『 たとえ明日世界が滅亡しようとも、今日私は糞蟲を打ち据える。 』 ※この作品は、実装と、実装以外と、私自身と、画面の前の貴方を虐待する作品です。 人間が絶対的強者でなければ納得のいかない方には、不快な描写が含まれています。 ジャンル内には、コズミック・ホラー、SF、作者の厨二病炸裂といった要素を多く含みます。 そろそろ、クトゥルフ神話系のネタが分からない人は置いてけぼりになる可能性が高くなります。 それらが苦手な方が閲覧された場合の、肉体的・精神的・社会的な苦痛・損害の一切を私は補償しません。 また、特定の思想や宗教を啓蒙しているわけでもありません。 流されやすい方には、悪影響です。 反骨心の強い方には、不快感を与えるだけになります。 ただ有象無象がひしめく実装界の中のひとつの物語と納得して、 あるがままを受け入れて頂ける方のみご閲覧ください。 ※上記の中で、一つでも納得されない箇所があれば、このまま即座に「戻る」ボタンを押して、ご退室をお願いします。 読者の皆様には、スクリプトを自由に閲覧する権利があります。 作者である私にはスクリプトで自由に表現する権利があります。 読者間であれ、作者に対してであれ、お互いを尊重するご配慮ができない方は、コメントを差し控え願います。 他者を尊重するご配慮ができない方は、 コメントで表現するのではなくカウンター作品の執筆による表現を推奨します。 本作品に登場する名称・人名・実装石をモデルに執筆されても一向に構いません。 ぜひ、お互いの作品を以て、存分にお互いの矜持を語り合いましょう。 ご納得された方のみ、スクリプトをお楽しみください。 ※燃える三眼、這い寄る混沌、大いなる使者、無貌の神 Nyarlathotep 様がアップを始めたようです。 パンクバンド『The Darkest of the Hillside Thickets』の 『The Shadow Out of Tim』アルバム楽曲『Nyarlathotep』をBGMとして推奨します(嘲笑) …おい誰だ、今、リアル童貞て言った奴。ちょっと前に出ておいで、ナイアさん怒ってないから。 ※黒き豊穣の女神、畝の後ろを歩くもの、我々全てのお母さま、シュブ=ニグラス様がログアウトされました。 シュブ様の伝言「うちの旦那が来たら、どうせこれもあんたの息子でしょ?って伝えておいて。 私も久々に、ちょっと別の種を仕込んでくるわね。」 ※全知全能の邪神、アウターゴッドであらせられる、ヨグ=ソトース様がログインされました。 ヨグ様「ん?透明になったり時間遡ったりしてたが、こいつ、もしかしてワシの息子? あ〜…あれか、100年くらい前に、ダニッチ村に逗留した時の種かなぁ…? あんときゃ荒れてたからなぁ…。あれ?でもあの村の種は双子じゃなかったっけ?」 【 第三章: それは、おそらく…深く暗き未来への切なる想いと正しき怨讐の鉄槌。 】 誰にでも、大切に想う誰かがいるでしょう。 あなたも、大切に思う何かがあるでしょう。 もしも大切な何かが傷つけられた時、生きとし生ける全ては誰もが怒れる獅子に成り得るのだ。 それは誰であろうと逃れられぬ負の連鎖。獣であれ、人であれ。そして私や貴方であろうとも。 復讐に身を焦がし、全てを焼き払い、それでもなお、失った何かを想い、天に咆哮する。 それは呪いだ。この世の全てを焼き尽くしても、止めどなく溢れ出る悲しき慟哭なのだ。 もしも、そんな悲しみを癒せると甘言を囁かれた時。 失ったなにかを、取り戻せる方法があると知った時。 あなたは、その甘言を馬鹿々々しいと振り払えるか。 これは彼のたった一つの切なる願いの物語。 小さな小さな、チープで陳腐な願いの物語。 嗤ってくれてもいい、蔑んでくれてもいい。 彼の生涯に意味はなく、嘲笑に塗れている。 賽の河原で石を積むような無意味な行為だ。 だが、どうか、それでも忘れないで欲しい。 彼の生き様をどうか目に焼き付けて欲しい。 これは誰かを想う正しき怨讐の物語なのだ。 暗転 季節は夏。 燦々と照りつける太陽と、その光を反射したアスファルトからの輻射熱で、陽炎に揺れる遊歩道。 そんな灼熱地獄のような道とは裏腹に、豊かな木々と芝生、冷たい飛沫をあげる噴水と、優しい土の香り。 今日も公園は、行き交う人々の憩いの場であった。 無論、このオアシスに立ち寄るのは、人ばかりではない。 木陰には色とりどりの小鳥たちが羽を休め、 降り注ぐ木漏れ日を浴びながら猫たちが芝生の上に寝転び、 噴水の周りを楽し気に飼い主と駆け回る犬の姿があった。 ここは、みんなの広場、みんなの楽園。 それは、もちろん実装石達にとっても。 …… 時刻は、日が傾き始めた午後。 「可愛いお前たち、ちゃーんと順番にならぶデスゥ♪」 「きゃ〜♪つめたいテチュ〜ン♪」「チュワ〜ン♪きれいきれいうれしいテチィ♪」 「ママぁ〜、はやくワタチもママと洗いっこしたいテチィ!チュワッ!チュワッ!」 噴水の前に、親実装石と数匹の仔実装石たちが和気藹々と群れていた。 行儀よく並んでいる仔実装たちの服を脱がして、1石1石丁寧に洗体・洗髪をする親実装石。 そんな仲睦まじく、微笑ましい親仔の姿を見て、他の公園利用者も頬を緩めていた。 麗らかな陽気の下で、実装石のありふれた親子愛を眺める人々の中に、彼と、小学校低学年くらいの少女の姿もあった。 予想外に早く仕事を切り上げることができた彼は、足早に学童保育に赴いて最愛の妹を引き取り、 自宅の帰り際にある公園に遊びに来ていたのだ。 「きゃー、かわいいっ! お兄ちゃん、みてみて! おちびちゃんたちが、洗いっこしてるよぉ〜♪」 「はいはい、双葉。わかってるよ。 アイスを食べてること忘れるなよ、落っことしちまうぞ?」 彼の最愛の妹…。 双葉と呼ばれた少女は、出店で売られていたアイスを片手に、きゃっきゃっと騒いでいる。 彼は実装石を可愛いと思った事はない。 何派かと聞かれたら、即座に猫派と答えるくらい実装石に興味がない。 そもそも、人間の3分の1程度の大きさの生き物が、 浮浪者のように公園や河川敷で、わらわらと群れて暮らしているなんて恐怖でしかない。 しかも、奴らは人語を解して喋る事ができるのだ。 