タイトル:【虐?愛?】 今年の夏は食べてないな。
ファイル:カキ氷.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3956 レス数:0
初投稿日時:2006/08/26-09:09:52修正日時:2006/08/26-09:09:52
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家で飼っている実装石の『スイ』はとても暑がりだ。
夏になるといつも家の中に引きこもって、クーラーの聞いた部屋で寝ている。
原因は太りすぎである。
昔は普通だった体型が今は見事なまでの国宝石になっている。
やはり愛護派の姉に躾をさせたのが悪かったのだろうか。
俺の言うことを全然聞かないし。
しかし、いつまでもそんな生活を続けていたら健康上よろしくないので、
今日は無理やりにでも外に連れ出すことにした。

「デシャアアアア!」
「いい加減、外に出ろ。この豚スイ。」
「デシャアアア!嫌デス。暑いデス。死んじゃうデス。」
「知るか、さっさと外に出ろ、豚!」

先程からスイがテーブルの柱にしがみ付いて放そうとしない。
「外に行くぞ」と言った瞬間、国宝石ではありえないスピードでベッドまで行き
これまた国宝石ではありえない力でテーブルの柱にしがみ付いた。
が、所詮は実装石の力なので俺がちょっと力を込めて
腕の骨を折ったら簡単に外すことが出来る。
しかし、それには問題がある。
それは俺の姉である。
スイは俺が躾をすると姉に

「アイツが私を虐めたデス。さっさとお仕置きするデス。」

と言って泣きながら姉をけしかけてくる。
姉はいつも理由を聞く前に俺に鉄拳を喰らわせる。
その光景を見るとスイは俺を笑ってくる。
それがとてもムカつくので俺はその笑いを見た日は、
スイの餌に少量のドドンパを混ぜて苦しめて仕返しをしている。

以前

「大体、姉ちゃんはもう実装石に興味ないだろ。」

と一度反論したことがある。
姉は現在、実蒼石の『ブルー』を飼っている。
理由は「成体になったスイは可愛くない」だそうだ。
それですぐに実装ショップに行ってブルーを買った後、
用済みになったスイを俺に押し付けて「スイの管理はあんたがしろ」と言ってきた。
しかも「管理は任せた」と言っているのに、俺の躾けには反対する。
本当に我侭である。
姉に面と向かって「前世が実装石だったんじゃないのか?」と言ってやりたいが
正直、とても恐ろしくて口が裂けても言えそうにない。

そんなスイに俺の言うことを聞かせる方法が3つだけある。

1:餌で懐柔。
2:ブルーに協力してもらう。
3:姉に直接命令させる。

正直、俺が暴力に訴えても姉にチクられるだけなので
俺だけで言うことを聞かせるのは不可能だった。
ちょっと、いや、かなり情けない話である。

今回も言うことを聞かないので、餌で懐柔を試みてみた。

「外に出たら最近出来たって言われてる、
 実装石専門のカキ氷屋に連れてってやるから。」
「デスゥ?カキ氷ってなんデス?旨いものデス?」
「ああ、こんな暑い日にはもってこいの食べ物だ。」
「デス!?行くデス。今すぐかき氷を食べに行くデス。」
「それじゃあ、行こうか。ハァ〜疲れた。」

スイは外に行く準備を始めた。
『それにしても実装石専門ってどういう意味だろ?』っと考えていると
スイが鏡の前に立ってなにやらポーズをとっている。

「何してんだ?」
「お前は馬鹿デス。女が外に出る時は身だしなみが大切デス。」
「…一回眼科行って来い。それでダメなら脳外科でも行って来い。」

俺の嫌味を軽くスルーして、スイはお気に入りの蛆バックを取り出した。
トートバックで、中には実装フォンと金平糖が入っている。
肩に掛けて見ると20cm位の蛆実装を抱えている様に見える。

「なあ、そう言えばお前、蛆実装に対してものすごい執着心がるよな。
 抱き枕も蛆型のだし、パンツも蛆柄だし、そのバックだって。なんでだ?」
「デス?聞きたいデス?」
「一応気になるから聞きたいな。」
「お前なんかに話しても時間の無駄デス。」
「…ブルー。お〜い、ブルー!」
「デデェ!?待つデス。話すデス。」

今はブルーは散歩に行っているからいないのだが、
スイにとってはブルーは天敵である。
ブルーの名前を出すだけで言うことを聞く。
やっぱり情けない。

「それは私が親指だった頃、蛆ちゃんと暮らしていたデス。
 私達はいつもいっしょで仲が良かったデス。
 そんな可愛い蛆ちゃんと遊んでいるとき虐待派に蛆ちゃんが殺されたデス。
 蛆ちゃんは最後まで私の名前を読んで助けを求めたデス。
 それなのに私は何も出来なかったデス。
 それ以来、私はその蛆ちゃんを守れなかった代わりに、
 他の蛆ちゃんは死んでも守るって決めたデス。」
「ふ〜ん。」
『こいつにそんな過去があったとは。
 だから、実装フォンの待ちうけは蛆実装だし、お気に入りの人形も蛆実装なのか
 その割りには蛆実装のために何かしてるのを見たことが無いし
 イラついていると蛆人形を殴る蹴るしてたよな。』
 
