タイトル:【ほのぼの・観察】 再うぷ2話目デスゥ全9話デスゥ
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:18139 レス数:1
初投稿日時:2006/08/19-03:56:42修正日時:2006/08/19-03:56:42
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三代記 〜女一代 波乱の実装生 後編〜

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朝、ママとお散歩の時間だ。
お外はとてもキモチガイイ!

ワタチは、見送るハクチのオバチャン達に、
「ワタチ達が帰ってくるまでにちゃんと家をキレイにしておくテチィ!出来てなかったら追い出すテチィ!」
と釘を刺してやった。

昨日ワタチ達が漏らしたウンチのニオイが残っていてキモチワルイ…
楽しいお風呂も、お水が汚れていてキモチワルイ…
でも、ワタチ達はお散歩に行くんだから、とっても忙しい。
そのぐらい住まわせてやっているんだから当然のことだ。
お掃除、ゴハンの補充は奴隷として当然の仕事だ。
ワタチ達の家なのだから…

ハクチのオバチャン達は目を丸くして驚いていた。
本当にハクチなんだ…どこまでもバカのクズだ!
まだ、自分たちの立場が判っていないんだ!
ワタチはママみたいに優しくしない!奴隷はコキ使って当然だ。

「文句あるテチィ!?ワタチのお家に住まわせてやっているテチィ!!
 お前達みたいなハクチは、ママにボコボコにされて、野垂れ死ぬテチィー!!」

オバチャンの仔が、歯をむき出して怒っている。
まだ、立場が判っていない!
マヌケな顔で走ってくる。

「ママー!あいつらナマイキテチィ!ママの力で思い知らせてやって欲しいテチィ♪」

するとママは親指チャンと蛆チャンを抱えて、大慌てで走り出す。
ワタチと妹チャンは、とても速く走るママについていった。


「それは言ってはいけないデス!!」
ママはとても怖い顔でワタチを怒った。
ママに怖い顔で怒られてワタチは泣いてしまった。
今にもタタキそうな顔で睨んでいるのが怖かった。

どうして?ワタチは住まわせているヤツらに当然の仕事を与えただけなのに…
それぐらい言ってもいいのに…


でも、しばらくするとママはいつものママに戻っていた。
歌いながら一緒に歩いて、一緒に木の実でお昼にして、また歩いた。

でも、お家とは違うほうに歩いている…どうして?


「さぁ!ここが今日のお家デス」
ママが指差したのは、とても大きな丸で、とても固い壁のお家だった。
固くて大きいけど、入るところと出るところが2つあって、そこには壁が無かった。
お外から丸見えだ…。

「ママ…昨日のお家は?」妹チャンが質問する。

「あれは…アイツらがあまりにも可哀相だからくれてやるデス
 ワタシにはイッパイ家があるデス…こっちの方が大きくて固くて安全デス!
 あ・あ・あれは別荘デス…狭い別荘だからくれてやるワタシはセレブデス!!」

「ママ…出入り口に何も無いテチィ…丸見えテチ
 中にも何も無いテチ…遊び部屋も、トイレも、お風呂場も無いテチ…」

「これから探すデス!まだ明るいデス!!」
また、ママが怒った顔になる。


ワタチ達は怖くて泣きながらお家の扉になるものを探した。

ダンボールというものがとってもいいらしい。
ワタチ達はちゃんとダンボールがわかる。
いろんなものを集めてくる。
ちゃんと判ってきた、軽くてダンボールより固いのがプ・プ・プラチチック
柔らかいけどいろんなことに使えるコレがシンブンシ!
シンブンシみたいだけど破れないのがビ・ビ…ビューニュブクリョ
そう、昨日のオバチャンの仔が言ってた。

あれはママのお家なんだ…だから、あれもこうして集めて作ったんだ。
だから、アレはきっと賢いママがアイツらに、どうやって作ったか優しく教えてやったんだ。
ママは優しいから、ハクチのヤツにも優しくて、物も沢山あげるんだ…
アイツらはバカでクズだから、自分たちが作ったように自慢していた…本当にバカなやつらだ。



