タイトル:【虐】 愛しても、いいですか?5/5
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:5337 レス数:3
初投稿日時:2006/08/24-21:46:41修正日時:2006/08/24-21:46:41
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愛しても、いいですか?   5/5


 女は、まだ小さな子供を抱き抱えながら、ベランダに出て外を眺めた。
 心地よい風が頬を撫でる。
 子供も、気持ち良さそうに微笑んでいる。
 自分は、今とても幸せだ。
 やっぱり、思い切って離婚して、正解だった。

 今の夫に、前夫と別れるべきだと強く奨められた時の事を思い返す。
 夫は、前夫の性格の問題に一早く気付き、自分に数多くのアドバイスをくれていた。
 そして、これ以上結婚生活を続けるのは危険だと判断した。
 夫は、自分に思いを告白し、抱き、そして…本当の幸せを教えてみせると約束した。

 前夫は、確かに、私のために一生懸命になってくれた。
 残業も進んでやり、収入も増やしてくれた。
 自分のワガママにも黙って応じてくれて、心底申し訳ないと思った。

 だが。
 結婚前の彼は、そんな人ではなかった。

 二人一緒に何かをしたり、一つの話題で時間も惜しまず議論しまくったり、色々な所に出かけたりした。
 そして何より、お互いのワガママを素直にぶつけ合った。
 時には喧嘩もしたけれど、代わりに、お互いの存在感を充分に感じていた。

 だが、彼は結婚後、今までの自分の態度はダメなものだったと自己判断した。
 寡黙になり、ひたすら仕事に打ち込み、生活費を潤すことだけが家庭の幸せに繋がると考えたのだ。
 子供嫌いだった自分の意志を尊重してくれたのは嬉しかった。

 だが彼は、出会ったばかりの頃、子供が欲しいと何度も言っていた。
 子供好きなのも、よくわかった。
 なら、どうして自分を説得してくれなかったのだろう?

 結婚を決めた時、自分は、出産を覚悟した。
 だけど彼は、ずっと避妊を続けた。
 婚約前にふと話した思いを、否定することなくずっと引き摺っていたのだ。
 彼は、色々な事をしてくれた。
 だけど、結局、一度たりとも己れの考えを疑わず、省みることはなかった。

 知人に悩みを打ち明けた時。
 前夫は、それを浮気だと信じ込み、荒れた。
 狂ったのかと思われるくらいに暴れ、家具を破壊した。
 初めて、自分に手を上げた。
 そして、自分が二重生活を営んでいると勝手に勘ぐり、その否定の言葉も受け入れなくなった。

 それから前夫は、だんだん異様な変貌を遂げ始めた。
 相談相手だった知人は、彼の変わり様に強い不安を感じ、別居を持ちかけた。
 だが、それらはすべて裏目に出た。
 妻の外出を知ると、理由も聞かずに半狂乱になる夫。
 かなり重度のノイローゼだったようだ。

 相談相手は、強硬手段を取る事にした。

 ——それが、今の生活へと繋がるきっかけとなった、告白と約束だった。


「どうした、そんなところで?」
 リビングにやってきた夫が、優しく声を掛ける。
 妻は、笑顔を作り、嬉しそうに振り返った。
「うん、ちょっと」
「また、何か嫌な事でも思い出したのか?」
「まさか、違うわよ」
「ならいいが」
 心配性の夫だが、そのおかげで、今の幸せな自分がある。
 妻は、そう確信していた。

「それよりさ、留美。ちょっと面白いお店を見つけたんだけど、行ってみないか? 郊外なんだけどさ——」



 あれから半年。
 ルミは、すっかり成体になっていた。
 身体も大きくなり、としあきの膝より少し高いくらいになっている。


「ご主人様、おはようございますデス」
「お、おはよう」
「夕べはよく眠れたデスか?」
「ああ、おかげさまでね。随分すっきりしたよ」
「それは何よりです。さ、朝ご飯の準備が整ったデス」
「悪いな、そんな事までしてもらって」
「いいんデス。私は、ご主人様の家族なのデスから…」

 あれからルミは、自分の感情を表に出さなくなった。
 としあきと話はするし、家の手伝いはおろか、家事の一部すらこなす。
 どんなことでも言いつけは必ず守るし、粗相どころか小さなミスも一切行わず、完璧に立ち振る舞う。
 だが、決して、自分の思いは口にしなくなった。


