「レ……レェェェ……」 「レフィィィ……」 この親指と蛆を水槽に放置して一週間。二匹は餓死しかけていた。 なにせ俺は一切の接触を拒み続け、コイツらの餌といえば自身の糞しかないという環境だ。 衰弱が激しいのは親指だ。蛆可愛さに自分の食う分の糞すら蛆に分け与え殆どなにも食べていない。幻覚でも見ていたのか時折蛆への掛け布団として脱いでいた服を噛み締めるせいで服もボロボロだ。 そろそろ頃合いと判断した俺は二匹の前に立った。 「ニ…ニンゲンサン……ゴハンを…ゴハンを下さいレチィィ……」 うつ伏せに倒れたまま、顔だけを俺に向けると絞り出すような声で懇願する親指に俺は言い放った。 「その蛆を殺したら用意してやる」 「レェェェ……」 「時間は俺が見飽きた時までだ」 そう言って俺は水槽の前に無言で立つ。タイムリミットは五分かもしれない。否一分?三十秒?あるいはもっと短いかもしれない。 親指はどうしたら良いのか分からず蛆を見つめていた。 「レェェェ…」 三分ほど立った後で、ようやく親指は立ち上がり蛆を抱き抱えた。 行動が遅すぎる。野良なら例え健康体であっても同族に食い殺されていただろう。 「オネエチャ?」 「ウジチャンは良い仔レチ…ワタチの妹になってくれてすっごく嬉しかったレチ…」 撫でながら親指が告げる。 そして、蛆の体を横たえると馬乗りになって首を締め出した。 「どうしたレフオネエチャ?新しいプニプニレフ?」 しかし餓えが極限まで来ている非力なその腕ではなんの効果も得られないようだった。 「もっと力を込めないと死なんぞ。無理なら飯抜きだ」 「レェェ…!」 俺の言葉に血涙を流しながらありったけの力を込める。 すると先程よりかは首を絞められたのか蛆が僅かにだが暴れだした。 「オネエチャ。苦しいレフ。やめてレフ。プニプニしてレフゥ……」 親指の両腕は餓死寸前で全く力が入らず、蛆はまるで木綿で首を締め付けられるようにして苦しみ出す。 「ごめんレチ。でもオネエチャも限界レチィィ……」 「嫌レフゥ。苦しいレフゥ。ウジチャンオネエチャの事大好きレフゥ。知らないオバチャンに追いかけられた時に守ってくれたレフ。他のオネエチャにいじめられた時も守ってくれたレフ。ママに食べられそうになった時も一緒に逃げてくれたオネエチャが大好きレフゥゥ…!」 陸に上げられた魚のようにピチピチと跳ねながら蛆が訴える。 その言葉に親指もますます心を痛めていた。 「ウジチャン……ゴメンレチ…ゴメンレチ……」 「レヒッ…レッ…ウジチャ……オネエチャ…スキレ……」パキン こうして蛆は最愛の姉に好意を訴えながら無惨に絞め殺された。 「レェェェン。レェェェン」 蛆の亡骸を抱き抱え親指が泣く。見事な姉妹愛だ。 「それより飯だ。食わせてやるよ」 そう言っておれば親指から蛆を取り上げた。 「レェェェン!返してレチッ!ウジチャン返してレチィ!」 「黙ってろすぐに返してやる」 餓死寸前とは思えぬ声をあげる親指を無視してそう言って俺はポケットから爪楊枝を取り出し蛆の口から尻尾までを串刺しにする。 その様子を親指は声も出せずに目を見開いて驚愕した様子で見つめていた。 「ほら、約束の飯ださっさと食え」 潰さないように水槽に置いて告げてやる。 もはやなにも写していない蛆の虚ろな瞳を見つめながら親指が口を開く。 「これはウジチャンレチ…食べ物じゃないレチ…」 「違う。そいつはただの肉だ。お前が蛆から変えた肉塊だ」 「レェェェ……………………」 数分の沈黙のあと、親指は音もなく蛆の隣に倒れた。 水槽に吊り下げられていた容器の中の偽石は真っ黒に変色し粉々に砕け、栄養剤の中を漂う粉末へと変わっていた………。

| 1 Re: Name:匿名石 2023/05/05-04:59:04 No:00007125[申告] |
| うじちゃんを食べる非情さがあれば生きられたのに… |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/05/05-08:39:51 No:00007129[申告] |
| 糞を食わせて延命させてた割にあっさり殺した上に食べないとか…
ウジちゃんの命を無駄にしただけ まさかご馳走でも出てくると思っていた? |
| 3 Re: Name:匿名石 2023/05/05-18:45:21 No:00007130[申告] |
| 短いながら上手いなあ
想像しやすい言葉を選んでくれてる GJ! |
| 4 Re: Name:匿名石 2023/05/10-10:15:53 No:00007140[申告] |
| 最も秀逸なスク
確か、動画化されていたような…かなり古いスクだと思う |
| 5 Re: Name:匿名石 2023/05/10-10:20:10 No:00007141[申告] |
| >動画
1911ってタイトルだったかな? ここの1911? |
| 6 Re: Name:匿名石 2023/05/21-03:44:49 No:00007201[申告] |
| こういうのをもっと読みたい(絶賛) |