「それより準備もう出来てるよな?」
「もうちょっと待つデス。お前とのくだらない話で準備できなかったデス。
 少しは気を利かせろデス。」
『蛆実装の事はくだらない話なのかよ!』

そんなツッコミ心の中で入れて、待つこと10分。
ようやく、玄関までたどり着いた。

玄関の扉を開けるとムワッっと熱せられた空気が家の中に入ってきた。
外はカンカン照りで、恐らく気温は38℃を超えているだろう。
蝉の音がさらに体感温度を上げる。
遠くを見るとビルが歪んで見える。

俺は、スイの首輪に紐をつけようとスイの方向を見ると
スイはいなくなっていた。
何で普段はあんなに動きが緩慢なくせに、こういうときだけ敏捷になるんだろう。
リビングで汗だくになっているスイを見つけた。

「お前な、いいかげんにしろよ。」
「五月蝿いデス。あんな灼熱地獄に私を連れ出して殺す気かデス!」
「そんな暑いなら保冷剤持って行っていいから。
 お前そんなに太っているのに、運動しなかったらなんかの病気になるぞ。」
「デ、デ、デ、デシャアアア! お前今なんて言ったデス。
 このパーフェクトボディの私に向かって太っていると言ったデス。
 許さんデス。今すぐ土下座しろデス!」
「うっさい、何がパーフェクトだ。お前は今、確実に全国の愛護派を敵に回したぞ。
 ってそんな事はいい、いい加減にしないと本気で怒るぞ。」
「デプププ♪お前に何が出来るデス。
 いつもみたいにご主人様に殴られるのがオチデス。」

完全に舐められている。
スイを殺したら姉はきっと怒るだろう。
いや、キレるだろう。

「生物を大切にしないなんて何考えてんの!」

って暴れまくるだろう。
あっさりスイに見切りをつけた姉に言う権利なんてないはずなのに…。
とりあえずいつもの手で行くことにする。

「しかたがない。それじゃあカキ氷の変わりにこれでも食ってろ。」

そう言って金平糖を渡す。
只の金平糖でないのだが。

「デプププ♪最初から素直に私の言うことを聞いていればいいデス。
 これは謝罪の代わりとして食ってやるデス。」

俺はスイがそれを食べたのを確認して自分の部屋に戻った。

5分後

リビングに戻ると、スイは白目をむいて倒れていた。
別に死んだわけではない。
仮死状態に陥っているのである。
原因は先程スイに与えた金平糖である。
スイが食べたの金平糖は、実装石の生命活動を一時的に止めるものである。
スイを黙らすのと、我侭を言って移動しようとしないときに使う。

「さて、とりあえずチャリの荷台にくくるか。フンッ!」

ずっしりと重いスイの体。
どうやらまた太ったようだ。
軽く見積もっても15kgはある。
普通の実装石の10倍以上の重さはあるのではないだろうか?

自転車にスイを固定するとさっそく公園に向かった。
途中警察官に

「この実装石は君の?盗んできたんじゃないよね?」

と職質されてしまった。
確かに傍から見たらそう見えるかもしれない。
今度からもう少しまともな運搬方法を考えることにしよう。

公園に着いた俺は早速スイを起こすことにした。
とりあえず軽く頬を二、三発引っ叩いてみる。
どうやらまだ刺激が足りないようで起きる気配が無い。
仕方が無いので拳骨で頭を殴ってみた。

「ゲベッ!」

と間抜けな声を出して、ようやく起きた。
まだ意識がはっきりとしていないようで、
周りをキョロキョロと見回しながら頭を抑えていた。

「ここは何処デス?私は何をしていたデス?」
「ここは公園。そしてお前は今散歩中だ。」
「デェ〜、暑いデス。今すぐ帰るデス。」
「後1時間したらな。」
「デシャアアア!そんなにいたら死んじゃうデス。
 死んだらご主人様に言いつけてやるデス。」
「カキ氷食いたくないのか?あそこに見えるだろ?
 ほらあそこにある建物の中に実装石専門のカキ氷屋があるんだ。」

俺は、今自分達のいる場所からおよそ500m離れた場所にある、
白い小さな建物を指差した。
スイは目を凝らしながらその場所を見ていた。

「お前は馬鹿デス。あんな遠いところ歩いていったら暑さで死んじゃうデス。」
「いいから歩け。お前は歩くだけでもダイエットになるんだから。
 それにこの暑さを感じてから冷たいかき氷を食べるとうまさが何倍にもなるぞ。」
「デス!?それは本当デス?」
「ああ、(多分)本当だ。」
「それじゃあ行くデス。今すぐ行くデス。さっさと連れていけデス。」

そう言ってスイは俺に向かって万歳のポーズをしている。

「…何やってんだ?」
「何してるデス。さっさと私を抱き上げるデス。」
「ふざけんな!お前を歩かせるのが目的なんだ。さっさと自分で歩け!」
「デシャアアア!!騙しやがったデス。」
「騙してない。大体俺がいつお前をどんな風に騙したんだ。」
「五月蝿いデス。口答えするなデス。いいから抱き上げて連れて行くデス。」

