タイトル:【虐】 公園黙示録カ○ジ(注・カ○ジは登場しません)
ファイル:【虐】公園黙示録.txt
作者:ジグソウ石 総投稿数:42 総ダウンロード数:1532 レス数:6
初投稿日時:2016/12/21-16:40:08修正日時:2016/12/21-16:52:59
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 ※人間と実装石の会話は全てリンガル使用済みとしてお読みください。


 最近、春や秋が短くなってきたと感じている人はいるだろうか?
気のせいかも知れないが、ここ数年夏や冬がやってくるのがどんどん早くなり、逆に終わるまでの長さが伸びているように思える。
春や秋といった気持ちよく過ごせる季節はその変わり目の一ヶ月か二ヶ月だけ、つまり春秋合わせて一年の三分の一ほどしかないように感じられるのだ。

 エアコンや服で体感温度を調節できる人間であれば、ちゃんと仕事をして電気代や服代を稼いでいる限りさほどの影響は受けない。
だがホームレスの人間や野生の動物たちにとって、この環境の変化はまさに死活問題だ。
実際にインドやヨーロッパではあまりの暑さで、逆にロシアや北欧では寒さのために死亡する路上生活者が急増しているという。
そして、公園で生きる野良実装にとってもその影響は大きかった。


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「デェェ……さ、寒いデスゥゥ………」

 公園の茂みの中に隠されたダンボールハウスの中で、一匹の成体実装が震えていた。

 今年は冬がやってくるのがあまりにも早く、実りの秋が短かったため、冬支度を遺漏なく終えられた野良実装はほとんどいなかった。
もちろん木の実やドングリなどの食料は備蓄する暇がなかったし、断熱のための落ち葉もほとんど集められなかったため、防寒具といえば夏から使っているボロボロのタオルしかない。

 この成体実装には五匹の仔がいたが、まだ十一月だというのに一メートル近くも積もった先週の雪のためにみな凍死してしまった。
雪が止んで三日経った今もまだダンボールはほんの少し埋もれており、出入り口を開けることができないため、外に出て新たな餌を取りにいくこともできない。
わずかに備蓄していた食糧を食べ尽くしてからは仔らの死体を喰って何とか生き延びているが、このままではあと数日と持たずに自分も餓死してしまうだろう。

 この家の実装石に限らず、他のダンボールハウスにいるほとんどの実装石も同じ有様だった。
凍死した者の死体を喰らうにせよ、生きたまま喰らうにせよ、仔が残っている家はほとんどない。
このまま親世代が冬を越えることができなければ、この公園に棲む実装石は春を待たずして全滅してしまうだろう。

 外出できないことにより、他石同士の争いが起きていないことだけが逆に救いだった。
もしもこれで自由に外出できる状況であったなら、この公園は飢えた野良実装たちがお互いを喰らい合う地獄の様相を呈していたはずだ。

 そしてさらに二日後、ようやくダンボールハウスの蓋が開けられるところまで雪が溶けた。

「デェ………」

 五日ぶりに外に出た実装石は、空腹を抱えて公園のゴミ捨て場へと向かった。
もしも自分が一番最初であったなら、何か食べ物が見つかるかもしれない。
先客がいたとしたら争って勝てるとも思えないが、ともかくこのまま飢えて死ぬよりはましである。

 結論を言うと、実装石の期待は見事に裏切られた。
数日間雪に埋もれていたゴミ箱には食料はおろかタバコの吸殻一つ入っておらず、その前には力尽きかけた実装石たちが倒れ伏したり、幽鬼のごとき表情で彷徨ったりしていた。
もはやお互い争おうという気力すら湧かないらしい。

「デ……デスゥ………」

 この実装石もまた、力尽きたようにその場にへたり込んだ。
胸の奥で、何かが軋むような音が聞こえた気がする。
これでもう自分は終わりだ—————実装石が自らの生を諦めかけたそのとき、遠くからやってくる奇妙な一団が見えた。


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 それは二十人ほどの人間の集団だった。
一人を除いて全員が上下黒のスーツに身を包み、サングラスで目を隠している。
そこだけを見ればそれなりに社会的な集団のようにも思えるが、その頭髪が異様であった。
スーツと同じく一人を除き、全員が鶏のトサカのようなモヒカン頭なのである。
そのせいで会社員はおろか、逆に暴力団にすら見えない。

 その中で一人だけまともな格好をした男—————渋いベージュ系のスーツに身を包み、ロマンスグレーの髪を綺麗に整えた、いかにも大企業の重役といった男が手を上げ、モヒカン黒服たちの行進を止める。
男は野良実装たちの惨状を目にすると、ニヤリと笑いながら言った。

「二十匹ほどか………うむ……いい感じに飢えているな。これならば渡りに船と話に乗ってくるだろう。よし……始めろ!」

「はっ!」

 男の号令とともに、モヒカン黒服たちが野良実装に踊りかかった。

「デ、デヒィィーッ!?」

「な、なんデス? なんデスゥゥー!?」

 モヒカン黒服たちは野良実装たちの襟首を掴むと、重役風の男の前に連行していく。
そして役所の駆除係が公園を閉鎖するときに使うようなプラ製の板を持ち出し、野良実装たちの周りを囲い込んで一ヶ所に集めた。

 無理やり整列させられた野良実装たちがざわざわと騒ぐ。
重役風の男はその前に立ちはだかり、ただじっと見下ろしていた。
まるで火災訓練のときに児童たちが自ら大人しくなるのを待っている校長先生のようだ。

