一匹のやせ細った実装石が、腕にこれまたやせ細った仔実装を抱きしめるようにして走っている。 後ろからはこの公園の野良だろうか、デスデステチテチと追ってくる。 デハ…デハァ…と息も絶え絶えに苦しそうに走るやせ細った実装石。 野良の多い場所ではよく見られる光景ではある、涙を流しながら必死にその親子と思われる親実装が逃げようと走る。 しかし親実装も気づいていた、自分の石の寿命に、仔に必死に栄養を与えようとご飯を上げていたが自分にはまるで足りなかった。 親実装が追われながらも、ある個所に目が行く。 そこは公園の外…公園の出入り口、唯一の逃げ場所、人間のいる世界に出る事…。 出てしまってはきっと自分は助からないだろう…息を切らしながら腕で泣きもしない仔実装を見る。 生きてはいるが仔実装も限界に近いだろう。 意を決して出入り口へと走る親実装。 『あいつ外へ出る気テチー!!』 『逃がすんじゃねーデス!今日のご飯デスウ!!』 後ろから追いかけてくる野良も予想外の行動に、必死に後を追う。 親実装はついに公園の外へと出る、しかし自分でも分かる、中の石の限界が近い…、目が霞んできた。 昔々にママから言われて外へは出なかったが…もうこれしか無かった。 出ると目の前には白い線が何本かある道がある、横断歩道だが実装石には理解出来ないだろう。 大きな鉄の塊がいくつも横断していく…、しかし後ろからも野良達が追いかけてくる。 迷ってる時間はもう無かった、逃げようと横断歩道を限界を超えようとする体に鞭を打って渡る。 『あいつ向こう岸で逃げるテチィーー!』 『デ…! デェ!?待つデス! …あれは!』 『デェ… デェェェェエ!? なんでいるんデス!? に、逃げるデスゥゥゥ!!!』 親実装が横断歩道を渡り切ろうとした時に後ろからの声が、引いていくのを感じた。 不思議がり運良く渡り切った先で後ろを振り返る。 霞む視界でも、緑色の塊が公園の奥へと逃げていくのが見えた。 ……逃げ切れた…、安心してへたりこむと、もう足の感覚が無いのを感じた。 動けない…動かない…しかし動かなければ仔が死んでしまう…。 『デェェ…デゥゥ…デズゥゥゥ…』 足を尽き欠けそうな力を振り絞り、泣きながら腕で叩くが何も変わり無かった。 その時頭上に影が差す。 上を向くと…人間がいた、こちらを見下ろしじっと見つめている。 霞んでいて顔はよく分からない…だがもうこれしか無い…無いんだ。 最後の力を振り絞って、親実装は人間に声を掛ける。 『ニ…ニンゲンサン…恥を…忍んでお願いが…あるデス…』 そう言って死んだように眠る仔実装を人間に親実装が差し出した。 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— 『…コイツまだ生きてるんテチ…?』 「まだ石は割れてないようだ、多分なんとかなる…』 『ゴシュジンサマは物好き過ぎるテチ…』 仔実装が久々に暖かく柔らかいものに包まれてると感じて、やんわり目を開ける。 明るい場所に、ぼんやり二体の影がある。 だけど体が動かない…ママは何処へ行ったのだろう…。 「ほら、目は開けたんだ、まだ大丈夫だ」 『テ…テェ…こ…ここ…何処…テ……チュ…』 「何も心配する事無い、今は眠りなさい」 そう言って頭を柔らかく撫でられた、仔実装はその時ママを思い出していた。 ママの暖かく、大きな手…優しい手…目から一筋涙が流れる。 そうしてその仔実装は何かを安心したかのように再び目を閉じ眠りに落ちた。 ———————————————————————————————————————————————————————————————————— 「ほら、これお食べ」 見た事も無い物を男が仔実装の目の前に差し出す。 仔実装はピスピス言いながら、まず匂いを嗅ぐ。 甘く優しい良い匂い…今まで嗅いだ事の無い美味しそうな匂い…。 警戒を解いてペロッと一舐めする。 『…テェェェェ!美味しいテチュ!テチューーーン♪』 体は包帯に巻かれて痛々しいが、実装石の回復力なら食べれるようになればもうすぐ大丈夫になるだろう。 嬉しそうに包帯の巻かれた仔実装は、次へ次へと忙しく口に運ぶ。 『テボッ!ケフ!ケッフ!テッフ…テェェェ…』 「おいおい、慌てなさんな、誰も取りゃしないよ」 男の優しい声を聞いて仔実装はまた嬉しそうにご飯を舐め取り始める。 余りに美味しかったのか、いつの間にかブリュブリュとパンコンしながら…。 「あーこれは元気になったらトイレトレーニングだな…」 『だから言ったテチュ、こいつはトイレもちゃんと出来ないクソムシテチ!』 「ミミも最初は出来なかっただろうが」 『…昔の事は忘れたテチュ…』 そんなやり取りも聞こえていないだろう包帯を巻いた仔実装は、耳をピコピコ動かしご満悦で久々の美味しい食事を楽しんでいた。 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— 「さぁもう大丈夫だろう」 それから2日も経つと仔実装はそのケースの中で、すっかり元気になっていた。 男がケースから出して、巻いていた包帯を取る。 体には特に大きな怪我は…もう無い、流石回復は早い。 「うん、もう大丈夫だな」 『ニンゲンサンありがとうテチ!』 仔実装は嬉しそうにジャンプして跳ねまわる、しかしそうなると一つ心配事を思い出す。 『ニンゲンサン…ママは何処行ったテチ?』 「ママか… ママはね君を必死に助けようとして虹の橋を渡ったんだ」 『ニジノハシ…?何処テチ?ワタチママに会いたいテチ!』 そう言って駄々をこねる様に泣き始める仔実装。 『テェェェェン!ママァ!ママァ!何処テチィ!ワタチを置いて行っちゃダメテチィィ!!』 テエエンテエエンと泣いていると、急に仔実装は頭を後ろから叩かれる。 『テチャ!?…テェェ…何テチ…?』 『オマエうるさいテチュ!ゴシュジンサマが折角助けてくれたのに泣くなテチ!』 『テェェ…?オバチャ誰テチ?』 『オバ…!オバチャじゃねーテチ!!ふざけるなテチ!!』 後ろから頭を叩いた仔実装が地団駄を踏みながらテチテチ怒る。 