 あの翌朝、としあきは、自分をなじり、罵った。
 また、酷く殴られた。
 としあきは、涙を流しながら、棒のようなもので自分を殴り続けた。

『糞蟲め、糞蟲め!』
『こんなに可愛がってたのに、お前はやっぱり、糞蟲になってしまったんだな!』

「違うテチ! 違うテチ! 糞蟲じゃないテチ!!」

『どうしてだ! 俺の何が悪かったっていうんだ!』
『俺は、お前のために…お前のために…!!』

「聴いて…ワタチの言葉を、聴いて欲しいテチ!」


 その時、ルミは理解した。
 自分は、としあきの心の中にある傷に、触れてしまったのだ。
 自分が良かれと思った事は、としあきにとってはすべて逆効果だったのだ。

 としあきを思い遣る言葉も、態度も、慰めも、としあきには、糞蟲化の兆候と受け取られてしまう。
 だが、元々糞蟲化に対する強い嫌悪感を持っていたルミは、決してそうはならなかった。
 としあきの理不尽な折檻に耐え、なおも、としあきを愛し続けた。
 やがてとしあきが自分を取り戻した頃、ルミも、一つの答えを見つけていた。

 それが、自分の感情を殺すことだった。

 人形になろう。
 ご主人様が求める反応だけを行う、人形に。
 そうすれば、自分がご主人様を傷付ける事はない。
 大好きな、ご主人様を——


 昔、自分を躾けたブリーダーに言われた事を思い出す。

『人間の事を、好きにならないといけないよ』
『どうしてテチか?』
『人間はね、相手を好きになるために努力する。それが巧く行くと、お互いに大好きになれる。一緒
 に幸せになれるんだ』
『テチ〜?』
『お前が、これから出会うご主人様と仲良くなりたいなら、まずは、お前がご主人様を大好きになる
 努力をしなくちゃな』
『テチっ!』

 本当は、とても優しいご主人様。
 自分を、いつも大事にしてくれるご主人様。
 たまに悲しい顔をして、怒ることもあるけれど、その後はまた、大事にしてくれる…
 ルミは、ブリーダーの言いつけとは関係なく、としあきを愛していた。

 ふと、涙がこぼれる。
 無表情の頬に、一筋の涙が——

「いけない、泣いちゃだめデス」

 慌てて、右目をこする。
 ルミの手に、緑に色付いた涙が付着した。



 随分久しぶりに、ルミが笑った。
 帰宅したとしあきは、ニコニコ微笑むルミの顔を凝視した。

「どうしたんだ、お前?」
「デス〜♪」
「笑うなんて久しぶりだなあ、何かあったのか?」
「はいデス。とっても嬉しいことがあったデス」
「へえ、なんだい?」
「お食事の後に話すデス。さ、ご主人様、どうぞ♪」
「ん? あ、ああ」

 声が弾んでいる。
 何があったのだろう?
 としあきは、不思議そうにルミの顔を見た。

 そしてその時、初めて気付いた。
 ルミのオッドアイが、両方とも緑色になっているという事に——






 一週間後。
 ルミは、たった一人で、雨の降りしきる路肩を歩き続けていた。

 ここがどこなのか、まったくわからない。
 だけど、こっちの方に、ご主人様の家がある。…そんな気がする。
 今は、頼りない自分の帰巣本能にかけるしかない。
 ボロボロになった服と髪を引き摺り、泥まみれになっても、ただひたすら家を目指していた。


 あの晩、ルミは、としあきに喜んでもらいたくて、妊娠した事を報告した。
 その途端、としあきは、また心を乱してしまった。

 今までで、最も恐ろしい怒り方だった。

 どうしてとしあきが怒ったのか、ルミには、まったく理解が出来なかった。
 「お前まで、俺の事を馬鹿にするのか!」という言葉の意味も、わからなかった。
 直後、ルミは車に放り込まれ、遠くへ運ばれた。
 としあきに買われて以来、初めての外出。
 だがそれは、ルミの生活が終わる事でもあった。

 途中車内で産気づいたため、見知らぬ荒地に放り捨てられたルミは、次々に仔実装や蛆実装を
生み落とした。
 それを見たとしあきは、突然怒り狂い、子供達を踏み潰した。

「デチィィィッ!!!」
「レチャァァァァッッ!!!」

 ぶちっ! ぶちゅっ! ぶぢゅぶちゃっっ!!

