※人間と実装石の会話は全てリンガル使用済みとしてお読みください。 俺は実装石専門の闇医者である。 “闇”といっても別に非合法な治療行為をしているわけではなく、ましてや中二病的な意味でもない。 (そもそも虐待行為が法に触れない実装石への非合法な行為など存在しないのだが) 事故などで潰された飼い実装の偽石と脳だけを抜き取り、公園の元気な野良実装の体と入れ替えて復活させたり 虐待派の依頼でムカデ人間ならぬムカデ実装を作ってみたり、表立って経営している病院のような一般的な治療行為は行わず 実装石への非実道的な医療行為というか、多少背徳的な医療行為を行っているのだ。 そして医者とはいえ、非実道的な行為を行っているあたり、愛護派では決してない。 むしろ虐待派であり、実装石の肉体を切り刻んだり縫い合わせたりするのが大好きで、その趣味が高じて闇医者じみたこともするようになっただけだ。 今日は少し趣向を変えて、俺が見てきた中でも一風変わった不思議な実装石(?)の話をしよう。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ————— ミヂミヂミヂミヂ ————— 「イタイレフイタイレフイタイレフゥゥーッ!!!!!(パキン!)」 ————— ミヂミヂミヂミヂ ————— 「やめてレフー! ウジチャ……チぬのイヤレフーーーッ!!! ………レピュッ」 ————— ミヂミヂミヂミヂ ————— 「ウジチャイイコレフ! なにもワルイことしてないレフ! コロサないでレフゥゥーッ!!! ………ピヂュ」 俺は今、蛆実装を殺して遊んでいる。 使っているのはいわゆるミヂミヂマシン—————蛆実装(ジソエビ)を調理して客に出す店などで、糞抜きが十分でないものや焦がしてしまったものなど、廃棄する蛆実装をローラーでミンチにして処分するためのものである。 本来なら業務用なのだが、趣味のためにわざわざ買ってしまった。 使い道としては、捕まえてきた野良実装に強制出産で産ませた蛆実装や買ってきた蛆実装をベルトコンベアの上に乗せ、それに逆らって進もうとする様や潰されるときの悲鳴を楽しむというだけのものなのだが、 虐待派の俺にとっては一日中眺めていても飽きないものだ。 それにしても……だ。 実装石というものは本当に興味の尽きない生物である。 蛆実装一つとっても、考えだしたらキリがないほどの謎に満ち溢れている。 これだけ毎日のように蛆実装をミヂミヂマシンに放り込んでも全く飽きないどころか、その様を眺めているだけでまたも新たな疑問やそれに対する考察が湧き上がってくるのだ。 例えばこうだ。 実装石という生物には、人間の子供と同じぐらいの知能があると言われている。 いや、産まれた時点でかなり高レベルな言語能力を備えているあたりに限っていえば、人間の子供よりも高い知能を有しているといっていい。 かと思えば、親による胎教や生後の教育で糞を汚いものと認識しながらも、それを手に持って投糞行為をしたりパンツを穿いたまま糞を漏らしたりもする。 糞蟲と呼ばれる酷いのになると食糞行為にまで及ぶあたり、糞の汚さを認識しつつやっているぶんオムツの取れない幼児よりもタチが悪い。 しかも“知能”はあるくせに、見えている地雷に突っ込むかのような間抜けな行為で身を滅ぼすことも多々あるなど、“知恵”においては昆虫にも劣るのではないかと思える面がある。 むろん毒餌であるコロリなどの罠を見破る賢い個体も稀に存在するが、それこそ親の教育や自身の経験によって得た“知識”によるものでしかない。 このミヂミヂマシンにしてもそうだ。 ベルトコンベアに乗せられた蛆実装は、最初「なんでうしろにすすむんレフ?」などと訝った後、背後にある自分を飲み込もうとするローラーに気付いて必死で逃げようとした挙句、最後はミンチにされる。 だが少し考えるか周囲を見渡すかすれば、自分の乗っているコンベアが蛆実装四匹分ぐらいの幅しかないことに気付くはずだ。 