俺の名前は双葉敏明。職業は実装石ハンターだ。 名前だけ聞くとなんとも間抜けな職業だが、俺はこれで飯を食っている。 2007年、増えすぎた実装石による犯罪が増え、社会問題化していた。 実装石の駆除には、普通は役所や警察の連中が狩り出されるわけだが、 普通の警察や役所で手に負えない実装石、いわゆるイレギュラーというのが存在していて、 そいつ等には、国や警察、果ては個人まで懸賞金がかけていた。 俺達、実装石ハンターはその懸賞金目当てに実装石を狩っている。 今日は前から追跡していた実装石の居場所を遂に掴み現場に急行した。 追跡対象の名前は通称「ミドリ」 今まで14人もハンター達を返り討ちにしている、特Aクラスの獲物だ。 13人は全員行方不明、ただ一人帰って来た者は右腕を失い、廃人になってしまった。 いくら実装石ハンターだとしても、相手は所詮実装石 その実装石にハンターがやられるなんてのは前例が無い事から ミドリの賞金額は生死を問わず1000万、懸賞金としては破格の額となり 多くの実装石ハンターがミドリを巡って日本中を駆け巡っていた。 俺は今回情報のあった廃ビルの中に入ると、手持ちの銃の安全装置を外す 凶暴な実装石になると危険を伴うので多くのハンターは拳銃所持の特別許可を得ている。 だが中には懸賞金よりも実装石を殺す事を楽しむ虐待派の多い業界なので 金属バットから、カタナ…、チェーンソーなんてのを持ち出してくる馬鹿もいる 基本的には何を使おうが個人の勝手という感じになっているが、 俺は確実に対象をハントする為にあえて銃を使ってる。 どう殺すかは問題じゃない、確実に殺してこそプロという俺の心情でもある。 電気の来ていない薄暗いビルを昇る。 最上階も近くなった頃、鼻にツンとする臭いがした。 いわゆるバンコン臭、俺は音を殺し、臭いの辿った。 ドアの壊れた隅の部屋からクチャクチャと何かを食っている音がする。 俺は静かに携帯を開くとリンガルモードに切り返る。 半径5メートル程度ならどんなに小さかろうが実装石の声を 拾って日本語に翻訳してくれる優れものだ。 これのお陰でターゲットに気づかれる事無く相手の行動を知る事ができる。 「デズゥ…やっぱり仔実装の肉は最高デスゥ!…ってデ!誰かいるデスゥ!」 しまった、前回文字表示モードから音声モードに切り替えたのを忘れてた。 だがここで逃げられるわけには行かない、俺は部屋の入り口に飛び出すと ターゲットを視認、一気に銃のトリガーを弾いた。 弾はミドリの額に命中、運良くそこに偽石もあったので無事逃げられる事無く任務完了。 あとはミドリの死体を持ってきた麻袋に詰めて持って帰るだけだが… おかしい、どこか様子がおかしい…。 「デズウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…」 弾丸は確かに実装石の額にある偽石に命中していた…。 普通なら偽石を破壊された実装石はその場で絶命するはずだが。 「デズウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…、ポゥ!」 「何っ!」 死なない、確かに偽石は破壊したはずだ…。 偽石がフェイク?そんなはずは…くっ、どうなってやがる! 弾は確かに貫通していた…、開いた穴から向こう側が見えるほど。 偽石も確かに破壊した。こんなの、普通では考えられない。 「ポポポポポポポポポポ…ポゥ!」 俺の見ている前でみるみるうちに額の傷は塞がっていく…。 そして偽石も。そんな事はありえない。 体の一部ではないフェイクであるなら、偽石が再生するなどありえないのだ。 むしろ偽石が再生する事など通常ではありえない。 偽石を破壊された実装石はその瞬間息絶えるはずだ。 俺は手に取った携帯でをカメラモードに切り替える。 俺の携帯のOSは、対実装石専用に特殊なカスタマイズが施されている。 携帯の画面に映し出された実装石は分析モードで即座に奴を分析された。 「!?」 絶句した…。なんなんだ、こいつ…。 画面に映し出された実装石からは無数の偽石反応が現われる。 つまりこういう事か、額にあった偽石は本物、 だが、こいつの場合体内に無数の偽石を有する事で。 偽石が破壊されても即座に他の偽石が破損した偽石をカバーするのか。 じゃあ、事実上こいつを殺す事は不可能なのか? 「デズウウウゥゥゥゥ!!!」 くっ、気を取られている間に奴の再生が終わったらしい。 奴との距離を測りながら、なんとかこの状況を突破せんが為に思考をフル回転させる。 携帯の実装リンガルが奴の言葉を翻訳し、スピーカーから奴の声が聞こえる。 「デププ…、私を殺す事は不可能デズゥ! お前も他のハンター共々私に食われろデズゥ!」 「はぁ?」 ムカついた俺はミドリに近寄るとミドリに残りの全弾をブチ込み思いっきり壁に蹴飛ばした。 「デッ、デスゥ!」 なめてんのか?例え再生しようと実装石は実装石。 人間との力の差は歴然、偽石が再生するならすればいいじゃないか。 わざわざ銃で撃って、再生なんかさせなくてもボコって偽石取り出して全部壊せばいいだけじゃないか。 何が殺す事は不可能デスゥだボケが、俺に食われろ?ふざけんなこのタコスケが。 俺はぐったりして再生を待っているミドリに近寄ると素手で体中からに偽石を引きずり出し始めた。 「デ、デェェエエエエエエエエエエ!!!」 悶絶するミドリ、だがそんな事は知らん。人間を舐めた罰だ。 お前はここで俺に偽石を全部抜き取られ、そして破壊される運命なんだよ。 そして俺は1000万で豪遊、もう一生はたら…あれ? どうした事だろう、動きがなんだか鈍い、頭が働かな… 俺が最後に見た記憶は、俺がミドリの体内から偽石を引きずりだそうとしている手が ミドリの回復する体に癒着して、ええっ、嘘っ、嫌だぁぁぁぁあああああああ!!! 「デププ…」 ハントターゲット『ミドリ』 賞金1000万円