はっきり言って、もう動物じゃない、小人と言っても差し支えないだろう。 だというのに、習性や社会性だけは、まるっきり野生動物のそれだ。 体の構成が脆いと言われているが、雑食性で歯と顎の力だけは強靭。 そんな要素が重なりあっているんだ、場合によっては人間に危害が及ぶ事だってあるだろう。 妹に何かあったらどうしてくれるんだ、特定動物に認定されてさっさと駆除された方が良い。 …とさえ思っていた。 だが、最愛の妹が可愛いというのだから、きっと彼自身の感性が狂っているだけなのだろう。 彼は、そう思い込むことにしていた。 確かに、親が仔を慈しむように洗体・洗髪している姿は、 少女と彼の昔の入浴の光景を連想させて、彼も頬がゆるむ。 「洗いっこかー。そういや、双葉が小学校に上がってからは、 一人で風呂に入りだしたもんなぁ。今日あたり、久々に一緒に風呂に入るか?」 彼としては、雑談の一つのつもりだ。 親に先立たれ、忘れ形見となった年の離れた妹を、彼は実の娘のように溺愛している。 親戚に、兄妹別々に引き取られる事になりそうで泣きじゃくる妹を憐れに思い、 成績優秀だった彼は、志望校への進学を蹴って、卒業後すぐに就職をした。 決して実入りの良い職場ではなかったが、節制すれば二人で暮らすには十分だ。 彼は、妹に惜しみなく愛を注いだ。 だが、今日の寄り道は、いつも寂しい思いを我慢している妹へのご褒美のようなもので、無意味な贅沢はさせていない。 彼だって何時かは死ぬ。妹の将来を守るためにも、預金を残し、彼女がいつか自立するための支援ができるように。 「えー、お兄ちゃんのエッチ〜! ダメだよー、そーいうのはケッコンしてからお嫁さんとするんだよー。 双葉、もうお姉さんだからケッコンするまでは一人で入るんだもーん。」 双葉は屈託のない笑顔を向けながら、彼に笑いかける。 たぶん意味なんて分かっていないだろう。 覚えたての知識を、兄に披露するのが嬉しいだけだ。 「ははは、双葉が嫁に出るまでは、 兄ちゃんは心配で心配で、結婚なんかできないだろうなぁ。」 「だいじょーぶ! おっきくなったら、ふたばが、お兄ちゃんのお嫁さんになるんだも〜ん♪」 「はいはい、期待しないで待ってるよ。 さあ、双葉、そろそろ帰ろうか。」 「は〜い♪」 双葉はアイスを頬張りながら、後ろ向きで歩きつつ、 彼を見つめて満面の笑みで微笑んだ。 「ねー、お兄ちゃ〜ん。実装石…。」 「それはダーメ、兄ちゃん、どうせ飼うなら猫がいい。」 帰り際、彼の手を握りながら双葉が甘えた声を出す。 だが、彼もさすがに即答で断る。 「えー…なんでなんでぇー…。ネコも可愛いけど、おちびちゃんたち可愛いじゃない。」 「生き物を飼うのは、どんなもんでも大変なんだ。 そうでなくても、実装石は本当に飼うのが難しんだぞ。 公園に行けば、いつでも見れるんだから、それで我慢しなさい。」 「はーい…。」 心を鬼にして、彼は言葉を紡いだ。 その台詞を聞き、双葉は残念そうに俯く。 ペットを飼うとなれば、月1万円の消費は覚悟しなければならない。 予防接種や、病気になった際の治療費といった突然の出費だってある。 とてもじゃないが、今の彼の収入では無理な相談だ。 いや、養えるかもしれないが、そんなムダ金があるならば、むしろ妹のために遣いたい。 何より、双葉には命を軽く感じて欲しくはない。躾に厳しい体罰が必要と聞く実装石のことだ。 何かの拍子に殺してしまうなんて事があるかもしれない。 糞蟲化して、どうしようもなくなり、殺処分しなければならない事もあるだろう。 彼は妹の将来を想ってそういったのだ。 そこには、妹への愛が溢れていた。 むしろ、彼には、妹への愛しかなかった。 …だが、数日後。 彼は、自分の言葉を、世界を呪う…。 …… ……… 双葉は、今日も兄の帰りを公園で遊びながら待っていた。 公園は楽しい。遊具もある、木陰や噴水の近くは涼しい。 何より色んな人や動物で溢れていて双葉を飽きさせない。 双葉の最近のお気に入りは実装石の親仔だ。 いつも礼儀正しく公園の噴水で体を洗いっこしている姿は、 昔の兄との入浴を思い出して、ワクワクした気分になる。 あの親仔に交じって、洗いっこしたら、きっと楽しいだろうなぁ。 双葉が、そんな事を考えながら実装石の親仔を眺めていると、 仔を洗い終えた親実装石が、おずおずと双葉に近づいて話しかけてきた。 「ニンゲンサン、わたしたちに何かご用があるデス? ごめんなさい迷惑かけてしまったデス?」 親実装石は野良にしては、礼儀正しく、申し訳なさそうに俯いている。 「え!? あ、ううん! こっちこそ、ごめんね! おちびちゃんたちが可愛かったから、気になってみてたの。 …あ、えと。これ…よかったら食べる?」 双葉は、実装石の方から話しかけてくるとは思わず驚いた。 だが、親実装の礼儀正しさにほだされて、つい自分が食べていたおやつのクッキーを差し出す。 普通の実装石であれば、即座にひったくり、きっと、もっと寄越せと騒ぎ出した事だろう。 しかし、この親実装は首を横に振った。 「てちゅ〜♪ ママぁ〜、おねえちゃんからアマアマもらえるテチ?」 「駄目デス。ニンゲンサンの食べているものはニンゲンサンだけのものなんデス。 それを盗んだり奪ったりする事は、とてもとても悪い事なんデス。 私達は、ニンゲンサンの住処に住まわせてもらっているんデス。そのことを忘れては駄目デス。 景観を損ねる雑草や、落ちている食べ物、カラスに食い破られた生ゴミの袋。 私達は、それらから生きる糧を少しずつもらって、 そのお返しに、ニンゲンサンが困らないように綺麗に片付けるのが仕事デス。 これを破ってしまうと、私達はニンゲンサンの邪魔になってしまいイタイイタイされてしまうデス。」 親実装は、突然の御馳走を目の前に色目気立つ仔らに、教え諭すように言葉を掛けた。 仔らも、親に説教されては仕方ないと、後ろ髪を引かれつつ、テチィ…と残念そうな鳴き声を出して項垂れる。 ポトッ… 双葉は実装石達の話を聞くと、差し出していたクッキーを3枚ほど、 わざと地面に落として、大げさに独り言を始めた。 「あ〜ん、どうしよ〜。