 そのうち、野良実装たちは自分たちを集めた人間が何をしにやって来たのかを相談し始めた。

「デェ……このニンゲンさんたちは一体ナニをしに来たデスゥ?」

「ワタシたちを殺しに来たニンゲンさんではなさそうデス。ギャクタイハのニンゲンさんは赤と青のコワイ棒を持っているし、ワタシたちをクジョするために来るニンゲンさんはみんな真っ白なおフクを着てるデスゥ」

「デッ? 白いおフクを着ているニンゲンさんがワタシたちを殺しに来るなら、黒いおフクを着ているこのニンゲンさんたちは、もしかしたらワタシたちを助けに来てくれたんじゃないデスゥ?」

「そ、そうデスッ! そうにチガイないデス!」

 追い込まれた状況で幸せ回路がフル回転していたのか、ある一匹が言い出すと、その希望的観測にすぎない情報はたちまち集団全体へと広がった。
するとどうなるか。

「デェェ! は、早くワタシたちを助けろデスゥゥ!」

「ワタシたちはもうおナカがペコペコで限界デスッ! 早くステーキとコンペイトウを持ってくるデスゥ!」

「なにをしているデス、グズニンゲン! コウキでカワイイワタシが死んだらどうする気デスゥ!」

 助かる可能性があるとなれば、とことんまで意地汚くなるのが実装石という生物である。
つい先ほどまでは飢えによる体力の低下と絶望のせいでしおらしくしていたが、ついには糞蟲じみたことを言い出す者まで現れ始めた。

 重役風の男はそれをじっと聞いていたが、おもむろに足元に落ちていた小石を拾うと、それを大○翔平ばりのフォームで野良実装の一匹へと投げつけた。

 ————— パグァッ!!!!! —————

「デブュアッ!?」

 顔面に小石がヒットした野良実装は右目の周囲から頭の上部が粉々になり、舌だけをだらしなく垂らしたままどさりと倒れた。

「「「デ、デヒャァァァーーーッ!?」」」

「Fuck You………ぶち殺すぞ……糞蟲めら………!」

 野良実装たちに対して、初めて男が口を開いた。
だが強い口調で言われたにもかかわらず、逆に野良実装たちの精神は急速に冷え込み、落ち着きを取り戻していった。
誰もが「先に一石ぶち殺しといてから言うの?」と、心の中でツッコミを入れたのだ。

「要求すれば餌が出てくるのが当たり前か! ………甘えるな! 世間はお前らのママではない!」

 なおも男は演説を続ける。

「貴様らはここで冬支度もせず、食料も蓄えなかった挙句に飢えて死にかけている折り紙つきの糞蟲だ! 糞蟲には元来権利など何もない! 公園の中でも……外でもだ!」

「ぼ、ボウゲンデスゥ!」

「ワタシたちはちゃんと冬のジュンビをしてたデス! けど雪が降ってくるのが早すぎたんデスゥ!」

「………なるほど。今の貴様らの状況はあくまでイレギュラー、自分たちは糞蟲などではないというわけか………ククク………よろしい、ならば試してやろうじゃないか。貴様らが糞蟲でないかどうかを………」

「デ……デデッ? な、ナニをする気デスゥ?」

「これから貴様らにある試練を受けてもらう………それはお前たちが飼い実装として相応しいかどうかを試すものだ。もしも試練に打ち勝てば………飼い主を紹介してやろう………」

「「「デェェッ!? 飼いジッソウになれるデスゥゥー!!!?」」」

 男の言葉に、その場にいた全ての実装石が色めき立つ。

「や、やるデス! 飼いジッソウになるデスゥ!」

「………クククク………そうか、ならば挑戦してみるがいい。おい……準備だ」

「「「はっ」」」

 男が命令すると、モヒカン黒服たちが公園の外へと走っていく。

 そして数分後、戻ってきたモヒカン黒服たちは、下にキャスターのついた巨大な階段のようなものをゴロゴロと押してきた。

「デデッ? あ、あれはなんデスゥ!?」

 飢えた野良実装たちの前に置かれたものは、まさしく巨大な階段であった。
頂上までの高さは大体三メートル以上もあり、背の高い人間でも上に何があるか見ることができないほど大きい。
横幅も数メートルあるが、何枚もの透明なプラ版で縦に仕切られている。
そしてちょうど半ばあたりに長い踊り場が一ヶ所作られていた。

「いいか……これからお前たちにこの階段を登ってもらう。一つの道はそれぞれ一匹ずつしか登ることができず、一度登り始めてしまえば後戻りすることはできない。というよりも……実装石がこの階段を途中で降りようとすれば
 確実に足を滑らせて落ちてしまい、全身がグチャグチャに潰れて死ぬだろう………そして途中には質問に答えてもらう場所があり、そこで間違えてもお前たちは死ぬ………!」

「デ、デェェ……コワイデスゥゥ………」

 一匹の野良実装が怖気づいてガタガタと震えだす。

「怖いならやらなくてもいい………我々は一向に構わん。目の前に飼い実装になれる可能性がぶら下がっているのに、死を恐れて逃げるならそれも一つの選択だ。まあ………このままこの公園にいても、待っているのは飢え死にか
 凍死かのいずれかだと思うがな………」