この仔実装の名前は”ミミ”、この家で飼われている仔実装だ。 泣いていた仔実装だが、なんだか目の前で踊る様に暴れているのを見ているとなんだが面白くなってきたようだ。 『テチチ!面白いテチュ~、ワタチも踊るテチィ~♪』 『踊ってる訳じゃねぇテチュ!』 そう言って一匹は怒りながら地団駄を踏み、もう一匹は泣き止み同じように踊り出す。 男はそれを見てクスッと笑い、意外といい姉妹になりそうだと思った。 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— 仔実装に新しい実装服を着せて男が机の上で仔実装を見つめる。 その傍らには腕の服を掴んでいるミミもおり、睨むように仔実装を見つめている。 「さて…ちょっとは落ち着いたかな? 俺は君のママに言われて所謂託児をされたんだ」 『タクジ…?テチ?」 「まぁ簡単に言えばママに育てて欲しいと言われたんだよ、だから君に不満無ければ飼ってあげてもいい もちろんママには言われたが公園に戻ってもいい、怪我は治してあげたしね」 『テェ…ムズカシイ事はわかんないテチ…、でもママがそう言ったならニンゲンサンと一緒にいたいテチ…』 それを聞いたミミが一瞬”テェ!?”と声を上げる。 「そうか、ならここで飼ってあげよう、ただ色々覚えてもらう事はあるからちゃんと覚えてくれよ」 『分かったテチュ!ニンゲンサン、ありがとテチュ!』 そう言って男に対してニコっと笑う仔実装だったが、ミミが今度は声を荒げて叫ぶ。 『ちょ、ちょっと待つテチィィィ!!! ゴシュジンサマの愛する飼い実装はワタチだけで十分テチュア!!』 そう言って叫ぶミミに顔を向ける男と仔実装。 仔実装はポカンとした顔をしている。 『テェェ…でもニンゲンサンが飼ってくれるっ言ったテチ…』 『そう言う問題じゃないテチ!これはワタチのコケンに関わるテチィ!ワタチは反対テチィィ!!!』 「そうか?お前らいい姉妹になりそうじゃないか?」 そう言って笑いながらミミに言う男。 ミミは目を丸くして、男に驚いたといった表情で見つめる。 『テチャアアアアアア!?姉妹テチ!?誰がこんなやつと…』 『テェ!?オネエチャテチ! ワタチママ以外誰もいなかったから嬉しいテチ!オネエチャ!オネエチャ!!』 男に文句を言うミミに対して、姉が出来た事に嬉しさで顔がパァっと明るくなる仔実装。 それ聞いたミミが仔実装の方を振り返り再度文句を言い始める。 『オ、オネエチャ!? ふざけんなテチ!誰がオネエチャテチ!オマエとは血も繋がってな…』 「オネエチャか、いいな!ミミじゃあ、お前は今日からこいつのお姉ちゃんだ」 後ろから男が楽しそうに手を叩いて嬉しそうに言った。 またも振り向き、汗をタラっと垂らして男を目を広げてみるミミ。 『ゴ!ゴシュジンサマ!何を言うテチ!やめテチ!』 『オネエチャ♪オネエチャ♪』 男に抗議をするミミ、しかし嬉しそうにミミを姉とし腕を組もうとする仔実装。 ミミは男に抗議すると共に鬱陶しそうに腕を払おうとする。 「じゃあ決まりだ…名前が無いと不便だな…そうだなモモでいいか、今日から宜しくなモモ それと オ ネ エ チ ャ ン!」 『テェェェェェ!?!?!?』 『テェェ!?ワタチ、オナマエも貰えたテチ…?すごいテチ…お寿司とステーキが一緒に来たみたいテチュゥ…♥』 姉妹と名前が貰えたモモは顔をウットリとさせて天にも昇るような顔をしている。 対照的に髪と服を同時に失ったような絶望的な顔をするミミ。 「もうそろそろ夕飯にするからなー、仲良く遊んでろよー」 そう言って床に下して部屋を出ていく男。 出て行こうとする男にようやく気付いて必死に追おうとするミミ。 『待っテチ!待っテチ!ゴシュジンサマ!これはどういう事テチャアアアアア!!』 『オネエチャ♪オネエチャ♪ワタチはモモチャテチュ♪』 『これはどういう事テチャアアアアアアア!!!???!!!???』 閉めたドアの向こうからもミミの絶叫が響き聞こえた。 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— 「おお、モモお前も大分トイレ上手くなったなぁ~」 そう言ってトイレの終わったモモの頭を撫でてやる男。 モモは興奮気味に鼻をピスピス、耳をピコピコさせて嬉しそうだ。 その場でピョンピョン跳ねて喜びを表現している。 「ゴシュジンサン!ゴシュジンサン!ワタチトイレ上手くなっテチ!もっと褒めテチュ~ン♪」 しかし飛び跳ねた下には緑の跡が出来ている。 それをため息交じりに見る男とミミ。 「いや…そうだな…後始末も上手くなったらもっと褒めてあげるな…」 聞こえたのか聞こえないのか嬉しそうな顔をしたモモはまだ飛び跳ねている。 ミミも顔を上げて男を見て… 『ゴシュジンサマ!ワタチがちゃんとこいつにトレーニングしたテチ!ワタチも褒めて欲しいテチュ!』 「おお、そうだな ミミも立派なお姉ちゃんだ」 そう言って男が手を伸ばしてミミの頭を撫でる。 ミミも鼻をピスピスさせて、耳をピコピコ動かすがモモとは対照的に体をくねらせて喜ぶ。 『テチュ~ン♥ ゴシュジンサマの言った事なら仕方ないテチュゥ♥』 顔を赤くさせてクネクネ喜ぶミミ。 二匹が違った喜び方を見ながら小さく笑う男。 ちなみに二匹は大きさも異なっていた、ミミの方が大きく、モモの方が一回り小さい。 きっと育った時の栄養の取り方も違ってきていたんだろう、だからこそ姉妹と言う言葉がピッタリ合っているように見える。 …そんな事を考えていたらピンポンと音が鳴った。 「おっと…荷物か、ちょっと待っててくれよ」 男が立ちあがり部屋を出ていく。 そんな男を目で部屋を出ていくまで、二匹は目で追い続ける。 『テェェ…本当優しいゴシュジンサンテチ…ワタチ本当シアワセテチューン♥』 『…お前慣れ慣れしいテチ…だけど優しいのは本当テチュ、昔”ギャクタイハ”だって言ってたのが信じられないテチィ…』 『テ?オネエチャ?”ギャクタイハ”テチ? ゴシュジンサンあんな優しいニンゲンサンテチ!