愛護派の無責任な餌やりで飽和した公園には飢えが蔓延していた。 餓死した実装石の死体と凄惨な共食いの跡だけが一面に広がっている。 噴水やトイレなどの水場はとっくに腐臭を放つ死体で埋まり、役をなさない。 餌場には金網のフェンスが立ちはだかり、なにも収穫のない毎日が続いた。 ニンゲンの行き来はずっと見ていない。 増えに増えた仔実装たちが、ある日からほかの成体実装たちに食い荒らされた。 備蓄の食料を狙っての家族同士の残酷な殺し合いが相次いだ。 まさに、世界の終わりだった。 実装石には分からないことだが、やがて駆除の「白い人たち」が来る。 公園内は、それくらい逼迫していた。 男が、その地獄の中を無表情で歩いている。 異様な光景だった。 死だけが支配する公園に、三週間ぶりの人間だ。 男はたまに足を止め、いくつかのダンボールハウスを開けた。 8つ覗いて、その全てに実装石の一部か腐乱した肉か骨だけがあった。 9つめ。 ビンゴだ。 ガリガリに痩せ細った親実装が、媚びることも忘れて男を見上げた。 朽ちかけたハウスの中には、飢えた親仔がひしめきあっていた。 親実装と、仔実装が4匹。親指と蛆。 ダンボールの隅に、仔実装の死体が2匹。 ハウスの中は殺風景で、餌の備蓄のたぐいは見られない。 どうやって生き延びてきたのか、しかし実装一家はとっくにもう限界だった。 頬はこけ、瞳は落ちくぼみ、手足は枯れ木のよう。腹だけが餓鬼のように膨れている。 ほぼ餓死の寸前と言っていい。親指と蛆などは触れるだけでパキンしそうだ。 あと二日もしないうちに全滅するだろう。 公園のあらゆる現状と同じ、死の臭いがすでに充満していた。 親仔は身を寄せ合って、天高くそびえる男に恐怖している。 ■ 俺は虐待派だ。男はそう言った。 リンガルは介したが、交渉も説得も脅迫も男は用いなかった。 まず皮膚摂取に効果のある栄養剤を親仔に乱暴に振りかけると、少し待って。 淡々とトングで掴み、全匹クーラーボックスへ入れていく。 親実装が我が子を抱き寄せようとしながら、何かしら男に訴えた。 ワタシを、仔を、殺すデス? 男はクーラーボックスの中の一家を、親実装を見下ろした。無表情。 答えようとしたのか、口を開きかけ、しかし面倒臭そうに頭をかいた。 虐待をする。 そう一言。 親実装は呻いた。 男はボックス内に残りの栄養剤をひたひたに注ぎ、 さらに実装フードをばらばらと放り込むと、蓋を閉めた。 食え。 食ったら寝ろ。 死んだら虐待できない。 親実装が何か言ったが男は無視してボックスを背負った。歩き出す。 蓋が閉まったので親実装は何も見えない。 しかしボックスに自分と仔実装4匹と親指と蛆の全員が入ってることは分かった。 しかも、飢え死んだ2匹の死体も一緒に入っていることにも気付いた。 男の意図が読めない。 いや、読めたとしても、すぐにでも死ぬ運命だった自分にはどうにもならないことだ。 親実装は真っ暗なボックスの中で栄養剤をがぶがぶ飲み、実装フードを食べた。 傷も飢えも疲労も、命そのものもが回復していく快楽にしばし悶えた。 まさに餓死寸前だった親指と蛆と、仔実装が栄養剤にぷかぷか浮きながら カラカラでシワシワなほぼミイラがみるみる生命力を満たしていく様を横で見つめた。 見えなかったが。 男は自宅に着くと、玄関を開ける前にボックスの蓋を開いた。 実装一家は栄養剤の池の中、まさに夢見心地でウトウトしていた。 テチューとかの寝息なのか鳴き声も聞こえる。 男は無表情でそれを見下ろし、ネムリの効果のある薬をそこに追加した。 昏睡している実装石たちはすべて手際よく偽石を抜かれた。 ■ 男の部屋は虐待派特有のすえた臭いがした。 実装一家にはわずかにしか分からないが、実装石の糞と血の臭い。 それを無理やり消臭しただろう痕跡。 自然ではない、薬品が混合した化学的な空気。 それが一室ではなく、全体に漂っている。 男の部屋は別に広くはない。 裕福でない独身男性が住むだろうごく一般的な間取り。 