タイトル:【虐】 愛しても、いいですか?3/5
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3581 レス数:2
初投稿日時:2006/08/24-21:43:54修正日時:2006/08/24-21:43:54
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愛しても、いいですか?  3/5



 愛護掲示板は、すでに愛護派の憩いの場ではなくなっていた。
 住人は、ほとんどが虐待派。
 管理人も、今では虐待派の方に同調している。
 何人か、愛護派時代の常連が残留し、管理人に改心を求める書き込みをしていたが、
それもすでに一週間前から途切れていた。


 あらためて、サイトの管理人プロフィールを読む。
 このページは手を加えられておらず、以前のままだ。
 ここの管理人は、としあき同様躾け済み実装石を購入し、愛情を込めて育てていた人だ。
 すでに二年以上育て続けていて、サイト内も、飼い実装石の愛らしい写真で満たされていた。
 病気により、子供を埋めない身体になった管理人は、代わりに実装石を愛し、自分の
子供のように接してきたという。
 以前は、ネット各所で実装石育成の情報やコツ、心構えを学んだそうだ。
 その結果、ネット上では有名な「実装石ラブラブ人間」として認知された。
 彼女の想いは、やがてサイト設立にまで発展し、サイト内は、ノロケで満たされていくことになる。
 しかし、同じように実装石に夢中な人達が訪問し続けた事で、やがてここは、愛護派にとって
有数の情報交換の場になったのだ。

 ——歯車が狂ったのは、丁度、としあきがルミにかまけるようになった頃からだった。

 ある日、管理人が自宅に戻ってくると、非音声型実装リンガルのスイッチが入りっ放しになっていた。
 たまたま切り忘れただけだったのだが、そこには、信じられないものが表示されていた。
 管理人の持つリンガルは、非音声式の代わりに翻訳したログデータを膨大にストックできる高級タイプ
で、チャットやメッセンジャーのように、古い翻訳内容を遡れる。


 そこには、愛情を注ぎ込んで育てた筈の実装石達による、恐ろしい本音が収められていた。
 
「ふ〜、やっと出て行ったデス」
「これでやっと、ワタチ達のおうちになったテチ」
「あのバカ主人を騙して、いい子ぶってるのも疲れるデス〜」
「仕方ないテチ。そうしないと、おいしいご飯にありつけないテチ」
「お前達、これからもあのバカ主人に媚びまくって、立派に成長するまで買われるデスよ」
「わかったテチ」
「いつか、この家を私達の家族で満たしてやるデス♪」
「乗っ取るテチ!」
「それまでは、絶対に気付かれないように振舞うです。わかったデスねお前達?」
「あんなマヌケに見抜かれるほど、オロカモノじゃないテチ」
「どーせ、ワタシタチが何言ってるか、あいつにはわからないテチ」
「人間は愚かだけど、油断は出来ないデス。充分に注意するデス」

 実装リンガルに表示される文字を見つめ、青ざめる管理人。
 そこに、いつものように甘え、擦り寄ってくる実装石達。
 どんな状況だったか、想像できそうだ。
 管理人は、何かの間違いだろうと思って、リンガルのメーカーに問い合わせたり、ネット上で色々な
人に意見を求めたようだ。
 だが、管理人が見たものを否定する要素は、どこにも見当たらなかった。
 管理人の知人で、同型のリンガルを持っている人が、試に自分のものでこっそり翻訳を試みた。

 その結果、管理人が育てた実装石達の本音は、明確に裏付けられた。

 管理人が虐待を始めたのは、それからだった。
 親実装一匹と、成体になりかけた仔実装二匹、親指実装二匹、蛆実装一匹。
 合計六匹の実装石達は、管理人による過酷な拷問を受け始めた。
 虐待を始めるに至った経緯は、事細かに掲示板に記されていた。
 その内容のほとんどは、独り言に過ぎなかった。
 常連達の制止に対して、まったくレスポンスを付けていなかった。

 やがて、管理人はその実況写真を、自身の掲示板に貼るようになる。
 と同時に、ここぞとばかりに虐待派がやって来た。
 彼らは、大人しく躾が行き届いているように見える、潜在的糞蟲の存在を管理人に伝えた。
 「あんたが飼っていたのは、それだったんだよ」と。
 管理人は、何よりも愛していた者達の裏切りに打ちひしがれ、完全に、壊れてしまった。

 2ちゃんねるの実装石板に移動し、愛護派掲示板の変貌経緯を記したスレを調べる。
 それによると、どうやら貼られた虐待写真から、すでに仔実装はすべて殺されているらしい事が判明した。
 親実装の目の前で、一体ずつ切り刻んだり焼き殺したりしたらしい。
 ある投稿者が、「愛情の深い者が虐待に走ると、ここまで凄まじくなるのか」と非難している。
 また、何人かの投稿者は、プロバイダと警察への通報を試みたようだ。
 以前も、ネット上で動物虐待中継を行っていた奴が、警察に逮捕されたことがあった。
 きっとこの管理人も、いずれ同じ道を歩むことだろう。
 スレッドの内容は、やがて消えゆくだろう管理人に対するお通夜的雰囲気に満たされていた。

 躾が行き届いているように見える実装石の中にも、潜在的糞蟲が居る。

 一通りの顛末を見つめたとしあきの心中に、最後まで残り続けたのは、この言葉だった。

『まさか、うちのルミも…いつかはこんな風に…?!』


 後日、この掲示板は、ネット上から完全に姿を消した。
 だが、例のスレッドの住人により、画像なしのミラーサイトが作られ、また変貌経緯をまとめたサイト
まで構築されることになる。
 管理人の罪は、消えることなくネット上に残り続ける事となった。