嘘でもそんな事言っちゃダメテチュ!』 怒り気味にモモはミミに言うが、モモはそれを見てハァっとため息をつく。 そうしてマジマジとモモの顔を見つめ—— 『だからオネエチャって言うなって言ってるテチ …まぁお前知らないのも無理無いテチュ、前にゴシュジンサマがワタチに話してくれたんテチ 一人で彷徨っていたワタチを助けてくれた優しい優しいニンゲンサンテチュ… でも昔は”ギャクタイハ”だったって言ってたんテチ』 何処か遠いところを見つめるような目をして呟くミミ。 モモはそれを覗き込むようにミミに問いかける。 『”ギャクタイハ”って前にママから聞いた事あるテチュ、でもゴシュジンサンそんな事した事無いテチュ!優しいテチュ!』 珍しく能天気なモモが怒ったような表情で、ミミに言い返す。 ミミはそれに気づき、モモを見つめて言う。 『本当テチ、聞いても話してくれるか分からないテチュ…だけど昔は”ギャクタイハ”だったけどもう止めたって言ってたテチ だからワタチもゴシュジンサマを信じで…そして…あい…』 何かを言おうとする前にモモが横から口を出す。 『そうなんテチ!? …そんな風には全く見えないテチュゥ!』 モモは驚いたような顔で手を顔の横に置いてワナワナ震える。 再度邪魔をされた事をため息ついて、ミミは続ける。 『オマエ…まぁ良いテチ… 止めた理由はよく分からないテチュ、だけど”ジッソウジン”にあったからって言ってたテチ』 『”ジッソウジン”…?何テチ?それ何テチ?』 初めて聞いた言葉に興味津々になるモモ、ミミの方に顔を向けて答えを聞きたいとばかりに問いかける。 モモはキラキラして構って構ってと言ってるような目をみて、少々余計な事を言ったなと言う顔をする。 『ワタチも知らないテチ…もうその後は聞いても何も言ってくれないテチュ、あと変に聞こうとすると機嫌悪くなるからお前も聞くの止めるテチ』 『オネエチャも知らないテチ…?気になるテチ…気になるテチ!』 言ったのも聞かずにまだ興味津々に目を爛々とさせ、踊る様に足をバタバタさせながら落ち着かなくなるモモ。 ミミはそれを見て、(余計な話を言っちまったテチ…)と若干後悔していた。 その時不意にドアが開き、男が帰ってくる。 「すまんなー大きい荷物だったでな」 それを見たモモが走り寄りながら、男に声を掛け— 『ゴシュジンサン!ゴシュジンサン!昔はギャクタ…』 『言ったそばからやってるんじゃねーテチ!このオバカテチャアアアア!!!』 『テビャァ!?』 即言うなと言われた事を言おうとしたモモを走って後頭部に見事なドロップキックを決めるミミ。 同時に綺麗にブパッっと糞を漏らすモモ。 「おお…よく分からんが綺麗に決まったな…」 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— お昼にご飯の用意をして、男が部屋に向かうと微かに変な声がする。 ァァァァァ ャァァァァァ! 「…?なんだ?」 ご飯の器を持ちながら部屋を開けると、モモが四つん這いになって叫んでいた。 『ポピャアァァァァァァ!!! ポピャアァァァァァア!!!』 変な雄たけびを必死な顔で叫んでいるモモ。 『テーピャピャピャピャピャー!苦しいっ!お腹!お腹痛いテチィィ!テーチャッチャチャチャ!!』 その横ではミミがお腹を抱えて笑い転げている。 …?一体どんな状況なんだ? 男が床に器を置いて、椅子に座る。 眺めていると、またあの変な雄たけびを上げ始めるモモ。 『ポピャ!ポピャアア!ポピャアアァァァァァア!!!』 血管が浮きそうなくらいに体を震わせ叫んでいる、そして相変わらず笑いながらコロコロ転がるミミ。 なんだか見ていると笑いがこみ上げてくる…男も思わず釣られて笑ってしまう。 「ブフッ…モモ…お前…!なんだ…!それ…!」 笑いを堪えながら男がモモに問いかける。 『ポピャ…ゴシュジンサンもオネエチャも酷いテチ!ワタチ、オネエチャが練習しろって言われた威嚇をやってんテチュ!』 「威嚇って…!お前…ブッ…フフフ…!」 「テチャチャチャチャチャ!テェーチャチャチャ!苦しいテチ!面白過ぎるテチィ!!!」 口に手をやって笑いを堪える男に、相変わらず涎も垂らしながら笑い転げるミミ。 そんな二人を見てモモが文句を言う。 『何テチ!何テチィ!ゴシュジンサンもオネエチャも!ワタチは言う通りやっただけテチュ!』 立ち上がりピョンピョン跳ねて、二人にキィキィ怒り始めるモモ。 ミミもやっと収まってきたのか立ち上がってミミを見ながら涎を拭く。 『オマエ…威嚇の才能無さすぎるテチィ…それじゃあ自分の身もゴシュジンサマに何かあっても助けられないテチュ』 そんな言葉にショックを受けたのかガーンとした表情を浮かべ、一瞬固まるモモ。 普段はそこまで怒らないモモも、流石に馬鹿にされたのが分かりミミに文句を言う。 『そんなに言うならオネエチャが手本見せるテチィ!オネエチャだって上手く出来ないテチュ!』 『だからオネエチャって言うなテチュ…よーく見てるテチ、こういうのは相手を睨みつけるようにして…」 そう言うとミミがおもむろに四つん這いになり…顔を上げる、そして。 『テシャアァァァァァァァ!!!テジャアァァァァァァア!!』 モモに向かって大きく叫ぶ、これが威嚇だと言わんばかりに。 吠えられたモモは一瞬大きく体を震わせ、ミミの威嚇を耳を両手で塞ぎながらじっと見る。 『ァァァァ!…テフゥ…どうテチ?これが正しい”威嚇”テチ!これでどんな奴もイチコロテチュ! 手足に力を入れて踏み込んで、お腹から声を出すテチュン!』 「おーミミ、やるねぇ」 誇らしげに胸を張り、テヘンとモモにどや顔をする。 しかしモモは、またキラキラと目を輝かせてミミを見つめていた。 『オネエチャ!すごいテチ!ワタチも!ワタチも!頑張るテチ!!!』 ミミの姿にやる気になったモモは次は出来ると言わんばかりにキッと目つきを変えて四つん這いになる。 男とミミがそれを見つめる中…モモが空気を吸い… 『ポペャァァァァァァァァア!ポピュゥアァァァァァァァ!!!!』 『…ブッ!テェ!