地方だからワンルームはむしろ少ないとか言っても、2DKとかそんなあれだ。 しかし、あまりにも物がない。 部屋と、床。それだけだ。 実装石には広大に見えたかも知れない。 クーラーボックスの蓋を開け、乱暴に横に倒した。 実装一家が8畳ほどの部屋に散らばる。 仔実装たちはテチャアと不満げな声を上げた。 栄養剤で回復し、フードをお腹いっぱい食べて気持ちよく寝ていたのだ。 怪我はないが、転がされたことに文句を言う。 男は取り合わない。対話もしない。 どれかに入れ。 お前たちの部屋だ。 ごく小さく、狭い水槽がいくつも床に無造作に横倒しにしてある。 家族一緒じゃないデス? 親実装が男に聞く。 男は面倒臭そうに、長い髪をかきむしりながらにらみつけた。 お前ら庇い合うだろ。 それだけならいいが、どうせ糞蟲が足を引っ張る。だからダメなんだよ。 デッス…。 親実装が言葉に詰まっていると、4匹の仔実装たちはテッチテッチとそれぞれ水槽に向かう。 水槽にフードが入っているのが見えたのだ。 コンペイトウもあるかもしれない。 水槽にはそれぞれ、バスタオル、餌皿と水皿、離れて端にトイレがあった。 それら「部屋」を仔実装たちは理解を放棄しながら、それぞれ選んでいく。 レチ。 少し回復した親指が蛆を抱きしめ鳴いた。 蛆と一緒に。離れない。そんなことを言っている。 男は無言で許可した。5つ目の水槽に親指と蛆をセットで入れる。 そして、5つの横倒しの水槽を正しい向きに直した。 仔実装たちの四方は壁となり、自由に出ることができなくなった。 プニフープニフー。 うす暗い部屋には互いに離された5つの水槽と仔実装や親指と蛆がそれぞれに。 冷たい床の上に男と、親実装と、なぜか一緒に持って来た仔実装2匹の死体が残る。 デッス…。 親実装は男を見上げようとして、やめた。 男の目はあまりに暗く、直視することを畏れたのだ。 お前の水槽はない。 デッ! 男はそれだけ言うと、部屋を出た。 扉が閉まると、うす暗い部屋の中はより一層暗く陰鬱になった。 その扉はまる二日間、開かれなかった。 ■ 48時間と少しが過ぎて、男が二日ぶりに部屋に入る。 デデッ。 部屋の隅の床で丸くなっていた親実装が飛び起きて怯えた。 男が無言でゆっくり部屋を一周する。 5つの水槽とその中身、部屋の床の様子、そして親実装を見ているようだった。 お前の餌を忘れていたな。 男は親実装にそう言うと、フードの入った餌皿を床に置いた。 親実装はデッスゥと驚いて、男と餌皿を交互に見る。 勿論わざとだったが、水皿とトイレと二つの死体だけがあった部屋の床。 親実装は、トイレに糞をしていて、水を半分飲み、 空腹に耐えながらも、仔実装の死体には手をつけていなかった。 男は相変わらず無表情だったが、少しだけ満足していた。 必要なのは仔実装だが、飢えた公園で生存した親実装の賢さ、 その賢さの種類を確かめていたのだ。 一家が、或いは自分だけでも生き延びるために、どんなことでもする賢さもある。 しかし、この親実装は共食いを禁じているようだ。 仔の水槽を倒して餌を奪おうとか、仔を喰らおうとした形跡もない。 男はひとまずの間、親実装を潰すことを辞めた。 お前らの虐待を始める。 デスッ!? テチャア! テププ。 テッチ…。 テヒャァー! レチィー。 プニフープニフー。 男の宣言に、 七匹の蟲たちがそれぞれに鳴く。 男はやはり無表情で言葉を続けた。 糞だ。次からは漏らしたら腕を折る。トイレでしろ。 デスデスデス! 親実装が男に取りすがった。 ニンゲンさん酷い事はしないであげて下さいデス! まだ小さいんデス! デギャ。 男が小さくため息をついて親実装を蹴った。 突然の暴力に親実装は糞の線を引きながら飛ばされる。 追って行き、親実装の汚い服をつかんで持ち上げると、 水槽の仔実装たちに見えるように利き腕をポキリと折った。 デギャア! 悲鳴を上げさらに漏らす親実装を床に落とす。 デズ、と自分の糞に頭からつっこむ親実装。 いいか。漏らしたら、こうなる。 