ワタチ達の集めたモノで、家は外から中が見えなくなった。
トイレはお外、お風呂もちっちゃいけどある。
寝る場所も、遊ぶ場所も、とーーーーーっても広い♪
ちゃんとお空もお星も見える。
でもゴハンはない。

「別荘ばかりに居たデス…ここにゴハンは蓄えてないデス…今日は我慢するデス」

親指チャンはとっても怒った。
妹チャンは涙を流した。
ワタチもお腹がペコペコだけど、抱いてる蛆チャンの笑顔を見て我慢した。
ママの言うことがきっと正しい、だから我慢する…ワタチは賢いんだから我慢が判る。

「妹チャン…親指チャン…今日は我慢するテチィ
 ママが夜は怖いって言っているテチ、ママは賢いからきっとニンゲンが何か貢ぐテチ
 それに賢い仔は我慢できるテチィー」


夜は風がとても寒いから、シンブンシのお布団に丸まって、みんなで輪になって体を寄せて寝た。
昨日のお家は、寒くなかった…もっとしっかりして、ガタガタと怖い音なんてしなかった…
お布団もコレより暖かくて厚くてモワモワしていた。

ママはお家をイッパイ持ってる、お家の天才なのにどうしてこんなに寒いんだろう…

でも、ママや妹チャンの肌が暖かくて、蛆チャンが「オネイチャン、アッタカイレフゥ〜ン♪」と喜んでくれたからいい。
ワタチ達はまた、ママのお話を聞いてゆっくりと眠りに付く。

ニンゲンがひれ伏してパンとかコンペイトウを沢山沢山持ってくる夢を見た。

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彼女の描いた未来図は、彼女の分身たる仔実装の一言によって崩れ去った。

それは、仔実装の純粋さと、彼女自身の性格の悪さが、
結局は彼女の機転を上回って足を引っ張った形である。

それでも彼女は、固執せずにきっぱりと甘い生活を捨てる判断をした。
餌の取り難くなる妊娠期を過ごせたのだから十分…。
むしろ、最初からそのためだけに利用したと、勝手に解釈して満足した。

餌については心配していなかった。
体も元に戻った。
働き手もいる。
さらに、うまく使えばバカなニンゲンから餌を貰うのも、仔を持たない連中より遥かに有利だ。

問題は住む所だ。

仔にああ言った手前、引くに引けない状態となった。

前の家とは反対方向で、なんとか身を隠せそうなところを探した。

結局、ひたすら彷徨いながら探し続け、ついには公園の敷地を離れ、
公園そばの工事が止まっているマンション建設予定地に放置されたパイプを見つけた。
彼女は幸運を神に感謝することなく、自分の実力だと認識した。

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ゴハンはイッパイあった。

公園に行けば、ニンゲン達が勝手に貢いでくれる。
ママがその姿を見せつければ、貢物を差し出すのは当たり前のことだ。

ママがワタチ達を抱えあげれば、沢山のパンやお菓子が手に入る。
バカなニンゲンは、ワザワザ見せてやらないと気が付かないらしい。
他のバカなナカマと区別が付かないほど目が悪い生き物だって教えられた。
「そんなヤツには飼わせてやる価値もないデス」ってママが言ってた。

最初は家族でイッパイイッパイ、ニンゲンの前で踊りを見せ付けてやった。
でも、あんまり貢物を出さなかった。

今日のママは、蛆チャンを抱えて、イッパイあるベンチに座るニンゲン達の前をタカイタカイして歩き、
時折、転んだり、悲しくないのに泣いたり何か叫んだりしていた。
劇を見せてやって、ケンブツリョウをチョウシュウすると言っていた。
「ワタシの演技は”はりうっど女優”と同じ価値があるデス沢山食べ物を寄越して当然デス!」