暑い中、こんな口論をしていたら俺が熱中症になりそうだ。
それよりもさっきから気なっていたが、足元に汗の水溜りが出来ている。
脱水症状になったらこいつを抱えて帰らないといけない。
時間が無いと悟った俺は仕方が無いので文字通り紐で引きずってでも行くことにした。

「動きたくないなら動かなくてもいい。俺は実力行使に出るだけだ。」
「デプププ♪ようやく私の言うことを聞く気になったデス。
 さっさと私をあそこに連れていけデス。」
「ああ、そうするよ。」

俺は思いっきり紐を引っ張って、歩き出した。

「デズゥ!?」

間抜けな声を出して、スイが転んで顔面を強打した。
どうやら、その一撃で前歯が折れ、鼻血が出たようだ。
すぐさま起き上がろうとしたが、俺が紐を引っ張るのでうまく起き上がれないようだ。
しかも顔面を地面に擦りつけながら移動しているので
顔面の皮膚が徐々に削られていく。

「ヘヒャ!ヘヒャ!ヘシャアアアアア!!」
「何言ってるんだ?ちゃんと喋れ。」

スイが今どんな状況にあるか分かっている。
言いたいことも大体想像がつく。
しかしあえて無視し、ひたすら前だけを見て歩き続けた。

そのおかげで5分後には目的の場所に着いた。
実装石の歩く速度ならこの何倍もかかっていただろう。
ここに来るまで、通行人が俺を見る目が冷たかったが
出来るだけ気にしないことにしていた。

「ほれ着いたぞ。」

そう言って、スイを見ると『ちょっとやりすぎたかな』と言う罪悪感に襲われた。
スイは完全に気絶して、ピクピクと痙攣していた。
顔面、服、腹、…とにかく体の前面の皮膚が完全に削り取られている。
しかも顔面は筋肉まで見えている。
腹の方は脂肪のおかげでそこまで至っていない。
よく見ると舌も半分ほどない。
しかも、肉が焼けた臭いがする。
よく見ると野良実装がじーっとこちらを見ている。
さらに、俺が歩いてきた道を見ると血と汗と糞でできた一本の道筋が出来ていた。

俺がスイを見て固まっていると、回りからザワザワと声が聞こえてきた。

「ちょっと、あれって虐待じゃない?」
「そうじゃない。や〜ね〜。」
「ママー。あれって何?」
「シッ!見ちゃいけません!」
「ボク〜ボクボク〜。」
「GJ!」
「旨そうな匂いデス♪」

やばい、なんかいろんな意味で注目を集めている。
俺は苦笑いをしながら、持ってきた実装活性剤をスイの口に入れた。
さすが10分の1、『○の錬金術師』のホムンクルスみたいに再生した。
それでもまだ気絶しているスイを抱えて、急いで店の中に入った。

俺はテーブルにつくと、店員にコーラを頼んだ。
スイ用にカキ氷を注文しようとしてメニューを見ると、

・イチゴ
・メロン
・ブルースカイ
・宇治金時

とあった。
一体何処が実装石専門なのだろう?
そう思い、俺は通好みの宇治金時を注文した。

注文して3分後、トレイに乗った宇治金時を美人のお姉さんが運んできた。

「お待たせしました♪こちら宇治金時と、コーラになります。
 ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
「はい♪」
「それではごゆっくりどうぞ♪」

笑顔が素敵な、ショートへあの人だった。
『また今度来よう』と心に誓った。

俺はせっかくのカキ氷を溶かすのはもったいないと思い
スイを起こした。

「おい、起きろ。カキ氷が着たぞ。
「デスゥ〜?ここは何処デス?」
「ここはカキ氷屋。ほれ、目の前にあるのがカキ氷だ。」
「デス!?これがカキ氷デス!旨そうデス。いただきますデス。」

スプーンで掬い、口に入れたスイは、それはそれは幸せそうな顔をしていた。

「旨いデス!この濃厚な味わい、まさに絶品デス!」
「濃厚?」

スイの言っている意味が分からなかったが、
その緑色に染まった氷に練乳と小豆が乗っている宇治金時は、とても美味しそうに見えた。
見た目から察するに抹茶を凍らして作ったものだろうか?
俺も食べたくなってきた。

「すいませ〜ん。イチゴを一つお願いします。」
「あ、すいません。お客様。お客様は実装雛を食べたことはありますか?」
「…はい?」
「うちは実装石専門のカキ氷屋なので、実装シリーズを食べたことのある方でないと
 口に合わないと思いますよ。」

と言うことはスイが食べているのって…。

「どうしますか?それでも注文しますか?」
「…いえ、いいです。あ、すいません。」
「はい?」
「宇治金時って…何で出来ているんですか?」
「実装石の蛆と実装金で出来ています。」

俺は、横で頭を抑えてのた打ち回っているスイには絶対に言えないなと思った。

後日、姉がスイに真実を何の躊躇もなく話、
真実を知ったスイは二度とカキ氷を食べなくなった。

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