男は親実装に雑巾と新聞紙を投げ、 自分で片付けろ。汚れたものはトイレに置け。 そう命令した。 ■ ニンゲンが親に暴力を振るうさまを見せつけられた仔実装たちの反応はそれぞれだ。 テチャア! 長女は激しくパンコンした。もともと彼女の水槽は糞まみれだ。 トイレに走った形跡はあるが、その通り道一面が糞の跡だ。 血涙を流しながら漏らした糞をかき集め、トイレに運んでいる。 男は長女の右腕を折った。長女は再びパンコンした。 テププ。 次女は漏らしていなかった。 どころか、親実装へのお仕置きを嘲笑っている。糞蟲だ。 さらに、男が水槽を片付け、餌を足そうとしている時にテチテチと要求をした。 こんな餌はワタチに相応しくないテチ! スシとステーキが飼い実装には相応しいテチ! クソニンゲン! 男は無視をしたが、親実装を試すために放置してた仔実装の死体を片付けようとした時、 テチャアーーー! その肉をよこすテチ!もともとイモウトチャの肉はワタチが食べるつもりだったテチ! 男に威嚇までした。 男は次女を排除した。これは後述する。 テッチ。 3女も漏らさなかった。 水槽もきれいなままで、糞はトイレでしていた。 男がフードと水を足すと、大人しくそれを口にしたが、幾度も不満そうにため息を吐いた。 気付かれないようにしているようだったが、男はそれを見とがめ、苦々しい表情をした。 テヒャア!テチュ!テッチュ! 4女は漏らした。 男に腕を折られさらに漏らしたが、 餌皿にフードが足されると糞を漏らしながら犬食いをして歓喜にテチュテチュ鳴いた。 おいしいテチュ。幸せテチュ。痛いテチュ。幸せテチュ。 レチュ。 プニフープニフー。 親指と蛆の水槽は糞まみれだったが、親指がタオルで拭いた形跡があった。 親指がパンコンしたか男は確認できなかった。 だから虐待をしなかった、だったら優しい話だが、男は少し見て、漏らしたと判断した。 親指の腕を折った。 デッスゥ…。 どうして虐待するデス? 餌と水を補充し、水槽を掃除しトイレを片付けた男に親実装が哀れに問うた。 お前がしてきた躾は失敗だ。 男は冷たく言う。 野生ならいい。草木の中に隠れろ。好きに生きていけ。公園なんかで人間に頼るな。 お前らは汚い。誰が、糞の臭いのする糞を漏らす汚い実装を飼う? いいか。人間は汚いことを何よりも嫌うんだ。 デス…。 親実装は言い返せなかった。 わかっていた。 暴力にパンコンこそしたが、親実装の身なりはそこそこだ。 糞をトイレでする知能もある。けれど、飢えた公園での躾はままならなかった。 どの仔を託児しようとも秒で殺されるだろうことも理解していた。 お前、間引きもできないだろ。 男が糞蟲の次女をぶら下げそう言う。無表情のまま。 デッスゥ! お前は実装石にしては賢い部類かも知れない。倫理観もある。愛情も嘘じゃないらしい。 カナシイコトは辛いか? それとも共倒れの飢えの中で諦めたか。 テヒャァー! テヒー! テッチューン! 男の手の中の次女が煽り、叫び、さらには媚びている。 ワタチは高貴で特別扱いされるセレブテチュ! ママ! ママ! このクソニンゲンを殺して! ワタチを助けて! ママ! この役立たずのママ! お前なんかウンコ喰って死ねテチ!! このクソニンゲンをワタチのミリョクでメロメロにするからもういいテチ! ワタチはもう飼い実装テチ!! デス…。 完全に論破され、親実装はうつむいた。 男が念を押す。この糞蟲を潰すぞ。何ならお前の命と引き換えに助けてやってもいいが。 いや、今のはナシだ。忘れろ。 糞蟲は潰す。お前の意思なんかどうでもいい。 デッスゥ。 全て察した親実装は、せめて、せめて一思いに。そう懇願した。 男は初めて薄く笑って、 俺は虐待派だと言ったろ? そう返した。 ■ 体と服を洗え。下手な糞蟲は足を折る。 次の日。親仔が男の部屋に来て四日目だ。 偽石を栄養剤に浸けているので、親仔の腕は自然治癒している。 実装石を風呂に入れた。男の方針で、一匹づつ別々に。 それだけでも相当な手間だが、初回は男が横についてやり方を教えた。 