 朝になった。
 ルミを起こし、朝食の準備と、トイレの洗浄を行う。
 いつものルーチンワーク。
 だが、としあきの心中は、複雑だった。
 ルミの顔を、まともに見られない。

「おはようございますテチ。今日も、ご主人様と仲良くしたいテチ♪」
「…」
「? どうしたのテチか? なんだか元気がないみたいテチ」
「いや…」

 返答もおざなりになる。
 としあきは、ルミとろくに会話もせず、黙々と出社の準備をする。
 その最中、ふと、ある事を思いついた。

 管理人と、同じタイプのリンガルを買って来よう。


 退社後、としあきは急いでペットショップに走った。
 非音声型・過去翻訳ログ記憶表示型の、高級実装リンガルを購入する。
 今まで自分が使っていたリンガルの、二倍近い価格に驚かされたが、我慢する。
 説明書を読みながら公園に出向き、野良実装を相手に早速実験を試みる。
 リンガルは、正常に作動する。

「おいニンゲン、食べ物をよこすデス!」
「高貴なワタチに、お前のような屑ニンゲンが触れる事を許してやるテチ。だからとっとと食べ物を
 よこすテチ!!」
「ワタシはいい子デス〜♪ 飼い実装にしたら、きっとお前は幸せデス〜☆」
「見るからに稼ぎのなさそなダメ人間デス。こんな奴にいちいちかまってたら時間の無駄デスよ」
「はいママ。あんなのには媚びないテチュ」

 予め予想と覚悟はしていたが、これは、かなり堪える。
 何の思い入れもない野良実装の悪言だけで、こんなに不快な思いをするのだ。
 愛情を注いでいた飼い実装に同じことを言われたら、愛護派の人が受ける精神的ダメージは、
はかり知れないだろう。
 自分は、耐えられるだろうか…?

 一通り機能を試すと、としあきは乱暴に地面を蹴り、寄って来た実装石達を脅かす。
 中には早速パンコンしている奴もいたが、特に何もせず、そのまま立ち去った。
 背後で、恐らく罵詈雑言と思われる実装石達の鳴き声が響く。
 気が付くと、空はもうすっかり夜の帳が降りていた。


「おかえりなさいテチ」

 音声リンガルを通じて、ルミの挨拶の声が響く。
 としあきは、非音声型リンガルの存在を気付かれないように気を配ると、律儀に待っていた
ルミをそっと抱き上げた。

「悪かったな、遅くなってしまって。さあ、食事にしよう」
「はいテチ。ルミ、ご主人様とご飯食べたくて、ずっと待ってたテチ」
「俺と?」
「はいテチ」
「昨日は特別だと言っただろ! 毎日するわけじゃない!」
「テチッ?!」

 ルミを乱暴に降ろすと、としあきは、小走りにキッチンに向かい、無言で餌の用意を始めた。
 ルミは、そんなとしあきの背中を、不思議そうに見守っていた。

『ご主人様…ワタチ、そんなつもりで言ったんじゃないテチ…。ただ、ご主人様と、同じ時間に
 ご飯食べられれば、それで良かったテチ…それだけテチ』

 夕食後、無言のまま風呂を済ませ、会話も遊びもしないまま、ルミは床に就かされた。

 何も話しかけないとしあきに、ルミは何やら懸命に話しかけていたが、なぜか実装リンガルを
使用する気にならなかった。
 一応、必要な世話は一通りきちんとやった。
 だが、としあきの中では、ルミに対する猜疑心が膨らみ始めていた。
 昨日と同じく、ネットで実装石関係の掲示板を巡る。
 さすがに、もうあそこへは行く気がしない。
 そう思ってはいたが、何故か、カーソルはあの掲示板のブックマークをクリックしていた。

 掲示板には、大きな変化はない。
 昨日同様、虐待派の人間が、管理人をこちらに引き込むための勧誘を行っている。

 いや、それは無駄だって。
 すでに、管理人はレスをしなくなってかなり経つ。
 呼びかけても、反応なんか……

 マウスを持つ手が止まる。
 管理人のレスが、表示されていた。
 しかも、虐待派の者に対して。
 その内容は、彼等の主張に同意するものだった。


“ご教授ありがとうございました。
 そうですね、所詮実装石。腹の底ではどんな事を考えているのかわかりませんからね。
 あいつらが私達に対して邪悪な感情を持ってるなら、私達も、それ相応に応えてやるべきなのでしょう。
 明日、うちの実装と遊ぶのが、今から楽しみで仕方ありません。”


 一月前のとしあきは、この管理人をとても尊敬していた。
 深い知識と経験を持ち、的確なアドバイスをくれる。
 そして、そのコメントの中に、溢れんばかりの実装石への愛情が見て取れた。
 だが今、このコメントから溢れているのは、憎悪、恨み、邪悪、残虐…
 管理人は、本当に、まったく逆の属性になってしまったのだ。


 気が付くと、としあきは、その掲示板に初めての投稿を行っていた。

“実は今、私も管理人さんと同じような流れで、躾済み実装石を飼い始めました。
 ですが、ここを見てとても不安になりました。

 私の所の実装席石も、いつかはそちらのようになってしまうのでしょうか?
 それは、避けられないのでしょうか?”


 としあきは、机の端に置かれている、非音声型実装リンガルを見つめた。

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1 Re: Name:匿名石 2023/12/16-10:00:44 No:00008534[申告]
ネット情報に踊らされるバカ飼い主
神経質でケツの穴の小さいやつだなぁ
2 Re: Name:匿名石 2024/02/23-22:55:25 No:00008775[申告]
そりゃ離婚されるわ
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