一周すると、次は親指チャン、その次は妹チャンだって言ってた。
ワタチは抱っことタカイタカイして貰えない。
でも、ママがそうしている間は、ママに言われたとおり、
茂みの中で、残っている妹達を守り、遊んであげた。
一周してくると、ママはお腹いっぱいになるほどのゴハンを持ってくる。

とても満足、満足、イッパイイッパイお腹イッパイ♪

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彼女は、知能は低俗な野良ではあるが、とにかく機転が利くことにより、
蓄積される知識は多かった。
野良と飼いの両方を経験していることも大きなアドバンテージであった。

特に餌に関しては、世話になった家主の助言を得てからは、
飼われていた頃の経験と重ねて、
”ニンゲンを見分けて餌を貰う”という事を開発して実行した。
幸い、この公園では、昼の時間であれば、虐待派の人間が圧倒的に少なく、
愛護派や普通の人間が訪れる。
堂々と公園内を行進するほうが安全な時間が存在する。


特に彼女は、普通の実装石ならあまり効率のよくない”普通の人間”を狙った。
愛護派の撒き餌は、同族の競争率が激しく効率が悪い事を知り、
また、無関心な人間は競争率が少ない事も学んだ。
同時に、普通の人間が小動物、それも親子に弱いことを計算してのことだ。

ただ無関心な人間は、普通の実装石ではねだっても餌をくれることは少ない。
逆に、機嫌を損ねて殺されはしないが、小突かれて大怪我を負い、
一日を回復のために無為に過ごすものの方が多い。
人間にとってはただ手で払ったり、歩いているだけでも実装石にはかなりの衝撃だ。

捨てられた最初は、彼女もその中の1匹だったのだ。

彼女はさらに機転を利かせて、
弱々しい姿の演技をすることで、同情を誘う術を開発した。
仔を抱え弱々しく近寄り、弱々しく空腹で動けない振りをして泣いて見せた。
効果は絶大であった。
特にカワイイ小動物好きなOL達は、そうした親子連れになら、簡単に残り物を与えた。

仔を最大限に利用して、公園でもっとも豊かな食生活をする実装石となっていた。

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ある日、ワタチ達はいつものように、お布団に包まって集まり、ママのお話を聞いていた。

「出て行くときのバカニンゲンの顔は、とても惨めだったデスゥ…」

ここよりずっと広いお家…あの家のときよりフカフカの布団…
ニンゲンに飼われるのは幸せなんだろうなぁ

もう、ワタチの腕の中では蛆チャンと親指チャンはスースーと寝息を立てている。
ワタチ達はまだ寝ない。
ママの子守唄が聞けるから…。


ガタン…トントン…

入り口のほうから音がする。
風だと思った。

トン…トントン…ガタガタ…

何かがいる。
怖い…犬?猫?どっちも怖い…

バンバン!「デスゥゥ?」「デスデッス」「デデェェェ!」

違う、ナカマがいる。

でも、大丈夫…お家には壁がある。
犬も猫もナカマも入ってこれない!

ガタン!グラグラ…パキッ…ビリビリ…
「いいにおいがするデス!」
「何かいるデス!」
「クワセロ・クワセロ」

ワタチ達が一生懸命に作った壁が壊れていく。

割れた壁から、何かが覗いている…ナカマの様だけどナカマじゃない怖い顔…。

手が出てくる。

とってもキタナくてクサイ手…。
いくつもいくつも伸びていて、どんどん壁が割れていく。

ワタチは怖くて、泣き出した。
ウンチがイッパイ出てくるのに、ぜんぜんキモチよくない。
親指チャンも目を覚まして、ワタチにしがみついている。

ワタチはママを呼んだ。
ママも臭くなって震えている。

ナカマの姿がはっきり見える。
とても気味の悪い姿。
ところどころ茶色い肌に、ボロボロの服…髪がブワーっと盛り上がっててとてもガリガリなのとか、
片手が無いのとか、よだれを出しているのとか…。