「デ……デェェ………」

 ここにいる実装石たちは、もはやそういう選択が出来ないほど追い込まれたものばかりである。
男はそれを分かっていながら言っているのだ。

「さて……それでは始めるか」

 男の号令で、野良実装たちはスタート地点に一直線に並べられた。
しかしお互いが隣同士の顔をキョロキョロと見合わせたりして、積極的に第一歩を踏み出そうとする者はいない。
自分の体長と同じ高さから落ちただけで足がグシャグシャに砕け、下手をすると死んでしまうこともある実装石にとって、階段を登るというのは野良だろうと飼いだろうと本来ありえない行為なのだ。

「ククク………糞蟲揃いの実装石に、先陣きって行こうなどという勇者はさすがにおらんか………ならば強制的にスタートさせてやろう………おい!」

「はっ」

 男が命令すると、モヒカン黒服たちが一斉に野良実装たちの背後にずらりと並んだ。
その手には、子供が夏休みによくやる手持ち式の花火が握られている。

 モヒカン黒服たちが花火の先端にライターで火をつけると、花火はたちまち色鮮やかな火花を噴き出しはじめる。
モヒカン黒服たちはその火花を、足元にいる野良実装たちに浴びせるように近づけていった。

「ヒャッハー!!! 汚物は消毒だーっ!」

「ほれほれ! さっさと階段を登って逃げねえと、全身黒コゲになっちまうぞーっ!」

「てめえも消毒されてえかーっ!」

「「「デ、デヒィィーーーッ!!!」」」

 人間の肌や服であれば、一メートルも離れていれば火花を浴びても焦げたりすることはない。
だが服や髪が脂分を含み、恐ろしく燃えやすいことで知られる実装石ともなると、それでも炎上する可能性は十分にある。
野良実装たち自身もそれをよく知っているので、火が迫ってくると全員が慌てて階段を登りはじめた。

「デッス……デッス……」

「デェッス………デェッス………」

 実装石が一生懸命走ると自然と出てしまうという独特の呼吸音とともに、野良実装たちはほぼ横並びで階段を登っていく。
通路を隔てているのは厚さ数ミリのプラ版で、エスカレーターの手すりのような感じだが、野良実装の身長よりも高く作ってあるので越えることはできない。
お互い隣同士の姿は見えているが、手を出したり助け合ったりすることはできないのだ。

 全ての野良実装は登りだしてすぐに、この階段が案外登りやすいものであることに気付いた。
一段ごとの幅は少し狭いものの、高さは成体の実装石がヒザを軽く上げただけで登れる緩やかなもので、これならよほど鈍くさい個体でもなければ踏み外して落ちるということもないだろう。
だが—————

「デッ!? デアァーーーーーァァァ!!!!!」

 中にはそんな鈍くさい個体もいた。
連れて来られた野良実装の中で唯一の禿裸であったが、そんな姿にされた経緯を想像すればその鈍くささも納得だ。

 背後から聞こえた悲鳴に、他の実装石たちが思わず振り返る。

 ドップラー効果が起こらないほどの、わずか一メートルにも満たない高さではあるが、体長が平均五十センチほどの成体実装にとっては身長の倍である。
この高さから転がり落ちれば、ウエハースとクラッカーで作った骨格にマシュマロを肉付けしたような実装石のボディを砕き、引き裂くには十分な衝撃が加わる。

「デッ! デゴァ! デギァッ! デブェ……」

 そして野良実装たちは見た—————階段で何度かバウンドして手足と首がバラバラになり、着地と同時に赤と緑のシミと化した禿裸の姿を。

「「「デ………デヒャァァーーーッ!?」」」

 禿裸の無惨な姿を見た野良実装たちが一斉に悲鳴を上げる。
こいつらにとって唯一幸運だったのは、全員が極限の空腹状態だったおかげでほとんど糞が出ず、パンツが多少緑の汁で汚れただけで済んだことだ。
もしも空腹ではないときのようにパンコンしていたなら、糞の重みで重量のバランスが変化し、落ちるのは一匹だけでは済まなかっただろう。

「ククク………バカめ………まだ試練も始まっていないうちから死におるとは………」

 男は間抜けな実装石の死に様を心底見下したように嘲笑っていたが、試練に挑戦している野良実装たちの中にも男と同じように、落ちた禿裸を見て『デププwww』と嘲笑う個体が五匹ほどいた。
男はそれを見逃さず、そいつらのいるレーンに油を流すよう黒服モヒカンたちに命じた。

 モヒカンたちが踊り場の上から、糞蟲のいるレーンにサラダ油をトポトポと流していく。
そして足元に油が流れてきた実装石たちは、たちまち足を滑らせて階段を踏み外した。

「「「デデッ!? デッギャアアァァァァァァァ……………ァァァ!!!!!」」」

「ククク………同属を嘲る糞蟲などに、飼い実装になる資格はない………!」 

 禿裸を嘲笑った五匹の糞蟲たちは自らも同じ末路を辿り、着地とともに地面のシミとなった。
これで残ったのは十三匹である。



 そうこうしているうちに、生き残った野良実装たちは最初の踊り場に辿り着いた。
通路の長さは二メートルほどあり、その中間あたりに○と×がいくつも書かれた一枚の長い板が立てられている。


「デヒィ………デヒィ………」

「デハーッ………デハァーッ………」

「ククク………諸君、ご苦労。だが休んでいる暇はないぞ? お前たちにはここで、飼い実装になれるかどうかの究極の選択をしてもらう………」

「デェ………センタクって一体なんデスゥ?」

「目の前に○と×が書かれた板があるだろう………お前たちはこれから私がする質問に対し、正しいと思うほうへ体当たりしてもらう。正解ならば板が破れて通れるが、間違えればお前たちは死ぬ………心して当たれよ」

