公園に男が現れた。傍らには禿裸の実装石。 「デププ。ハゲハダカデス」 「みっともないデス。死んだ方がマシデス」 野良達は口々に男の禿裸実装を嘲笑う。 こんな奴を連れているようでは望み薄だと飼い主である男をも嘲笑い反対側のベンチに腰かける男の方へと向かう野良達。 だが男と禿裸のほうは何処吹く風といった調子で野良の嘲笑などに全く聞く耳を持たない。 そうしている内に男はベンチへと腰掛け、その隣に禿裸を座らせリンガルアプリを起動する。 「おいクソニンゲン。ソイツの代わりにワタシを飼うデス。髪も服もある上に誰もが平伏する美貌を持っているワタシの方が圧倒的に飼いに相応しいデス」 先程嘲笑った一団とは別の図々しい実装石が男に要求してきた。 確かに野良には髪も服も揃っているがその髪はゴミや砂や埃を噛んでガチガチに固まり服も同じく汚れ放題で本来の色をした箇所を探すことすら困難だ。 美貌に関しては全く分からない実装石のフォーマットフェイス。まぁどうせ可愛くはないだろう。 男は爪先で野良の額を小突き転倒させた。 「デッ!?」 「五月蝿いなお前は。俺は禿裸にしか興味ないんだよ。きったねえ格好を見せつけるな」 心底面倒くさそうに男が答える。 「ふざけんじゃねぇデスッ!めんたま腐ってんデスかクソニンゲンッッッ!どう考えてもワタシの方が美しいデスッ!」 野良の言い分を無視し男はウェストポーチから実装フードを取り出し禿裸へと手渡した。 「ありがとうデスゴシュジンサマ」 行儀よく受け取り租借すると恍惚な表情を浮かべて味を堪能する。 「デッスーン…」 その表情に思わず野良も涎を垂らす。 しかし安物の乾燥フードとは違うのか兎口である実装石が租借しているにも関わらずカスがポロポロと落ちる事もなくおこぼれにありつくことも出来ない。 「お、お前それを寄越すデスッ!」 野良が吠えたタイミングで男が新たに取り出したフードを落としてしまった。 それはてんてんと転がっていき野良の目の前へ落ちると、野良は猛烈な勢いで抱きつくようにして貪った。 「デ、デ、デェェェェェェ!!」 突然の絶叫。 毒ではない。旨すぎるのだ。 なにせ男が用意していたのは最高級の実装フードでありそこいらの愛護派が適当に用意した実装フードとは訳が違う代物。野良であれば一生無縁なはずのものであった。 「ニ、ニンゲンッ!もっとそれを!もっと寄越すデスゥ!」 滝のように涎を垂らしながら野良が要求する。 すると以外にも男は更にフードを落とし、数m先にも幾つか投げだした。 これには遠巻きに見ていた実装石達も我先とフードへ群がっていく。 男は更にフードを投げる。それも先程よりも自分に近い位置に。 ボヤボヤしていては近くにいる他の実装石に取られてしまう!そんな焦りから様子を見るに留めていた実装石も参加していき男の周囲には30匹以上の実装石が群がっていた。 そうなってしまえば答えはひとつ。要求のエスカレートだ。 「もっと!もっと寄越すデスクソニンゲン!この美味しいのをもっと寄越すデスゥ!」 「飼ってデス!飼ってデスゥ!そして毎日これをくれデスゥ!」 「飼っテチィ!もうここの生活は限界テチィ!」 「ワタシは良いからこの仔達だけでも飼ってデスゥ!」 口々に要求を叫ぶ実装石達を前に男は頭をかいて呟いた。 「まいったなぁ。俺、禿裸にしか興味ないんだよなぁ」 その言葉にどの実装石達も「デ………!?」と息を呑んだ。 「だってそうだろう?髪の毛があると蟲が住み着くし服があると怪我も確認しづらい。流石にパンツは穿いてもらうけど他は邪魔なだけだ」 男がとくとくと語り、実装石達はそれをただ静かに聞いていた。 その中で動くものがいた。最初に男に駆け寄った野良だ。 「デ…デズァァァァァァ!!」 彼女は咆哮すると意を決して後頭部の髪を引き千切り服を脱ぎ捨て地面に叩きつけた。 「「「デデェェェェ!?」」」 これには他の実装石達も驚く。 なにせ髪と服は実装石にとってかけがえの無い財産だ。