テピャ!テピャピャピャピャピャピャ!!!また!また出来てないテチィ!』 『プフォ! モモ!オマ…フフ・・アッハッハッハ!おまえ!おま!アハハハハ!』 その後もモモは不思議そうな顔をしながら頑張って威嚇をするが、いくらやってもこのままだった。 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— またあくる日 『モモ!オマエまたテチ!いい加減にするテチ!!』 『だってお腹空いたテチ!ちょっとくらい頂戴テチュ!』 二匹が部屋で追いかけっこをしている、原因はおやつの金平糖だ。 モモは体は小さいが、ああ見えて食い意地がはっておりたまにミミのおやつを奪ったりする。 男が一応宥めたり分けたりはするのだが、野良の時にひもじい思いを何度もしたせいか食べれるものへの執着はすごかった。 『モモ!オマエ自分のカバンにもオヤツため込んでるの知ってるテチ!だから返すテチュ!』 『あれは非常食テチュー!何かあった時の為テチィィ!!!』 ポテポテ走りながら、グルグル回る二匹。 男もため息をついていい加減見飽きた光景と思いながら二匹を持ち上げる。 「モモ、いい加減ミミのオヤツを奪うの止めなさい、そろそろオヤツ無しにするぞ」 そう言うとモモは耳を下に垂らして、見るからにシュンとした顔をする。 目には涙を浮かべる、オヤツ無しという言葉が効いただろうか。 『そうテチ!ゴシュジンサマもっと言って欲しいテチュ!』 「まぁまぁ、お前もお姉ちゃんなんだから、もう少し怒らないでやってくれ…」 男がいい加減にして欲しいようなあきらめ顔でミミにそういうと、いつもとちょっと様子が違った。 『テェェ…!何テチ!何々テチ!いつもいつもミミが我慢してるテチ!第一コイツのオネエチャじゃないテチ!』 いつもと違うなと思ってミミを見ると、ミミが涙を浮かべてプルプル震えている。 そうして涙目で、男を自分の意見を訴えるかのような顔を見つめる。 男がそっと床に下すと、モモはしゅんとした顔でオヤツの金平糖を抱きしめながらミミを見つめる。 ミミはというと、そのまま泣き出し、蹲って声を上げる。 『なんでテチィィ~!ワタチはゴシュジンサマの言う事ちゃんと聞いてるテチィー!なのになんでなんであいつばかり…! テェェェェン!テェェェェン!テエエエエエエエエン~~~!』 大泣きするミミを見るのはモモも初めてだろう、どうしたものかときょろきょろ辺りを見回したり男を見たりしている。 男も久々のミミの大泣きにどう慰めようかと手を差し伸べるが、ミミは手を遮り部屋の隅で泣き始める。 「ミミ、悪かったって…ほら泣き止めよ、お前の事を大事にしてない訳じゃないんだからさ…」 『テェェェエン~~!そうじゃないテチィ!ワタシはゴシュジンサマだけいればいいんテチュゥゥ~!なのにアイツはぁ~!テェェン!テェェン!』 慰める男に大泣きしているミミ、どうしていいか分からないモモはそのまま二人の見つめている。 やがて泣きつかれたのかスゥスゥ寝てしまったミミを持ち上げ、部屋の寝床へ入れる男。 モモは心配そうに見ていたが、男が頭を撫でて寝床に持っていくとモモもいつの間にか寝てしまった。 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— …ゴソゴソゴソ… 『テェ…?』 物音と共にモモが目を覚ます。 見ると部屋の隅でミミが何かをやっている。 眠い目を擦り、声を掛けるモモ。 『オネエチャ…?何やってるテチュ?』 声に気づいたかのようにミミがカバンを持ちあげて、立ち上がり顔だけモモの方を振り返る。 『…起きてたんテチ?いい加減オネエチャって言うの止めるテチ…、ワタチはここから出ていくテチュ』 『テェ!?オネエチャ!?』 びっくりして寝床から飛び起きようとして、バランスを崩してこけるモモ。 しかし構わず続けるミミ。 『オマエのせいで、ワタチとゴシュジンサマの愛の巣だったのにオマエばかり構ってるテチ… だからここを出て言って、ゴシュジンサマがワタシの事の大事さに気づかせるテチ!』 『オ…オネエチャ?何処に…?』 そういうのを無視して、ミミは部屋に用意してある実装石用のドアに首のリボンを近づけ外へ出ていく。 リボンの首輪には連動し開け閉め出来るドアなのでこれで庭くらいには出て遊べたりはするのだが…。 まさか男も出ていくとは思わないだろう、モモが慌てて立ち上がろうとするがドアは閉じてミミは去ってしまった。 『た…大変テチュ! ゴシュジンサマ——!ゴシュジンサマ———!!』 モモは慌てて男を呼びに行く。 ◇◇◇◇◇ 『テェェ…ここでしばらくゴシュジンサマの頭を冷やさせるテチ…』 そこはたまに散歩で近くを通る公園だった、仔実装の足でも行けるくらいに近くにある場所である。 しかし男はそこには寄らず、別のルートで本当は行くのだが…その為ミミもそこに入るのは初めてだった。 『初めて来たけど広いテチュ~~♪ 今日は天気も良くて暖かいし最高テチ♪ これでゴシュジンサマがいれば… …いやいや何考えてるテチ!”イエデ”したんテチィ!』 運良くも暖かな春の日差しで平和そうに見える公園だった。 ミミは男と二人っきりで幸せそうに散歩する姿を想像しようとしたが、すぐに目的を思い出して頭を横に振る。 そうして初めて来る公園に興味津々で辺りをキョロキョロ見ながら、ミミは何して遊ぼうかと迷っていた。 後ろの草むらから不穏に見つめる赤と緑の目に気づかないまま。 ◇◇◇◇◇ 「モモ!あいつ何処行った!?」 モモに声を掛けられて慌てて部屋に来た男。 男にそう問いかけられるも、何処に行ったか分からず涙目になって顔を振る。 『困ったな…、どうするか…』 男が悩んでいると、モモがハッとする。 『…!…ワタチ分かるかもしれないテチュ…!』 「…本当か?」 実装石はそもそもある種の嗅覚が鋭い。 託児をした際に自分の家族を何処からか追ってきたりするのもその為だ。 本当の家族では無かった二匹だか、一緒に過ごしていたのできっと匂いを覚えたんだろう。 『オネエチャ!!待ってテチ!