デスデスデスゥ。 テヒャアー。 テッチテッチ。 テッチューン。 レチャー。 プニフープニフー。 初めて温水に身体を満たし、 あわあわのボディソープでこびりついた垢を落とし、 あわあわのシャンプーでゴワゴワの髪の毛を洗われた実装親仔たち。 ドライヤーで髪と体を乾かすと、洗濯を終えきれいになった実装服を着た。 ずっしり重く硬かった服がふわふわになっていた。 夢見心地だった。 快楽の頂点に到達していた。 たまらずパンコンした長女と4女はまたも腕を折られた。 デスデスデスデッスーン! 仔たちが! キレイになってるデッスン! みんな世界一カワイイデス! みんな飼い実装にふさわしいデス!! 親実装が興奮している。言いすぎだ。 二回目からは男は手を出さなかった。 みんな、思い思いにシャンプーやセッケンを手に身体や髪を洗う。 親指や蛆チャンもだ。 もちろん、初めから上手な実装は少ない。 泡で目が染みたり、口の中に入ってむせたり、汚れが落としきれなかったり。 男の虐待は毎日で、仔実装たちは腕を足をポキポキ折られた。 しかし、毎日の食餌と風呂で、親仔は飢えることなく、体もきれいになっていった。 男は親実装に興味を持たなかった。 水槽のある部屋で、自由に過ごすことを許した。 幸運なことに、親実装は賢い個体で、トイレも整容も手がかからなかった。 男が親実装に言い渡したルールは一つ。 仔実装に構うな。声もかけるな。俺の邪魔をするな。 親実装はそれに従った。、 水槽を遠巻きに見つめ、仔実装たちが虐待と言う名の躾をされる日々を見守っていた。 そう、これは躾だ。 自分にはできなかったことだ。 ■ テチャアー!! テギャア!! 虐待は続く。 分かっていても、仔が腕や足を折られる悲鳴は親実装には苦痛でしかない。 うずくまって耳を塞いだ。声を出さないように。 長女はそもそもトイレに間に合わない。 便意を感じ、テッチテッチとトイレに走る。トイレの認識はあるらしい。 しかし、秒で漏らしていて、トイレまでの床は糞の線がまっすぐに。 四日続けて腕を折られるという虐待を受けても何の進展もなかった。 4女はもう少し違う。 餌をやると、その嬉しさで漏らすのだ。秒で漏らす。 いけないこととは分かっているようで、真っ青になって、トイレに走る。 パンツはもう漏れた糞でこんもりなのだが、誤魔化すようにふらふら走る。 そして、トイレに着くと、もう出ないので、漏らしたパンツを脱ぎ、 中身をトイレに落としてペーパーでパンツとお尻を延々と拭き続けるのだ。 デッスゥ…。 男と一緒にそれを見ている親実装は嘆息する。 需要はある。とにかく、糞蟲じゃなければいい。 男が不思議なことを言った。 冷酷に仔の腕を折るのに、嫌悪も憎しみも抱いていない。ように見えた。 ■ テッチテッチテッテ! 3女は、賢かった。 トイレもすぐに覚え、粗相をしたこともない。ゆえに、一度も手足を折られていない。 テププ…。オネチャたちはバカテチャア。 そう呟いて、含み笑いする。男も親実装もそれを見ていた。 実装石特有の、増長し、肥大化する欲望と自意識はすぐに表に出た。 テチャア! 五日目のお風呂の時。 3女が癇癪を起こしてシャンプーやソープのボトルを蹴り飛ばした。 テチャァー!! クソニンゲン! アタチをきれいに洗うのはお前の仕事テチャーー! 何でアタチが自分でしなきゃならないテジャアアアアアア!!!? 男が無言で足を折った。初めて味わう激痛に泣き叫ぶ3女。 テジャアアア! ワタチの足! 高貴なワタチのあんよが! ありえないテジャアアア!! 3女は力の差も理解できずこれ以上ない醜い表情で男に威嚇をする。 憤怒に歯を剥き出し、その口元から涎をダラダラ撒き散らした。 興奮に、一気に痛みも忘れているようだ。 男が3女のもう片方の足も折る。 いくらなんでもボロを出すのが早すぎだ。絵に描いたような糞蟲だな。 男が別に意外でも何でもないように言う。 テジャァーー!! 糞蟲はママや姉妹たちテチ! 