それを自ら放棄するなど考えられない。 「デッスス~ン。これでワタシもハゲハダカデス~。はやく飼うデスクソニンゲン~」 野良が気色悪い笑みを浮かべて男に要求する。 どうやら先程の食事が衝撃的すぎたのと、あれを毎日食べられるという妄想の前には髪も服もどうでも良いと踏んだのだろう。 「…デッスン!」 「デヒィィ!?」 それに続くように他の実装石も髪を引き抜き服を破り捨てる。それからはもうお祭り騒ぎだ。 「髪なんて、髪なんていらないデスゥゥゥ!」 「服を脱ぐデス!破くデス!こんなの着てられないデスゥ!」 「お前達はやくハゲハダカになるデス!冬を越えるにはこれしかないデスッ!」 「痛いテチィ!」 「ママァ!おケケとっちゃ嫌テチィィィィ!!」 「ついでにパンツも脱ぐデス!ワタシの魅力にニンゲンもメロメロデス~ン」 男の前に達実装石が我も我もと禿裸になっていく。 だがそこにはまだ問題があった。 「う~ん。可愛いには可愛いんだけど、みんな前髪が残ってるのがなぁ…」 「「「デデェェェェ!?」」」 男が頬をかきながら落胆の声を上げる。 実装石はその手足の短さから自分の前髪に手が届かず抜くことが出来ないのだ。 「おいお前っ!ワタシの前髪を抜くデスッ!」 「嫌デスッ!自分だけ飼いになるつもりデスッ!それよりワタシの前髪を抜くデスッ!」 「テチィィ!ママァ!無理デチィィィ!ワタチ達じゃ抜けないテチィィ!」 「頑張れぇぇ!頑張るデスゥゥゥ!親仔で飼いになるんデスゥゥゥ!」 自分では抜けないので至るところで他の実装石に自分の髪を引き抜くよう要求する。 だがそこは自分が一番の実装石。一匹たりとも協力しようという様子は見せず、仔実装の非力さではたとえ二匹がかりでも親の毛を抜くことは出来ない。 「デププ。半分ハゲのハダカ達が騒いで惨めデスゥ」 その中の一匹が自分のことを棚にあげて嘲笑う。 「お前も同じデスァァァ!!」 すると怒り狂った一匹がその実装石の前髪を引っこ抜く。結果的にその実装石は禿裸第一号となった。 「デヒャァァァァ!髪がないデスゥゥゥ!でもこれで飼いデス!約束守るデスクソニンゲン!」 「そうはさせないデシャァァァァ!」 禿裸一号を他の野良が殴り倒す。それからは目的も忘れて野良同士の大乱闘だ。 「死ねぇ!死ねデスハゲハダカぁ!」 「デシャァァァァ!それはお前もデスゥゥゥ!」 「不細工なお前よりも美しいワタシの方が飼いに相応しいデスゥゥゥ!」 「鏡見てから言えデジャァァァァァ!!」 もはやただ相手を殴り倒すことだけが目的になった惨状で死体が幾重にも重なっていく。 特に猛威を振るっているのは仔実装二匹を伴っていた親実装だった。 情の深い親なのだろう。その姿は他の実装石以上に力に溢れ、周囲の実装石を圧倒的な力で凪ぎ払っていた。 しかもその体に力を与えていたのは精神だけではない。 「ワタシ達家族の安寧の邪魔をするなデシャァァァァ!」 「ママァ!もうやめてテヂヴェバァァァァ!!」 「いだいテヂィィ!死んじゃうテヂォボォォォ!」 なんと親実装は仔実装をモーニングスターのように振り回し他の実装石を殴り倒していたのだ。 しかも手を繋いだまま戦闘モードに入ってしまったため無意識の行動らしく一切の容赦がない。 既に右手に持つ長女は左目が潰れ歯も何本か喪失している。 左手の次女も顔のあちこちを大きく腫らし、胸部で殴打させられたせいか吐血している。 「ワタシ達三匹で幸せに暮らすんデズァァァァァァ!!」 その夢を自らの手で打ち砕こうとしていることにも気づかずに親実装が叫ぶ。だがその快進撃も長くは続かなかった。 「いい加減にするデシャァァァァ!」 「チベェ!?」 7匹目を屠り8匹目を打ち倒そうとした刹那、テレフォンパンチが持っていた次女の顔面を正確に捕らえその頭蓋骨を粉々に砕いたのだ。 「デェェェェェ!?」 親は自分の攻撃を防がれた事でようやく自分が手にしていたものの正体を思い出したのか絶叫した。