今行くテチ!!』 モモは慌てて自分のパンパンになってるカバンを持ち上げ、同じく例のドアから出て行った。 男も慌てて上着を着てモモを追おうとする。 「お、おい!待てモモ!一人で行くな!」 ◇◇◇◇◇ そこをミミは草むらの中で口を押えながら涙目で震えていた。 草むらをガサガサと自分よりもはるかに大きい成体実装と、中実装2匹が自分を見つけようと探している。 『デェェェェ!!何処行ったデスあの仔蟲は!デェェェェ!!』 『ママ!落ち着くテス!叫んだら余計逃げられるテスゥ!』 『うるさいデス!久々の生きた馬鹿な捨て飼いデス! こっちはお腹空いてるんデスゥ!』 野良の腹を空かせた実装石一家だろう、最近久しく餌にありつけて無いのか涎を垂らし必死な形相でミミを見つけようとしている。 ミミもまた見つけられまいと必死に声と音を殺しながらじわりじわりと場所を変えている。 …ミミはまだ小さい頃に一匹で彷徨っているところを男に見つかり飼われた仔実装だった。 何故一匹だけだったか分からない、糞蟲だったのか、ご飯が足りなくて捨てられたか、それとも食われそうになって逃げてきたのか。 ダンボール暮らしが長かったミミは外にいる同族に襲われる知識が無かったのだ。 1匹で小綺麗な仔実装が公園に来る事がなんと恐ろしい事か…、今身を持って感じているだろう。 (なんでテチ…なんで追ってくるテチ…怖いテチ…怖いテチィ…) そんなような事を考えながら音を出さないよう草むらを掻き分けて逃げるミミ。 ———何も考えずに公園に来てしまった事を今どれだけ後悔しているか。 ミミの心臓の鼓動がバクバク早まるのが分かる、まるで外に丸聞こえするんじゃないかと言うくらいに。 気が緩んだら口から泣き声が一気に出てきそうなのを必死に手で押さえながら逃げる。 遠くから色々な声が聞こえる、あれは自分を追ってきている声なのだろうか。 それとも別の声なのだろう、恐怖で冷静な判断が徐々に出来なくなってきている。 …こんな事になると知っていれば、こんな所には来なかった。 後悔しながらしゃがみ込む、頭の中で思い浮かぶのは大好きな大好きなゴシュジンサマの顔、声、そして思い出。 初めて拾って出会った日、初めて食べた美味しいご飯、暖かい寝床、大変だった躾やトレーニング、遊んでもらった日々…。 そんな考えがグルグル頭をめぐると出したくもない涙がボロボロ零れてきた。 我慢したくても我慢しきれない。 『テェ…テェェ…』 小さく、小さく漏れ出す声。 大好きなゴシュジンサマにもう一度会いたい、抱きしめて欲しい…。 そんな事を考えていると何故か不意にアイツの顔も出てくる。 なんでアイツが出てくるんだ、ボロボロ零れる涙を拭きながらミミは少しだけ怒りも出てきた。 『テェ…?ママこの辺から何か聞こえた気がするテス…』 『デス!きっとあの仔蟲デス!探すデェェス!!』 その声にビクリとするミミ、思わず声が漏れそうになる。 また口を押さえながら立ち上がり逃げようと後ずさるが…。 急に背中が暖かくなるのを感じた、泣いてボロボロの顔で振り返る。 …!やばい! ここは…! そこは丁度草むらの切れ間だった、これでは逃げ場が無くなる…! すぐに草むらの方に逃げようとしたが…。 『見つけたデスゥ~~~♪』 上から雨が落ちてきたのかと思うような液体が垂れてきたと同時にぞわっとするような声がした。 そっと上を向くと、そこには目を爛々と輝かせ涎をダラダラ垂らす野良親実装がいた。 ◇◇◇◇◇ 『オネエチャー!何処テチー!オネエチャー!』 その頃、モモも匂いを頼りに公園にたどり着いていた。 だが男はまだ追いついていないようだ、しかしモモはそんな事も気づかずミミを、姉を探す。 『オネエチャー!オネエチャァァ!』 必死に叫んでいると何処からか強烈に臭いがした、姉のウンチの臭いがする。 きっとトイレに困って何処かで漏らしたのだろうとモモは気軽に考えていた。 臭いのする方に走るモモ、草むらを掻き分けると…そこには探していた姉がいた、涎を垂らす野良実装と共に。 『テチャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』 ミミが今まで我慢していた声が一気に漏れ出した。 涎をダラダラ垂らし目を大きく見開いて見つめる野良実装は、それはそれは恐ろしく見えただろう。 今までも恐怖で少しずつウンチを漏らしていたが、ここで一気にパンコンした。 ブリュブリュブリュブリュ… 『デェ?こいつウンチ漏らしたデス? デッピャッピャッピャ~!これはこれはクソニンゲンの飼いがクソ漏らしデスゥ~!大笑いデスゥ~!』 恐怖で震えウンチを漏らすミミを見ながら大笑いする野良親実装。 それに続いて仔であろう中実装2匹も追いついてきた。 『ママ!やっと見つけたテス? テェ!こいつウンチ漏らしてるテス!』 『テッピャッピャ!綺麗なオベベ着ててもクソ漏らしはどうしようも無いテスゥ~!』 そんな事を言いながらもその野良の中実装は興奮の余り自分でも糞をブリブリ漏らしてパンコンしてるのに気づかない。 3匹の目には久々の綺麗な味の濃い飼い実装の肉にしか意識が行って無いのだろう。 へたりこんで大泣きするミミ。 『助けテチィ————!!ゴシュジンサマァ——!ゴシュジンサマァァァァ!!!!』 『馬鹿な奴デスゥ~どんだけ呼んでも捨てられたのに来る訳無いデス♪』 『そうテス!オマエはこれからワタシ達の夕飯になるんテス~♪』 『ワタシ達に食われるんだから喜ぶがいいテスー♪』 3匹がテステスデスデスとニヤニヤ笑いながら後ずさるミミを意地悪く見ている。 そうして親実装が手を伸ばそうとすると…。 ”コテ” 親実装の足の辺りに何か当たる。 『…?何デス?今いい所なのに邪魔する馬鹿は何処デス!?』 声を荒げて当たった方を見てみる親実装。 何かを拾い上げる中実装が、それに気づいてワナワナ震え始めた。 『マ…マ…ママ!コンペイトウテス!コンペイトウテスウウウウ!!!』 『コ、コンペイトウテス!?』 3匹で下を見ると次々に何処からか投げられる金平糖。 