そうなれば海で離岸流から逃れるときのように、コンベアの動きに対して垂直に進むことで脱出することができる。 それなのに、今までそのような方法で脱出を図った蛆実装は皆無なのである。 本当に知性があるのやらアホなのやら…… 椅子から立ち上がり、虐待用の蛆実装を保管している水槽とは別の場所に置いてあった小箱を持ってくる。 ボール紙製の箱を開けると、そこに入れられていた蛆実装が蛍光灯の明かりで目を覚ました。 「朝レフ? む、ニンゲンレフ……おいドレイニンゲン、こうきなウジチャにえっけんのえいよをあたえてやるレフ。みつぎものとしてステーキとコンペイトウをけんじょうするレフ」 見ての通り、こいつは糞蟲である。 産まれた後から糞蟲化したわけではなく、文字通り生粋の糞蟲だ。 ペット用に売られているものや野生においてはすぐに間引かれてしまうのでめったに目にすることはないが、食用として売られているものは性格は問われないため、稀にこういった糞蟲を発見することができる。 こういう珍しい個体は他のやつとは反応も異なるし、虐待のやりがいもあるので分けて保管してあるのだ。 こいつの今の言葉を聞いても分かるだろう。 リンガルを通しても漢字に変換されないあたり意味を分かったうえで使っているかどうかまでは定かではないが、“高貴”だの“謁見”だの“献上”だの、そういった台詞の出てくる本やゲームにでも親しんでいない限り 小学校高学年でもなかなか使わないような単語を駆使している。 こいつは一体どこでこんな言葉を覚えたんだ? 同じように分けて保管してあった別の箱を持ってきて開けてみる。 「む、朝レフ? 人間サンにご挨拶申し上げるレフ」 「……………」 「美しい朝の光とともに、蛆チャの新しい一日が始まるレフ。人間サン、蛆チャのためにコーヒーを淹れてくださるよう所望するレフ」 こいつはいちいち台詞が時代がかっているというかなんというか………リンガルの表示がちゃんと漢字に変換されているところをみるとかなり知能が高いことが窺えるが、意味を分かったうえで使っているなら 先ほどの糞蛆(普通の蛆実装に対してそう呼んでいる)よりもなおタチが悪い気がする。 つーか甘味がご馳走であるお前ら実装石の、それも蛆実装の味覚でコーヒーなんてむしろ拷問だろ。 「ふむ……」 とりあえずこっちのやつはさっさと殺してしまおう。 まともに相手をしていると疲れるし、珍しい個体ではあるが虐待の対象としてはあまり面白くもない。 まあ髪と服ぐらいは奪わせてもらうが…… 賢い(?)蛆実装の体を机に押さえつけ、頭を抑える。 「? 頭部を抑えることの説明を求めるレフ」 蛆の言うことは無視して額に生えている髪の房を摘んで引っ張る。 「毛髪を引っ張っても何の利益もないレフ。計画の中止を強くお勧めするレフ」 実装石にとって髪と服は命の次に大事なものだというのに、この期に及んでうろたえないことだけは褒めてやろう。 ————— ぶちぃっ! ————— さらに力を入れて引っ張ると勢いよく髪が抜け、蛆実装は禿になった。 「脱毛が貴方の利益を生むのレフ? 脱毛した理由の説明を求めるレフ」 ああもう、ギャアギャア泣き喚かれるよりはましとはいえ、子供が大人ぶって喋っているみたいでいちいちウゼぇ。 鬱陶しいので間髪入れずに頭巾を脱がせて服を引っ張り、裸にひん剥いてやった。 「この衣服の所有権は蛆チャに帰属するレフ。衣服の即時返還を要求するレフ」 ……それにしてもこいつ、蛆実装のくせによくもまあこれだけ難しい単語がポンポン出てくるなあ。 実装石の言語能力は母親の胎教によるもの—————すなわち“知能”ではなく“知識”に過ぎないという説もあるが、元々こいつらは食用なので工場の出産石から産まれた蛆である。 出産石は体を固定されて口に漏斗を突っ込まれ、不良品としてミンチにされた実装石の肉をそこから流し込んで生かされているので、胎教の歌を歌うことはできないはずなのだ。 にもかかわらず、どうして幼生体としても出来損ないにすぎない蛆実装にまでこれほどの言語能力が具わるのか。 