ワタチは我慢できなくて、音のしていない方の出口に駆け出した。
親指チャンが首にしがみついて、蛆チャンを抱えて、
空いてる手で妹チャンの手を掴んで逃げようとした。

でも、妹チャンは付いて来なかった。
ママが妹チャンの手をしっかり握っている。
ワタチは、とにかく怖くて妹チャンの手を引いて、とにかく全力で逃げた。

逃げる、逃げる…

ほとんど何も覚えてない…

振り向いたとき、バキって音がして、3匹が入ってくるのが見えた。

あと、ママが泣いてる妹チャンを抱えていたのも覚えている。

妹チャンの手を握っているはずなのに、なぜそこに妹チャンがいるのかわからなかった。
考える暇も無かった。

反対の出入り口から外に出るとき、見えたのは抱えた妹チャンをタカイタカイするママの姿。



それからは一生懸命に逃げた。
どこをどう走ったか判らない。
息が苦しくなっても走った。

もう走れない…気が付いたときには、草むらの中にいた。
見回すとお家が見えた。

片手に抱えた蛆チャンを下に降ろし、頭巾の首にしがみ付く親指チャンをなだめて降ろす。
手を引いている妹チャンに呼びかける…
呼びかける…握っている手を引き寄せる。
「テチァ!!!!!」
妹チャンの手だけが、ワタチの手を握っている。
ワタチは怖くて腰を抜かして、慌ててその手を投げ捨てた。

何がおきているか考えたくも無い。
パンのことを考えるのはスキ…
ふっくらお布団を考えるのもスキ…
でも、あの中のことを考えるのはキライ…

ワタチは親指チャンと蛆チャンを抱えて泣いた。

寂しい…ママがいない、妹チャンもいない。
怖い…ママがいない、あの3匹があそこにいる。

ワタチは、とにかく大きな声で泣いてママを呼んだ。
ワタチは妹達を抱えて泣きながら歩いた。
お家が見えると、あの3匹がやってきそうで怖かった。


寒い…寂しい…怖い…疲れた…ママ…ママァァァァァァ!

どれだけ、どこを歩いたか判らない…もうお家も見えない…。



朝、ワタチは、いつの間にか木の幹に寄りかかって寝ていた。
とても疲れている。
とてもお腹がすいた。

妹達も目を覚ます。
目の周りが赤く腫れ上がっている。
イッパイイッパイ泣いたからだ…。

ワタチたちはとても汚くなっていた。
パンチュも服もドロドロしたウンチにまみれ、ヌルヌルしている。
ワタチも妹達も、服の中のウンチが重い…。

ワタチ達は、昨日の事を思い出して涙を流した。

ママ…ママ…ママならきっと妹チャンを守って、アイツラをボコボコにしてる…
ママは天才なんだ…ニンゲンが媚びるほど賢いんだ…。

そう思うと、元気が少し出た。

ワタチは、ママの事を思い出して、服やパンチュからウンチを葉っぱで擦り落とした。
妹達を励ましながら、妹たちの服も洗ってあげる。


ここがどこだか見たことのあるような気がする。

そうだ!いつもニンゲンが貢物を出すところだ。

ここで、ワタチは昨日、妹達と遊んだ。
いつも、お昼を食べる場所…。

ここからなら、お家に戻る道がわかる…でも、あの3匹がいるかもしれない…どうしよう。

ワタチがイッパイイッパイ悩んでいると、
「ニンゲン♪何か食べ物が欲しいデスゥン♪」

沢山のナカマの声とともに、ママの声が聞こえてくる。

ママがいた!
ナカマのところにママがいる!
間違いない!ナカマに似ているけど、ママはナカマとちょっと違ってわかる。
ママはとっても元気そうだ!