クッキー落としちゃった。 落ちた食べ物は、人間には食べれないゴミになっちゃうんだよねー。 ゴミに出さなきゃいけないなぁ、どうしようかなぁ…。 いいや、きっと綺麗好きの実装石さんが片付けてくれるよねっ♪」 そういって、双葉は実装石達から離れて様子を見守る事にした。 「オロロ〜ン!ニンゲンサンは神様デス! 可愛いお前たち、ニンゲンサンがクッキーを落としてくれたデス。 これはゴミだから、私達で片付けるデス。ニンゲンサンに感謝しながら食べるデス〜♪」 「「「「 てっちゅ〜ん♪ ニンゲンサンありがとうテチ〜♪ 」」」」 実装石の親仔は、涙を流しながら遠くに離れている双葉に土下座をしつつ、 クッキーを仲良く分けて、食べカスひとつ見逃さずに、綺麗に食べ始めた。 そんなやりとりを、双葉が数日続けると、実装石達も双葉に懐きはじめた。 仔の洗体を一緒にやってみたり、逆に双葉の手を仔が一生懸命洗ったりと、 それはそれは、仲睦まじい姿で、公園を利用している人々の目に留まった。 彼も、妹が嬉しそうに話す姿を見て、妹が優しく育ってくれた事を喜んだ。 楽しい時間。 嬉しい瞬間。 優しい空間。 ああ、だというのに、どうして悲劇は起きてしまったのか。 目立っていたのがいけなかったのか。そもそも、実装と関わることがいけなかったのか。 …… ……… 彼は、その日、帰り際に急な仕事が入って帰宅が遅くなってしまった。 燦々と輝いていた太陽は、もう傾き始めて寂しげな夕日となっていた。 どうせ妹は、きっといつもの公園で実装石と戯れて遊んでる事だろう。 彼は足早に、人のまばらになった公園に辿り着く。 だが、どこを探しても公園内に妹の姿が見当たらない。 「変だな、いつもなら噴水の近くにいる実装石達と遊んでいるはずなのに。 …ん? そういえば実装石も姿が見えないけど?」 彼は、公園内を探し回るが、木陰にも藪にも妹の姿は見えなかった。 次第に、彼の鼓動が早まる。妹が何か事件に巻き込まれたのではないか。 もしや誘拐されたのではないか!? 彼は、必死になって双葉の名前を叫びながら公園内を駆け巡る。 …そうして、奥まった場所にある薄汚れた公衆便所に辿り着いた。 「さすがに女子トイレに入る訳にはいかないしな…。 おーい、双葉、いるかー? いないよな…。 男子トイレになんているわけな……。」 てちゅ〜ん♪ 男子トイレの奥から、仔実装石の舌っ足らずな嬌声が聞こえてきた。 いや、まさかな。まさか、こんなところに双葉がいるはずがないよ。 あ、でも実装石に聞いたら、もしかしたら双葉の行方知ってるかも。 彼は、男子トイレの奥へと、恐る恐る足を踏み入れた。 あああ…、そこには…。 …実装石達が、床に広がる何かを食んでいた。 127cm、26kg程度の肉が転がってる。 その“肉”に群がるように実装石が集ってる。 ぐちゃ、ぐちゃ、 ぐぢゅ、ぐぢゅ、 「デッス〜ン。お前たち、そこから垂れている白い汁はデカいマラ実装たちの子種デス。 それを食べたら孕んでしまうデス。こうやって手で拭って、掻き出してから肉を食べるデス♪」 「てっちゅ〜ん、おにくうまうまテチュ♪」 「こんな大きいオニクの生ゴミを落としてくれるなんて、ニンゲンサンはやっぱり神様テチュ♪」 親実装石が、“肉”の下腹部の割れ目から滴り落ちる血液と白濁とした液体を両手で乱雑に拭い捨てて、 腑分けをして、噛み千切って細切れの肉片にして、仔実装石たちが満腹になるように平等に与えていた。 「てぇ!ニンゲンサンきたテチュ♪ニンゲンサン、おにくありがとうテチュ♪」 くちゃ、くちゃ、 ぐぢゅ、ぐぢゅ、 仔実装石のうち1石が、彼に気付いて肉片を食みながらも歩み寄り微笑みかけ頭を下げてきた。 頭を下げられるような覚えはない、こいつらには人間がどんな奴でも同じ貌に見えるのだろう。 人間からしてみれば、実装石の顔が全て同じに見えるのと同じ事ではあるのだが。 ああ、だが、それよりも。 なんだ、その手に持っている丸い物体は。 おい待て、飴玉を食べるようにコロコロと口の中で転がし始めるな。 ああ、双葉と同じようなくりくりとした可愛い瞳だった。 ああ、ダメだ、ごまかしきれない。もう自分を騙せない。 強膜に覆われた硝子体。 毟られ、齧られた後のある上斜筋や外直筋の付着した、視神経がぴょっこり飛び出したイビツな球体。 それは間違いなく、ヒトの眼球だった。 ああ、そうじゃなくてそうじゃなくて。 やめてくれ嫌だ床に転がってるソレは。 2つの穴がぽっかりと空いた暗い顔貌。 ああ、やめてくれ、血の涙が流れてる。 あ…。 …。 ……。 ………。 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!!!!!! う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!!!!!! ■■が!?■■があ゛!!?■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!??? ひぃぃぃ!!!!!!!!ひぁあああああああああ!!!!!!!!!!!!!!! ■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!! …… ……… ………… 翌日、地方新聞の片隅に、こんな記事が載った。 -------------------------------------------------------------------------------------------- 【 白昼の悪夢、人喰い実装石現る!! 】 昨日、午後18時頃。 ■■公園の公衆トイレ内にて、故・■■双葉さん(8)の遺体が発見された。 発見時、双葉さんの遺体は著しく損壊しており、公園に定住していた実装石達に食い散らかされていた。 なお、咬傷以外には、下腹部の裂傷が特に激しく、複数回に渡って暴行を受けた痕跡が確認されている。 その場にいた実装石達の発言より、マラ実装に襲われた可能性が非常に濃厚との事。 双葉さんを加害した実装石は、既に保健所によって捕獲されており、殺処分の予定。 