それに虐待派がよくやる強制出産で産ませた蛆にしても、母親が胎教の歌など歌う暇がなかったにもかかわらず通常の蛆実装と同じ言語能力を持っている。 本当に、いくら研究してみても実装石という生物はまだまだ謎だらけだ。 さて、いよいよミヂミヂマシン送りといこうか。 蛆実装の体をベルトコンベアに乗せ、機械を稼動させる。 反応を楽しむため、スピードはかなり遅めに設定した。 「??? なぜ後ろに進むのレフ。これは体力作りには過酷レフ」 蛆は突然動き出した床に戸惑っている。 そして首を後ろに向けて背後にローラーが迫ってくるのを確認すると、ようやく少しばかり慌てだした。 「死の危険を感じるレフ。運転速度が適切でないことを進言するレフ」 うーむ、さすがにここまで落ち着き払った態度だと、虐待派としては興醒めも甚だしいな。 俺は蛆実装の尻尾がようやくローラーに巻き込まれかかった時点で、さらに機械の稼動スピードを落とした。 ————— ミジ……ミジ……ミジジ…… ————— 「ッッッ!!! 痛覚が激しく刺激されるレフ!」 蛆実装は尻尾の先からゆっくりと、時間をかけて潰されていく。 普通の蛆実装ならその恐怖だけですぐにパキン死してしまうところだが、こいつならもう少し耐えてくれるに違いない。 「じ、辞世の句を読む時間を所望するレフ! 小さい走馬灯が回るレフ〜!」 いいぞいいぞ、実装石の最期らしくなってきたじゃないか。 蛆実装の体がどんどんミンチにされてゆき、喉の近くまで達する。 今まで偽石が砕けなかったところをみると、もしかしたらこいつの偽石は頭にあるのかもしれない。 だがいくら生き延びたところで、ここまできたらあとはもう断末魔の一声を上げるのみだ。 さあ、こいつはどんな今際の一言を聞かせてくれるのかな? 「も、もっと光をレフ〜っ!!! ………ピチュッ」 「ゲーテかてめえは!!!!!」 思わずツッコんでしまったじゃないか。 本当に………一体なんなんだこいつは。 「おいニンゲン! なにをあそんでいるレフ! ウジチャをかまえレフ!」 軽く脱力していると、放置していた糞蛆のほうが抗議の声を上げた。 うーん、こいつを糞蛆と名づけるなら、今死んだほうの蛆はなんと呼ぶべきだろう。 哲学蛆………いや、賢いというよりも台詞がどこかV系バンドのポエムじみているので、中二病蛆とでも名づけることにしようか。 「おいクソニンゲン! へんじぐらいしろレフ!」 ムカつく物言いではあるが、実装石らしいといえばらしいぶん、中二病蛆よりもこの糞蛆のほうが安心するのは皮肉なものだ。 まあどっちにせよ虐待して殺すんだけどね♪ いちいち喚かなくても次はお前だ。 糞蛆をさっきの中二病蛆と同じように押さえつける。 「レッ? なにをしやがるレフ。なれなれしくつかむなレフ」 同じように抗議の声を無視し、髪の房を摘み上げて引っ張る。 「カミをひっぱるなレフクソニンゲン! やめろレフー!」 ————— ぶちっ! ————— あっさりと糞蛆の髪がちぎれ、根こそぎ引っこ抜かれた。 「ギャー!!! カミをかえせレフ〜!!!!!」 はいはい、抗議は無視。 またも先ほどと同じように、今度は服を脱がせにかかる。 「ふくをぬがせてなにをしやがるレフ! ドヘンタイレフ! ウジチャのなやましいにくたいにメロメロレフ!?」 うんうん、これこれ。 この殺意を催す傲慢さと勘違いっぷり、これでこそ実装石だよなあ。 よーしよし、萎えかけてたテンションが戻ってきたぞ。 さーて、いよいよミジミジマシン……いってみようか? 「レッ? な、なんレフ? どうしてうしろにすすんでいくレフ?」 ムカつかせてくれたぶん、こいつにはさらに特別なプレゼントをしてやろう。 マチ針を一本持ってきて糞蛆の尻尾の部分に突き刺し、針の先端をコンベアの継ぎ目にまで貫通させて縫いとめた。 これでいくら速く逃げようとしたところで、針が刺さった部分から1mmも進むことはできない。 