「ママーママー!!」ワタチは妹達を抱えて、ママの元に走り出す。

「デデ!?」
ママは驚いた顔をしたけど、
すぐに「生きていたデスゥ!?よかったデス!!」とワタチを抱えてくれる。

ワーイ、タカイタカイだ…
ワタチは久しぶりにママにタカイタカイをしてもらった…
きっと、ワタチ達が生きていたことを喜んでくれているんだ。

すると、ワタチのお口にコンペイトウが入ってきた。
ニンゲンも、ワタチが生きていたことがうれしいんだ。

すぐにワタチが降ろされる…少し乱暴だった。

ママはニンゲンに向かって盛んに手を伸ばしてコンペイトウを受け取っている。
ワタチの話を聞いてくれない…


ワタチ達は、また、草むらに隠れて、ようやくお話をした。
ママは、ニンゲンに貰ったコンペイトウを3つ口に放り込んでいる。
ワタチは、口の中のナメナメしてたコンペイトウを出して、なんとか細かくして、妹たちに分け与える。

「ママ!生きてたテチュ!」

「当たり前デスゥ!あんなバカどもなんてボコボコデスゥ!」

「ママー!妹オネイチャンはドコレッチー…」

「デ!…ワ・ワタシは一生懸命戦ったデス…あの3匹は八つ裂きにしたデスゥ!
 でも妹ちゃんは守れなかったデス…
 ワタシは、とても悲しくて”一晩中あのお家で泣き続けた”デス。
 お前たちが逃げたのが悪いデスゥ…でも許すデス!
 ワタシはお前たちがとてもカワイイデス
 ワタシは、お前たちの事もとても心配していたデス
 ”一晩中お前たちを探して息が切れるほど歩き回っていた”デスゥ」

ママはワタチ達のことを必死で探してくれていた。
ママ、ゴメンナサイ…

ワタチ達はうれしくて沢山、沢山泣いた。
みんなでママの服に捕まって沢山泣いた。
ママもうれしいんだ…口をぐちゃぐちゃさせながらニンマリ笑ってワタチ達の頭をナデナデしている。

ワタチはイッパイ泣いて、イッパイ甘えて、イッパイお話した。
公園のお池で、イッパイキレイにしてもらって、お手手をつないでお散歩した。

「ママー、お家に帰るテチィ」

「デ!?お・お家…き・今日は…そう!別荘デス!別荘に行くデス!
 別荘で嫌な事は全部忘れるデス!」

わーい!別荘だ!
ワタチも親指チャンも蛆チャンもうれしい!

ワタチは親指チャンを背中におんぶしてママと手をつないで歩いた。
蛆チャンは、ママに抱えてもらって、尻尾を振って喜んでいる。

もう、ママから離れない…あんなに怖い、寂しいのはイヤだ!
何があってもママから離れるものか。
ママは絶対にワタチ達を守ってくれる。
強い、賢い、美しいママの側が安心だ。
ママが絶対に守ってくれるんだ。

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彼女は、人間から餌を貰いやすい親仔の利点を最大限、効率よく生かして、
この公園で、食べ物に関してはもっとも良い生活を出来る実装石となっていた。

だが、所詮、実装石基準の知能では、何処かに頭の回らないところが生まれる。

良い生活がおくれる実装石は、目立ちやすく、それだけ同族の標的となる。


この公園は、餌を撒く愛護派も多く、昼はOLなども多く訪れ、
直接貰うなり、残飯をあさるなり、さらに他の実装石の食い散らしを漁るなり…
自分の力量にあわせた餌の取り方で、それほど餌には困らない。
そのために、量や質の競争はあるが、実装石同士が表立って飢えが元の殺し合いに発展することはない。

それでも、身体的・知能的欠損で、いずれの方法でも餌がほとんど取れないモノもある程度は存在する。
さらに、ハーレム争いで敗れ、普通は強いマラの部下や奴隷として群れに入れられるハズが、
それに加えてもらえないほど弱すぎるマラ実装も彼らに含まれる。

飢餓実装と呼ばれる彼らは、餌の豊富でない普通の公園ではよく見られる光景ではある。
公園の表立ったところを歩くことが出来ない飢餓実装は、
弱いなりにまとまった数で自衛しながら深夜に行動する。
彼らは数の力を生かして、普通の餌探しではなく、他者を襲うことを主目的にしている。