「デスッ?! デスーッ! デスーッ! デスデス——っ!! デエェェェンン!!!」

 ルミの悲鳴も聴かず、制止も振り払い、一匹残らず完全に踏み、すり潰す。
 ルミの足元に、赤と緑の体液の海が出来た。

 としあきは、何も言わず、そのままルミを放置して車を発進させた。
 何が起こったのか、ルミにはまったく理解が及ばなかった。


 ——どうして?

 私は、今までずっと、貴方を傷付けないように努力して来ましたデス。
 でも、子供が生まれるから、どうしても嬉しさを隠せなかったデス。

 私は……ご主人様、貴方の子供を生むつもりになって、一生懸命、胎教したデスよ。
 “あなた達のご主人様は、とっても良い人デス”って、何度もお腹に話しかけたデスよ?
 
 本当は…ご主人様はパパだって、言いたかったんデス。
 でも…でも…どうして…?


 ルミは、どうしても納得できなかった。
 もう一度、としあきに逢いたかった。
 なぜ、まだ生まれて間もない子供達を、あそこまで異常に憎んだのか、その理由が聞きたかった。
 それだけのために、もう一週間も、ろくに飲まず食わずで彷徨った。
 
「きっと…何か誤解があったデス。謝らなきゃ、謝らなきゃならないデス…」

 今度こそ、誤解を解いて、本当に幸せな生活をしたい。
 ご主人様のためにも…
 もう一度、一杯の子供達を生んで、そしてみんな一緒に…仲良く…楽しく……

 ルミは、歩き続けた。
 泣きながら、何度も倒れながら——


 ご主人様は、きっと、疲れていたデス

 だから、私が何か悪いことをしてしまって、怒ったんデス

 私がしてしまった、悪いことを、どうか教えてください

 もう二度と、同じことをしないように


 今度こそ ご主人様に   子供達を  抱いて欲しい    から  


 大好きな  ご 主人   さ ま ……


 ——雨は、いつまでも降り続けていた。
 



 一ヵ月後。

「ご主人様、アレは何テチか?」
「ん? 何かあるのか?」
「おうちの傍に、おっきなゴミみたいのがあるテチ」
「え? どれどれ…」

 としあきは、玄関を出て、入り口の辺りを見回した。
 門の下の隙間から、何か大きなものが置かれているのが見える。
 誰が、こんなところにゴミを…と思いつつ、門を開く。
 むせるような腐敗臭が、鼻を突いた。


 そこにあったのは、全身真っ黒になった、ボロボロの実装石の死体だった。
 かなり大きな成体だ。
 所々引き千切れているようで、原型を留めていない部位もある。
 こんなものが、なぜよりによって、こんな所にあるのか。

 あーあ、どこかの虐待派の奴が、酷いことをしたんだろうな、可哀想に。
 運が悪かったな、俺の所に来ていれば、絶対こんな目に遭わせなかったのに…

 としあきは、ため息を吐くと、三重に重ねたゴミ袋と棒を持ってきて、その中に死体を押し込む。
 そして、近所のゴミ捨て場に放り投げた。


「アレは何だったテチか?」
「あー、…ルミの言う通り、ただのゴミだったよ」
「ご主人様、ちょっとくちゃいテチ」
「ごめんごめん。すぐ手を洗ってくるよ」
「ルミも、手を洗いたいテチー♪」
「おっ、綺麗好きだなルミは! 躾も身についているし。いう事なしだぞっ」
「テチュ〜ン♪」


 手の中に乗るほど小さな仔実装を持ち上げ、としあきは、洗面所に歩いていった。
 玄関には、昨日届けられたばかりの、新しい実装石育成用品が並べられていた。

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1 Re: Name:匿名石 2023/07/14-05:42:33 No:00007516[申告]
新しい「ルミ」を買い直したのか…
2 Re: Name:匿名石 2023/07/19-04:19:42 No:00007557[申告]
としあきは基本的に屑だな!
3 Re: Name:匿名石 2024/02/24-01:45:05 No:00008776[申告]
勝手に子供作ってる時点で糞虫・・・
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