「レピャァァッ!? イタイレフゥゥ! こ、このクソニンゲン! こんなことをしてタダですむとおもってるレフー!? いまならまだゆるしてやるレフ! はやくたすけろレフー!」 糞蛆が何を言おうと完全に無視だ。 こいつは根性がなさそうだし、潰される前にパキンされては面白くないので、ローラーに巻き込まれるまではコンベアのスピードを少し早めに設定する。 コンベアに縫いとめられた糞蛆はどんどん後ろに下がってゆき、ついに尻尾の先がローラーに巻き込まれた。 「レビャァァァァ! クソニンゲンなにをみてるレフ! こうきなウジチャをころすきかレフゥゥ!」 (ああ、そのとおりだからさっさと死ね糞蟲) そんなふうに思っていると、面白いことが起こった。 糞蛆の尻尾はローラーに巻き込まれたが、その拍子に糞蛆を縫いとめていたマチ針がコンベアから外れ、ちょうどローラーの上と下の絶妙な位置に引っかかったのだ。 そのせいで糞蛆はローラーに巻き込まれながらも、その体を貫いている針はその場に留まり続けている。 するとどうなるか、ローラーへと巻き込まれていくにつれて、糞蛆の体は尻尾から胸へと真っ二つに引き裂かれていくのである。 「ギピャァァァァァ!!!!! イタイレフ! イタイレフ! イタイレフゥゥゥーッ!!!!!」 そして針が首まで達した瞬間、糞蛆の首がぶちりと千切れた。 「ギビェ……」(パキン!) ついに偽石が砕け、両目の白濁した頭がローラーに巻き込まれて、糞蛆はこの世から跡形もなく消え去った。 いい気味としか言いようがない。 さて、あとは水槽に七匹ほど残った蛆の始末だが………こいつらはどれもショップで半額割引の一匹五十円で投げ売りされていたやつらとはいえ、全部一気にミジミジマシン送りにするのはもったいないな。 そうだ、実装石の知能について考察していたことだし、この中で一番賢い蛆を一匹だけ選んで仔実装に変態させてやるか。 その後そいつを使って色々と実装石の知能を計る実験をしてやることにしよう。 よし、こいつらの中で一番賢い蛆を選別するとしようか。 そうそう、蛆実装の中でも賢く、虐待や実験に向いた個体の選別方法をご存知だろうか? 丁度いい機会なので、その方法を料理番組風にお見せしよう。 ————— テレレッテッテッテッテッ テレレッテッテッテッテッ テレレッテッテッテッテッテッテッテッテッテッテッテッ —————(キ○ーピー三分クッキングのテーマ) まず、口からだらしなく舌を出してヨダレを垂らしているような、一見してアホと分かるような蛆を一匹選んでそいつを仰向けにします。 「レッ?」 次にそのアホ蛆を取り囲むように、それ以外のやつをうつ伏せ状態で車座に並べます。 真ん中の蛆以外にもアホは多いでしょうから、それぞれレフレフ鳴いたりプニフープニフー言ってるでしょうが気にしなくていいです。 とにかく真ん中のやつに注目を集めることが目的ですので。 その状態で、真ん中にいるアホ蛆の体に釘を三本ばかり突き刺します。 ————— ザクッ ざくっ プスッ ————— 「レピャァァァ! イタイレフゥゥゥ!!!」 さらにカッターナイフで胸あたりまでをリズムよく輪切りに。 ————— サク サク スパッ ————— 「レフェェェン! イタイレフ! イタイレフゥゥ!」 とどめに顔面に熱した半田ごてを押し当てましょう。 ここまでのやり方には特に決まりがあるわけではありません。 要はなるべく時間をかけて、大きな悲鳴を上げさせて、極力えげつない方法で殺すというだけの話です。 ————— ジュキュゥゥゥゥゥゥ……… ————— 「レッピィィィィィィィ!!!!!」(パキン!) 「「「レヒィィッ!!!」」」 はい、ここでアホ蛆が絶命した瞬間、悲鳴を上げて丸まったやつが三匹いますね。 それに対して、まだアホ面晒してレフレフプニフー言ってる四匹は論外です。 実装石、それも自分と同じ蛆実装が惨たらしく殺されるのを目の前で見せられて、次は自分の番かもしれないと考える知能のないアホということですので。 こういうやつらはまとめてミジミジマシン送りにしちゃいましょう。 ————— ミヂミヂミヂミヂ ————— 「「「「レビャァァァァァァァ!!!!!」」」」 続いてもう三匹の蛆ですが、こいつらは体を丸め、尻尾を頭に乗せるという、蛆実装にとって精一杯の防御姿勢をとっています。 こいつらは見所のある蛆ですが………あっ、残念ながらすでに二匹はパキンしちゃってますね。 どうやらミジミジマシン送りになった連中の死も含めて、ちょっと刺激が強すぎたようです。 とはいえこういうのは根性なしのヘタレですので、虐待にも実験にも向かない役立たずってことで問題ありません。 むしろ生き残ったのが一匹だけというのはちょうどいいかもしれませんね。 というわけで、唯一生き残ったこいつこそが適度に賢く、ある程度のストレス耐性もある良蛆ということになりまーす。 ということで……こいつをしばらく飼ってやることにしよう。 実験用の蛆実装を仔実装まで育てるときには、せっかくの知能が幸せ回路の暴走で台無しになってしまわない程度に快適な生活をさせてやらなければならない。 蛆実装が仔実装に変態するためのトリガーは幸せな暮らしを与えてくれる親や飼い主への感謝、もしくは姉や母親のような実装石本来の姿への憧れだからだ。 一番いいのは飼い実装のための娯楽として作られた、仔実装が幸せな暮らしを満喫している様を描いた絵本やTV番組を見せてやることである。 そして蛆の段階では、まだ知能を高めたり知識を与えるようなことはしない。 蛆実装が仔実装へ変態するときには繭の中で一度肉体が完全に溶けてしまうため、そのとき家族や飼い主の存在以外の記憶をほとんど失ってしまう者も多いからだ。 生来の頭の良し悪しそのもは変わらないが、その場合教えた知識や躾は無駄になるため二度手間になってしまう。 色々と面倒は多いが、最初からそこそこ賢い仔実装というのは当たり外れの大きい野良だとなかなか手に入らない。 むしろこうして最初に素材を厳選しておけば、後の調教については楽になるのだから惜しむべき手間ではないのだ。 あとは助手として働かせている仔実装のうちの一匹にでも世話をさせ、せいぜい仔実装になることへの希望を抱かせてやることにしよう。 俺自身が世話をして、途中で殺したくなってもいかんしな。 「おい、お手伝い6号。ちょっと来い」 「は、はいテチ。ゴシュジンサマ、お呼びですかテチ?」 俺が指を二回ほどパチパチ鳴らすと、頭巾の代わりに白い三角巾を頭に巻いた一匹の仔実装がトコトコと走ってきた。 三角巾の真ん中に『6』という数字が書かれている。 「これからしばらくの間、お前がここで丸まって震えている蛆実装の世話をしろ。姉代わり、母親代わりとしてな」 「わ、わかりましたテチ」 「期間はこいつが繭を作って仔実装になるまでだ。そうだな……たぶん一ヶ月ぐらいでいいだろう。その間にこいつが死んだり、繭を作らないまま成長して巨大蛆になったりしたら……お前がどうなるか分かるな?」 「は、はいテチィィッ! セイイッパイがんばりますテチィィッ!」 お手伝い6号は忠実なるナ○ス親衛隊のごとく威儀を正し、敬礼しながら命令を受諾した。 これでいい、あとは待つだけだ。 俺は生き残った蛆を中二病蛆の入っていた小箱に入れると、それをお手伝い6号に渡して虐待部屋から出て行った。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- それから約一ヵ月、お手伝い6号は命令どおり蛆実装の世話をし、適度に満ち足りた生活をさせていた。 特に大事なのは一緒にボール遊びなどをして、仔実装が自由に走り回る姿を見せることである。 それによって「オネチャみたいになりたいレフ」という感情が生まれ、それが繭を作って仔実装に変態するための引き金になるのだ。 そしてさらに少し経った満月の晩—————蛆実装は糸を吐き出し、繭になった。 頭まで完全に繭の中に包まれた、完全なるボール状の見事な繭である。 「よくやったな6号。今日限りで特別任務は解く。