ミミの事も忘れて、それを拾おうと必死になる。 涙目のミミは何が起きているのかという顔でポカンとする。 その時後ろから声がした。 『オネエチャ!逃げるテチ!』 ミミは自分よりも小さいモモの手に引っ張られながら草むらの中を掻き分け走る。 モモが今までため込んでいたカバンにある”非常食”だった金平糖を投げつけ気を引き付けたのだ。 『オネエチャ!早く早く!ゴシュジンサンも探してるテチ!』 手を引かれながら走るミミがそれでやっと意識が戻ってくる。 …帰れる?…帰れる!…帰れるんだ!ワタチの家に!ゴシュジンサマのところに! 草むらは仔実装達には深く深く、まるで森のようだ。 その森を二匹は家に帰ろう、ご主人の元に帰ろうと必死に走る。 帰ったらゴシュジンサマに謝ろう、一緒にご飯を食べよう、お風呂に一緒に入ってもらおう、一緒に抱っこして寝て貰おう…。 そんな事を涙目で考えていると、目の前の光が強くなってくる。 …もうすぐ出口だ、出ればもう公園の入り口はすぐだろう。 そう思ったら自然と笑みが零れてきた、二匹の体を光が包み出口に…。 『逃げれると思ったデス?』 『テップップップップ…』 草むらを掻き分けて出てくると、そこにはあの親子の実装石達がいた。 ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら…。 『テェェェェェ!?なんでテチ!?なんでいるテチュゥ!?!?!』 作戦が完全に上手く行ったと思ったモモが叫ぶ。 お家に帰れると思ったミミの顔にまた絶望が降り注ぐ。 『デッス~~ン♪、お前馬鹿デスゥ? これが金平糖かコロリか見分け付かないデスゥ だから他の奴に取られないように拾うだけ拾って、後で禿裸のドレイに毒味させるんデスゥ、ワタシは賢いデスゥ♥』 『そうテス!ワタシ達がどれくらい公園暮らしやってると思ってるテス?馬鹿な仔蟲達には分からんテス、テプププ…』 ミミもモモ上手く行ったと思った作戦が失敗し、しかも先回りされてると思わず体を強張らせる。 そうしてずいっと近づいてくる3匹。 帰れると思ったミミの顔が泣き顔になり、恐怖で体が震えてきた。 『…い…嫌テチ…!怖いテチュ!怖いテチュゥ——!死にたくないテチ!助けテチィィ!!!!』 『デッピャッピャ~まだ分からないデスゥ?』 大声を出すミミが不意にスッと握られていた手の感覚が無くなったのに気づいた。 その瞬間 『ポピャアァァァァァァアァ!!!! ポピャアァァァァァァアァ!!!!!』 その声に気づき、モモの方に顔を向ける。 そこには四つん這いになってスウウっと息を吸い込むモモの姿があった。 『ポピャ!ポピャアア!ポピャアアァァァァァア!!!』 『デプッ!デ——ッピャッピャッピャ!何デスゥ!?仔蟲が変な声上げてるデスゥゥ!デッピャッピャッピャ!!』 『テェーチャチャチャ! テッピャッピャッピャ!ば、馬鹿な仔蟲は声まで馬鹿テス!テッピャッピャッピャ!!!』 『ポペャァァァァァァァァア!ポピュゥアァァァァァァァ!!!!』 3匹は地面に横になり笑い転げている、それでもモモは必死に声を荒げ威嚇を続ける。 ミミはそれを今度は笑わず見ていた、自分よりも体の小さいアイツが必死になって威嚇をしている。 『ポピャアァァァァァァ!!! ポピャアァァァァァア!!! ポペピャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』 …よく見るとアイツも涙を流していた、体を見るとどれくらいの恐怖を感じていたんだろうお家では叱られた時よりも大きくパンコンし、裾から漏れ出している。 しかしそれでも目はキッと睨みつけるように、必死に、必死に…。 アイツはこんな時まで自分の教えた事をちゃんと守ってやってるのか、自分よりも体の小さいアイツが…。 きっと怖いんだろう、どうなるか分からなくてすごくすごく怖いんだろう。 もっとよく見れば体も震えている、あんなに食い意地張って誰にも上げようとしなかった自分の金平糖まで投げ捨てて…。 …ワタチはワタチは…こんな小さい仔が頑張っているのに何をやっていたんだろう…。 『ポピャアァァァァァァ!!! ポピャアァァァァァア!!!』 ・ ・ ・ ・ ・ 『… ………テェェ…!!テシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!テチャ!テチャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』 笑い転げていた3匹もピタリと笑うのを止めこちらをチラリと見る。 横にいたモモも驚き、声を止め思わずミミを見る。 そこには四つん這いになって必死に3匹に向かい声を荒げるモモの姿があった。 『テェェェェェシャァァァァァァァアアアア!!!!』 体は震えているが大きく、大きく叫ぶ。 ポカンとしている野良達、そうしてモモは恐怖していた緊張も飛びまた3匹に向かい… 『ポォォォピャ!ポォピャアア!ポピャアアァァァァァア!!!』 姉と一緒に叫ぶ。 『テシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 そうだ、ワタチよりも体の小さい仔がこんなに怖いのに頑張っているんだ! 『テェェエエエエチャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』 だったら”オネエチャ”のワタチが頑張らないんでどうするんだ!! ”姉妹”は必死に声を上げて3匹に威嚇をする。 もう体は震えていない、キッっと相手を睨み、手足に力を入れて腹から声を出す。 『…デジャアア!こいつら生意気デスゥ!!!いっそここで喰って…!』 そう言うと中実装が、ママと呼んでいる親の体をつつき始めた。 『…ママ…ママ…ママ!!』 あからさまに今度はこちらが泣きそうな声をあげている。 親実装もそれに気づきだるそうに中実装の方を見た。 『…なんデスゥ?これからいいとこ…』 何かを見上げ恐怖で引き攣ったか様に涙目で見つめている。 