「デ、デェェッ?」

「では質問だ………もしもお前たちが飼い実装になったなら、飼い主である人間はお前たちの奴隷………毎日美味い飯とコンペイトウ、そして暖かい寝床を用意して当然である………○か×か?」

「デデェ……そうなったらウレシイデスが、ゴシュジンサマにそんなことを言うのは糞蟲デス。もらえるものにカンシャしないとダメデスゥ」

「そんなの当然デス! 飼いジッソウは毎日ウマウマとアマアマがホショウされる選ばれた存在なんデスッ! ワタシを飼うニンゲンはドレイニンゲンに決まってるデスァ!」

「(ふむ……まだまだ糞蟲も多いな………これならかなり絞り込めるだろう)よし、全員正しいと思うほうへ突撃しろ」

「デ、デスッ!」

 男の号令とともに、残った野良実装たちは一斉に○×の門へと突撃した。
比較的良識的な者は×のほうへ、そして糞蟲じみた者は○のほうへ。
そして—————

 ————— バリッ! —————

「デッ!?」

 ×が書いてある部分は実装石の通れる広さにくり抜かれており、そこに紙が張られているだけなので、体当たりによって容易く破れるようになっている。
そちらに体当たりした野良実装たちは、板を抜けた向こう側に進むことができた。
そして○のほうに体当たりした野良実装たちは—————

 ————— ビタァン! —————

「デゲァッ!?」

 ○が書いてある部分には通り抜けるための穴自体が開いておらず、体当たりした野良実装たちはしこたま体を打ちつけた。

 バラエティ番組のクイズでは、突き抜けた先が泥のプールだったりする場合もある。
だが、今回の“試練”は顔面を打ちつけたぐらいでは終わらない。

「………デ、デデッ!?」

 壁に激突した野良実装たちは、体がピクリとも動かせなくなっていることに気がついた。
板全体にゴキブリホイホイのような粘着性のものが塗られていて、全身が張り付いてしまっているのだ。

「デッ!? デェェッ!? う、動けないデスゥゥーッ!」

 それを見た男が再び合図をすると、モヒカン黒服たちが階段の両脇から近づき、長い板を固定している留め金を外した。
すると板がゆっくりと傾き、糞蟲たちを張り付けたまま階段の踊り場に横倒しになる。

「ククク………よく見ていろ。飼い実装に相応しくない糞蟲どもがどうなるか………」

 さらに男が合図をすると、モヒカン黒服たちが板の両側を持ち上げ、その下に銅製の管がうねった機械を据えつけた。
そして脇にあるスイッチを入れて十数秒後—————

「……………デ……デデッ? な、なんだか地面が熱いデス!」

「……………あ、熱いデス! アツイデスゥゥーッ!!!」

 糞蟲たちの張り付いている板は金属製であり、板が乗せられていたのは特製の電熱器、つまりホットプレートである。
わずかな時間でどんどん温度は上がってゆき、たちまち焼きそばやお好み焼きが焼ける温度にまで達した。

「「「……………デ、デギェァァーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」」」

 そして、公園にもの凄い悲鳴が響き渡った。
いや、悲鳴を上げられた者はまだましであった。
口が塞がれずに済んだということは、つまり顔が横向きに張り付いたということである。

 悲惨だったのは顔が真正面から張り付いてしまった者だった。
顔面が丸ごと焼け、目玉が焦げていくのに、口が塞がれてしまっているために悲鳴を上げることもできないのだ。

「ン゛ヴーーーーッ!!!!! ヴンズゥーーーーッッッ!!!!!」

 どの糞蟲たちも懸命に体を板から剥がそうとする。
しかし接着剤は熱ですでに溶けたものの、今度は焦げた肉が張り付いてしまって剥がすことができない。
それでも熱さから逃れようと無理に引っ張った結果—————

 ————— ベリィッ! —————

「デギャァァッ!?!?!?」

 ようやく悲鳴を上げて苦痛を和らげることができると思ったら、顔の皮膚が剥がれてさらなる痛みに見舞われる。
その見るも無惨な姿は、×のほうを通り抜けることができた野良実装たちも震え上がらせた。

「デ、デヒィィーッ!?」(パキン!)

 あまりにもスプラッタな光景に、恐怖のあまり偽石を崩壊させる者もちらほらいた。
そして焼かれていた糞蟲たちも黒コゲになる前に偽石が砕け、全員が死亡した。

 ○のほうに突撃して焼かれた者は六匹、恐怖で偽石を崩壊させて死んだ者が二匹。
これで残ったのは五匹だ。

「うむ……いい感じに糞蟲が淘汰されたな。二匹が恐怖で死んだのは誤算だったが……まあいい………どうせこの程度でストレス死するヘタレなど役には立たん」



 生き残った五匹は全員が両目から赤と緑の涙を流し、腰が抜けたのか立ち上がれずにいる。

「そうして休んでいるのは構わんが、さっさと続きを登らないとお前たちもああなるぞ?」

 男がそう言うと同時に、モヒカン黒服たちは焼けた鉄板の両側を金デコで挟み、それを持ち上げた。
そして板を再び立てると、生き残った実装石たちのほうへ向けてじりじりと前進させていく。