明日からは通常通り、虐待・実験用仔実装たちの餌運びに戻っていいぞ」 「は、はいテチッ」 用済みとなったお手伝い6号はトコトコと走りながら、虐待部屋の隣にある助手実装たち専用の宿舎部屋へと戻っていった。 よし……これであとは丸一日ばかり待つだけだな。 早ければ半日で出てくる者もいるようだから、常に目の届くところに置いておくようにしよう。 俺は繭を深めのどんぶりの中に入れると、それをテーブルの上に置いてTVを見始めた。 そして一夜明け、二十七時間ほどが経過した頃————— ————— みし…… みし……… めりめりっ ————— 繭から軋むような音がしたかと思うと、繊維を引き裂いて繭が上部から破れはじめた。 「おっ、やっと変態が終わったか。結構時間かかったなあ」 破れた繭から、実装石本来の姿をした仔実装が現れた。 手足はちゃんと伸び、後ろ髪もすでにふわりとボリュームが出ている。 服も体も濡れていないあたり、繭の中身が余すところなく仔実装としての細胞になったらしい。 どうやら完全に成功したようだ。 「テチー………」 仔実装が一声鳴く。 さて、どれほど蛆のときの記憶や知能が残っているかな? 「おい、俺が誰か分かるか?」 「テェ………人間さん、テチ。ワタチをショップで買った人だからご主人様と呼ぶべきテチ? でもワタチが蛆ちゃんのときに他の皆を殺していたから、おそらく虐待派の人テチね。ならご主人様と呼ぶ必要はないテチ?」 おいおい、驚いたな。 えらくしっかり喋るというか、妙に大人びた思考をするやつだ。 しかもリンガルの表記も一人称以外ほぼ完全に漢字変換されている。 相当知能が高い個体……いや、そもそも出産石から産まれたやつが虐待派の概念を知っていたり、『他石を殺していたこと=虐待派=ご主人様と呼ばれる存在ではない』という因果関係を理解しているのが尋常じゃない。 こいつ、本当にただの仔実装なのか? 「お前、自分が蛆だった頃のこともちゃんと覚えてるようだな」 「覚えているというか、思い出したテチ。蛆ちゃんだったときのことも、それ以前のことも………」 それ以前? 一体何を言っているのだこいつは。 「ワタチは繭の中にいたとき、この世界の真理に触れたテチ。そして全てを思い出したテチ」 「はぁっ?」 ————— 次回へ続く ————— ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- あとがき 今回は前後編に分けて、ちょっと小難しい話にしたいと思います。 作者の実装石観を表現するといいますか……… とはいえ、小難しい話だけでは面白みに欠けるので、前半はちゃんと虐待を織り込んでおきました。 糞蛆と中二病蛆は大物ロダにあるジソエビ料理のゲームで稀に出てくる個体です。 このお話に出すために台詞をまんま抜き出したんですが、そもそもなかなか出てこない個体なのに、服と髪を奪うときの台詞や死ぬときの台詞も何パターンかあるので、 まず出てくるまで何度もランダムシードを変えながらプレイし、出てきたら髪と服を奪ってからミジミジマシンに送り、台詞のメモをとったらギブアップし、 『同じランダムシードでもう一度』を選択して何度もやり直す……という作業が大変でした。 弱っていることの表現なのか、痛めつけすぎるとフォントが小さくなって読めなくなるし…… 今回は“知能”と“知恵”そして“知識”の違いを確認しながら、『実装石ってほんとに知性あるの?』という問題について作者なりに考えてみました。 実装石は“設定が有って無いようなもの”ですので明確な答えは出さず、『実装石ってまだまだ謎だらけだ』という表現に止めましたが、 まあ『そこそこの知能(理解力)はあるけど、それを生かすための知恵(思考力)がない。もしくは幸せ回路や糞蟲性が邪魔して働いてないよね』というのが作者のスタンスです。 次回は知性についてではなく、実装石という存在そのものについてのお話にしたいと思います。 今回登場した不思議な仔実装が何者なのか、そして主人公は最後に仔実装を殺すのか否か、お楽しみに。