見れば長女は既に足の根本から千切れていて体は何処かに飛んでいったらしく影も形もない。 親実装は地獄絵図の中心地にも関わらず膝をついて次女を抱き抱えた。 「次女!次女ぉ!しっかりするデスゥゥゥ!」 血涙を流しながら我が子に声をかけるが返事はない。 なにせ次女は頭が完全に潰れ至るところから脳漿と血を吹き出し、同じくぺしゃんこになった胸部はアバラが完全に砕け一部は体外に飛び出している。 「酷いデスゥゥゥ!あんまりデスゥゥゥ!誰がワタシの仔をこんなにしたデスゥゥゥゥゥゥ!!」 「お前デシャァァァァ!」 ツッコミと共に野良が親の背中を蹴り倒す。 すると周囲にいた他の野良達も親実装を次々と踏み潰していった。 絶命こそしなかったが親実装の仔実装ハンマーによって重傷を負わされたもの達だ。 「死ねっ!死ねデス!お前のようなのは死ねデスゥゥゥ!」 「やめてデスゥ!ワタシの仔が潰れちゃうデスゥゥゥ!」 「もう潰れてるデシャァァァァ!」 一方的に親実装は踏み潰され続け、その死体は仔実装と完全に一体化しどちらの肉片がどちらのものか分からないほどになっていた。 それからも殺し合いは続き公園の地面は実装石の血で染まっていった。 「ワタシが…飼いデ……」 死合開始から30分ほど。度重なる深手から最後の実装石の偽石が崩壊し男の前に立っている実装石はいなくなった。 「そんなつもりじゃなかったんだけどなぁ…」 目の前の惨状にポリポリと頭をかく男。 「ゴメンなエメラルド。お前の友達候補全滅だよ」 「デェェェンデェェェン!」 男にエメラルドと呼ばれた禿裸の飼い実装は惨状から目を背けるようにして血涙を流している。 元々今回はエメラルドが友達を欲しいとねだったことから公園にやって来たのだ。 今までしっかりと躾られてきたエメラルドが我が儘を言うのは珍しく、一匹だけでは寂しかろうと男も快諾したのだ。 その為糞蟲はともかく、それなりに頭の良い個体であれば男は飼ってやろうと思っていたのだがご覧の有り様だ。 「ゴシュジンサマァ…もう嫌デスゥ…おウチに帰るデスゥゥ……」 エメラルドが涙を浮かべながら男に懇願する。 厳しい躾を受けた結果か、パンコンこそしていないが本気涙である血涙を流しており、その様子も相まって男はため息をついて答えた。 「まぁ、こうなった以上仕方ないか」 わがままを聞いてやって来た公園だがこれはエメラルドの想定外。ならばそれを責めるのは酷と判断したのだ。 だが帰ろうとした矢先、死体の山から声がした。 「テ…チ……」 なんとその声の主は先程親に振り回されていた長女だった。 全身が自分や他の実装石の血にまみれているのは勿論の事、左目は潰れ、右目も大きなたんこぶに視界の殆んどを塞がれている。歯もあちこちがへし折れ血が止めどなく溢れ出ており左肩は粉砕骨折しているのか妙な位置から垂れ下がり、右足も引きちぎれていて痛ましい姿だ。 「飼っ…テチ……飼っテチィィ!」 血涙を流しながらか細く、しかし必死に男に懇願する。 男の前に30匹はいた実装石の中で生き残ったのはこの一匹のみ。大事な母親も妹も肉塊に成り果てた。なにより禿裸になった仔実装などこの公園で生きていくことは叶わない。 それら全てを受け入れての必死の懇願であった。 「デェェェェェ!生きてる仔がいたデスゥゥゥ!」 ベンチの上でエメラルドが歓喜する。友達ができただけでなく、自分のわがままで30匹あまりの同族を無駄死にさせたなどと思いたくはなかったのだろう。 「ゴシュジンサマァァァ!この仔も!この仔も飼ってデスゥゥゥ!」 エメラルドが必死の形相で訴えかけると男はポリポリと頭をかいた。 「まぁ、約束だしなぁ」 特に逡巡するでもなく許可が降りた。 「やったデスゥゥゥ!これでお前は飼い実装デスゥゥゥ!」 「テェ…ワタチが飼い実装テチ……?」 「そうデスゥゥゥ!飼い実装デスゥゥゥ!もうお腹ペコペコにならないデスッ!