「本当に貰っていいんですかこれ?」 「ああ、いいとも君にはいつも世話になってるからね」 今、彼にあげたのは私のお手製の改造携帯。 と言ってもその改造は実装石に対して特化したもので。 実装石の声を翻訳するリンガル機能、その精度と距離を上げ、 通常のリンガルの文字表示機能を音声にも変換して出力できるという優れものだ。 他にも実装石の体をその場でスキャンして偽石の場所を発見するなど、 様々な機能を追加している。おそらくこれが普通の市場にでれば、 虐待派、愛護派問わず飛ぶように売れるだろう事だろう…。 「そういえば敏明君、例の実装石の件だけど…」 「例のって、エリザベスですか?」 「いやいや、そんな小物の話じゃない『ミドリ』の事だよ」 「名無しさん、まさか居場所がわかったんですか?」 興奮げに私の話に飛びついてくる彼は双葉敏明という。 最近メキメキと腕をあげて来た期待の実装石ハンターだ。 実装石ハンターというのは、いわゆる警察や役所が手を焼いている 野良実装を退治して報酬を貰う、所謂フリーの駆除業者みたいなものだ。 そして、この私。今は『名無し』と名乗っている。もちろん偽名だ。 私はいわゆる『情報屋』。ハンターに情報を与えて、情報料を頂いたり、 ハンターが狩った獲物の何割かを頂くと言う仲介職業だ。 なにしろ実装石というのは賢い固体になると いろいろ知恵をつけて捕まえにくい事この上ない。 そこで多くのハンターは、私のような情報屋と手を組んで、 お目当ての実装をハントするという仕組みだ。 だが、私はハンターからの情報料や報酬と言うのを一切貰っていない。 別に貰わなくても一生遊んで暮らせるくらいの金は持っているからね。 私がこの職業をしているのは単なる”趣味”。死ぬまでの暇つぶしのようなものだ。 故に、誰彼構わず情報を流したりはしない。そういうのは金に困っている奴のする事だ。 私は、私の気にいった者だけにしか情報を流さないようにしている。 そしてこの敏明君は今、私の大のお気に入りなのだ。 「ああ、おそらくミドリに間違いないと思う。 だが今まで14人のハンターを退けてきた奴だ、君だけで大丈夫かね?」 「大丈夫です。任せてください!」 「ふふふ、元気があっていいね。では場所なんだけど…」 そう、敏明君。君は元気があっていいね。 その元気がとても羨ましいよ…。 「じゃあ、早速行って来ます。いつもみたいに吉報をお持ちしますよ。」 「ああ、じゃあ頑張ってね」 -------------------------------------- 数時間後… 彼の携帯に付けている発信機の場所からどうやらターゲットのいるビルについたようだ。 さて、敏明君。頑張ってくれたまえよ。 -------------------------------------- 数十分後 私の机にあるパソコンに敏明君の携帯から送られてきた動画が届く。 どうやらミドリの額を打ち抜いているようだが、ミドリは死んでいないようだ。 そうだろうね、こんなに簡単に死んでしまったら1000万円なんて額は付かないだろ? 画面のモードが切り替わり、偽石スキャンが始まった。 はは、敏明君焦ってるなぁ、頑張れ、頑張れよ。 ミドリの体からは無数の偽石反応が現われる。 禿しくワロタw。多分彼の驚き様は尋常じゃないだろうな。 私はパソコンを操作し、敏明君とミドリがいる部屋の映像に切り替える。 予めセットしておいた隠しカメラの映像だ。 カメラには敏明君とミドリが映し出される。 「デププ…、私を殺す事は不可能デズゥ! お前も他のハンター共々私に食われろデズゥ!」 「はぁ?」 あはは、敏明君キレちゃったよ。弾も全部使い果たしちゃって、 あれあれ、気が動転したのか素手でミドリの体の中から偽石を取り出してるよ。 腹痛ぇ。駄目だなぁ、それじゃ、それじゃいけないよ。いけないんだよっ! いつもは冷静な敏明君だけどやっぱり考え方が浅いなぁ。 偽石がいくつもあるってのは、それだけ治癒スピードが高いって事なんだよ。 小学校の時の理科で、直列に繋いだ電池で電球付けた事ないのか? ああ、きっと授業なんてまともに聞いてなかったんだろうね、それとももう忘れたのかい? 素手でそんな所に手を突っ込んだらどうなるか…。応用の利かない子だなぁ。 「嫌だぁぁぁぁあああああああ!!!」 パソコンから敏明君の悲鳴が部屋の中に木魂する。 馬鹿だ、馬鹿がいる。自分の手が回復する実装石の体とくっ付いちゃってるよ。 ああ、もう駄目だ。腹が痛い。 偽石が敏明君の体を、自分の一部だと認識して、どんどん、どんどん、どんどん侵食していく。 どうなんだろうね?自分の体が生きたまま実装石の一部になるってのは。 思いもしなかったんだろう?今まで自分が殺してきた下等生物に今度は自分が侵食されていく どういう気分なんだろう?考えただけでオラわくわくしてきたぞ。 興奮した私はカメラの映像で敏明君の顔をアップにする。 腕がもう肘の所まで侵食された彼の目玉は緑と赤に変色し始め、 悶絶する彼の顔で私のおチンチンはおっ起した。たまらん!敏明君、君はやっぱり最高だ! どんどん侵食されて壊れていく彼を尻目に私は自分のイチモツを激しくしごいた。 そしてフィニッシュ!もう原型を留めていない彼の体の映った画面に発射した。 ありがとう敏明君、ありがとう敏明君。やっぱり君は”良い子”だったよ。 「これで記録は14、いや逃げられたのを合わせると15人目かな?」 夜の雑居ビル街の一室に今日もツンとする栗の匂いが立ち込める。 私はパソコンから敏明君のケータイに信号を送る。 ケータイからはもくもくと白い煙が上がる。催眠ガスだ。 これは敏明君には教えていない機能だったね。 本当は自爆するようにしようかと考えたけど、ミドリにはこれからも頑張って貰わないとね。 ミドリは後で回収しよう。今度はどこがいいかな? 海辺の倉庫なんでどうだろうか?今回とシチュエーションが似てて面白くないな。 学校?ビルの屋上?山なんかもいいかもね。ああ楽しみが広がってしょうがない。 そうだ、その前に手頃なハンターを捜さないといけないな。 今度も良い声で泣いてくれるといいんだが。