親実装も何かと思い中実装が見ている方を見上げる。 『…デ…デェ…!デギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!』 『テシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 『ポピャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 何かに叫び声を上げる親実装、尚も威嚇を続けるミミとモモ。 親子が絶叫すると急にくるっと向きを変えて必死に逃げ出す。 『デェェェェエ!!!あのアクマデス!なんでいるんデスゥゥゥゥ!!!!!』 ガコン! 『デギャ!?』 親実装が逃げ出して必死に遅い足でどたどた走っていると、ジュースの空き缶が後頭部へと直撃した。 前に倒れこむ親実装、それに気づいて中実装達が駆け寄る。 「おう、お前らもう二度とうちの飼いに、近寄るんじゃねーぞ」 『『テェ!?』』 姉妹がその声に気づいて威嚇を止め、後ろを振り向く。 そこには大きな人間、大好きなご主人がいた。 『はぁ…ミミもモモもやっと見つけたわ…勝手に二匹でどんどん行くなよ…」 そう言って男がしゃがみ込み、葉っぱがくっつき服も汚れ、パンツもウンチでコンモリした酷い有様の二匹に声を掛ける。 二匹は涙を流し震えながら、男に駆け寄った。 『ゴシュジンサマ!ゴシュジンサマ—!ごめんテチ!ごめんなさいテチィ!怖かったテチュ!怖かったんテチュゥゥ!!!!』 『ワタチも怖かったテチィィ!怖かったテチィ!!オネエチャ見つかってよかったテッチュ—ン!テチュウ———ン!!!』 泣き叫びながら男の手にしがみ付く2匹。 男はパンコンした二匹に若干困った顔を見せながらも、見つかった事に笑顔を見せてもう一方の手で姉妹を優しく撫でた。 『デ…デェェェェ…』 『マ、ママ!生きてたテス!?』 『良かったテスゥゥ!死んじゃったかと思ったテスゥン!!』 後頭部が大きくへこんだ親実装は両脇を中実装達に抱えられ遠ざかる様に逃げていく。 痛がる親実装が恐る恐る男たちの方を振り向く。 『あのアクマが…仔蟲達を飼ってるデス…? …よく分からないけど関わるんじゃなかったデス…』 『ママァア!!しっかりするテスゥ!』 『傷は浅いテス!早く逃げるテス!!』 親実装は男を見つめながら中実装達に抱えられ逃げていくのであった。 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— 『テェェェェェ!!!またこいつ取ったテチィィィ!!!』 『だってオネエチャの方が美味しそうに見えたんテチュ—————!!』 姉妹は怪我も無くまた元気に暮らしているが、今日も同じようにオヤツで追いかけっこをしている。 同じように元気にぐるぐる回りながら。 「おい~お前らいつもいつもよう飽きんな…」 『飽きたとかそういう問題じゃ無いんテチュゥ————!!!ペロペロペロ…』 『あああ!舐めるとかきったっねーテチ!!!!ふざけるなテチュゥ———!!』 結局また男の手で宥められ今日の運動会を終える。 ゼェゼェテェテェと息を切らしてよくもまぁ毎日飽きないものだと男も思っていた。 「…そういやミミは最近オネエチャって呼ばれても怒らなくなったな?」 『テェ?そうテチ…?…き、きっと慣れたんテチ』 それを聞いた男はにやっと笑ってミミを見る。 バツが悪そうなミミはそっと顔を背けた、顔を背けた先に丁度モモがいてこちらを見ている。 『オネエチャ!オネエチャ!そういえばワタチ練習したテチュ!』 『何の練習テチャ?』 モモはそう言って、自身満々そうに鼻をピスピスならして四つん這いになる。 そうして耳もピクピク上下に揺らして思いきり息を吸い…。 『ポピャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! ポシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』 一声上げた後、目を輝かせてこちらを見るモモ。 あれはどう?どう?って自信満々に感想を待っている顔だ…。 男とモモは顔を見合わせる、そして。 「アッハッハッハッハッハッハ!」 『テチャーーー!テッピャッピャッピャ!!』 お互いにドッっと笑いだす。 困ったような顔をしてモモは二人の顔を交互に見る。 『テェ~~~でも”イモウトチャ”少しマシになったテチ』 『テェ!ホントテチ?ホントテチ?』 またも耳を動かして褒められたと思ったモモが妹に駆け寄った。 そして抱きつきニコニコ笑っている。 『本当テチ~頑張ってるテチュ、”オネエチャ”がもっと教えてあげるテチュ』 『やったテチュ!やったテチュ~~~ン♪ゴシュジンサンやったテチュゥ♥』 『テェ!だけど慣れ慣れしく人のゴシュジンサマに抱きつくなテチ!!』 男の足に抱きつくモモを引き剥がそうとするミミ、だけどその顔は笑っている。 「”イモウトチャ”か…ミミも、モモも、成長したな…」 そんな事をニコリと笑って男は姉妹を撫でた。 大きな男の手で撫でられた事をミミとその場で照れながら笑って喜び、モモは両手を挙げてジャンプして喜ぶ。 きっとあの出来事は姉妹を成長、いや仲さえも良くしたんだろう。 願わくばこのままずっと仲良くしてもらいたい、そう男は思う。 『オネエチャ?』 『?何テチ?』 『オネエチャ!大好きテチ!』 ——————————————————————————————————————————————————————————————————— 元々愛護スク書きたかったんデスが、スレで見たいという方もいたのでネタも借りて作らせてもらったデス。 ※やせ細った親実装が仔を託す ネタを借りさせて作らせて頂きました、ありがとうございますデス。 いくらかスクも書いて、スレで翻訳で名前も頂いたのでデキアーミングとこれからは名前つけさせてもらうデスゥ。 これからも拙いスクですが、書かせて頂くデス。 