警察は、事件・事故の両面で捜査を開始している。なお、■■公園の実装石は〇日に駆除される見込み。 -------------------------------------------------------------------------------------------- だが、それだけだ。 たった、それだけ。 双葉がどれだけ優しい子だったのかも。 双葉がどれだけ俺の生きがいだったか。 どんな屈辱と苦痛に苦しんだ最後かも。 なにも、なにも、ナニモ載ッテイナイ。 アンナニアンナニタイセツニシテタ アノチクショウタチニウラギラレタ ああ…。 あああ…。 もう、どうでもいい、俺の人生に意味なんてない。 …。 根絶やしにしてやる…。 あいつらは絶対に根絶やしにしてやる…。 …… ……… 彼は、その日のうちに職場に辞表を出した。 上司や同僚には、同情の声をかけられ、辞表は受け取らず病気休職の扱いとすると言われた。 だが、彼には職場に戻る情熱も何もない。無理もない。彼は、双葉のために働いてきたのだ。 双葉の将来を想い、大切に貯蓄してきた金も無意味なゴミに成り果ててしまった。 せめて、双葉が受けた恥辱を晴らさねばならない。双葉の供養をしなければならない。 彼は、ありったけの苦痛を与えられるような工具を買い漁り、 ■■公園の実装石駆除のボランティアに朝から参加していた。 彼の表情は虚ろで、まるで生気がない。 だが、瞳は憤怒の炎に燃え盛っている。 さあ、さっそく雑木林の中に段ボールハウスを建てている糞蟲共を発見した。 苦痛を与えながら、この世に生まれ出でた事を懺悔しろ糞蟲共が。彼は呟く。 ドガッ!! 「デッ!?突然なんですかお前!! 失礼な奴デスッ!! おうち壊すなデス!!謝罪と弁償を要求するデス!!!」 彼は段ボールハウスを蹴破り、中にいる実装石達を丸裸にした。 テヂャテヂャギャーギャーと騒ぐ糞蟲共。彼はそれを一切無視しながら、 徐に、腰のホルダーから釘打機を引き抜いた。 バシュバシュバシュッ!!! ズドドドドドッ!!! 釘打機から射出された釘が、糞蟲共を地面に縫い付ける。 「でぎゃあああああ!?」 「テヂャアアアアアッ!!!イタイイタイテチィッ!!!!」 撃ち出された釘が、実装石の胸に、腕に、足に突き刺さる。 動きを制限された実装石達に、彼は無言で釘打機の射出口を密着させて…。 バシュッ!! ブズッッ!! 「デギャ!!」 バシュッ!! ズブッッ!! 「ヂュッ!!」 バシュッ!! グサッッ!! 「・・・」 バシュッ!! ガシュッ!! バシュッ!! ジュブッ!! 1回1回、丁寧に、丁寧に。 何度も何度も何度も何度も。 実装石達が死後硬直による痙攣を起こし始めても、 カートリッジ内の釘が無くなるまで執拗に打ち込み続けた。 数分後、そこには全身に夥しい数の釘を打ち込まれた実装石達の遺体が散乱していた。 それでも、彼の心は癒されない。決して、決して満たされない。 足りない、足りない、こんなのじゃ全然足りない。 あの子の無念を晴らさねば、あの子の恥辱を雪がねば。 彼は幽鬼のように、フラフラと覚束ない足取りで、 次の獲物を求めて、独語をブツブツと呟きながら、雑木林の中を彷徨った。 次の獲物の巣を見つけた。 ご丁寧にも、古木のうろを食い広げて改築した巣のようだ。 手前の藪と、枯れ葉で巧妙に隠されているのだが、樹洞の奥に動く影がちらほら見え隠れしておりバレバレだ。 彼は、無言のまま、ショルダーバッグから金槌を取り出して、木のうろに力いっぱい投擲する。 ブォンブォンッ! ドガッ!! 「てちゃぁぁあ!!!?敵襲テチぃぃ!!!!」 「ちゃああああ!ママぁ!!!!ママしんじゃだめテチぃっ!!!」 「てぇぇぇん!てぇぇぇぇん!!!」 蜘蛛の子を散らすように、ワラワラと仔実装どもが巣穴から飛び出てきた。 中には、頭を陥没させた親実装を庇いながら、一生懸命に避難させようと引き摺っている仔もいる。 だが、そんな姿を見ても、彼は一切表情を変えない。虚ろな表情のまま、淡々と単純作業をこなす様に。 彼は、ポシェットから、ハンマードリルを引き抜いて、 わたわたと慌てふためいている仔らの前に座り込んだ。 「てぇ!?ニンゲンサン! たすけテチ!ママが硬いイタイイタイに潰されちゃっテチ!」 仔が涙を流しながら、横たわる母を指さし、必死の形相で彼に訴えかける。 だが、彼は能面のような表情のまま…。 チュィィィィンッ!!! グジュルルルルッ!!! ブジュッヂュブッ!!! 「テヂャアアアアアアアア!!!?? ブクブクブクブクッ…。」 電動ドリルによって、頭蓋を掘削された仔が、 脳髄を掻き壊されながら泡を吹いて痙攣する。 そのまま仔を串刺しにして、肉片を飛び散らせつつ、 顔面蒼白で惨劇を見つめる残りの仔らもドリルの餌食にした。 数分後、そこには原型を留めていない、ただの肉片が散乱していた。 それでも、彼の心は癒されない。決して、決して満たされない。 足りない、足りない、この程度じゃ全然足りない。 マラ実装石は何処だ、双葉を犯した糞蟲は何処だ。 必ず見つけ、必ず殺す、必ず潰す、必ず切り裂く。 あの子の無念を晴らさねば、あの子の恥辱を雪がねば。 未だに、満たされ得ぬ幽鬼は、最大の獲物を求めて彷徨い歩く。 独語をブツブツと呟きながら、何時間も何時間も林を彷徨った。 どのくらいの時間、公園内の雑木林を彷徨っていただろうか。 実装石に阿鼻叫喚の地獄を見せて、殺せど殺せど、マラがいない。 日は既に頭上を通り過ぎ、セミ達が甲高い合唱を繰り返していた。 ミーン…ミーン…ミーン… ぼそぼそっ ジー…ツクツクホー…ジー… セミの合唱に紛れて、何やらデスデスという声が聴こえた…気がした。 彼は、何かに手繰り寄せられるように、 その声がした方へと忍び足で歩み寄る。 「へへへ、この前は傑作だったよなぁ。ちょいと変装して、マラの精液ぶちまいときゃ、 勝手に実装石がマラ実装のせいって証言してくれるw これからも実装石のせいって事にしときゃ、ロリをレイプし放題だぜww」 「まあ、あれはガキが悪いな。