オバチャン達に狙われなくて済むデスッ!あったかいおフトンで寝られるデスゥゥゥ!」 「テェェ…」 仔実装が現実感の無いまま涎と血涙を垂らしつつ飼い実装になれたという現実を噛み締める。 同族の誰もが憧れ、胸に抱えたまま死んでいく。親や妹、そしてここに来るまでに死んでいった姉妹も届かなかった理想。その場所に自分はいるのだ。 もう何に怯えることもない幸せな生涯が保証される。野良として生まれた実装石には想像すら出来ない理想郷である。 それを仔実装は一分以上をかけてその現実を飲み込んだ。 「やったテチ!嬉しいテチィィ!」 「ワタシも嬉しいデスゥゥゥ!はじめてのお友達デスゥゥゥ!」 「オバチャン!よろしくお願いしますテチィィ!」 「こちらこそよろしくデスゥゥゥ!ゴシュジンサマ!この仔に名前をつけてくださいデスゥゥゥ!」 名前。それは飼い実装の証。飼い実装としての生活が始まる最初の儀式だ。 これには仔実装も感無量だ。 「やったテチィィ!お名前テチィィ!お名前が付くんテギァァァァァァ!!!」 だがその直後、何処からともなく別の仔実装が降ってきた。 降ってきた仔実装は禿裸の背中を直撃しその半身を完全に押し潰していた 潰された下半身からは糞袋を潰されたせいか糞が止めどなく溢れ死体の山をより汚していき、上半身のほうはピクピクと痙攣している。 絶句するエメラルドを置いて男が顔をあげてみれば反対側に座っていた男がいつのまにか立ち上がり手にはキャッチャーミットがはめられている。 どうやら送球を誤ったらしくペコペコと頭を下げているが此方は気にするなと手を振るばかりだ。 対して潰れた仔実装はまだ息をしたいた。 「飼っテチ…飼っテ……」 しぶとく男に手を伸ばし懇願するもそこまでだ。口から血を吐いたのを最後に完全に事切れた。 「デェェェェェェェェェェェェェン!!デェェェェェェェェェェェェェン!!」 「本当に飼ってやるつもりだったんだけどなぁ」 さめざめと泣くエメラルドの隣で男はポツリと呟いた……。

| 1 Re: Name:匿名石 2023/04/19-22:03:26 No:00007066[申告] |
| やっぱり人間側には悪意がないのに実装石自身が破滅に向かうのが
悲哀があってすごくいい 虐待もいいが、観察ジャンルの面白さはそこなんだろうなぁ それにしてもキャッチャーミットと送球はいいけど どこからともなく別の仔実装?! |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/04/20-06:25:35 No:00007067[申告] |
| 意味不明過ぎてつまんなかった
時間を無駄にした |
| 3 Re: Name:匿名石 2023/04/20-08:41:12 No:00007068[申告] |
| 実装石が自分で自分の前髪を抜けない事に改めて気が付いて驚きましたw 仔実装モーニングスターも面白かったです。
そして公園で汚物(仔実装)を投げるとはなかなかのクソ人間もいたものです。 |
| 4 Re: Name:匿名石 2023/04/21-01:37:54 No:00007070[申告] |
| 糞蟲の低知能ぷりと人間様の愛の深さを感じる作品だったデス |
| 5 Re: Name:匿名石 2023/04/21-12:24:29 No:00007071[申告] |
| やっぱり野良実装同士の潰し合いは素晴らしいエンタメだなぁ |
| 6 Re: Name:匿名石 2023/04/22-06:20:53 No:00007075[申告] |
| 飼い主の男が悪気が無いってのが本当とは思えないなぁ
実装石飼っててこの結末に想像が至らないはず無いだろうし無頓着って言うには度が過ぎていてちょっと人間性が掴めない。 前髪云々は絵師によるビジュアル差の話だと思うけど、あくまで概念としては手の届く範囲に毛がありそう |