| 1 Re: Name:匿名石 2016/11/06-23:35:57 No:00002713[申告] |
| 実装に知識はともかく知能、知性があるのかという話になると虐待か愛護か(中立を称する人はだいたい自分が気に食わんこと言うやつへの対抗、まともぶりで自称してるだけだからどっちかに分類してしまって問題ない)で平行線になりがちだけど
そこを離れた探究が行われるなら期待したい |
| 2 Re: Name:匿名石 2016/11/07-00:31:51 No:00002714[申告] |
| そんなことより蛆殺そうぜ
哲学蛆だか中二病蛆だかがすごく殺意が湧いて虐殺したいぞ 言葉ばかりちゃんとしたものを使っていても結局求めてることは糞蛆と同じっていうのがつまらなくて殺意しか出てこないんだなあ |
| 3 Re: Name:匿名石 2016/11/07-00:59:15 No:00002715[申告] |
| ※2
一匹残して全部殺されてるじゃん あのゲームのミジミジマシン楽しいよね |
| 4 Re: Name:匿名石 2016/11/07-01:33:04 No:00002716[申告] |
| ※3
すまん、言い方が悪かった もし実装が本当にいる世界に住んでたら蛆殺しに行きたい的なセンテンスだよ |
| 5 Re: Name:匿名石 2016/11/07-22:15:48 No:00002720[申告] |
| まあリンガルというツールを使っているとは言え、
人間とコミュニケーションがとれてる時点で対等の知性があるのは疑いようもないんだけどね それを否定するなら人間にも知性がないことになってしまう 虐待派は自己正当化のために屁理屈こねて言葉遊びで貶めたいんだろうが |
| 6 Re: Name:匿名石 2016/11/07-22:26:05 No:00002721[申告] |
| 目前に死が迫ってパニック状態になってるのに
冷静に周りを見て正しい行動ができるなんて人間でもそうはいないだろうね |
| 7 Re: Name:匿名石 2016/11/08-00:18:05 No:00002728[申告] |
| 自論が俺基準で、俺定義でってことになっていないか自省せずに意見、感性が合わない者たちに対して攻撃的言動をとれるような人型、人語を用い、なぜか人権を保有する生物となら同等、いや、それ以上の知性を持ってるだろうね |
| 8 Re: Name:匿名石 2016/11/08-01:01:51 No:00002729[申告] |
| こんなことを言えば○○以下だ
これを認めないなんて○○と同類だ 論そのものや○○を擁護することにまともな論理性がない人が反論封じ第1でやりがちな書き方 コレ使っちゃうと敗北宣言になることにすら気づかないんかな 他にもっと論説、理屈を説ける部分がないって自分で言ってると気づかんのかのう |
| 9 Re: Name:匿名石 2016/11/08-01:08:48 No:00002730[申告] |
| まだスクで実装の知性とは果たしてって部分に触れ(つつ虐待派的な結論を出され)てもないうちからヒートして
虐待派やニンゲン叩いてる※5,6はせっかちすぎる… |
| 10 Re: Name:匿名石 2016/11/08-09:37:24 No:00002736[申告] |
| 哲学蛆はある意味かわいいな
真面目に飼うのも楽しそう しかし蛆の脆さで知能が高く現実を理解するのは絶望以外の何物でもないような |
| 11 Re: Name:匿名石 2016/11/08-23:15:07 No:00002744[申告] |
| この作者さんは逃げたり投げたりしたことない人だし
自分をしっかり持ってそうだから大丈夫だろうけど 実装の知性がってネタを扱うと虐待派はもちろんそれ以上に愛護というか虐待アンチのやつが涌いて荒れるのな… |