なにが“いぢめないで”だよww 俺たちは、ただ実装石を小突きまわして遊んでただけなのになーww」 「な、なにもあそこまでする必要…なかったんじゃない…かな。 ちょ、ちょっと…、かわいそうだった…、かな。」 「何言ってんだよwww お前が一番最初に、あのガキをレイプし始めたんじゃねぇかw しかも一番多く中出ししてたしwww」 「でゅふw だ、だって可愛かった、からw た、助けて、お、おにいちゃん…とか言ってて…萌えた…でゅふw ほ、ほんとは…お持ち帰り…して飼いたかった…かな…でゅふw」 「こいつホント真性の変態だなぁwww 持ち帰りなんてしたらすぐ足がつくってのwww まあ、俺だって、本当は実装を庇うメスガキくらい、ぶん殴って赦してやるつもりだったんだけどよ、 ゴミが…って、マラ実装の変装解いて、つば吐きかけたら、途端に都合よく小突いて遊んでいた実装石どもがゴミなら掃除するデス♪ とか、言い始めるもんだから、爆笑だったぜwww お前ら護るためにガキも体張ったのになぁwwwかわいそーwww これからも、この手で犯ってこうぜぇ〜♪」 「糞みたいな実装も片付いて。 実装なんかを擁護してる連中も片付いて、一石二鳥の社会貢献だよなw 次はJCかJKがいいわーw ロリペドも別にいいんだけどよー、やっぱ濡れないのは痛てぇよww」 「ぼ、僕は、ロリでも愛誤ババアでも、可…でゅふw」 「やべえwwwこいつ真性の変態すぎるwwwあこがれるぅ〜www」 彼が導かれた先には、3人ほどの大学生くらいの男達が、 ゲラゲラと談笑しながら実装石を虐待していた。 何だ、今の会話は。 何だ、その嗤いは。 何だ、こいつらは。 ああ、そうか、こいつらなのか。 見つけた、見つけた、見つけた、ゲラゲラゲラ。 必ず殺す、必ず潰す、必ず穿つ、必ず切り裂く。 あの子の無念を晴らさねば、あの子の恥辱を雪がねば。 彼の相貌が、暗く、昏く、闇く、暗黒に沈む。 口は切り裂かれたかのように、歪な三日月のように開かれていた。 彼は、ゆらりと糞蟲共に忍び寄り、 ポシェットから金槌を3つ取り出すと、無慈悲に頭部に目がけて投擲した。 ブオンブォンッ!! ボグッ!! 正確無比に、金槌が男どもの頭部に命中する。 3人とも一様に前のめりに気絶した。 彼は、ショルダーバッグから荒縄を取り出すと、 気絶した男たちの手足をギッチリと締め上げた。 ああ、ああ、ああ。 憎い、憎い、憎い。 どう料理してくれよう。 どう殺してくれようか。 この糞蟲ども。糞共が。 …… ……… ヂュイィィィィンッ! キュイィィィィィィッ!! 「ひぃぃぃああああ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!! 殺すつもりなかったんです、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!! ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!」 デュアルソーが金切り声をあげる。 糞蟲がナニやらデスデスと喚いているが、最早、彼には不快な鳴き声にしか聞こえない。 指先から、少しずつ少しずつ、なます斬りにしていく。 ギャリリリリリリ!!! ブシャァァアアアアッ!!! 「ぎゃああああ!!!やめて!やめて!! 死んじゃう死んじゃう!!!俺死んじゃうよぉぉ!!!!」 ああ、デスデスうるさい糞蟲だな。 これは先に口を塞がないとダメか。 彼はポシェットから、ズルリ…と金槌を取り出して、躊躇なく男の口元に振り下ろした。 バギッボギッ… 「は…ひへぇぇぇ……ひぃふぅ……た…たふゅけへぇぇ……!!!」 「狂ってる…あんた狂ってるぞ!!?」「自首するから!!お願いします!!命だけは助けてくださいぃ!!!」 彼は…。 未だに、表情の読めぬ暗黒の顔貌に三日月の如く歪に裂けた口で。 デスデスてちゃてちゃと騒ぐ糞蟲を見下ろしていた。 さて、次はどうしたものか。 彼は、ショルダーバッグから手あたり次第に工具を取り出す。 取り敢えず、こいつらが、妹に仕出かした事を殺り返せばいいか。 彼は、釘打機を取り出して、釘をカートリッジ内に満載に補充する。 バシュッ!! ブズッッ!! 「や、やへへぇ!!」 バシュッ!! ズブッッ!! 「ぎゅべっ!!」 バシュッ!! グサッッ!! 「い゛だい゛い゛だい゛!!!」 バシュッ!! ガシュッ!! バシュッ!! ジュブッ!! バシュバシュバシュッ!!! ズドドドドドッ!!! 小一時間もすれば、3匹のハリネズミの出来上がり。 駄目だな、全然ダメだ。 足りねぇよ、全然たりねぇ…。 彼は、ハンマードリルやペンチを取り出すと、 トリガーを引きながら男達の眼窩をドリルで抉り、ペンチで小さく小さく肉を千切り始めた…。 …… ……… カナカナカナカナカナ… どこかで、ひぐらしが鳴いている。 気付けば、辺りは夕暮れの帳が降りていた。 照りつける日は陰り、涼やかな風が吹き抜けていた。 …だというのに、彼の周囲だけに錆びた鉄のような匂いと熱が立ち込めている。 彼の周囲には…。 およそ、ヒトと呼べる代物ではない肉の塊が散乱していた。 だが、その量は、どう考えても成人男性3人分の量を明らかに超えている。 …血の香りに誘われて、実装石達も湧いてきたのだ。 だが、それすらも、彼は丁寧に丁寧にすり潰していった。 誰ひとり逃さない。 双葉を死に追いやったものを許さない。 実装石は死ね。実装石に関わるモノも死ね。 虐待派だろうが愛護派だろうが、全て死ね。 夥しい死と肉の山の頂きで、彼は慟哭する。 ああ、それでも満たされない。終わらない。 カナカナカナカナカナ…… どこかで、ひぐらしが泣いている。 彼を憐れんでか、それとも彼の犠牲者を憐れんでか。 それでも、彼は止まらないし、終われない。 あの子の無念を晴らさねば、あの子の恥辱を雪がねば。 …… ……… ………… …………… 数年後、地方新聞の片隅に、こんな記事が載っていた。 -------------------------------------------------------------------------------------------- 【 連続殺人鬼の恐怖 】 このほど、世間を騒がせていた、連続殺人の容疑者が逮捕されました。 