「デ、デェェッ!?」

 黒コゲになった糞蟲たちが張り付いたままの鉄板が後ろから迫ってくる。
驚いた生き残りの五匹は、慌てて階段を登りだす。
だが、数段登ったところで思わぬことが起こった。

 ————— パキャン! —————

「「「デギャァッ!?」」」

 生き残った五匹の足元から、偽石が砕けたような音がした。
だが、もちろん自身の偽石が砕けた音ではない。
生き残りの実装石たちが足元を見ると、自分が踏んでいた階段の床が割れ、ギザギザになったその断面と破片が自分のくるぶしに突き刺さっていた。 

「「「デ、デギェェーーッ!!!?」」」

「ククク………言い忘れていたが、残りの区間は根性試しのためのエリアだ。気合を入れて登れ………痛みに耐えかねて転げ回ればもっと悲惨なことになるし、もしも後ろに倒れて落ちれば足がもげるだけでは済まんぞ?」

 この階段の後半は、全ての天板が薄いガラス製になっていた。
中学校の理科で顕微鏡を使ったことがある人ならご存知だろうが、観察対象を乗せるプレパラートの上に置くあの薄いガラスと同じ厚みのものである。
人間の指で少し力を加えるだけで容易く砕ける薄氷のようなガラスなど、成体実装が乗ればたちまち粉々だ。
そして割れたガラスは刃となり、実装服と同じ材質の靴など紙のように貫通して足に突き刺さる。

「イ、イタイデス! イタイデスゥゥーッ!!!」

「デギッ! デギャッ! デギャァァッ!?」

 足にガラスの破片が突き刺さった野良実装たちは、痛みでそれ以上動けずにいた。
傷ついた足で戻ろうとすればバランスを崩して落ちてしまうし、下には焼けた鉄板が置かれている。
だからといって、痛み耐えて上に登ろうとする根性もないのだ。

「ふむ……やはり実装石というものは、追い込まれないと動くこともできんか」

 男がやれやれといった顔でかぶりを振り、手を上げてモヒカン黒服にさらなる指示をする。
すると黒服たちは階段の下に置いてあった焼けた鉄板を持ち上げ、それをまごついている野良実装たちに近づけていった。

「デェェーッ!?」

 すぐ真後ろに、黒コゲのゾンビのようになった糞蟲たちの顔が迫ってくる。

 (このままでは自分たちもそうなってしまう)

 そういう恐怖に追い詰められて、野良実装たちはようやく次の一段を踏み出した。

 ————— ガシャン! —————

「「「デギィィーッ!?」」」

 再びガラスが砕けて足に突き刺さる。
さらに、耐えかねた一匹がふらついて次の段に手をつくと—————

 ————— ばきゃん! —————

「ギェァァーーーッ!!!」

 今度は両手に割れたガラスが突き刺さった。

「そらそら……登れ登れ! 立ち止まったやつは黒コゲだぞ。生きたければ………そして飼い実装になりたければ痛みに耐えて登るんだ………!」

 男が手をぱんぱんと叩きながら野良実装たちを促す。
その手拍子に合わせるように、野良実装たちは手足を血まみれにしながら階段を登っていった。



 そして十数分後—————

「デハァ……デハァ……」

「デヒ………デギヒィィ………」

 階段の頂上に、三匹の野良実装が倒れ伏していた。

 一匹は痛みのあまり途中で偽石が崩壊し、さらに一匹は失血が酷くて動けなくなっているところを迫ってきた鉄板に焼かれて死んだ。
生き残ったのはこの三匹のみである。

 服の裾や袖はすでにボロボロで、髪は血と糞汁にまみれてあちこちにべっとりと張り付き、とてもじゃないが飼い実装に相応しい姿とは言い難い。

「ククク………素晴らしい。よくぞ生き残った。見事試練に耐え抜いた君たちには、飼い実装になる権利を与えよう………!」

「デ………!」

「か……飼い………ジッソ………ゥ………デス………」

「や、やったデス………ママ………これでワタシも……………」

 生き残った三匹はもはや虫の息だったが、男が言った『飼い実装になれる』という言葉を聞いたとたん、目に光が戻ってきた。
もはやその希望だけが満身創痍の体を支えているのだ。

「さて、これで君たちは飼い実装になれることが決まったわけだが………飼い主さんが待っているところには車で移動してもらうことになっている………あれだ」

 男が指差したほうには、一台のハイ○ースが後ろ向きに駐車されていた。

 この公園は元々丘の斜面を削り、階段状に造成された住宅街の中にある。
そして隣の駐車場は公園よりも二メートルほど高い位置にあり、公園からはコンクリートで固められた壁の上にあるような格好だった。
ハイ○ースはその一段高くなった場所に駐車されていたのである。
公園に住む野良実装たちの目線では決して見ることができなかったが、三メートルある階段を登りきった野良実装たちは壁の上の大地が駐車場であることを初めて知った。

「………おい」

「………はっ」

 男が指示すると、モヒカン黒服たちは野良実装たちの乗っている階段をキャスターでゴロゴロと移動させはじめた。

「デデッ!?」

 突如足場が動き出したことで、生き残った野良実装たちは動揺する。
今いる場所は十分に広いので落ちることはないのだが、野良実装たちは姉妹でもないのにお互い抱き合って震えていた。

 ————— ごつん —————

 軽い衝撃とともに階段が停止する。
公園の地面と植え込みの境目にある段差で止まったのだ。
だが、目の前に見えているハイ○ースのトランクまではまだ二メートル近くも距離がある。