美しいワタチを糞蟲扱いなんてそれだけで死刑テチ! テジャァーー!! ずっと虐待されてるテチ! トイレのウンチが夕方まで片付けられないのも! 餌が一日たった一回で少なくてまずいのも! ステーキも金平糖もないのも!! 飼い実装の服もないテチ!! 服はいつもみすぼらしいテチ!! お前はただの野良だ。糞蟲を飼う人間なんかいない。 男は淡々と言うと、3女をつまみ上げ、折れた両足をさらに砕いた。 クーラーボックスに放り込む。 ママ! 助けてママ!! このクソニンゲンをやっつけて!! そこで初めて3女は親実装に助けを求め始めた。 男はちらりと親実装を見たが、彼女はうつむいて頭を振っていた。 テジャアアアアアアーーーーー!! 3女はやけくそで威嚇する。 糞蟲ゆえに、孤立無援になったことが理解できない。 テジャア!テジャ!! クソニンゲンの虐待は最悪テチ! こんなことなら産まれて来なければよかったテチ! ママは最低の裏切り者テチ! なに虐待派のクソニンゲンに媚びてるテチ! 我が身可愛さ丸出しテチ! どうして糞蟲の姉妹と高貴なワタチの違いが分からないテチ!? 3女の水槽は撤去され、部屋から3女の姿はなくなった。 ■ レチ。レチレチ。 プニフープニフー。 親指と蛆の水槽は未だに毎日汚れている。 これは、蛆が常に延々と糞を漏らすからだ。 しばらくして、親指はフードを独り占めするようになった。 蛆にもフードを与えると糞の量が増える。 プニプニするとさらに糞が出る。 一度腕を折られた結果が、こうなった。 親指は蛆に構わないようになり、フードを一人で食べる。 ちゃんとトイレで糞をする。 蛆はプニプニをねだり、糞をして、その糞を舐める。 プニフープニフー。 レッチ! 親指が蛆を叱りつける。 プニプニはもうしないレチ。 いいからウンチを食べろレチ。ニンゲンさんは汚いのが嫌いレチ。 親実装に促され、しぶしぶ水槽を確認した男は少し肩を落とした。 親指や蛆に需要はないし、興味もなかったが、これはいびつな状態だった。 すまん。親指のお前には大変だったな。床は俺が掃除する。 感情のこもっていない声で男が言った。 レチ。 レフーン。 だから蛆に糞喰いをさせるな。プニプニもしてやれ。 お詫びとばかりに、金平糖を二粒投げた。 これがいけなかった。 ■ 実装石は、施しに慣れる。 何もしなくても毎日餌が出ることも、トイレが片付けられることも、 毎日風呂に入れ、服を洗濯できることにも慣れていく。 当たり前になると、それが実装石にとっても「普通」になっていく。 これは良し悪しだが、 慣れると言うことは「良し」では、こなれていくということだ。 問題は「悪し」だ。 実装を飼育するにあたって、一番のやっかいごとがここにある。 一度上がった生活水準を下げることができない。 それを、不幸だと、耐えがたい苦痛だと感じるようになるのだ。 テッチュゥン。 長女は、トイレに間に合うようになった。 パンツを下ろし、排便し、お尻を拭きながら達成感に喜びの声を上げている。 十回以上腕を折られ、糞は漏らさずトイレでするということをやっと覚えた。 水槽が狭く、トイレまでの距離が近いことも功を奏した。 長女はバカだが、素直で善良だったため、 トイレの意味も、風呂や洗濯の良さも理解し始めている。 何より、現状に不満を訴えることがない。 テチュー。 4女も、トイレを覚えた。 しかし少し意味合いが違う。 嬉しさのあまり漏らす、その頻度が減ったのだ。 初めて食べた実装フードの味は天にも昇る気持ちだった。 餌にありつけない野良の時から比べたら、毎日決まって貰えることは幸福の絶頂だった。 しかし。 テッチュー。 またこのフードテチ。 毎日おんなじテチ。 「慣れ」は初めて味わった幸せを急速に薄めていく。これこそが実装石の不幸なのだが。 4女は嬉しさで漏らすことがなくなった。 プニフープニフー。 レッチ! 親指と蛆の関係は改善しなかった。 相変わらず蛆を無視する親指。餌もずっと独り占めだ。 