容疑者■■■■(35)。 容疑者は、10年前に■■公園の公衆トイレ内にて、殺害された故・■■双葉さん(8)の兄である。 ■■■■は、10年前に惨殺された大学生〇〇、△△、□□の3名の殺人容疑もかけられており、 現在、■■警察署で事情聴取中。 なお警察は現場に残された体液から〇〇、△△、□□らに■■双葉さん暴行致死の容疑をかけており、 ■■■■は、妹の復讐のために犯行に及んだものと思われる。 弁護人は■■■■の責任能力について精神鑑定を行う予定。 -------------------------------------------------------------------------------------------- …… ……… 薄暗い独房の、懺悔室の中で、 彼は、椅子に座って神父の話を聞いていた。 だが彼の相貌は、未だに表情を読めぬ暗黒。 「初めまして、私はナイ・A・ラトテップ神父と申します。気軽にナイ神父と呼んでください。 ああ、私は、当刑務所にボランティアで慰問している神父なんですよ。 …さて、あなたの経歴を確認させて頂きました。 妹さんの事は本当に残念でなりません。あなたの憎しみは当然の事だと思います。」 妹の話を出された瞬間、一瞬だけ彼の表情が崩れる。 「………。」 彼の態度が崩れた事を察知した瞬間。 ナイ神父も、彼に負けないほど暗い相貌と三日月の如く歪に口が裂けて、邪悪な笑顔に変わる。 「“神”は全てに平等です。 貴方にも、もちろん双葉さんにも…。 もしも、もしもの話ですが、あの日に戻ってやり直せるとしたら…。 あなたは、あの日に戻りたいですか?」 その言葉に、彼は涙を流す。 そんな事、できるわけがないと知っているから。 起きてしまった事を、覆せるわけがない。彼の希望は既に過去に絶たれてしまったのだ。 彼の反応に、ナイ神父の眼光が燃えるように輝き、歪な三日月の口が、更に更に大きく開かれた。 「できますよ? 実はね、今日はとてもとても珍しいモノをお土産に持ってきたんですよ。」 ナイ神父が、懐から小さな銀色の鍵を取り出した。 ブレード部位は艶やかな棒状で、刃先はまるでサーベルの護拳のような形状だ。 頭部にはハンマー状の頭部がついており、アラベスクの意匠が凝らされている。 小さなスレッジハンマーのアクセサリーといっても差し支えがない代物だった。 「これは、The Silver Keyと申しましてね。 我等が神の御座につながる門を開くための鍵です。 もしも貴方が“あの日”をやり直したいと思うなら、是非、虚空に向かって鍵を差し込んでみてください。 ふふふ、貴方に神の加護があらんこと…。」 ナイ神父は、銀色の鍵を彼の前に差し出すと、 それ以降は何も言わず、その場を立ち去ってしまった。 ……。 悪戯や嫌がらせの類だとしても悪辣すぎる。 まさか、彼に、あの日をやり直せるなどと。 普通なら、きっと。 その鍵を投げ捨ててしまっていただろう。 だが、彼にはそれができなかった。 彼には失ってしまった過去が、彼にとっての未来だったのだから。 今ここに在る彼なぞ、残骸に過ぎない。どうでもいい些末な存在。 「………。」 彼は銀の鍵を手に取り、騙されたと思って、虚空に鍵を差し込んでみた。 すると、どうだろう! ズズッ… ガチャリ… 鍵のブレード部分が、空間に飲み込まれるように消えた。 そして、すんなりと回ったではないか。 その途端…。 ギギギギギィ…! 空間がねじ曲がり、縦に裂けた。 まるで門が開くように。 そして、その奥は…。 玉虫のように…、油をぶちまけたように…、鈍色に怪しく蠢動する極彩色の世界だった。 そして、ああ…。ひぃ…。瞳が、夥しい無数の紅と翠の瞳が。彼を覗き込んでいた。 深淵を覗く時、深淵もまた汝を覗くだろう。 ようこそ、深淵の世界へ。 そんな言葉が脳の中に直接響く。 耳鳴りにも似た不愉快な不協和音。 彼は、その言葉を発したモノを探る。 無数の瞳は…、ただ彼を見つめるだけだ。 ならば…誰だ? …いた。 無数の瞳と、次元の門と、彼の間に。 小さな、小人のような、あの緑の姿。 憎い憎い双葉を食い殺した実装の姿。 不気味に開かれたミツクチのアギトの奥で、妹の瞳が転がっている。 その様は、まるでプロビデンスの目…。 やめろ!やめろやめろやめろ!これ以上、妹を辱めるな!!! 彼の血は沸騰し、ただ、眼前の、妹を食い殺したあの実装石を潰すために、 何も考えず、次元の門へ飛び込んでいった…。 …… ……… …まるで霞が掛かっているような白濁とした意識の中。 彼は、むせ返る土の匂いが立ち込める■■公園に佇んでいた。 「……ここ…は?」 日は既に陰り始めていた。彼は焦る。 あの胡散臭い浅黒い肌の神父が言っていた事が本当なら…。 公園の奥にある寂れた公衆トイレへ、息も絶え絶えに駆けつけた。 「たすけて…たすけて…おにいちゃん…」 寂れた公園の公衆トイレの床に押し倒された妹が、 殴られて腫れてしまった頬もそのままに、まるで壊れた人形のように、ブツブツと呟いていた。 そんな妹の上に、まるで群れるように、あの糞蟲共がのしかかっている。 「コノ糞蟲ドモガァァァアアアア!!!!!!!」 ドガドゴッ! グシャッ! カナカナカナカナカナ… 彼は、血濡れの拳と、ボロボロになった妹を抱えて、病院を目指して急いで公園を飛び出した。 日の陰った公園に。ひぐらしの哭き声がまるで彼を引き留めるかのように強くなって鳴り響く。 「あ…おにいちゃん…てへへ…はずかしいな…。 ねえ、自分で歩ける…よ…?」 彼に抱きかかえられて目の焦点の合っていなかった妹が、 意識を取り戻したのか、彼を見上げて話しかけた。 彼は、久しく聞けていなかった妹の声を聴き、嬉しさと悔しさから泣き崩れる。 そんな彼を見て、双葉は…。 「おにいちゃん…ごめんなさいごめんなさい…。」 双葉は、泣き崩れる兄の姿を見て、せっかく取り戻した正気を揺さぶられる。 自分の惨状が、兄を悲しませてしまった…。 自責の念に捕らわれた双葉は、兄から逃げるように、兄に今の自分の姿を見せぬように、その場から脱兎の如く駆け出した。 