生きてた設定の世界だと、実装石の捕食に特化した昆虫とか居そうですね
6 Re: Name:匿名石 2023/05/12-20:27:37 No:00007158[申告]
確かに虫の中にも対実装石用に偽石にダメージを与える毒を持ってるのとかいそう
7 Re: Name:匿名石 2023/05/13-12:59:23 No:00007159[申告]
日常で自然の驚異を伝聞する様を見て、こうやって山実装として派生していったのかと想像力を刺激されたのが良かった
8 Re: Name:匿名石 2023/05/22-06:45:53 No:00007206[申告]
ゲジゲジがそんな凄い蟲だとは…勉強になったデス
戻る