「実装石諸君………分かるかな? 見てのとおり、この階段はここまでしか移動できない。だが、目指す車の荷台まではまだ届かぬ………そこで我々が特別に便宜を図り、道を用意した」

 男が指示すると、モヒカン黒服たちがアルミ製の梯子のようなものを持ってきて、野良実装たちのいる場所とハイ○ースの荷台の間に渡した。

「君たちにはこれを通って車に乗ってもらう………」

「デデェッ!?」

 生き残った野良実装たちは驚愕した。
ようやく死の階段を登りきったと思ったら、またも転落すれば即死の綱渡りならぬ梯子渡りをやれというのである。

 この梯子はバイクを車の荷台に積むときに使うラダーレールのように、さほど板と板の隙間が開いてはいない。
とはいえ痩せ細った体では落ちてしまう可能性も十分にある隙間で、頭の部分がやっと引っかかるかどうか微妙な幅だ。
実装石の短い足で、しかも手足にガラスの破片が刺さりまくったこの状態で渡るとなればかなりの危険を伴うだろう。
そもそも野良実装たちは痛みと疲れで真っ直ぐ歩けるかどうかも怪しい。

「ふ、ふざけんなデスゥ! ワタシたちはちゃんとカイダンを登ったデス! それで飼いジッソウになれるはずデスゥ!?」

「こんなのもうムリデスゥ!」

「ククク……嫌なら渡らなくてもいい………私たちは別にお前たちがここで飢えようが死のうが一向に構わんのだからな」

 男は階段を登らせる前と同じ内容の台詞を言い放つ。

「デ、デェェ………」

 恐怖と痛みに耐えてここまで登ってきたのを無駄にするのはあまりにも口惜しい。
そもそもここで引き返そうにも、傷だらけの手足でまたガラスの階段を這って下りるなど到底不可能だ。
あらゆる意味でもはや後戻りのできない野良実装たちには、渡らないという選択肢が最初から用意されていないも同然であった。

「デ………やるデス。渡りきって飼いジッソウになるデス!」

 一匹の野良実装が立ち上がり、よたよたと歩き出した。

「「デェ………!」」

 その姿を見て、残った二匹も意を決したように立ち上がる。
そして三匹は一列に並び、ラダーレールの上を歩き出した。



「デギ……! デッギィィ………!」

 歩き出したといっても、両手両足に無数のガラス片が刺さったままである。
野良実装たちの足は遅々として進まない。
想像してみて欲しい。
両手首と両足首をガラスで乱暴にリスト&アンクルカットし、人間でいえば足の裏だけでなく指や爪の間にもガラス片が刺さった状態で歩けというのである。
三匹とも両足だけでは体を支えきれるはずもなく、四つ足でズリズリと這うように進んでいた。

 しばらく進んだところで、痛みに耐えかねたのか、先頭の一匹が立ち止まって動けなくなった。

「デッ? ど、どうしたデス。はやく進めデスゥ」

 後ろの野良実装が尻をぺしぺしと叩くが、前のやつはぴくりとも動けない。

「デェェ………ちょ、ちょっと待ってほしいデスゥ……………」

「デェッ………ワタシだってオテテもアンヨもイタいデス! さっさと行けデスゥ!」

 後ろの野良実装は先頭のやつをぐいぐいと押して前に進むよう促す。
だが、しばらくじっとしていたことで、先頭にいる野良実装の足元には手から流れた血で血溜まりができていた。

 ————— ズルッ —————

「デェッ!?」

 先頭の野良実装は手を滑らせ、板の隙間に体が滑り込んでしまった。
しかもバランスの悪い体型のせいで頭だけがつっかえ、首吊りのような格好でぶら下がっている。

「デ、デグゥゥゥゥ………グ、グルジイデズゥゥ………」

「バカなやつデス。さっさと行かないからそんなことになるデス。ワタシはコンジョウがあるからさっさと渡って飼いジッソウになるデス………」

 ————— ガシッ —————

 二番目の野良実装が先頭を跨いで追い越そうとした瞬間、首吊り状態になった先頭の野良実装が二番目の手を掴んだ。

「デ、デェッ!? な、なにをするデス! 離せデスゥ!」

「デグゥゥゥゥ………ワタシがこうなったのはオマエのせいデスゥ………セキニンをとってワタシをタスけろデスゥゥ………」

「そ、そんなのムリに決まってるデスゥ! 離せ! 離せデスゥゥーッ!」

 二番目はガラス片の突き刺さった手で自分を掴んだ手をぺしぺしと叩くが、落ちかけている野良実装も必死である。
二匹は絡み合い、もみ合い、お互い必死で掴み合う。
そのせいで階段とハイ○ースの間に渡されたラダーレールがガタガタと揺れ、いまにもひっくり帰りそうだ。

「デェェェ!? や、やめるデス! 橋が落ちるデスゥゥー!」

 一番後ろの野良実装が叫ぶが、二匹はなおも争うのをやめようとしない。
そして先頭の野良実装の首が揺れに合わせて徐々にずり落ち、ついに—————

「デッギャァァァァァァァァァァァ………………………………………!!!!!!!!!!」

 ————— べしゃん! —————

 先頭の野良実装は梯子から落ち、地面のシミと化した。
それでも頭部だけは潰れずに残り、上の二匹を恨めしそうに見上げたままなのが凄まじい光景だ。

「デヒィ………デヒィ………まったく……………ムダなタイリョクを使わせるなデスゥ」

 二番目の野良実装は先頭を落としたことに全く悪びれる様子もなく、ズリズリと這いずって進んでいく。
その光景を見た男は、ハイ○ースの荷台の両隣に立っている二人のモヒカン黒服に顔を向けると、無言で首を振った。