その瞬間…。 キィィィーッ!!!! ドォォォンッ!!!! グシャッ… 彼の眼前で、大きく硬いモノがけたたましいブレーキ音を響かせながら、小さく軽いモノを弾く音がした。 彼の目の前で…。ひ、ひぃ…。まるで地面に投げつけたトマトのように…、妹が…、潰れた…。 「あ…が…がが…」 彼は小便を漏らしながら、声にならぬ声をあげる。 正気を失いそうになるのを、歯を噛み砕くほど強く噛みしめて、ポケットから銀の鍵を抜き取った。 …ダメだ! もっと前に! ズズッ ガチャリッ ギギギギギギィ… 再度、空間が裂けて次元の門が開く。 もっと前へ!もっと前だ! 彼は次元の門に飛び込む、もっと強く、今よりも前に。 妹をちゃんと救えるように。 …… ……… 何度も、何度も。 何度だって、彼は妹を救った。 だが、その度に。 妹が死んだ。何度も何度も彼の目の前で死んだ。 虐待派に実装と一緒に犯し殺された。愛誤派のマラ実装石に犯し殺された。 虐待派を実装と一緒に殺してやった。愛誤派のマラ実装と飼い主を殺した。 それでも、ダメだった。彼は何度も双葉を喪った。 事故死、病死、他殺、自殺。 内因死、外因死、不慮の死。 何度やっても、双葉が死ぬ。 やり直す度に、繰り返す度。 双葉がどんどん悲惨に死ぬ。 通常時間に換算したならば。 果たしてどれだけの年数か。 「なんだよこれ…なんだよこれぇぇえええ!!!!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 デープップップッ! 次元の門の前で、彼は血の涙を流しながら天に向かって慟哭していた。 そんな彼を嘲笑うように、あの実装石がミツクチの奥の目玉を転がす。 彼が嗚咽しながら地面を掻き、それを嘲笑いながら糞を塗り付ける実装石。 そんな彼を見つめていた影が、虚空からケタケタと笑いながら姿を現した。 コツコツコツ… 「あーはっはっはっ!違う違う!それじゃあダメだよ♪ ちゃんと妹が死ぬことになった因果を考えないとね♪ 妹を救うんじゃなく、ちゃんと実装石を殺さなきゃ♪」 スラリとした長身と銀髪、男性用スーツに身を包んだ女性だ。 胸元は大きくはだけて、豊かな胸を膨らませた女の姿だった。 女は、蹲って嗚咽している彼に近づくと、襟首を掴んで無理やり立たせる。 「ほらほら、さっさと実装石を殺しにいけよ♪ 殺せば、その分、双葉ちゃんが生きれるぜ♪ 実装石を全て殺せ双葉が生きる世界の為に(嘲笑)」 女の相貌は整っていて、この世の物とは思えないほど美しかった。 だというのに、その表情が読めない。まるで塗り潰されたようだ。 なのに、彼を見る瞳の奥がチロチロと蛇の舌のように燃えている。 その女は、人間とは思えない怪力で、彼を次元の門に投げ捨てた。 「いいか、時間を遡れ。何度でも。実装が湧いたなら、その前に。 実装石の存在を許すな。次元の果てまで追いかけて殺し尽くせ。 ウルム・アト=タウィルを殺すほど、お前の銀鍵は力を付ける。 神を殺せるほどに、トラペゾヘドロンを砕けるほどに強くなれ。」 女が粘り付くような囁きを投げかける。 閉じていく次元の門越しに女を見ると。 その漆黒の相貌には、燃える三つ目が輝いていた。 その燃える目で、ソレは彼をじっと見つめていた。 ああ、そうか。 あの時、彼に。 「深淵の世界へようこそ」といったのは、 あの実装石じゃない、こいつだったのか。 …… ……… 季節は夏。 燦々と照りつける太陽と、その光を反射したアスファルトからの輻射熱で、陽炎に揺れる遊歩道。 そんな灼熱地獄のような道とは裏腹に、豊かな木々と芝生、冷たい飛沫をあげる噴水と、優しい土の香り。 時刻は、日が傾き始めた午後。 「可愛いお前たち、ちゃーんと順番にならぶデsgry… ガチャリ… ギギギギギギィ… グシャッ… 開いた次元の門から、彼の手が伸びて、実装石を握り潰した。 死ね。 お前らがいるから双葉が死ぬんだ。死ね。 だが、まだ駄目だ。 もっと前に、もっともっと前に。 実装石を殺し尽くせ。この出会いすらなかった事にしなければ。 …… ……… そうして彼は、時間を遡り続けた。 彼と妹が生きてる世界の1秒前に。 義務的に機械的に無情に駆逐する。 さて、通常の時間に換算して何年目だったろうか。 もはや妹を救う事よりも、実装石を殺す事の方が、 彼にとって重きを置く目的になってしまったのは。 気付けば銀の鍵は短剣ほどの大きさになっていた。 だが、それでも、実装石は世界から根絶できない。 もっと、もっとだ…。 何度も何度でも遡る。 そうしているうちに、 この世界の実装石を、 恐らく殺し尽くした。 狩るべき対象がいなくなり、ふと、彼は我に返る。 ああ、やっと妹の元に帰れるのだと、重い体を引き摺って、懐かしき公園に赴いた。 そこには、あの日と変わらない、屈託のない笑顔の双葉と……自分がいた。 …? なぜだ? 俺は、今ここにいるのに……。あれは……誰だ……? 公園でアイスを食べながら、犬や猫を見て微笑む双葉と自分ではない自分が、 楽し気に自宅へ帰っていく。話しかけても気付いてくれない。素通りされる。 いや、そもそも、誰も見てくれない。誰にも見えていない。 …俺は、もしかして、とっくの昔に死んでいるのではないか? これは、もしや双葉を救えなかった自責の念から、今際に見ている都合の良い夢なのではないか。 だが、一向にこの悪夢が醒める気配がなかった。 あてどなく街をふらついていると、ふとショーウインドウに映る自分の姿が見えた。 そこには…。 表情の読めない深く昏き相貌と、 燃え盛る3つの瞳を持った貌が、 あの日の、あの女が映っていた。 あの日のナイ神父が映っていた。 ああ、そうか。ははは…。 俺は、とっくの昔に俺じゃなくなっていたのか。 いいさ、双葉が生きてるならそれで。 ああ…、だが、“この俺”は、これからどうしたもんか…。 そうだな、乗り掛かった舟だ…。あの女が言ってたように。 この狂った世界の全てから、実装石を駆逐してやるだけだ。 いや、ウルム・アト=タウィルといったか? 現在、過去、未来、ここではない何処か別の世界でも。 