それは一つの成功体験に由来する。 男がリンガルのログを確認する。 蛆チャンはずっと糞を食べろレチ。 ずっと床を汚してろレチ。 そうしたらまたニンゲンさんが来て、コンペイトウをくれるレチ。 あの世界最高のアマアマ、今度もワタチが全部食べるレチ。 ■ 男が足元の親実装に問う。 馬鹿なのはいい。需要がある。 馬鹿すぎるのはダメだ。飼えないからな。 最悪なのは糞蟲だ。 お前はどうだった? どうしてお前は、糞蟲にならなかった? デェェ…。 親実装は言葉に詰まった。 デスデスデスデス。 糞蟲は、ママに悲しい事されたデス。 でも、糞蟲だって気付けないことも多いデス。 だろうな。 男は心の中で言った。実装石が糞蟲なんだからな。 もう一度聞く。どうしてお前は、糞蟲にならなかった? デッ。 デェ……。 まさかの、親実装は答えることができなかった。 色々な言葉の装飾があったが、曰く、「わからない」。 結論から言えばそれが全てだった。 男は趣味で仔実装の躾をし、売っていた。 今回出荷できたのは、バカで善良な長女だけだ。 飢えた公園からなら或いは、とも思っていたが。 やはり環境からも、賢い親からも、産まれる仔実装には大差ない。 まあいい。 男はこれを仕事ではなく、趣味でやっているのだ。 今回の飢えた公園の生き残り家族もただの思い付きだ。 次はまた違う方向でアプローチしていく。 気晴らしに、別室の次女、3女、4女の虐待でもしよう。 手足を落とし禿裸で、自身の糞しか喰わせていないが、 栄養剤に浸けた偽石はまだ黒ずんでいない。 しぶとい奴らだ。 生きることに汚い糞蟲ほど、長く遊べる。 だが。 男は無表情で足元の親実装を見た。珍しいことだが、特別に生かしている。 糞蟲じゃない実装を探すことは、本当に難しい。 男は、頬に重く貼り付いた長い髪を神経質に掻き毟った。 おしまい ■ 途中まで長々とかいていたものが全ッ然面白くなかったので めっちゃコピペと削除をしてむりやり完成させてみたデスゥ… 糞蟲化した仔の虐待シーンがすごく長かったのでバッサリしましたが また別のものに生かすデスゥ 次回もよろしくお願いします @ijuksystem

| 1 Re: Name:匿名石 2022/12/17-03:41:01 No:00006636[申告] |
| 糞蟲達への虐待が気になる…どんな事するんだろう |
| 2 Re: Name:匿名石 2022/12/17-22:53:00 No:00006637[申告] |
| 躾は好物 |
| 3 Re: Name:匿名石 2022/12/18-03:27:05 No:00006639[申告] |
| ブリーダーも大変だ |
| 4 Re: Name:匿名石 2022/12/19-08:22:35 No:00006640[申告] |
| 親指と蛆がこの後どうなったのか気になるな…興味ないと言ってるから放置して餓死させるかまたはいびつな状態のままなのか 親実装を生かしているのはわかる気がする |
| 5 Re: Name:匿名石 2023/05/21-12:41:08 No:00007202[申告] |
| アホの長女ちゃんが可愛い! |
| 6 Re: Name:匿名石 2023/05/21-13:46:37 No:00007203[申告] |
| 「躾」といってもこの男のは糞蟲を矯正して徹底的に封じ込めるブリーダー的な躾ではなく
人間との共生出来そうな個体を選別して伸ばす躾って感じなので飼われた先で自身も飼い主も穏やかに過ごせそうだな |
| 7 Re: Name:匿名石 2023/07/11-17:49:51 No:00007498[申告] |
| 親は何だかんだで男のブリーダー趣味の良い相棒になってそう |
| 8 Re: Name:匿名石 2023/08/15-16:11:13 No:00007785[申告] |
| 絶滅しかけた最後の公園の、最後の家族なので
まあ普通の実装とは違うとは思ってる 続編はなしか |