 そしてついに、先頭(旧二番目)の野良実装がハイ○ースの荷台へと辿り着いた。
だが、その扉は閉じられたままで入ることができない。

「デェェ……この中に入ればいいはずデスが………どうやって開ければいいデスゥ?」

 野良実装は後方ドアをあちこち眺め回してみるが、どこから開けるのか分からない。
そうして途方に暮れていると、隣にいたモヒカン黒服の一人が無言で後方ドアを開けるための取っ手を指差し、それを引っ張ってみせるジェスチャーをした。

「デッ? ココをひっぱればいいデスゥ?」

 野良実装は取っ手に手をかけ、思い切り引っ張ってみた。
だが、非力な実装石ではそう簡単にドアは開かない

「デッ………! ………デェッ! ひ、開けデスゥゥゥ!!!」

 すでに痛みにも慣れているのか、野良実装は手にガラス片が食い込んだままにもかかわらず、全体重をかけて取っ手を引っ張る。

「………デッ?」

 そのとき、他の二匹よりも重傷だったせいでまだ少し離れたところにいる三匹目の野良実装があることに気がついた。
よく見れば、隣にいる二人のモヒカン黒服はドアを開けようとしている野良実装をニヤニヤと笑いながら見下ろしているのだ。
この顔は見たことがある—————そう、体のどこかを潰された同属がイゴイゴと蠢く様を見て喜んでいる虐待派のそれだ。

 そもそも自分たちはすでに飼い実装になれることが決まったはずなのに、この人間たちはなぜ扉を開けてくれないのだろうか。
そう考えたとき、ふと嫌な予感が走った。

「ちょ、ちょっと待つデス! そのトビラを開けちゃダメデスゥ!」

「デッ? ナニを言ってやがるデス。飼いジッソウになりたくないデス? だったら一人でそこでうずくまってろデス。ワタシは飼いジッソウになってシアワセになるんデスゥ………」

 後ろにいるやつの忠告を聞かず、野良実装はなおも取っ手を引っ張る。
そして次の瞬間、バクンという音とともに留め金が外れてハイ○ースの後方ドアが開いた。

「デッ! デ………? デァァーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!?!?!?!?!?」

 実装石はともかく人間ならば誰もが知っているだろう。
ワゴン車の後方ドアというのは、開くと同時に上に跳ね上がるのである。
取っ手にしがみついていた野良実装はドアとともに跳ね上げられ、一番上で止まったときの衝撃で手が離れて宙に放り出される。

「デ、デェェーーーッ! し、死にたくないデスゥゥーーーーーーーッ……………!!!!!」

 それが野良実装の最期の言葉となった。

 そもそもこの後方ドアは、野良実装たちが手前に立つ前にモヒカン黒服たちが開けてやる手はずであった。
しかし先頭にいた野良実装を平気で落としたのを見た男は二匹目を糞蟲と判断し、急遽予定を変更してドアを開けないよう指示したのである。



「デゥゥ………ヒ、ヒドいデス………あんまりデスゥ……………」

 ドアから放り出された野良実装は、先にラダーレールから落ちた野良実装のすぐ隣に落ち、同じように首だけの姿になった。
それを見た最後の生き残りはうずくまったまま、両目から血涙を流して嘆き悲しんでいる。

(ふむ……最後に生き残ったやつは同属の死をも嘆くことができるようだな………うん、稀に見る良個体だ。これならば会長もお喜びになるだろう)

 地上三メートルの高さで繰り広げられる惨劇を見上げながら、男が満足そうに頷く。

「おい、せっかく命と引き換えに扉を開けてくれたのだ。そいつの死を無駄にしないためにもさっさと渡りきれ」

「デ………そ、そうデス。みんなの死をムダにしないためにも、ワタシは生きないといけないデス………」

 男の言葉に促され、最後の生き残りがハイ○ースの荷台へと這っていく。
そしてついにラダーレールを渡りきった野良実装は、荷台の中に倒れ込むと同時に力尽きて気絶した。


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「…………………………デ………?」

 野良実装が目を覚ましたとき、そこはすでに車の中ではなかった。
それどころかボロボロだった服は新品に取り替えられ、眠っている間に栄養剤にでも浸けられたのか、体中の傷も回復している。

「デェ……ここはどこデスゥ?」

 野良実装はあたりをキョロキョロと見回すが、薄暗くて自分の姿以外は何も見えない。
水槽の中に入れられ、上から布を被せられているのだ。
照明らしき光がうっすらと漏れてくるので自分の姿は確認できたし、とりあえず体の痛みが癒えていることで不安にはならなかった。

「おい、こいつらの“試練”はちゃんと映像に収めただろうな?」

「はっ、最高画質で保存してあります」

 水槽の外から声が聞こえてくる。
もう一人の声は聞き覚えがないが、最初の声は重役風の男のものだ。

「尾根川様、もうすぐ会長がおいでになられます」

「そうか………よし、並んでお出迎えの準備だ」

「「「はっ」」」

 そしてしばらくすると、コツコツという杖をつく音と、草履で歩くぺたぺたという足音が同じリズムで近づいてきた。

「フフフ………どうだ尾根川、いいのは見つかったかな?」

「はっ、一匹しか残りませんでしたが………ストレスに強く、糞蟲どころか同属の死を悼むことのできるなかなかの良蟲です。それに試練の様子もしっかりと録画済みですので、後で気分転換にでもご覧ください」