全てを殺し尽くして、神をも殺せるようになるほどに。 彼は、銀に輝くスレッジハンマーを振りかぶり、虚空を叩き割った。 ガシャアァァァンッ! その先には、“ここ”ではない“別の何処か”の風景が広がっている。 その先に何があるのか分からないが、あの嫌らしい嗤い声が聴こえた。 ならば、彼のやるべき事は一つしかない。あいつらを鏖にするだけだ。 彼は幽鬼の如く、燃える眸から光芒の尾を引かせつつ、“この世界”から姿を消した…。 遠くで…。 遥か、遥か遠くの彼方から、2つの嗤い声が聴こえた…気がした…。 > To be continued… {上書き} ナイ神父「ヨグ=ソトース様、残念ながら彼はあなたの息子ではありません、這い寄る混沌の顕現のひとりです(笑) 千の貌を持つ混沌は地球に多重存在として顕現でき、あなたの門もジャックできるのです。そう、無貌の神ならね(嘲笑)」 {後書き} ちょっと、すんません、ニャル様、後書きを乗っ取らないで。 ナイ神父はシャイニングトラペゾヘドロンにお帰りください。 …と、今回も愚作をご閲覧頂き、誠にありがとうございましたm(__)m 愚作にも関わらず、色々な方から感想や過分なお言葉を頂き、身に余る光栄にございます。 スタイリッシュヒャッハーを新たなジャンルとして普及させるべく、このシリーズも頑張っていきます。 (」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! あ、ちなみに私のところのナイアーラトテップさんは、オーガスト・ダーレス御大によって属性付与されたャルラトホテプさんではなく、 Cthulhu創始者ハワード・フリップス・ラブクラフト御大のNyarlathotep出身の方です。 (」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! 某ニャ〇子さんのようにクトゥグアが苦手だったり百合百合しません。むしろデモベのナイアさry (」・ω・)」レッツ!(/・ω・)/にゃー! …ええい、だから浸食すんなってリアル童貞! あっ…! ナイアルラトホテップ様、すんません調子乗って口が滑りました! ご、ごめんなさry… ひいぃぃぃ!!! 窓にッ!! 窓にィッ!!!??

| 1 Re: Name:匿名石 2017/02/08-03:16:30 No:00004233[申告] |
| 泣ける…
クトゥルフも実装石もバッドエンド確定みたいな要素だけど それにしたって彼に救いがなさすぎる… これニャルラトホテプの傀儡になっちゃってるよ… もういっそアザトースごと殺せるくらい強くなってほしいわ応援する |
| 2 Re: Name:匿名石 2017/02/08-20:19:14 No:00004236[申告] |
| 男の過去・・・酷い話デス。
何が酷いってワタ実装石のとばっちり被害ぶりデス。 実装石の歴史も長いけど遂に邪神の遊び道具として殺される事になるなんて悲しすぎですオロロ−ン。 |
| 3 Re: Name:匿名石 2017/02/08-21:45:01 No:00004237[申告] |
| 今回に限ってはニンゲンが悪いような気がしないでもないけど
ボコられただけなら助かる可能性はまだあったからな そこで食っちゃう実装石が悪い やっぱり糞蟲は世界から根絶されるべきだな |
| 4 Re: Name:匿名石 2017/02/08-21:47:16 No:00004238[申告] |
| まさに這い寄る混沌という名の通りの恐怖… |
| 5 Re: Name:匿名石 2017/02/08-23:27:06 No:00004241[申告] |
| >>4236
文字掲示板でお前の嘆きを先に見たから邪神に弄ばれてかわいそうとか思ったけど 本編読んだら完全にゴミクズ実装石じゃねえか できるだけ長くきつく苦しんでから死ねや、糞蟲 食べたのは完全に糞蟲の仕業だからな 他のはともかく食べた時系列、次元のやつなんか男の怒り任せの暴行であっさり死ねたんだからむしろ恵まれてる ちゃんとした獣医に安楽死させてもらう次に楽だろ、暴行一撃で即死なんてよ これが餌くれたニンゲンさんへの恩義で他の糞蟲が食べたり糞つけたりしようとしてるのを防いで頑張ってたのに とにかく実装公園なんかあったのが悪いと八つ当たりされて死んだとでもいうなら悲劇の英雄だけどよ |
| 6 Re: Name:匿名石 2017/02/08-23:35:29 No:00004242[申告] |
| そういう風に話をもってかないのが底意地悪いよな
いや誉め言葉だけど 人語を解するからコミュニケーションが取れると錯覚する でも実際には互いの価値観を共有すらできてない 実装からしたら双葉に人が人為的に落としたゴミを施されて学習しただけで悪いことしたとも思ってないだろし そもそも人の顔を判別できないという描写が生々しくて空恐ろしいな どんだけ愛情注ごうがきっと愛護派と虐待派の区別すらつかずに学習した反応を繰り返すだけの害獣 怖い |
| 7 Re: Name:匿名石 2017/02/09-01:39:24 No:00004243[申告] |
| 情報過多でパンクしそうになるがそれでも読みたくなる吸引力がある
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| 8 Re: Name:匿名石 2017/02/09-11:57:35 No:00004245[申告] |
| すげーな普通に伝奇小説だわ
ラノベのコピペと言われても納得できるわ ネイルガンのところとか別世界に移動する描写とか良いね 昔封じたはずの俺の邪鬼眼が疼いてやがるぜ |
| 9 Re: Name:匿名石 2018/01/11-22:11:10 No:00005140[申告] |
| 七草の節句ス-MENのクトゥルフの解説を読んでからこのスクを改めて読み返してみたらやっと意味がわかったわ
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