単独では、はぐれた仔実装など弱いものを襲うしかない彼らは、
常に襲う飢餓感と半端に肉の味を覚えてしまったことによって狂っているのだ。
それがある程度の数が揃うことによって、さらなる狂気に変わる。
彼らは夜の世界に生きる強奪者となるのだ。
実装石たちの団地や、ハーレムの縄張りから離れた家を、
夜な夜な襲撃することで飢えを満たすのだ。

その弱者しか狙えない彼らにとって、
公園より離れた場所にあり、住んでいる数が少ないことが知られており、
かつ、刺激的な食べ物の匂いが漂う彼女の家は絶好の獲物である。

彼女のように家を作る能力が低いと、こうして保管した食料の匂いが外敵をひきつけ、
構造の弱さから、外敵の侵入を容易に許してしまう。

そうして彼女は襲われた。
しかし、彼女の機転が”彼女を”救った。
咄嗟に近くにいた妹仔実装を逃げる仔達から奪い取り、
「この仔を差し出すからワタシは助けるデスゥゥゥゥ!」と叫んで掲げた。

それでも、彼らは止まらない。

彼女は、さらに、その仔を地面に叩きつけると、まだ、虫の息で生きている我が仔を、
狂ったように貪り出したのだ。
「ウマイウマイ…ウマイデス…」

彼女は、彼らの仲間を装う演技をした。
迫真の演技…彼女は、彼女自身を守るために懸命に狂っている演技をした。
我が仔を本当に、生きたまま食べることで…。

しかし、襲撃者の目的は、より芳しい匂いを振りまく食べ物に向かっていた。

そう、そもそも早めに逃げ出していれば、何事もなく一家は逃げ延びることが出来たのだ。
気づかない彼女は、必死に我が仔を食い尽くした。

彼女たちが蓄えた食料を貪って居座る襲撃者達に、
その間に逃げればよいものを、彼女は無駄に全力で頭を回転させた。
「次は、絶対、ワタシが食われるデス…」

彼女は、彼らが全てを食い尽くすまで待ち、
食い尽くした後にこういった「逃げた仔実装がいるデス…あいつらウマそうデス!」

そうして、彼女は彼らの仲間として一緒に、我が仔を追跡する側に身を置いて、
自らの安全を確保したのである。
そして、何時間か行動をともにしてスキを見て逃げ出したのである。
その後は、朝まで我が仔を探し回った。

彼女は、仔を殺したことに何の後悔も抱いていなかった。
正確には、餌を効率的に得られる道具を失ったという事しか頭になかった。
彼女の愛情は、あくまで、自分自身にしかなかった。
仔を探したのは、生きていれば、また道具として自分が楽になるからだ。

仔を失った…全て失った。
でも、自分は生きている。
餌が貰いにくくなるけど、まぁ、いいか…その程度の感覚しかなかった。

そうして、彼女は次の日には、普通に同族に混じって、愛護派の餌撒きに並んだのである。
仔がいないなら、愛護派の撒き餌の方が効率が良い。

彼女にとってうれしい誤算は、それによって、逃げた仔達に再会できたことだ。
蛆もいる親指もいる。
金平糖も沢山もらえた…明日から、また、奪い合いに参加しなくいい。

彼女はわが仔の頭を撫でながらニンマリと卑しい笑みが止まらなかった。

全て、私の賢さがもたらしたもの…
両手から滑り落ちた幸福が帰ってきた。

彼女は彼女自身は、このままの順風満帆な実装生を謳歌できると信じて疑わなかった…。

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二代目 平穏なる実装生につづく

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1 Re: Name:匿名石 2014/10/30-20:50:30 No:00001527[申告]
子は親の道具
邪魔になれば捨て必要になれば拾い直す
なんか人格者、徳の人であるはずの劉備が劉禅ポイした話を思い出すわ
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