「フヒヒヒヒヒ………上々、上々………それでは良蟲ちゃんを見せてもらおうかな………?」

 しわがれた老人の声とともに、水槽を覆っていた布が取り払われる。
生き残った野良実装は照明の光に思わず目を細めたが、眩しさに目が慣れてくると悲鳴を上げて糞汁を漏らし、新品のパンツを再び緑色に染めた。

「デ、デヒャァァーーーーーーーッ!?」

 

 野良実装の目の前に現れたのは、和服姿の醜い老人だった。
顔中が黒疱瘡とシミだらけで、その顔をくしゃくしゃに歪めてニヤニヤと笑っている。
しかしその笑顔はとても優しさから溢れ出たものではなく、狂気さえ越えた何かに満ちていた。

「ほほう………確かに健全な肉体と精神を持った仔のようじゃな……………これこれ(↑) こういうのこそが虐待して一番面白いんじゃよ」

 野良実装は戦慄した。
この老人は今なんと言った? 虐待? “虐待”と言ったのか?

「デヒィィーッ!? ワ、ワタシをダマしたデス? 飼いジッソウにしてくれるんじゃなかったんデスゥゥーッ!?」

(いや、騙してはいないさ………ただ“虐待用”の実装石として会長に飼われるというだけだ。お前の偽石が崩壊するまでな………)

「ウジュジュジュジュ……………ジュジュジュ………ジュジュジュジュジュ……………………………」

 奇妙な声で呟きつつ、老人の手が野良実装の頭に伸びていく。
その呟きを聞いて、傍にいた尾根川は察した。

(今日はどうやら焼殺コースか………やれやれ、実装石の体を焼け火箸であちこち焼きながら、同時に最高級のシャトーブリアンステーキを召し上がるのだからこの人の神経は分からん………)

 老人の手に頭をわし掴みにされ、野良実装が別室へと連行されてゆく。
尾根川をはじめとするモヒカン黒服たちは頭を下げてそれを見送ったが、老人の姿が見えなくなると思わず頭を左右に振った。
連れて行かれた野良実装の行く末を思うと、虐待に抵抗のない自分たちでさえそうせざるを得なかったのだ。

「デェェーーー!!! イヤデス……………イヤデスゥゥーーーーーーーッ!!!!!」

 野良実装の叫びも空しく、別室の扉が閉められる。
そして防音の分厚い扉からは、それ以上の声が聞こえることはなかった……………



-END-

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 あとがき

 『中間管理録トネ○ワ』を読んでたらつい書きたくなった。反省はしていない。
というわけで、今回は金持ちが道楽で虐待用の飼い実装を選抜するというお話でした。
階段を登って選択式の試練に挑戦するというのは、キン肉○ンのジェ○ニモが超人に生まれ変わるときの試練から着想しました。
そしてガラス製の階段というのは、確か『電○少女』だったと思うんですが、昔の桂○和氏の作品で読んだネタです。
読んでて思わず「痛い痛い痛い!」と声が出そうになるほどエグかった思い出があるので、今回は実装石にやってもらいました。

 作者の表現力不足のせいか、書いてみたらいまいちエグさの足りないただのパロディになっちゃった感があるんですが……
実のところ、一番やりたかったのは最後のオチなんですよね。
人間相手にクッソえげつないゲームや拷問の数々を思いつくあの兵○会長が実装石虐待にハマったとしたら、一体どんな惨劇を繰り広げてくれるのか………もはや作者の頭では考え付かないので描写不能です。

 次回はまた直感的というか、ただひたすらに実装石を虐待するキチ○イの話にしたいと思います。
こっちのほうが得意というか、今回は進みが遅すぎたので………

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1 Re: Name:匿名石 2016/12/21-21:31:19 No:00003338[申告]
「中間管理職ト〇ガワ」も、「賭博黙示録〇イジ」も
読んだことのない身には、このスクの感想を述べるような
おこがましい真似は出来ない。
ただ、作中の虐待描写に一言言わせて頂きたい。
"God Job!"と。
2 Re: Name:匿名石 2016/12/21-21:58:36 No:00003342[申告]
いい感じにミックスさせたなぁwww
3 Re: Name:匿名石 2016/12/21-22:40:11 No:00003344[申告]
>「Fuck You………ぶち殺すぞ……糞蟲めら………!」
もう殺してんじゃねえか!○根川じゃなくてプロシュートの兄貴かよと思ったら実装石諸君もそう思っていたようで苦笑いした
4 Re: Name:匿名石 2016/12/22-00:46:32 No:00003346[申告]
ナイスだwww
5 Re: Name:匿名石 2016/12/22-18:18:04 No:00003370[申告]
会長は意外と実装にはぬるいんじゃないかなあ
意図的にぬるくしてるというより構われたくない、自由になりたいニンゲンへのイジメにパラやスキルが傾いてて
性根が構ってちゃんの実装にはいまいち効かないイメージ
まあ、実装側が雑魚チリすぎてそれでも半日あれば死ぬんだが
6 Re: Name:匿名石 2017/01/24-20:34:22 No:00003995[申告]
会長は自分では手を下さずに今回の選別みたいなのを睥睨してる方がらしい気もする
必死こいて生きてるやつを1対1で虐め倒そうとするのは息子の方の性癖じゃねとも思うけど面白いわこれ
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