今で書いたスクもリンク貼らせて頂きますデス 今まで書いたスク※何故か関連リンク貼れなかったデス… 【観察】 お山の実装石(昔の罰当たりの話) http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3104.html 【観察】 実装石親子、山に捨てられる(お山で起きた一晩の話 http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3094.html 【虐】 仔実装達の好きなもの http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3078.html 【実装スレ】 スレ投下まとめ http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3055.html 【スレネタ】 午前中に立ってたスレでのネタスク http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3044.html 【虐】 野良実装、入れ替わる http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3012.html 【虐】 帰郷での出来事 http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3009.html 【虐】 男とミドリ http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3006.html 【虐】 とある実装石親子の話⑦終 http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3085.html 【虐】 とある実装石親子の話⑥ http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3066.html 【虐】 とある実装石親子の話⑤ http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3042.html 【虐】 とある実装石親子の話④ http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3021.html 【虐】 とある実装石親子の話③ http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3008.html 【虐】 とある実装石親子の話② http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3005.html 【観察?虐?】 とある実装石親子の話① http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3001.html

| 1 Re: Name:匿名石 2023/04/09-04:00:17 No:00007016[申告] |
| 最後まで姉のオヤツ奪ってるモモを見てこいつ結構糞蟲の素質あるな…と思いつつも
オネチャと呼ばれる事に抵抗なくなった・イモウトチャ呼びするようになったミミを見てニヤケてしまった 野良の親実装は男と一体どんな関わりがあったんだろう?そこも妄想が膨らむ っていうかいつも翻訳してくれてるとしあきだったのね、お世話になってますデッサア! |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/04/09-19:03:42 No:00007019[申告] |
| ディティールとか丁寧な作品だった
ミミの独占欲の表現が結構良かった。もう少し実装石の悪性とそれを上手く丸め込む元虐待派ならでは手腕(単純に暴力って訳でもなく、お灸を使う愛護スクもあった気もするけど)も見たかった気もする あとパンコン嗤ってた野良親もパンコンしてて全員パンコン〆も見て見たかったかも |
| 3 Re: Name:匿名石 2023/04/12-21:59:06 No:00007036[申告] |
| 良い話でほっこりしました
ゴシュ人の過去の姿が気になるな… きっと設定は色々あるのでしょうし同じ世界でのスクもまた読みたいです |
| 4 Re: Name:デキアーミング 2023/04/15-10:56:49 No:00007042[申告] |
| ご感想ありがとうデス!
嬉しいデス~ご参考にもさせて頂きますデス! >きっと設定は色々あるのでしょうし同じ世界でのスクもまた読みたいです 一応軽く設定は作ったんデスが、面白くなるか分からないので良ければ書かせて頂きたいと思いますデス |
| 5 Re: Name:匿名石 2023/05/08-15:56:26 No:00007134[申告] |
| ミミとモモの掛け合いが面白く楽しく読ませていただきました
野良からの逃走も緊迫感があり読んでいてドキドキしました 他の方もおっしゃっていますがゴシュジン様の過去が気になっちゃいますね また機会があればゴシュジンの過去話やミミとモモの別のお話なんかも見てみたいです |
| 6 Re: Name:匿名石 2023/05/20-14:33:34 No:00007199[申告] |
| 伏線回収が上手デスゥ
アクマと呼ばれるニンゲンさん...一体何者なんだ ミミもモモもどっちもかわいくて最高でした! GJ! |
| 7 Re: Name:匿名石 2023/06/02-15:10:04 No:00007267[申告] |
| 野良親子に対するもっと厳しい制裁が見たかった |
| 8 Re: Name:匿名石 2023/07/03-10:13:36 No:00007426[申告] |
| ミミ、トイレの最低限の躾できてるけど糞蟲じゃね?
実装ショップで処分か100円レベルだろ |